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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

(第1回)エリアマネジメントに向けた取り組み(福島県白河市)
 まちづくりプレイヤーが活躍できるプラットフォーム確立
~土台となる形と機能づくり/リーディング事業の実施~

 多くの地域でまちづくりへの取り組みが進められていますが、単独で事業が行われることも多く、エリア(地域)としての新しい魅力や楽しさなどを創造・再生するまでには至っていない、それゆえ地域経済についても効果が上がりづらい地域が多いのが実状ではないでしょうか。
 白河市の中心市街地活性化協議会は、行政とまちづくり会社が連携しあい、民間事業者を巻き込みつつ事業に取り組んでいるのが特徴です。
 今回、白河市における中心市街地内でさらにエリアを絞り込んだ白河市版「エリアマネジメント」に向けた取り組みについて、3回に分けてご紹介します。

第1回目:エリアマネジメントに向けた取り組みのきっかけ、白河市の中活における課題等について
第2回目:「エリアの魅力と発掘」「可能性の発見」を狙いとして、地域の人やまちづくりに興味のある学生等が参加するフィールドワーク実施
第3回目:「妄想地図」を作成するワークショップ実施、今後の展開について

計画3期目の取り組み

 白河市は人口58,991人(2021年7月現在))、認定中心市街地活性化基本計画は2期を終了し、市の任意計画として3期計画に入っています。
 2期10年にわたる取り組みの成果を踏まえつつ、その効果を中心市街地全体へ波及させていくことや空き家・空き店舗の増加への対策など、継続して取り組んでいます。

 基本計画にある「リノベーション事業」は白河市とまちづくり会社である株式会社楽市白河の官民協働で進められています。行政が環境面で取り組みを後押しし、楽市白河が具体的な事業として進捗していく役割分担です。その中で、いかにより効果的な事業として展開していけるかが課題でした。

第3期基本計画の考え方
(「第3期中心市街地活性化基本計画の考え方」 第3期白河市中心市街地活性化基本計画(概要版)より)

マネジメントエリアの設定、エリアの状況

 中小機構の巡回支援を受けた関係者会議の中で「広い中心市街地内で事業を分散するよりも、エリアを絞り込んでより魅力化していくほうが、効果的な投資ではないか」というコンセンサスが得られました。あるエリアに事業を集中し、魅力的なエリアを具体的に可視化していこうというものです。

 そこで、今回の取り組みでは、「エリアマネジメント」の範囲を、大型店跡を減築して利活用しているコミュニティ拠点施設「マイタウン白河」周辺の本町・北裏(もとまち・きたうら)エリアに設定しました。

本町・北裏エリアの特徴

 戊辰戦争での激戦「白河口の戦い」の舞台となった白河市中心市街地。「マイタウン白河」の周辺市街地である本町・北裏エリアは城下町としての歴史があります。
 江戸時代、本町には約50軒の旅籠が軒を連ね、大名や幕府の役人が宿泊する本陣、脇本陣が置かれていました。昭和期は文化と消費の中心地として栄えます。複数の映画館、劇場、百貨店、銭湯や商店が軒を並べ、今では全国的人気の白河ラーメンが発祥するなど、往時は肩もぶつかるほどの賑わいのエリアでした。歴史的な建造物「旧脇本陣柳屋旅館蔵屋敷」等のまちなか観光資源等が隣接するほか、趣のある路地裏や個性的な建物が残っています。
 その中にある「マイタウン白河」は、年間18万人の幅広い年代が来場する地域の有力な集客核です。

 一方で、かつての城下町としての町割りを残していることから、車社会の市民ニーズへの対応は後手に回ってきました。消費や居住の中心が郊外に移っていった結果、物件の多くは空き店舗、空き家化し、そのまま活用しきれず、中心市街地の空洞化に拍車をかけてきました。

小路
(かつての町割りを残した小路)

 とはいえ、徒歩圏内の隣接エリアには、中心市街地活性化の取り組みで誘致した大型スーパーや生鮮食品小売店をはじめ、日常生活に必要な機能等も揃っています。
 また、車が入らない歩行者が安心できる路地や、趣ある雰囲気・物件・空間が残っていることは、生活のありかたが多様化している現在はむしろ、強みや機会にすることができます。
 この環境を活かして新たな拠点や商業機能等を導入できれば、文化的で生活に必要な機能が集まった魅力的なエリアとなる。それがこのエリアでの活動をする人や住民の増加につながり、エリアに来街者を呼び込むことができるのではとプロジェクトを推進するメンバーは考えました。

脇本陣
(旧脇本陣柳屋旅館 蔵座敷 白河市HPより)

中心市街地の機能回復に向けて

 人々が来訪し、活動し、生活したいと思う魅力的なエリアを創出するため、物件の利活用等の各事業を進めていくうえで、その土台となるマネジメントの仕組みつくりが課題でした。
 設定エリアである本町・北裏エリアの現状と資源を把握して、どのようにエリアビジョン(目指す姿)を策定していくか、エリアビジョンを達成するための必要な機能や役割をどうするか、また今後まちづくりを新しいプレイヤーをどう発掘し、活躍できる場をどのように作っていくかなどを模索していました。

エリマネ進め方
(中小機構 支援で実際に活用した資料より)

 そこで、今回の取り組みにおいて、中小機構の専門家チームによるアドバイス(プロジェクト型支援)を活用することとなりました。   

(参考リンク) 中小機構 中心市街地活性化支援 別ウィンドウで開きます

(参考)中心市街地商業活性化診断・サポート事業
中心市街地の商業活性化に向けた個別事業の実施や、中心市街地活性化協議会の課題解決のため、無料でセミナー・研修会などのコーディネート(セミナー型支援)と専門家チームによるアドバイス(プロジェクト型支援)を通じて支援するものです。
※プロジェクト型支援は令和元年度または令和2年度採択地域のみ実施いたします。

サポート事業の流れ

(中小機構 中活協支援センター取り組み資料より)

実施した調査

(中小機構 中活協支援センター取り組み資料より)

 グループインタビュー、アンケート等の調査からは、当エリアへの期待はまちまちであることがわかりました。しかし、グループインタビュー時に実際にエリアを歩いてみた若手事業者や若者グループでは、大きな関心や期待が寄せられました。

 調査からはまた、
・関係者みんなが共有できる将来の地域ビジョンを見える化すること
・地域を動かす仕組み、昔からのプレイヤーと新しいプレイヤー・世代等の垣根を取り払うような多様性が必要であること
・外からのプレイヤーの受け入れや活動支援が必要
などの課題がみえてきました。

フィールドワーク、ワークショップの実施 

 調査から当エリアに対して、一定の関心を持つ層や可能性がありそうだということがわかりました。
 そこで、より具体的な「エリアの魅力と発掘」「可能性の発見」を狙いとして、地域の人やまちづくりに興味のある学生等が参加するフィールドワークと、実際にこのエリアがこうなったら面白いといった「妄想地図」を作成するワークショップを、2週に分けて実施することになりました。
(次回、第2回へ続く)

※次回第2回目では実際に行ったフィールドワーク、第3回目ではワークショップをご紹介します。