(第1回)高山市が展開するインバウンド対策について(岐阜県高山市)
これらの取り組みを通し、平成22年には187,000人まで外国人観光客の宿泊数を伸ばしました。しかし、平成23年の東日本大震災がきっかけで95,000人にまで外国人観光客の宿泊数が落ち込みました。ここで観光客回復の一助となったのが、台湾やタイといった高山市がプロモーションを強化してきた国々の存在でした。高山市がメインターゲットとした国々の航空会社にとって、高山市への観光客減少は輸送客数の減少を意味し、痛手となりました。そこで、中華航空が台湾の旅行エージェントやルポライターなどに50名に声をかけ、彼らを高山祭へ誘致したのです。それが、高山観光の安全・安心のアピールとなり、台湾で高山観光が広くアピールされました。時を同じくして、タイ航空でも同様の動きが見られ、観光客数は回復に転じました。
高山市のプロモーション策だけでなく、高山を訪れた観光客の満足度が高いことも要因となり、台湾やタイの航空会社が動いたと言えます。プロモーション策だけでなく受け入れ体制も高いレベルにあるという高山の観光施策の深さを感じさせる事象と言えます。(高山市の観光客受け入れ策については第二回で記載します。)
高山祭とは、毎年4月と10月に行われる日枝神社と櫻山八幡宮の例祭の総称です。平成28年12月に「山・鉾・屋台行事」33件がユネスコ無形文化遺産に登録されましたが、高山祭もその一つに数えられています。
東日本大震災時には、祭りの自粛も検討されましたが、祭りで活性化を促進し、その力を持って東北を支援する形で意見がまとまりました。
以上の取り組みから、平成23年の東日本大震災時には、約95,000人まで落ち込んだ外国人観光客の宿泊数が、平成29年には約513,000人まで伸び、東日本大震災前の数値を回復するだけでなく、ここ6年は過去最高値を年々更新する形となっています。プロモーション策や、後述するニーズ収集・分析、観光客受け入れ態勢の強化などの様々な観光政策の相乗効果があらわれた結果と言えます。