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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

(第3回)エリアマネジメントに向けた取り組み(福島県白河市)
 まちづくりプレイヤーが活躍できるプラットフォーム確立
~土台となる形と機能づくり/リーディング事業の実施~

 白河市における中心市街地内でさらにエリアを絞り込んだ白河市版「エリアマネジメント」に向けた取り組みについて、3回に分けてご紹介しています。

第1回目:エリアマネジメントに向けた取り組みのきっかけ、白河市の中活における課題等について
第2回目:「エリアの魅力と発掘」「可能性の発見」を狙いとして、地域の人やまちづくりに興味のある学生等が参加するフィールドワーク実施
第3回目:「妄想地図」を作成するワークショップ実施、今後の展開について

(第1回、第2回より)

 白河市版「エリアマネジメント」に向けた取り組みとして、調査を行った結果、エリアにおけるニーズや課題のほか、当エリアに一定の関心を持つ層やプレイヤーとしての可能性がありそうだ、ということがわかりました。
 そこで、より具体的な「エリアの魅力と発掘」「可能性の発見」をねらうとともに、まちづくりにとって課題である「仲間づくり」も視野に入れながら地域の人やまちづくりに興味のある学生等に声掛けをしたフィールドワークを実施。まち歩きで得た印象や構想を、ワークショップ『本町・北裏界隈リアル妄想地図作成』で地図に落とし込んでいくことになりました。
 第3回目の今回は、「妄想地図作成」ワークショップについてご紹介します。

ワークショップ 『本町北裏界隈リアル妄想地図作成』

 フィールドワークの記憶冷めやらぬ翌週、中小機構の専門家が進行役を務めながら、フィールドワーク参加者による「本町北裏界隈リアル妄想地図」を作るワークショップを行いました。

(ワークショップ ガイダンスの様子)
(中小機構 実際にワークショップで使用した資料より)

なぜ、「妄想地図」か?

 まちづくりの現場では、今後のまちの姿を考える際に制約条件が多くなり、どうしても硬直的・排他的な発想になりがちです。一方で古きものを温めつつも、より創造的な発想や実践からより多様な人に選ばれ、持続性を維持していくことが求められる時代においては、まちづくりも例外ではありません。
 「まずは制約条件を外して、夢のある発想をしていこう」。そこから、地域の良さの再確認のみならず、実現性ある事業の芽やプレイヤー探しにつなげていこうというのが中小機構の提案する「妄想地図」づくりです。

ワークショップの風景

 前の週に行ったフィールドワークの班に分かれて、ワークショップを行いました。

 主に支援者で構成されるBグループでは、まずはフィールドワークの振り返りとして、まちを歩いてどのような印象を持ったか話し合いました。そのうえで、どのような人たちが、何をしに来られる場所なのか?そのためにどのようなものがあれば魅力的なまちになるかグループで話し合いながら、思いつくものを付箋に記入していきました。

  • (地図を囲んで盛り上がります)
  • (付箋を地図に貼っていく)

 アイデアを書き出した付箋をもとに、さらに「こんな施設があったら良い」「こんなことがやりたい」といったように具体的に落とし込んでいきながら、5年後10年後の「妄想」地図を作成しました。

各チーム発表

(A班)
 A班は具体的な事業アイデアのあるメンバーが集まったグループでした。シェアハウスなどやっていきたい事業で妄想地図を作成していました。

(B班)
 B班はエリアの中で使えそうな物件、空間資源、余白が多いところに着目し、その場所で出来そうなアイデア、あったら楽しいものを妄想して地図を作成していました。

◆ワークショップ 映像

発表時の映像を一部ご紹介しています。(3分38秒)

講評

 各チームの発表後、オブザーバーとして出席した日本大学工学部建築学科住環境計画研究室の市岡綾子先生より、講評がありました。
(講評の要旨を記載)

A 班:
・「何かやりたい」という人が多く、プレイヤーとしてできることは何か、本町・北裏以外の地域資源を取りこんでいきながら具体的に提案していること、実現できそうなプランがあり、頼もしく聞いていた。
・白河市には大学がなく、若者が外に出てしまうことがネックである。大学生が集えるプラットフォームを作ることで、そこに来る人・関わる大学生が増え、若者による活性化が可能という発想からは、未来の可能性も見えた。

B 班:
・具体的な事業アイデアありきではなく、この場所はどういった可能性を持つ場所なのかにターゲットを絞っていた。白河にある路地は本町・北裏の魅力であると思う。都市の中に残っている摩訶不思議な空間を、日常化しつつ、いかに非日常を残すか。その部分を丁寧に表現していた。

(市岡綾子先生)

 市岡先生は、「A 班、B 班視点が違っていて、非常に面白いと思う」と振り返りつつ、「今は妄想だと思っていたことが何年かたって実現するかもしれない」と総括しました。

ワークショップの成果

 参加者は、始めは緊張していた様子でしたが、自由に発想ができるワークショップが進むにつれて積極的に意見を交わす様子が見られ、ふたを開けてみれば多様なアイデアが発案され盛会に終わりました。
 また参加した若手メンバーの中から、このエリアで構想が進むリノベーション事業にプレイヤーとして参画したいという意思が示され、検討に参加することになるなどの成果もありました。

今後の展開

 白河市中心市街地活性化協議会は、行政、商工会議所、まちづくり会社が密に連携し、協働してまちづくりをしているのが強みです。また、そのつながりがプラットフォームとして今回のように新たなプレイヤーがエリアで事業や活動を実現していけるように後押しする形ができつつあります。
 そのプラットフォームが現在構想されているリノベーション事業だけでなく、2つ目、3つ目と「場づくり」を実施していきながら、新しいプレイヤーの発掘とともにまちづくりに関われる土台を作っていき、エリアの持続性を高めるエリアマネジメントに取り組んでいきます。

 ワークショップの結果を踏まえた次の一歩としては、プラットフォームメンバーによる検討会議でエリアマネジメントに向けたエリアの構想、方向性をとりまとめる予定です。エリアの将来の姿や取組方針、その実現のための中期目標を設定し、まちづくり会社が具体的にリーディング事業を実施しながら、エリアの魅力向上のためのけん引役となっていきます。