主体的に活動するまちづくりプレーヤーや組織を呼び込む環境作り(長野県飯田市)
りんご並木まちづくりネットワーク
飯田市を象徴するのがりんご並木です。飯田市は、1947年に起こった飯田大火により町並みの4分の3が消失してしまう事態に見舞われました。それまでの飯田市は、信州の小京都と呼ばれるほど美しい町並みであったといいます。この飯田大火の反省を生かし、延焼を防ぐために整備されたのが防火帯と呼ばれる幅員30メートルの道路です。飯田東中学校の生徒の発案で、この防火帯に生徒たちが自らりんごの苗木を植えて管理・発展させたのがりんご並木です。
りんご並木の管理を中学生が行うには苦難の道が待ち受けていましたが、根気よく継続し、今でも飯田東中学校の生徒が管理しています。この取り組みは全国に伝播し、飯田東中学校へ激励や義援金が集まるだけでなく、札幌市や浜松市でもりんご並木が誕生するきっかけにもなっています。地元の中学生発のりんご並木整備事業は、飯田市のまちづくり精神の根幹といえます。
このりんご並木は、1996年に再整備工事に伴い、車道と歩道の区分けなく使用できる道路へと生まれ変わりました。上記の画像のように、公園のような空間へと生まれ変わったりんご並木では、時には歩行者天国化することで様々なイベントが行われるようになりました。イベントが発展し、賑わいを図る一方で、新たなイベントが生まれるたびに関係団体の了承を得る必要があるなど、市民が自由にイベントに参画する上で障壁が多いという問題も分かってきました。
そこで、イベント開催にあたり、それぞれの団体などが対等な関係で話し合う場を設けることにしました。それが、りんご並木まちづくりネットワークです。りんご並木まちづくりネットワーク設立により、合意形成や各団体の連携が容易になったことで、参加団体がより多くなり、それに伴いイベントの魅力も向上しました。現在では、りんご並木まちづくりネットワークには30を越える団体が所属しています。
さらに、りんご並木まちづくりネットワークは、同じ時期に開催されていた「街中にぎわいフェスティバル」、「フィギュアマーケット」、「グルメサミット」の3つのイベントを統合し「飯田丘のまちフェスティバル」という新しいイベントを生み出しました。具体的には、その中のひとつのイベントである「フィギュアマーケット」に伴い、コスプレや痛車の展示など派生的にイベントが広がり、サブカルチャーの祭典として発展しました。
さらに、日本酒イベントや和太鼓演奏なども加わり、規模が大きくなっています。今では、「飯田丘のまちフェスティバル実行委員会」が立ち上がりイベント運営を行っています。組織同士が連携して新しい活性化策を立ち上げ、新たな組織を生んだ一例といえます。
※「コスプレ」はマンガ・アニメ・ゲームに登場するキャラクターの衣装などを作成し、変装しなりきること。「痛車」とは、マンガ・アニメ・ゲームなどのキャラクターなどをデザインした車のことです。