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中心市街地活性化協議会支援センター

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『第2回東北地域中心市街地および商店街関連セミナー』が開催されました。

 2022年3月17日、宮城県仙台市で『第2回東北地域中心市街地および商店街関連セミナー』(東北経済産業局・中小機構共催 以下、セミナー) が行われました。
 講演やグループ討議、東北経済産業局等からの情報提供などの内容で行われたセミナーの様子をレポートします。

セミナーの趣旨・目的について

 セミナーは、東北地域において中心市街地や商店街活性化に取り組む各地域が効果的、効率的、持続可能なまちづくりを進めていくためのきっかけとして開催されました。
 まちづくり会社、自治体や支援機関の担当者、まちづくりコーディネーター等のネットワークや連携を強化し、課題やその解決のためのノウハウの共有と向上を図ることが目的です。特に、今後商店街及び中心市街地の振興に関与する若手人材の育成・スキルアップをテーマとしています。

第2回東北地域中心市街地および商店街関連セミナー

目次

■パネルディスカッション『楽市白河W字回復の歩み』

■情報提供

■グループ討議


パネルディスカッション『楽市白河W字回復の歩み』

 福島県白河市のまちづくり会社、株式会社楽市白河 常勤取締役の古川直文氏より、「楽市白河W字回復の歩み」と題して講演いただきました。
 まちづくり会社のタイプは、行政主導で立ち上げたまちづくり会社、商工会議所主導型、民間主導型(民間出資)、と大きく分けて3つあります。楽市白河は民間主導で設立され、TMOに認定されたまちづくり会社です。

 今年度(2022年3月現在) は設立以来最高の売上高になる楽市白河も、過去2度の会社経営危機がありました。それらをどう乗り越えたかについてお話いただいた後、ポイントごとにファシリテーターから質問、パネリストのコメント、という形で進められました。

1. まちづくり会社の設立経緯、1度目の危機の発生原因と回復の歩み

2. 2度目の危機の発生原因と回復の歩み

3. 会社の組織と役割、事業改善の取組と改善のポイント

4. 新規事業の立上げと進め方、未来への投資(地域の学生との連携)

※各目次をクリックすると、それぞれの記事にジャンプします。

講演者
株式会社楽市白河(福島県白河市) 常勤取締役 古川直文氏
ファシリテーター
山形まちづくり株式会社(山形県山形市) 常務取締役 下田孝志氏
パネリスト
中心市街地活性化協議会支援センター 伊藤大海氏
(2022年3月時点)
  • 古川直文氏
    講演者
    古川直文氏
  • 下田孝志氏
    ファシリテーター
    下田孝志氏
  • 伊藤大海氏
    パネリスト
    伊藤大海氏

1. まちづくり会社の設立経緯、1度目の危機の発生原因と回復の歩み

 古川氏はもともと商工会議所青年部に所属し、まちを活性化するため活動していました。当時商店街活性化から中心市街地活性化に考え方が変わる中、1998年に中心市街地活性化法が制定されました。滋賀県長浜市の株式会社黒壁(民間出資のまちづくり会社)の存在に感銘を受け、2000年(平成12年)に楽市白河を設立しました。

<1度目の危機>
 まちづくり組織を先に立ち上げることを優先して何の事業をやるか決まっていませんでした。行政の委託事業に頼っていた結果、本来的なまちづくりから外れた事業を行うことになり、行政の信頼を失ってしまいます。事務員を解雇し、資本金を食いつぶす状況が続き、会社は休眠状態となりました。

<1度目の危機:回復のきっかけ>
 改正中心市街地活性化法が施行され、中心市街地活性化協議会の設立をきっかけに民間主導のハードを実施していくことになり、それまでの流れが変わりました。
 当時、白河市の商工観光課に在籍していた農林水産省の若手キャリア職員が全体を、商工会議所の若手担当者がソフト事業を、楽市白河は役員全員で民間ハード事業を取りまとめ、外部のコンサルタント等を入れることなく、自分達のチームワークで基本計画を策定して国に申請しました。ともに1か月間の国の厳しいヒアリングを乗り越えたことで、自治体、商工会議所、民間の三者に一体感が生まれ、お互いへの信頼関係が出来ました。
 2009年(平成21年)3月に計画は認定され、楽市白河がさまざまな事業を展開することで会社も動き出し、白河市の信頼も回復します。

  • TMO時代の事業内容
  • 中心市街地活性化基本計画策定

 1期計画では下図にあるような事業を行っています。商業施設『中町小路楽蔵(らくら)』を建設するまでのハード事業においては、借り入れでは全取締役の個人保証を行うほか、増資にも踏み切りました。

基本計画: 主な事業

2009年9月: JR白河駅「えきかふぇshirakawa」オープン
2010年1月: チャレンジショップ2店舗オープン
2011年3月: 資本金2,700万円→5,400万円に増資
2011年4月: 健康カラオケ、健康麻雀、アンテナショップ3店舗オープン
2011年6月: 「中町小路楽蔵」オープン
2012年4月: マイタウン白河 指定管理者受託
2013年3月: 街なかあったかサービス供給事業受託
2013年8月: 街なか居住事業「レジデンス楽市Ⅰ」竣工

 現在では楽市白河の主な収益源でもあるマンション(レジデンス楽市1)ですが、当初は楽市白河が建てる予定はなく、基本計画で事業会社を立ち上げて建築する予定でした。しかし、白河市旧市街地の景観条例に高さ制限があり高層階のマンションを立てることができなかったため、事業実施を予定していた建築事業者が手を引いてしまうこととなり、結果として楽市白河が建築することになりました。
 このとき融資先の銀行からは、自己負担分はまちづくり会社取締役の個人保証とするよう求められました。2億5,000万の自己負担は非常に大きく、取締役会も紛糾しましたが、副市長や地元信金理事長の協力があり、個人担保なしの建物の担保になり事業計画だけでマンションを建てることができました。現在は入居率100%と、まちづくり会社として経営基盤を確立することができています。

 ここまでの内容を受けて、パネリストに次の質問を行いました。

<質問>ファシリテーター → パネリスト
  • 全国のまちづくり会社はどのような設立状況、経営状況にありますか?
  • 他の自治体において、行政や会議所とまちづくり会社の関係は実際どのような感じですか?
<意見>パネリスト → ファシリテーター
  • まちづくり会社への公共団体の出資比率からすると、出資比率30%未満が4割、50%未満は半分ぐらいの構成になっています。まちづくり会社の事業は通常の民間企業と違い、収益性だけでなく公益性がより求められることから、収益が安定するまでの期間が長くなりがちであり、その「助走期間」に行政と地域がしっかりサポートできるかが一つのポイントとなります。
  • 白河市は初期の段階から、行政と商工会議所とまちづくり会社で課題や事業の取組みについて話し合う体制が出来ている点が特徴的。タウンマネジメント会議を毎週実施し、必ず実務者レベルで繋がっています。まちづくり会社の思いだけでは進まなかった部分を行政・商工会議所でサポートできた点も、全国の傾向から見ると、楽市白河回復のポイントです。

2. 2度目の危機の発生原因と回復の歩み

 第1期計画前年の年にあたる2008年の年間売上は142,000円だったところ、5年後には売上1億を超えるまで伸びました。しかし、その2年後に順調だった売上を3,500万も落としてしまう2度目の経営危機となります。

<2度目の危機について>
①健康弁当事業の赤字
 中心市街地エリアは高齢化率が高く、高齢者世帯への弁当配達の需要があったため、社会貢献事業として補助金を活用して各家庭にお弁当を個別配達する「健康弁当事業」を開始しました。しかし、パート6~7人を雇用して製造・配達を行った結果、1日40食程度提供予定の仕入れ食材にロスが発生しました。また、行政からの出向者を責任者として運営を任せ、会社として管理しなかった結果、緊急雇用の補助金で成り立っていた事業は補助が終了した途端赤字1,000万円となってしまいました。

②商業施設『楽蔵』で賃料未払い多発
 元々新白河に商業地がある中、空き店舗が多い中心市街地に新規出店しようとする人はいなかったため、一本釣りでテナントに入ってもらった経緯がありました。結果、経営がうまくいかないテナントは経営不振の原因を楽市白河に転嫁し、テナントが連帯して全員が家賃を滞納する事態となりました。

③えきかふぇの経営不振
 まちづくり会社がカフェを作る例は多いですが、直営で営業するのはビジネスモデルとして難しく、黒字にならない状況が続いています。

<2度目の危機:回復のための取組み>
 健康弁当事業は、まず「製造」をやめて、お弁当は外部から仕入れることになりました。また、はじめからやり直すため、パート社員全員の契約を終了し、新たに配達のパート社員を採用しました。また、事業縮小に際して金融機関から借り入れを行い、白河市に対して配達助成金の値上げを要望する等の工夫により、経営を改善しました。結果、売上は半減しても利益は出るようになり、2021年度(令和3年度)は黒字となりました。
 商業施設の家賃不払いについては、最終的には弁護士を入れて家賃不払いテナントを一掃、またえきかふぇは支援機関のアドバイス等を活用して経営改善をしています。

  • 2度目の経営危機の原因
  • 健康弁当の改善案
<質問>ファシリテーター → パネリスト
  • まちづくり会社では、公益性の観点からの必要に駆られて、調査や研究をしないまま新しい事業を行う例が見られます。全国のまちづくり会社が陥りやすい失敗パターンがあれば教えてください。
<意見>パネリスト → ファシリテーター
  • 地域貢献的な意味合いで、何かやらなければと慈善事業的・場当たり的に事業に手を出して失敗するパターンや、補助金依存の事業実施などが失敗パターンとして挙げられます。まちづくり会社も「企業」であれば、収支を考えた持続的な経営が必要ですが、事業計画がしっかりしていない、中期的シナリオがないといったケースが見られます。事業をマネジメントする人材がいるかどうかも成否を分けるポイントです。

3. 会社の組織と役割、事業改善の取組と改善のポイント

 2期計画、3期計画では、それまで実施した事業を継続実施し施設運営を行うほか、2棟目のマンションを建設しました。会社の組織と役割、事業改善の取り組みは次のように進めています。

会社の意思決定についてのポイント
  • 取締役はすべて民間人に変更、全員責任の取れる取締役にする。
  • 地元で名前の通った方から直接行動・判断できる社長に変更。
  • 現場決裁を社長と常勤取締役に一任し、スピード対応。

 会社設立時は市や商工会議所からの出向者が数名取締役になっていましたが、銀行からの借り入れ時に個人保証が必要なため、行政等から出向している取締役は全員退任し、取締役は全員民間人としました。
 また、スピードある対応を行うため、基本的な決裁は社長と常勤取締役(古川氏)が行い、重要な事項だけ取締役会に諮っています。

  • 楽市白河の組織図
  • 現場スタッフの基本な役割

 会社のスタッフの役割は上図の通りです。常勤取締役は新規事業企画・経営管理・労務管理、課長は担当事業企画と常勤取締役補佐、社員は2か所以上の事業責任者、契約社員はオールマイティに、パートアルバイトも基本2か所以上担当できる、というように人材を育成しています。

<事業改善するための取組み>
 問題が起きた時や改善の際には、深く物事を考えて仮説を立てることで、改善のアイデアや新たな連携に繋がっています。悩みぬいた先にひらめきが訪れることもありますが、先述のように解雇といった痛みの覚悟も必要である、と古川氏は述べました。改善のアイデアは役員に相談するほか、中小機構の支援制度や県のよろず支援拠点を活用する等、各分野のスペシャリストにアドバイスを貰っています。
 また、「健康弁当事業」の製造を福祉施設に委託したり、楽市白河で管理している施設の清掃を福祉施設に委託する等の連携も生まれています。

<質問>ファシリテーター → パネリスト
  • 自治体等からの充て職を辞めさせることができないと考えるまちづくり会社は多いです。多くのまちづくり会社が民間寄りでない、新しい事業を起こせないという理由のひとつではないかと思います。会社の意思決定や地域における合意形成、スタッフの育成等について、楽市白河と他のまちづくり会社との違いはどこにありますか?
<意見>パネリスト → ファシリテーター
  • 楽市白河では古川氏が常勤取締役の立場でしっかり事業に関わっているように、常時現場を取り仕切れる人材(マネージャー)の有無は、事業を起こしたり、意思決定のスピードにおいて非常に大きな違いになります。また、マネージャーにスタッフや予算、権限がなければ人材が優秀でも動けません。それらをしっかり与えて動けるようにしているかが事業成功のための大きなポイントです。

4. 新規事業の立上げと進め方、未来への投資(地域の学生との連携)

 楽市白河の場合、新規事業は会議を開いて検討しているわけではなく、少数スタッフとの雑談から生まれます。調べてみて、可能性があるものは予算を確保して実行に移しています。その他の新規事業例は市からの委託、予算が取れたことで始めた事業が思った以上に成功した例、社長の了解を取って古川氏が独断で動いた例などがあります。
小さい事業でも成功体験を積み重ねることで、経験から取り組み方や事業の勘を養うことができる、と古川氏は語りました。

新規事業①LINE公式アカウントから広がる事業展開

 LINE公式アカウント※として「まちなび白河」立ち上げ、登録店舗毎にクーポン券を発行できる仕組みを構築しました。市政情報やイベント情報、店舗情報以外にも様々な情報発信を行っています。
新型コロナウイルス感染症の影響で疲弊している商店等で使用できるクーポンを消費者に付与し、需要を喚起することで地域経済を活性化させることを目的として2020年(令和2年)10月に開始。当初の目標登録者数3,000人のところ、令和4年3月現在14,030人と、白河市の人口約23%が登録する地域の情報配信媒体に成長しています。
 福島県内には地方紙が2つあり、白河地域の2紙合計の購読者数は約15,000世帯だということですが、ほぼ同数の会員数を保有していることになります。今後はこの会員数を活用し、新たな情報発信媒体として、各企業等と連携しながら情報配信事業を行っていく計画です。

※LINE公式アカウント
LINE上で企業や店舗がアカウントを作成し、友達として登録されているユーザーに様々な情報を届けることができるサービスです。

新規事業②未来への投資/本町北裏エリアマネジメント事業

 中小機構のプロジェクト型支援(現:パッケージ型支援)により、中心市街地活性化エリアの中で絞り込んだエリア(本町北裏)において、白河版エリアマネジメントに向けた取組みを進めています。
 当初、様々な年齢層の方を対象に中小機構によるヒアリング調査を実施した結果、第三者だからこそ言える率直な意見を得られました。また、若い人達がまちなかに関心を持っていることが分かり、「白河未来研究所」という団体を立ち上げる等、これまでまちづくりに関わりのなかった若い人達等との新たな連携にも繋がっています。2021年度は未来地図の作成や将来ビジョンの作成等を行いました。
 2022年度は工学部大学生等と共同で、エリア内の空き店舗をリノベーションする計画を進めています。

  • まちなび白河
    まちなび白河
  • エリアマネジメント事業
    エリアマネジメント事業

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第1回 別ウィンドウで開きます

第2回 別ウィンドウで開きます

第3回 別ウィンドウで開きます

 今後、居住人口を増加させるためにも、土地を確保できたらマンションの3棟目4棟目を考えていきたい、ということです。

<白河市のまちづくり推進体制>
 楽市白河はまちづくり会社ですが、イベント事業は行わず、デベロッパー的な機能を担っています。白河市が公共事業、商工会議所がソフト事業と、お互いに共通認識を持ってまちの活性化に向けて動いているのが白河市の良いところ、と古川氏はまとめました。

白河市の街づくりの推進体制
<質問>ファシリテーター → パネリスト
  • エリアマネジメントの考え方は今後多くの地域で導入していく必要のある考え方だと思いますが、エリアマネジメントの重要性や若者の場づくり、外部人材の活用等についてお話を伺います。
<意見>パネリスト → ファシリテーター
  • まちづくり会社の重要な役割は、事業実施だけでなく「場を作る」こともあります。今後まちの維持や発展において、若者が感じ考えていることは重要です。まちづくり会社だけではできないこと、できないものの見方があり、多様な価値観や活動を取り入れるためには、「場」をつくり、人材を発掘して巻き込んでいく必要があります。
  • まちづくりの現場では若い学生を「労働力」としか見ていない地域や大人が少なからずいますが、それでは誰も定着しないし参加しようと思いません。若者や外部人材がまちの中でやりたいことや実現したいアイデアを形にする支援をいかに地域や大人たちが出来るかが、まちに若者や外部の人材を惹きつけるポイントです。
  • 楽市白河は、若者が持つまちへの関心にいち早く気づき一緒に未来研究所を立ち上げるなど、若者の生の声を聴ける・活動を後押しできる場づくりを実現し、エリアの将来像を共有しながら外部人材をうまく引き込んでいます。

情報提供

パネルディスカッション終了後は、以下の情報提供、経済産業省施策紹介がありました。

●地域商業機能複合化推進事業(秋田県能代市)の進捗について
 東北経済産業局産業部 商業・流通サービス産業課 課長補佐 小川竜二郎氏

●ユニバーサル商店街の取組について
 豊田通称株式会社営業開発部空港事業グループ 課長補 黒田和彦氏

●商店街等と共同して取り組む、コミュニティの形成に資するシステムについて
 ・株式会社GreatValue 代表取締役 廣澤孝之氏
 ・凸版印刷株式会社


グループ討議

 先に行われたパネルディスカッションで講演を務めた株式会社楽市白河の常勤取締役 古川直文氏がBグループリーダーに、ファシリテーターを務めた山形まちづくり株式会社の常務取締役 下田孝志氏がDグループリーダーとなり進行しました。

【グループB】

テーマ
まちづくり会社の運営の仕方
リーダー
古川直文氏(株式会社楽市白河/福島県白河市)
メンバー
商店街等の振興に密接に関わる行政職・支援機関等の方等。
概要
中小機構の調査からまちづくり会社の現状を共有し、まちづくり会社の運営について議論しました。意思決定の速さに影響を受けることもありますが、金融機関の信頼を得るためには行政出資も受け入れることが望ましいという考え方もありました。また、事業運営の改善について、それぞれの地域の環境に応じた事例を共有しました。若い世代とコミュニケーションし、意欲のある人が集まれるプラットフォームを作ることで人材の巻き込みを図るとともに、会社組織としても持続可能な運営を行うことが重要です。

 まず、中小機構がまちづくり会社に対して行った調査結果について説明がありました。調査結果や前半の古川氏の講演を踏まえた質疑応答、参加者の自治体におけるまちづくり現場の課題について、まちづくり会社の意義や資本構成、事業運営の改善方法や若者のまちづくり参画についてフリーディスカッションを行いました。

 まちづくり会社への行政の出資比率及び行政から出向している役員と事業スピードの関連について、民間出身者が多い組織の方が意思決定スピードは速いということは共通意見となりました。しかし、行政出資があるほうが地域や金融機関からの信用が得られやすいため、行政出資も必要だという意見が上がりました。
事業運営の改善については地域の環境によって最適な事業活動の方針が変わるため、参加者同士で活発な意見交換がありました。例えば福島県白河市においては気温が低いため、まちなかでの物販は需要がなく、商業施設を全て飲食店にすることで改善したという事例があります。
 若者のまちづくり参画ついては、白河市で進めているエリアマネジメントの取組み、意欲のある人が集まれるプラットフォーム作り、大学生が参画しているリノベーション事業を進めてきた中での失敗点や今後の方向性等を参加者で共有しました。また、まちづくり人材の巻き込みについて、「50代以上の人材は意欲的にまちづくりに取り組むが、40代以下の人材はそうではない」といった意見がある一方で、中心市街地の外からリノベーションに興味のある大学生がまちづくりの取り組みに参画したいと希望する事例等、各地の参加者から意見や事例の紹介がありました。

 最後にまちづくり会社の運営として、楽市白河の事例説明がありました。楽市白河ではスタッフ間における情報共有のためのミーティング、スタッフとの面談や雑談等コミュニケーションを重要視しています。リスクや失敗を恐れないチャレンジできる環境作り、スタッフのモチベーション向上施策の事例紹介や、モルック(フィンランドの投擲競技)を使った企画立案等の話題を通して、参加者は強い組織やリーダー、人事労務について考えました。

(グループB 討議の様子)

【グループD】

テーマ
民間100%出資の持続的なまちづくり会社
リーダー
下田孝志氏(山形まちづくり株式会社/山形県山形市)
メンバー
商店街等の振興に密接に関わる行政職・支援機関等の方等。
概要
行政からの出資や補助金、指定管理事業のみを頼りに存続しているまちづくり会社が多い中、行政出資や行政からの指定管理業務がなくても持続的に経営できるまちづくり会社となることも今後は求められます。商店街組織の在り方をふまえたまちづくり会社の在り方や、望ましい取締役の要件、遊休不動産の再生をはじめとした中心市街地活性化のための事業について考えました。

 山形まちづくり株式会社は、自治体出資のない100%民間出資のまちづくり会社です。下田氏から民間まちづくり会社として自己資金で行っている事業について説明があり、その後収益事業化のポイントや行政との連携の在り方等について討議しました。

 まちづくり会社の在り方として、商店街組織がやるべき事業と、まちづくり会社のやるべき事業は分けるべきだという意見があがりました。商店街組織と異なり、事業活動範囲に縛りのないまちづくり会社は商店街の域を超えた中心市街地活性化に取り組むべきという考えです。

 まちづくり会社の最も重要な使命は遊休不動産の活性化にあるという議題になりました。まずは空き物件の状況や不動産オーナー側の事情をきちんと把握することが重要であること、物件見学ツアーや学生を交えたワークショップ等で若い人の考えに触れる機会を作り、「こんな使い方ができるんだ」というようにオーナーの意識改革もしていく必要があります。
 それに関連し、まちづくり会社の取締役として望ましい要件等についてのテーマになりました。地域のために新しい事業を起こしていく覚悟があることは当然のこと、財務や数値計画の管理ができる経営の専門家、不動産リーシングなど不動産取引の専門家、まちの住民との合意形成が得意なまちの中心的人物が取締役のメンバーいると事業を円滑に進める上で有利であること、可能であれば取締役として法的なトラブルに対処できる法律の専門家が欲しいという意見がありました。

 また、事業計画や会社としてのシナリオが明確でないことはまちづくり会社共通の課題です。事業の収益化において重要なポイントとしては、社長の意思決定は勿論のこと、会社のビジョンや事業計画や数値目標が明確であること、PDCAサイクルで事業を進めることが挙げられました。そして、行政の指定管理業務に頼らない事業活動のアイデア出しについて議論しました。若い人材の発想が面白い、意外とバブルを経験した60,70代の意見が大胆で面白い、まちづくりを専門に勉強した学生の意見は現実的すぎる面もある、最初にまちづくり会社の取締役が意見を出すべき、などアイデア出しについて様々な意見や参加者の実体験に基づいた情報を共有しました。

 最後に、行政との連携の在り方については、資本関係がなくても地域課題を共に検討することから行政との連携に繋がっていくではないか。パートナーとして協働して事業に取り組み、利益を地域に投資し、雇用を創出することで地域に必要とされる存在になり、結果行政にも信頼されていくのではないかという意見がありました。

(グループD 討議の様子)