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株式会社 みらいもりやま21
取組のポイント
- 収益事業への積極的な取組と投資
- 行政との緊密な連携
1.株式会社みらいもりやま21の取組
(1)設立の背景と経緯
滋賀県守山市の中心市街地活性化に大きな役割を果たしている、株式会社みらいもりやま21(以下「みらいもりやま21」)を取材しました。
現在、みらいもりやま21は、収益事業確保に積極的に取組んでいます。また、資本金を取り崩し新たな投資を行っています。さらに、守山市中心市街地活性化協議会の事務局も担っています。
このような姿は、どのようにして実現できたのでしょうか。
まず、みらいもりやま21設立の背景と経緯からご紹介します。
(ア)市の総合計画と中心市街地活性化基本計画
守山市の中心市街地活性化は、平成21年3月に守山市中心市街地活性化基本計画(以下「基本計画」)が認定され、現在、平成27年2月の満了に向け、各種の事業が展開されています。
みらいもりやま21は、基本計画が認定を受ける半年前の平成20年9月に設立されましたが、設立は、基本計画との関係だけでなく、市の総合計画とも密接なつながりを持っており、そもそもの始まりは、さらに2年前(平成18年度)にさかのぼります。
当時、市では、平成19年7月の守山市都市計画基本方針(マスタープラン)の見直しに向け、「市民アンケート」や述べ218名参加の「住民会議」による全体構想等の策定の中で、「中心市街地の活性化」と「景観計画」の2つをこれからのまちの基盤づくりの柱としました。
(イ)みらいもりやま21の設立
中心市街地の活性化では、「地域とコミュニティの再生」を主眼に置き、平成19年7月に関係者による「中心市街地活性化推進委員会」が、翌8月には7つの小委員会が市に設置され、具体的な方針・方策が協議されました。
この7つの小委員会のひとつに、後のみらいもりやま21のスタートラインとなる「担い手づくり小委員会」があり、これに守山商工会議所副会頭(当時)の清原 健氏(現みらいもりやま21代表取締役、守山商工会議所会頭)が委員として就任しました。
翌平成20年5月には、「守山市まちづくり会社設立検討委員会」が市に設置され、委員長には清原健氏が就任しました。そうして、まちづくり会社設立の具体的な条件整備、環境整備の協議が行われました。1カ月余の間に5回の会議を集中的に重ね、6月に報告書がまとめられました。翌7月には「みらいもりやま21発起人会」が設立され、資本金の募集、そして9月に創立総会が開催されました。
このように守山市では、今後つくられるまちづくり会社の意義・役割・位置づけ等がしっかりと固められ、適宜市民に公表されました。
その結果、多くの関係者・市民は、まちづくり会社の必要性を十分に理解しました。
例えば、資本金5,225万円のうち市と商工会議所の出資は合計1,500万円ですが、残り7割強は多くの法人・個人によるもので、これが2週間ほどの間に集まっています。
(2)みらいもりやま21の収益事業への取組
みらいもりやま21はさまざまな収益事業に取り組んでいます。またこれで得られた収益により、イベント等の各種自主事業が数多く実施されています。
なお、(ア)守山市歴史文化まちづくり館、愛称:守山宿・町家『うの家』(以下「うの家(け)」)と(イ)守山市中心市街地活性化プラザ(以下「あまが池プラザ」)は、基本計画事業の中心事業です。
(ア)「うの家」の指定管理業務等
「うの家」は、元総理大臣宇野宗佑氏の生家で、平成22年に市が買い取り、改修工事を経て平成24年1月にオープンしました。市の歴史・文化の紹介、市民ギャラリー、交流スペースの他、近江牛のレストランと蔵を活用した和カフェの2店がテナントとして入っています。
開館48日目で予想年間来館者数の7,000人を達成し、初年度は年間30,000人余の来館者数を記録しました。
みらいもりやま21は、施設全体の運営管理、自主イベントの開催、市民による施設利用事業への支援といった指定管理業務を行いつつ、テナント部分は市から賃借し、テナントへ転貸しています。
この施設のテナント部分は、みらいもりやま21が資本金を取り崩し、経済産業省の戦略的中心市街地商業等活性化支援事業補助金により改修を行いました。工事に先立って取締役会に諮り、その了承を得、工事に着手しました。レストランとカフェの2店は、みらいもりやま21が誘致した店舗であり、緊密な関係が続いています。
また、みらいもりやま21は、平成25年度に、うの家への一層の来館を図るため、中小企業基盤整備機構の 「中心市街地商業活性化診断・サポート事業(プロジェクト型)」 別ウィンドウで開きます を活用しています。
「うの家」の主なイベント |
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(イ)「あまが池プラザ」と「あまが池親水緑地」の指定管理業務等
「あまが池プラザ」と「親水緑地」は、小学校の改築にあわせ、幼稚園と小学校を合築した福祉文化交流施設として一体的に整備され、平成24年7月にオープンしました。
みらいもりやま21は、「うの家」同様、この施設全体の運営管理、自主イベントの開催、市民による施設利用事業への支援といった指定管理業務を行っています。
館内には大小の交流スペースが複数あり、市民への貸し出しとともに、みらいもりやま21の自主イベントが行われています。 これらスペースは、あまが池プラザという信用と交通の利便性から多くの市民に活用され、稼働率は6割に迫っています。
また、施設内に南欧風カフェレストランとフラワーショップを併設したカフェの2店がテナントとして入居していますが、これも「うの家」同様、みらいもりやま21が誘致した店舗です。
テナントは、業種・業態・経営コンセプト等を点数化して評価し、最終的に取締役会で2店を決定しました。
みらいもりやま21の役員には地元名店の経営者もおり、専門的かつ実践的な知識を活用してテナントの経営上の相談にも対応しています。
さらに、イベントをテナントと関連させ、あまが池プラザ2階のスペースで「食についての講座」を開催した講師が、テナント店と提携して1階テナントスペースでランチを提供し、再来店につなげる企画を開催するなど、間接的な支援も行っています。
なお、これは「うの家」のテナントについても同様です。
「あまが池プラザ」の主なイベント (*は市民主催のイベント) |
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(ウ)「チカ守山」の運営事業
「チカ守山」は、守山駅直結の住商複合ビルの地下1階に、今年(平成26年)2月にオープンした、カフェ、カルチャー、キッズフロア等を配置した複合施設です。
この地下1階は、当初スーパーが営業していましたが、12年前に撤退 し、それ以降閉鎖され、長期間活用されていませんでした。これを市が中心市街地活性化のため活用法を公募し、これにみらいもりやま21と民間企業が連携、受注し施設を運営することになりました。
このフロアの賃借関係は次のようになります。
- 地権者から市が賃借し、みらいもりやま21へ転貸
- みらいもりやま21は民間企業に再転貸
駅前の一等地ですし、床面積も広いため、改修には3億1,300万円の投資が必要でした。1/2補助(中心市街地魅力発掘・創造支援事業費補助金)があり、テナントには15年間の賃貸借契約を締結できたとはいえ、みらいもりやま21にとって冒険ともいえる金額の投資です。 これについては、駅前の「チカ守山」そして「うの家」、「あまが池プラザ」のトライアングルによる中心市街地活性化のため、取締役会で協議し決断しました。
2.今後の課題
まず、大きな投資をした「チカ守山」への来店者の増が目下の課題です。
1階から地下へ入る誘導が弱く、地下に降りるとおしゃれな空間が広がっているのですが、オープン間もないということもあり、期待する太い動線に至っていません。
これをどのように改善するか、広告やイベント等を検討しているところです。
「うの家」、「あまが池プラザ」については、イベントや講座の一層の工夫と来館者の年代によるばらつきの改善です。ただ、これについては、施設のコンセプトとイベントや講座内容が関連するので、そこを見極めての取り組みが続いています。
次に、入居しているテナント4店への来店者の増加です。現在でもイベント開催による間接支援をしていますが、経営自体を含めた一層の支援が求められています。
3.関係者の声
清原 健代表取締役は、次のように語っています。
「今は順調に見えるみらいもりやま21ですが、当初はそのような状況ではありませんでした。収益の多くを占める施設管理業務ですが、会社が設立された時にはまだ施設自体がありませんでしたし、指定管理業務を受注できるというはっきりした確証もありませんでした。ですから、少しでも収益をと、今でも販売している、特産品のメロンを活用した飴ですとかハンカチ・メガネ拭きなどを開発しました。しかし、まちづくりのなかで、みらいもりやま21の役割は設立以前の取組の中で、関係者全員の共通認識がありましたから、それに向かって前進してきました。これからも、みらいもりやま21は、より収益事業に積極的に取組み、経営基盤を一層強くしていきたいと考えています。また、その収益をしっかり住民へ還元し、まちの人から『みらいもりやま21は、なくてはならない会社だ!』といわれるよう努力してまいります。」
4.取材を終えて
守山市は、昭和45年に市へ移行以来、毎年平均1,000人前後人口が増えている人口増加都市です。守山駅周辺にはマンションが立ち並び、通りを歩いていても全体的にどことなく若さと活気を感じさせます。 みらいもりやま21は、このようなまちを背景に、 「うの家」や「あまが池プラザ」以外でもたくさんのイベントを企画し、その開催に協力しています。
例えば、「バル」、「まちゼミ」、「100円商店街」、「ひなまつりイベント」、「和っと守山中山道」、「まちなか熱狂音楽祭」、「ポンテリカ」(逆から読むと仮店舗)などですが、当日はたくさんの来街者でまちが賑わいます。
今回の取材では、「まちづくり会社の役割が多くの方々に理解されている」、「旺盛な収益事業への取組」、そして「収益の活用によるまちづくり関連の多彩なイベントの開催」、これらが羨ましいほど有機的に噛み合っている状況を見ることができました。
取材年月:2014年4月
まちの概要
守山市は滋賀県・琵琶湖の東南部に位置する人口約8万人のまちです。
江戸時代は中山道を代表する宿場町として栄え、現在は、京阪神のベッドタウンとして人口が増加しています。
都市データパック2010の住みよさランキング(東洋経済新報社)で、守山市が近畿ブロック1位、全国総合ランキングで10位を獲得しています。
まちづくり会社の概要
- 会社名:
- 株式会社 みらいもりやま21
- 所在地:
- 滋賀県守山市守山一丁目8-7
- 設立:
- 平成20年9月5日
- 資本金:
- 5,225万円(法人42社、個人122人)
- 主な出資者:
- 守山市1,000万円、守山商工会議所500万円
- 社員数:
- 10名(パートを含む)
- URL:
- (株)みらいもりやま21ホームページ
- http://moriyama21.jp/ 別ウィンドウで開きます
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