民間会社が展開する商店街再生プロジェクトとは(新潟市中央区沼垂)
シャッター街と化していた長屋をすべて買い取り活性化へ
3年で3店舗が立て続けに開業し、順調に空き店舗が解消するかに見えましたが、当時、長屋式商店街を所有していた協同組合の規約が非会員の出店枠を制限していたため、出店に歯止めがかかってしまいます。活性化を進めたい田村氏は協同組合側と交渉を重ねます。協同組合側も組合員の高齢化により、空き店舗の維持管理が困難となる現状の中で、田村氏が導き出した結論は、田村氏が長屋式の商店街をすべて買い取るというものでした。田村氏は長屋式商店街を統一したコンセプトのもとリノベーションを進め、同時に同地域の活性化を目標に掲げ、姉の高岡はつえ氏と共にテラスオフィスを2014年に設立します。商店街の名称を沼垂テラス商店街(以下、沼垂テラス)とし、「歴史・文化・景観を活かして、ここでしか出会えないモノ・ヒト・空間を実現する『古くて、新しい沼垂』」という新しいコンセプトの下、長屋式商店街は再スタートを切りました。
衰退したまちを再生・復活させ、そこに新しい商店街を作るという事業は、非常に難しいことです。しかし、田村氏自らが長屋式商店街に出店して感じた、「沼垂のもつノスタルジックな風景や建物の魅力はここでしか味わえない」という確信、そして何よりこの唯一無二の場所に若い力、エネルギーを注ぎこみ沼垂の活性化を果たすというテラスオフィスの熱意が起業への決意につながったのです。
予想を上回る入居率を達成した要因とは
テラスオフィスの発足当時、同社は、沼垂テラスの初年度入居率を40~70パーセントと見積っていました。しかし、蓋を開けてみると1年間ですべての入居者が決まってしまうという好調な滑り出しとなりました。その要因は、テラスオフィスや、沼垂テラスの出店者などの人脈にあると言えます。具体的には、出店者が他の創業希望者に口コミで広めたり、テラスオフィスが沼垂テラスの雰囲気にマッチしそうな個店に声をかけ出店を促すなどです。
また、沼垂テラスで行うイベントもその要因として挙げられます。具体的には、沼垂テラスでは、朝市、冬市、夜市など定期的にイベントを開催しています。朝市では、沼垂テラス商店街の入居者以外も市場通りに出店ができます。それをきっかけに沼垂テラス商店街の雰囲気や入居者とのつながりに共感した方が入居するケースです。
朝市などイベントのきっかけは、テラスオフィスが開業前に長屋式商店街に出店した、「Ruruck Kitchen(ルルックキッチン)」、「ISANA(イサナ)」、「青人窯(あおとがま)」の3店が出店し、各店の周年記念として2012年から年に1回開催したイベントでした。テラスオフィスが開業し、沼垂テラスとして再スタートを切ってからは現行の朝市・冬市・夜市として発展しました。
初年度はテラスオフィスがイベントを管理していましたが、出店希望者や集客が拡大してからは、沼垂テラス出店者の有志が朝市実行委員会を立ち上げ自主的に運営にあたっています。自身の経営がある中で実行委員として時間を割き、沼垂テラス活性化のためにイベント活動も行っているため、他の個店も協力的にイベント参加しています。
朝市 4月から11月までの第一日曜日に開催(7月のみ第二日曜日)
冬市 12月から3月までの第一日曜日に開催
夜市 年間3回程度、夕方から夜にかけて開催