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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

多くの事業アイデアとリーダーを生み出し続けるまちづくり会社のプロジェクト (まちづくり福井株式会社)

取組のポイント

  • デザイナー、クリエイター、地元新聞社の参画
  • リノベーション手法によるまちの活性化
  • 官民協働によるまちなか活性化

1.まちづくり福井株式会社の取組

(1) 福井市の中心市街地活性化への取組

現在、福井市では、平成25年4月から30年3月を期間とする2期中心市街地活性化基本計画(以下「2期基本計画」)が取組まれていますが、この計画の基本的なテーマとして、「官民協働のまちなかにぎわいステージづくり」が設定されており、「官民協働」の視点が高く掲げられています。

そして、この視点を具体化し掲載事業の実効性を高めるため、民間事業者(まちづくり会社等)、学識経験者、市民団体等有識者、行政をメンバ-とする「福井市中心市街地活性化マネジメント会議(以下「マネジメント会議」)」が、行政内の「福井市中心市街地活性化推進本部」とは別の位置づけで設置されています。メンバーは7名で、うち4名は福井市中心市街地活性化協議会(以下「協議会」)構成員です。

福井市中心市街地活性化推進体制 (出所: 福井市中心市街地活性化基本計画に掲載の図を加工)
複合施設ハピリン(出所:ハピリン公式HP)

このように福井市では、行政(推進本部)、協議会(商工会議所、まちづくり会社、商店街等)、マネジメント会議(民間、学識者、市民団体等)が役割分担し、連携をとりながら各種事業を展開するという推進体制になっています。

なお、中核事業である福井駅西口の再開発では、屋根付き広場、多目的ホール、ドームシアター、福井市観光物産館、店舗、高層住宅等による複合施設「ハピリン」が姿を現し、平成28年4月にグランドオープン。

また、ハピリン向かいの市街地に、新たに店舗とマンションの高層複合ビルが民間ベースで建設される計画が発表される等、新たな動きが活発に出てきています。

一方、大規模なハード整備以外の取組として、まちづくり福井株式会社(以下「まちづくり福井」)によるリノベーションスクールの開催、小規模空きビルの民間まちづくり会社によるリノベーション、福井市にゆかりの深い「お市の方」にちなんだ美のまちプロジェクトによるエステ、リラクゼーション、整体等の美と健康に関係する約20の店舗の空きビル・空き店舗への一斉開店、グルメをはじめとする多くの事業が展開されています。

そして、特徴的なこととして、これらの取組に市民有志が多数参画しており、リーダーとして活躍しているということをあげることができます。

(2) まちの担い手づくりプロジェクト

この多くの市民有志によるまちづくりへの参画は、まちづくり福井の主催により、平成24年3月から5月にかけて全5回シリーズで開催された、「まちの担い手づくりプロジェクト」(以下「担い手づくりプロジェクト」)が発端になっています。

この担い手づくりプロジェクトの開催は、地域に大きな反響を呼び、定員50人の募集に対して、ふたを開けてみると2倍に迫る88人の申込みがあり、急きょ大きな部屋へ会場を変更したほどでした。

【左の写真】福井商工会議所地域事業課長岩崎正夫氏(左)とまちづくり福井常務取締役嶋田浩昌氏/【右の画像】まちの担い手づくりプロジェクト募集チラシ

さらにもう一つの特徴は、参加者の職業にデザイナーやクリエイターが多かったことをあげることができます。これは後の展開に大きな影響を与えることになります。

さて、この担い手づくりプロジェクトですが、進行は1回あたり2時間、講師による講義の後にテーブル毎に班編成されたグループでディスカッション、グループによる発表等ですが、回を重ねるにつれ発表が多くなるように設定されていました。内容は、「まちづくりのこれから」、「地域資源、市民活動とまちづくり」、「コミュニティを元気にするアイデア」、「福井のまちづくりと実践者たち」、「人がつながる仕組み」で、毎回終わる毎に議論されたことの記録(レポート)を、開催に協力いただいた「studio-L」(後述)が作成し、参加者に配布するという工夫もされていました。

ところで、このような催しが開催されることになった経緯は、当時、まちづくり福井に岩崎正夫氏が福井商工会議所から出向しており、これまで、商店街や百貨店のイベント情報を広報する「THE EKIMAE PRESS」というタブロイド紙を立ち上げ、地元の福井新聞と連携し、年間2回、福井新聞のネットワークを生かし、県内全域に20万部を新聞朝刊とともに配達をするという取組をしていました。経費は、紙面を16コマに割り、1コマあたりのスポンサー料を徴収し、経費の一部に充当していました。

こういった店舗の情報発信やイベントを共同開催するなかで、多くのまちの人たちと顔見知りになり、だんだんまちの抱える問題点が見えるようになってきました。これからは、商店街、百貨店、地権者等の個別で考えるのではなく、その垣根を取り払い、広い枠組みで考えないと課題の解決には近づかないと感じるようになっていました。

そのようななか、「コミュニティデザイン」(studio-L 山崎亮著)という本に出会います。この本に書かれていた実践例を読み、「商店街以外の地域の人々も巻き込んだ取組こそ、福井市中心市街地活性化に必要なことだ。」と確信するようになりました。

もうひとつの背景として、当時平成23年中ごろは、1期基本計画満了の1年半前にあたります。2期基本計画のコンセプトをどうするか検討が始まったころでもありました。岩崎氏の耳にも「官民協働」という言葉が伝わってきており、2期基本計画がこのコンセプトでまとめられるのなら、この取組はまちなか活性化に役立つのではないかと考えました。

早速、studio-Lに連絡を入れ、思いを伝えた結果、両者の協力関係が実現することになりました。

さて、5回シリーズが終了し、このプロジェクトは大成功をおさめました。  参加者は、ここでの議論の積み重ねにより、「大事なことは実践することだ。」と、だれもが思うようになっていました。

ところで、主催者のまちづくり福井では、年度内事業として次回のプロジェクトは予定していませんでした。しかし、参加者から「一歩前に踏み出そう、より具体的な検討を内容とするプロジェクトを開催してほしい。」という強い要望が出され、まちづくり福井では予算立てに苦労しながらも、次のステージの「まちの担い手実践プロジェクト」を開催することにしました。

(3) まちの担い手実践プロジェクト

「まちの担い手実践プロジェクト」(以下「実践プロジェクト」)は、5カ月後の平成24年10月から3月にかけて4回開催されました。内容は、担い手づくりプロジェクトの参加を通じて生まれた4つの取組アイデアのグループに体験的に参加し、課題解決と展開を議論し、実践につなげていくというものです。

具体的には、グループの企画を実践に持っていくための「リサーチ手法」や「企画書の作成方法」を「事例紹介」にヒントを得ながら議論し、ひとつの企画としてまとめていくというもので、52人が参加しました。

まちの担い手実践プロジェクト募集チラシ(左)とまちの担い手づくり・実践プロジェクトレポート(右)
当初の4つのグループ
  1. まちを楽しむ場所づくり「きちづくり福井」
    *駅前の空き店舗を基地に、イベントや起業家育成に取組む
  2. 市民が勧める福井の宝「福イイネ!プロジェクト」
    *福井のグルメの情報発信
  3. まちと里山をつなげよう「里地里山プロジェクト」
    *まちと里山を結び、里地里山の保全と市民のライフスタイルをつなげる
  4. 読んだら会いに行きたくなる「福井おもっしぇえ人MAP」
    *福井人により福井のおもっしぇえ(面白い)人を紹介する
実践プログラムの2回目から新たに増えた2つのグループ

  • 福の井プロジェクト
    *東日本大震災被災地への支援参加という経験を踏まえ、福井からたくさんの人に「福」を届ける
  • ベンチプロジェクト
    *まちに人が集える場をつくるため、市民や子供がペイントしたベンチを製作し、お店の中や前に置いてもらう

「実践プロジェクト」も「担い手づくりプロジェクト」と同様、会場は参加者の熱気であふれ、今後、具体的な実践につながることを予感させる素晴らしいものとなりました。

なお、この1年間の期間を通じ、両方のプロジェクトの開催回数は9回でしたが、自主的なミーティングは数え切れないほどで、ひとつのプロジェクトを具体化させていくスキルの修得と年齢、性別、職業の異なる参加者同士のネットワークの構築はかけがえのないものになりました。

また、今回も毎回レポートが作られており、最後の4回目のレポートには、参加者の集合写真が掲載されています。1年間でこれだけの人数のまちづくりのリーダーが出現したと見ることもできます。

(4)プロジェクトから生まれた実践、「きちづくり福井会社」

「きちづくり福井」のグループは、「担い手づくりプロジェクト」終了後から具体的に動き始め、メンバーが志のある資金を「志金」として拠出し、任意団体「きちづくり福井会社」を立ち上げ、駅前商店街の空き店舗に「エキマエベース」と名付けた基地を作り、ここに日夜集まるメンバーは作戦会議を開き、具体化した企画を順次展開していきました。

なお、後日、きちづくり福井会社の事務局メンバーは、マネジメント会議の委員7人のうちの1人に就任しています。

「実践プロジェクト」開催中の1月には「タビスル文庫」の企画が走り出しました。

この「タビスル文庫」とは、本の有効活用と人・文化の交流によるまちの活性化を狙いにしており、市民が自分の本をこの活動に参加している喫茶店などの店舗(文庫宿)に持ち込みます。文庫宿は「タビスル文庫」宿と「イスワル文庫」宿の2種類があります。

タビスル文庫のチラシ

「タビスル文庫」は無期限で無料貸し出しされ、返却は借りた店舗以外の「タビスル文庫」宿に返すというものです。巻末には、提供した人と借りた人が一言コメントを書くパスポート(貸出しカード)がついています。例えば「娘と楽しんだ本です。」、そして借りた人は「私は、息子と楽しんでいます。」という感じです。今、この取組の参加店は福井県を越えて東京都や佐賀県にまで広がっており、まさに福井市発の本が日本のあちこちに旅をしています。一方、「イスワル文庫」は店内だけの閲覧となっています。

現在、当初任意団体だった「きちづくり福井会社」はNPO法人となり、福井市まちづくりセンター「ふく+(たす)」の運営委託を受け、一層の活躍が期待されています。

参考リンク

2.リノベーションスクール@福井

このリノベーションスクールの実現には、福井駅前五商店街連合活性化協議会(以下「五連」)会長の加藤幹夫氏の尽力がありました。加藤氏は、かねてからシャッターの下りた空き店舗・ビルが増え続ける状況に、「何とかしないといけない。」と思い続けていましたが、有効な対応策がなかなか見つけられないでいました。その中、北九州市の「リノベーションスクール」の情報を入手し、調べてみると、非常に説得力ある魅力的な取組だと分かり、関係者にその有効性とリノベーションスクールの福井市での開催を進言し続けました。

まちづくり福井ではそれを受け、主宰の北九州家守(やもり)舎に打診しましたが、先ず、平成27年2月に開催される連続6泊7日の「家守ブートキャンプ(3日間)+リノベーションスクール@北九州(4日間)」への参加を勧められました。ここでは、参加者は地元物件の検討(ブートキャンプ)とリノベーションスクールの実際を体験することができます。

これに福井市からは、まちづくり福井2名、市役所1名の3名が参加することになり、ブートキャンプへ提出する地元事例としては、ハピリン近くの空きビルのリノベーション案とすることにしました。

以上を背景に、「リノベーションスクール@福井」は、まちづくり福井主催、五連等共催により平成27年6月19日から21日の2泊3日で行われ、参加者は18人でした。

最終日の21日には、市内の2物件を対象に、収支を含めたリノベーションの事業計画をまとめ、地権者と一般市民120人に対して公開プレゼンテーションが行われました。

プレゼンテーション後には、参加者には達成感、そして地権者には一生懸命なプランを提示されたことから涙ぐむ方もいたりと盛会裏に終了しました。

まちづくり福井には、今後、事業化にいたるまでの支援に大きな期待が寄せられています。

リノベーションスクール@福井のチラシ(表・裏)

3.もうひとつのまちづくり会社とリノベーション

これには、地元の福井新聞と五連会長の加藤氏が関わっています。

福井新聞は、平成26年3月から福井市の中心市街地活性化や県内各地のまちづくりをテーマにした連載記事「まちづくりのはじめ方 ~記者、奔走。」をスタートさせましたが、担当の“まちづくり企画班”では、「企画班の記者自身がまちづくりを実践すれば、より親しみの湧く記事になるのでは。」と話がまとまり、会社の応援もあり、取材を越えた具体的な実践に取組み始めました。

実践のひとつは福井の山海の幸を食材にしたレストランの開店で、これにより、人、モノ、お金が循環します。

レストランは、当初期間限定の営業を考えましたが、これでは市民に単なるイベントとしてでしか理解されないのではないかということで、常設店を目指すことにしました。

しかし、記者だけで営業できるわけでもなく、開業資金にも限度があります。そこで、店舗運営はともかく、店舗そのものは、熱海市で6月に開催されたリノベーションスクールの取材をもとに、リノベーションの手法で自分たちで行うことにしました。

幸い、候補物件は、JR福井駅近くに気に入ったものが見つかりました。そこで、空き店舗対策にも取組んでいるまちづくり福井に相談に出向いたところ、「地元商店街でも、ここを活用する考えがあるようですよ。」とのこと。

戸惑いながら五連の加藤会長を訪ねたところ、「われわれは、ここをリノベーションでお店を作りたいと思っています。」と、物件、手法、計画内容がすべて同じという、「偶然の一致」ということになりました。

その後、話合いと調整を経て、11月に資本金500万円、民間出資(加藤氏、福井新聞他2名)によるまちづくり会社「株式会社福井木守り(きまもり)舎」(以下「木守り舎」)が設立され、以降はこのまちづくり会社がリノベーションを実施することになりました。

木守り

柿やミカンなどの木に、翌年の実りを願い、実を1つ2つ残しておくこと。
この会社の取組が永続するようにとの願いを込めています。

事業内容は、(1)空き店舗のリノベーションによる新事業の立案、(2)地権者から賃借、(3)入居者のマッチング、(4)改修費を負担し転貸賃料から回収、となっています。

この空きビルは、翌平成27年春から賃借開始、5月から工事、そして7月に「これからビル」と名前がつけられ、木守り舎第1号のリノベーションビルとしてオープンしました。

なお、「2.」に記載の2月に北九州市で開催された、家守ブートキャンプで地元の課題物件としてリノベーション案が提出されたのは、この空きビルです。

1階は直営のカフェレストラン「su_mu」、2階は中2階の造りでレンタルスペース、3階はコワーキングスペース「サンカク」で、ここをベースに新しい事業や開業者の発掘、第2第3のこれからビルを誕生させる計画が練られています。

【左の写真】これからビル(左の空地は整備後ハピリンへの連絡道路になります。)と【右の写真】福井新聞社会部記者・木守り舎取締役 細川善弘氏
参考リンク

4.関係者の声

五連会長・木守り舎代表取締役 加藤幹夫氏

五連会長・木守り舎代表取締役の加藤幹夫氏は、「北九州市でのブートキャンプ、福井市のリノベーションスクール、そして、これからビルでの取組により、私たちはたくさんのノウハウを得ることができました。一方、中心市街地には多くの空き店舗、空きビルがあります。木守り舎は、これまでの蓄積を活用し、一層、リノベーションによるまちの活性化に取組んでいきたいと思います。」と語られました。

5.取材を終えて

次々とプロジェクトが生まれ、同時に多くのリーダーが出現していること、そして、タビスル文庫の説得力あるチラシの出来栄えに驚きました。

また、今回の記事では具体的に紹介していませんが、「福イイネ!プロジェクト」では、早々にメンバーがフェイスブックでお店紹介を開始し、メンバーの1人は「おいしく、つながれ、わがまちごはん。」という冊子を出版しています。「ベンチプロジェクト」は、平成26年度「ふくい市民活動基金」の助成対象となり、現在、数十のベンチが市内各所に置かれています。

岩崎氏に、「これだけたくさんの活動がどんどん生まれてくると、活動が重複する場合の調整はどうされていますか。」と質問したところ、「もしそのようなことがあれば、当事者間で分野の調整というより、一緒に取組むということの方が多いのではないかと思います。大体、皆が顔なじみで、担い手づくりや実践プロジェクトの参加者は、その間のミーティングなどを通じ気心も分かっていますので。」とおっしゃっていました。自立した協調ある活動が定着していると感じました。

また、地元の新聞社がまちづくりに具体的に参画していることは、全国的にも数少ないと思います。紙面でも、再開発や有志による活動等たくさんの記事が掲載され、市民に中心市街地活性化の情報が発信されています。

今回の取材は、デザイナー、クリエイターそしてマスコミ(福井新聞、福井テレビ)による発信力、影響力、行動力、そして、その発端になった担い手づくり・実践プロジェクトという、まちづくり福井の取組の大事さを感じることができました。

6.まちづくり会社の概要

名称:
まちづくり福井株式会社
所在地:
福井県福井市
設立:
平成12年2月23日
株主数:
120名
資本金額:
5,875万円(福井市51.1%,福井商工会議所17%、商店街等6.6%、中小企業者18.6%、大型店1.7%、
公益企業1.7%、金融機関3.4%)
参考リンク

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まちづくり福井株式会社(取材記事) 別ウィンドウで開きます

7.まちの概要

福井市位置図(出所:福井市HP)

福井市は、福井県の県庁所在地で、人口は27万人弱です。

市の中心部は、室町時代のころ「北ノ庄」と呼ばれ、現在に至るまちづくりの始まりは、戦国武将柴田勝家の城づくりからといわれています。

昭和20年7月の空襲、昭和23年6月の福井大震災と再度にわたって壊滅的な打撃を受け、さらに水害、風害と幾多の災害に見舞われましたが、市民の不屈の精神によって不死鳥のようによみがえりました。

主な産業は、江戸時代からの繊維産業と近年の化学工業です。

取材年月:平成28年2月

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