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伊丹市中心市街地活性化協議会の取組
~まちなか広場を活用した活性化の取組について~
取組のポイント
- 官民一体で築きあげた“まちなか広場”
- 地域を巻き込むネットワーク構築
- 仕掛け人たるキーマンの存在
今回の伊丹市中心市街地活性化協議会(以下「協議会」)への訪問は、官民が一体となり築きあげた“まちなか広場”を活用し、様々な取組を講じるキーマンにお話しをお聴きし、今後、中心市街地の活性化によりまちづくりを進めていこうと考えている地域の皆様に参考としていただくことを狙いに取材しました。
まちの活性化の象徴“三軒寺前広場”
「まちなか広場賞」を受賞した三軒寺前広場は、伊丹市中心市街地のほぼ中央に位置し、JR伊丹駅、阪急伊丹駅の両主要駅からいずれも徒歩5分以内に位置する広場である。この三軒寺前広場は中心市街地のさらに中心の、東西と南北に連なる道路にクロスする位置で、「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー2016」大賞にも選ばれた伊丹市立図書館「ことば蔵」などと共に年間100日以上の催しが活発に行われる、まちの活性化に大きく寄与する場所となっている。また全国でも有名な「伊丹まちなかバル」食べ飲み歩きイベントの本部機能としても活用されている。
このように立地上の利便性を最大限に生かして、多彩な催しが行われている背景には、広場設えの経緯に広場を使用する多くの人の意見が反映されたこと、その要望に行政が応え、催しを行いやすい設えとしてきたという官民一体となった協働の成果があげられる。
昭和63年に「にぎわいがあり、市民が集う広場」というコンセプトで朝市やのみの市、カフェテリアなどを行う場所と位置付けた。以降、市や商店街、市民団体などが多くの催しを実施してきた。その中、さらなる活性化を図るにあたり、さらにイベント広場として利用がしやすい設えにして欲しい旨の要望が挙がってきた。そこで平成20年に認定を受けた第一期中心市街地活性化基本計画を策定するタイミングにおいて、三軒寺前広場についてもさらなる活用を目指し、中心市街地活性化協議会などで意見交換が行われ、傾斜がきつい、照明が暗い、電気容量が少ないなどの意見が出された。これらを行政が改善することで使い勝手の良い広場となった。
日本最大級の伊丹まちなかバル
年間100以上の催しが行われる三軒寺前広場の事例として、「伊丹まちなかバル」を紹介したい。
日本最大級である伊丹まちなかバルも認知されるまでには大変な努力があった。
平成14年に大型商業施設がオープンするという外部環境の大きな変化に際し、伊丹市役所に勤める伊丹まちなかバルの仕掛け人、綾野昌幸氏が函館市を参考に構想し伊丹まちなかバル開催を伊丹市中心市街地活性化協議会において提案したことが始まりとなる。綾野氏の話では、店舗の誘致に大変ご苦労されたとのこと。当時は食べ飲み歩きイベントに対しなかなか理解が得られず、一軒一軒お店を訪問し口説きまわったとのこと。
契機は伊丹商店連合会の荒木会長に、一過性ではなく継続性を訴えた点を共感され、結果として1回目から50店舗もの参加店舗数を実現した。その後魅力的な店舗の参加が増え、中小機構が主催する「近畿中心市街地活性化ネットワーク研究会」において他協議会にも広まった経緯がある。
取材当日に行われた「第15回伊丹まちなかバル」では約100店舗ものお店が参画した。 来場する方は、伊丹市民はもちろん、近隣の市区町村から来られる方も多い。参加の仕組みは予め発売されているチケット(800円×5枚=4,000円、前売りは3,500円となっている。)を購入し、参画する店舗の特別メニューを購入するというもので、いずれもお得な特別メニューとなっている。参画する店舗のメリットとしては新規顧客に訪れてお店を知ってもらうこと、参加者のメリットはバル開催時のみ提供される特別メニューを安く飲食できる点にある。また、まちなかバルを通して様々な交流も行われることも大きな特長である。
まちなかバルを開催するにあたって特に苦労した点は、特に人気店の特別メニューなどが早い段階で売り切れになってしまうことが多く、それらの情報発信がタイムリーにできないことで参加者の不満につながる点とのことであった。対策としては、特別メニューの変更を認めること、各店舗の発券情報をツイッターなどSNSでタイムリーに発信すること、などを行った。
今の課題としては、他地域でも増えたまちなかバルにおいての他との差別化、飲食店以外の店舗が参画できる仕組みづくり、などである。
同時開催された「第12回近畿バルサミット」は伊丹まちなかバルに刺激を受けた近畿地区のバル開催地が参集し、互いの活動報告を行うといったコミュニティの場であり、綾野氏が主催し伊丹市のノウハウを惜しげもなく共有するといった活動もされている。 参加地域は奈良県大和郡山、王寺、大阪府では北船場、吹田、大阪狭山、八尾、兵庫県は芦屋、西宮、三田、宝塚、川西、神戸、伊丹といった地区が参加され、他にも愛知県や三重県からも参加があった。
取材を終えて
伊丹市が広場や図書館、まちなかバルなど中心市街地活性化のための成功事例を創出できるのは、公務員でありながらまちの活性化のために土日を厭わず奔走する綾野氏に依るところが大きいと考える。綾野氏の人柄や駆動力に人が導かれ、近隣市区町村にまでつながるネットワークが構築されたものと思われる。今後においても各施策のさらなる充実拡大に加え、まちの活性化に向けた新たな施策を期待したい。
伊丹市の概要
日本酒発祥の地と言われる伊丹市は兵庫県南東部に位置する人口20万人のベットタウンである。大阪市から約10kmという立地において、JR福知山線と阪急伊丹線が乗り入れる点また伊丹空港と呼ばれる大阪国際空港がある点など利便性の良い街である。
協議会の概要
- 協議会名:
- 伊丹市中心市街地活性化協議会
- 所在地:
- 兵庫県伊丹市宮ノ前2-2-2
- 設立日:
- 2007年2月27日
- 法定組織者:
- 【都市機能増進】 伊丹都市開発株式会社
【経済活力向上】 伊丹商工会議所
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