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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

協議会訪問

日南市中心市街地活性化協議会

取組のポイント

  1. 行政、商工会議所等関係者の連携
  2. 地域資源の活用
  3. 活性化戦略の明快さ

1.協議会の概要

協議会名:
日南市中心市街地活性化協議会
所在地:
宮崎県日南市
宮崎県日南市
平成21年1月28日
主な構成員:
【都市機能増進】日南まちづくり株式会社
【経済活力向上】日南商工会議所
主な構成員:
日南市油津商店街振興会、NPO法人日南市まちづくり市民協議会、(株)宮崎銀行油津支店、 (株)日南山形屋、(協)日南ショッピングセンター、宮崎交通(株)日南支店、(社)日南青年会議所、日南市 ほか
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日南市中心市街地活性化協議会 別ウィンドウで開きます


2.まちの概要

位置・人口・交通アクセス

日南市は宮崎県の南部に位置し、北は宮崎市、南は串間市、西は三股町及び都城市に隣接し、東は日向灘(日南海岸)を臨んでいます。人口は約56,000人、この10年で1割減少し、高齢化率は30%を超えています。

交通は、宮崎空港からバス・JRで約1時間20分です。近い将来(平成28年度以降)に東九州自動車道の開通が予定されており、近接都市との移動時間短縮によるメリットを活かしていくことが考えられています。

日南市の位置

3.中心市街地の現状

(1)現状と課題

数回の合併により今の市域になった日南市ですが、中央部は特色ある3つの地区に分かれています。北から城下町だった飫肥(おび)地区、中間に市役所等の公的機関と住宅そして郊外型商業施設が集積している吾田(あがた)地区、南に江戸時代からの経済拠点であり、古くからの商店街とマグロやカツオの水揚げで有名な漁港のある油津(あぶらつ)地区となっています。市の中心市街地は南の油津地区ですが、吾田地区に多くの郊外型業施設や住宅が立地するほか、市役所も立地し、人口は油津・飫肥地区の3倍となっています。しかしながら、吾田地区は平成に入ってからの新興地であるため、車の移動には便利な反面、人がまちを歩き、回遊し楽しむという機能を持つには至っていません。一方、江戸時代から商業等の中心で中心市街地である油津地区は、現在、吾田地区や近隣地域の商業に押されて空き店舗が増え、まちの賑わいを喪失しつつりますが、古くから市の経済拠点として確立されていることから、買い物、金融機関、病院、学校といった多くの都市機能を有しており、主だった所へは徒歩30分くらいで回ることのできるコンパクトな都市構造となっています。

 市の観光動向を見ると、年間200万人が飫肥城址と鵜戸(うど)神宮を中心に訪れていますが、宮崎市と鹿児島県との中間に位置するため通過型の観光客が大半で、地元への波及が小さなままになっています。

 これらを背景に、多くの歴史的資産や地域資源を活かし、市の観光資源の中間点に位置する油津地区を起点にして観光産業を活性化させ地域経済にインパクトを与えるとともに高齢社会に対応したコンパクトシティを構築するという取組みが関係者の間で望まれていました。

日南市中心市街地
(2)主な活性化事業

基本計画が平成24年11月に認定され、計画はスタートしたばかりですが、事業は着々と進められています。

(ア)複合機能ビル及び立体駐車場の建設(社会資本整備総合交付金・優良建築物等整備事業)

現在、土地造成が完了しています。事業場所は、国道220号線に面した百貨店の日南山形屋の後ろになります。ここは商店街の入り口であり、東に150mのところに隣接してサピア(商業施設)があり、ちょうど中心市街地の中心に位置します。ここに商業施設・駐車場のほか、住居・クリニックモール・子育て支援施設・住宅型有料老人ホームなど多くの機能を持たせ、まちの魅力向上のための核としての役割が期待されています。

(イ)観光拠点施設整備・歴史的由緒施設開館事業等(社会資本整備総合交付金・都市再生整備計画事業)

油津地区には観光資源として、油津港と江戸時代に飫肥杉の運搬のために開削された「堀川運河」をはじめ多くの歴史的資産があります。

この堀川運河沿いに、団体客も受入れ可能な飲食機能や市域の物産販売機能を有する観光拠点施設を整備するとともに、既存の歴史建築物「油津赤レンガ館」を観光客が回遊する際の休憩・喫茶スペースとして活用を図るほか、「堀川公園(堀川夢ひろば)」には、噴水設備等を設置するなど、充実した水辺の憩い空間をつくり、観光振興につなげます。

堀川運河緑地帯

これら取組みには近い将来予定されている東九州自動車道の開通による危惧への対応という側面もあります。この開通により、消費の市外流出の増加、通過型観光のさらなる加速が懸念されています。  中心市街地活性化(以下「中活」)の取組みは、「まちの顔」を再構築し、中心市街地の魅力を高め、市民はもとより、観光客を含めたまちなかへの交流・滞留人口を増やし、中心市街地の活性化、ひいては市全体の活力を向上させることを大きなねらいとしています。

4.協議会の概要

(1)概要

協議会は商工会議所が中心となり発足したことから、事務局は商工会議所が担っています。商工会議所会頭が協議会会長に就任しています。

日南まちづくり株式会社は、中活事業に関連する事業を中心に、日南市活性化のための活動を推進するため設立されました。現在、資本金は7,500万円弱ですが、市の出資は約6%ですので、7,000万円以上が企業・組合・団体・個人による出資となっています。

この高額な民間主体の出資には、増資の度の商工会議所会頭による各組織等への力のこもった熱い中活事業の必要性の説明が功を奏しているようです。

まちづくり会社の現在の活動は、主として先行実験的なものを含む各種イベント等のソフト事業ですが、今後、優良建築物等整備事業をはじめ、中活に向けた民間のリーダーとして中心的な役割を担うことになっています。

一方、市では、分かりやすい資料を作成し、市議会、商工会議所の常議員会、各自治会等を通じ中活事業の必要性の情報提供に努めるとともに中心市街地のまちづくりや商業活性化の根幹的業務を担う「テナントミックスサポートマネージャー」を平成25年7月に設置予定です。設置期間は中活事業の満了(平成29年3月31日)までで、委託料は月額税別で900,000円という、並々ならぬ意気込みがうかがえる内容です。さらに、中活の取組みを市全体の活性化につなげるため、油津地区のまちづくりは、油津の人間だけで行うのではなく、油津地区を含む市内全域9地区の意識ある若手との連携により進めることが有効であり、このことは市内各地域のまちづくりについても同様であるとの考えから広域的な人材ネットワークの形成を図るため、「日南活性化ネットワーク」を立ち上げました。

このように日南市では、関係機関が一丸となり、各事業が推進されています。

(2)協議会組織

「総会・全体会」の下に「幹事会」が、そして「商業地部会(協議会構成員である商業者)」「暮らし部会」「にぎわい部会」「中心市街地商業活性化懇談会(協議会構成員以外の商業者を含む商業者)」の3部会1懇談会が設置されており、日南まちづくり株式会社には「岩崎3丁目地区優良建築物等整備事業地権者会(複合機能ビル、立体駐車場エリア)」が設けられています。事業がスタートしたばかりですので、まだ全体としてはフル稼働していませんが、「中心市街地商業活性化懇談会」は、平成24年度に10回と活発に開催されています。今後、事業の進展につれ他の部会等も動き始めるスケジュールです。

日南市中心市街地活性化協議会組織図

5.協議会と連携した取組

市に「油津まちづくり会議」という、「協議会」と「油津地区・都市デザイン会議」を構成員とする組織が平成24年8月に設置されました。この会議の目的は、油津地区のまちづくりを円滑にかつ効果的に推進するため、関連する組織・団体等が一堂に会し活性化に向けた戦略を議論していこうというものです。  この会議には「基本方針『五箇条』」が決められています。前半の3条をご紹介します。

「油津まちづくり会議 基本方針『五箇条』」(前半3条部分)

  1. 油津地区は、日南市の「中心市街地」としての役割を担っており、本会議で検討される事項は、油津地区の地域社会、地域経済の向上を目的とすると同時に、日南市全体の地域社会、地域経済の向上に貢献するものでなければならない。
  2. 本会議で検討される事項は、他地域の物まねではなく、「日南市オリジナル」の豊かな暮らしの創造を目指すものでなければならない。その際、本会議で目指す「豊かさ」については、経済的なものに加えて、精神的なもの、文化的なものなども含めた総体的なものとして考えることを基本とする。
  3. 本会議では、今後、中心市街地である油津地区と市内外の各地域がどのように連携していけるのか、その中で、油津地区においてどのような施策・活動を展開することが効果的であるのかについて、検討を行うものとする。

「油津地区・都市デザイン会議」は、堀川運河周辺の歴史的資産を活かしたまちづくりを基軸とし、統一したデザイン等の検討を行うために平成15年に発足した組織で、ここで方針等を議論し、これまで整備事業が展開されてきていました。

6.今後の課題

日南市の中活事業はスタートして間もないですが、各事業は着々と進められています。  現在、第1手となる「グルメモール」の位置について最終検討中で、この見極めが目下の課題の一つです。これをスタートに事業の核である複合機能ビルと立体駐車場の建設となるので慎重に協議が進められています。

いずれにしても、具体的な事業の着手・進展とリンクして大きな目標としている「市全体の活性化」に向け、組織をどのように動かし機能を発揮させていくか、が課題となります。これらが有機的に機能してこそ日南市の魅力拠点となる中心市街地が実現し、それにより都市の魅力が高まり、衰退を抑止するとともに、各地域では特性を活かしたまちづくりが進められていきます。  中活計画について協議会の清水満雄会長(日南商工会議所会頭)は、次のように語っています。

「2年前に最初の計画をつくり、昨年(平成24年)11月に認定を受けることができました。この間市では計画を10回以上改訂し、これで最後と思いながら、練りに練ってつくった基本計画です。これが実施されないと、日南市は個性が薄れ続け魅力のない都市となり、一方人口減少と高齢化は進行し大変な状況になってしまいます。市民を含めた日南市の総力をあげて取組み、10年、20年、50年後にも元気な日南市であることを目指したいと思います。」

協議会関係者の皆さん

7.取材を終えて

日南市では、中心市街地活性化の必要性を「中心市街地の油津は歴史を築いてきた日南市の顔であり」「中心市街地を活性化することは、市全体の活力を向上させることにつながる。」としています。この明快な方向性による関係者一丸の取組は、取材を通じて肌で感じることができました。

日南市の事業は始まったばかりです。しかし核となる施設整備工事は既にスタートし、今後の展開が楽しみです。この素早い取組みのスタートは、ひとえに関係者の方々に目的が共有化され、一つの方向に力を合わせていることによるのではないか、と思いました。

取材:平成25年4月