まちなかで事業を多発させる仕組みつくり ~民間まちづくり会社が手掛ける収益事業とエリアマネジメント~(山形県山形市)
山形まちづくり株式会社は民間出資100%のまちづくり会社で、主に山形市中心部の七日町エリアを対象に業務を行っています。地域や大学とも連携した“事業を多発させる仕組み”は、山形市の中心市街地活性化策とも連動し、地域で相乗効果を生み出しています。
まちづくり会社の母体である七日町商店街振興組合は地域の中長期ビジョンを持ち、組織として常に業務改善を行いながら、50年以上にわたってまちを育ててきました。
山形まちづくり株式会社の収益事業、主に遊休不動産再生事業及び新規創業者発掘・育成事業、また、コンサルティング等注力している取組みや目指すエリアマネジメント像等について、常務取締役の下田孝志氏よりお話を伺いました。
<目次>
- 山形市の特徴と七日町エリアの概況
- 山形まちづくり株式会社の設立経緯及び事業方針
- 役員構成変更による新たな事業展開
- 収益事業について
- 山形まちづくり株式会社 独自の取組み
- エリアマネジメントについて(各主体が将来像を共有して役割分担)
- 今後の展望について
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1.山形市の特徴と七日町エリアの概況
山形市は人口244,852人(令和4年5月1日現在) 、山形県の県庁所在地であり、県内最大の都市でもあります。山形城の城下町として栄え、特に七日町エリアは笹谷(ささや) 街道と羽州(うしゅう) 街道を結ぶ要衝で、かつては卸業が中心の町でした。
七日町は、近代では「商人町」として整備されました。現在でも大型複合ビルや多くの専門店が立地する、商業集積・集客力・販売額ともに県下随一の商店街であり、市役所や市立病院、文化・観光施設、オフィス等が近接しており、中心市街地の中核を成すエリアでもあります。
近年では、民間主導のリノベーションや再開発計画、マンション建設が次々と事業化し、県内商業地で唯一地価が上昇し居住人口も増加に転じる等、新たなステージを迎えています。
2.山形まちづくり株式会社の設立経緯及び事業方針
山形まちづくり株式会社は七日町商店街振興組合からの出資で2015年に設立された100%民間まちづくり会社です。先述のとおり、七日町は江戸時代から発展してきた「商人の町」であり、自分の町は自分たちで守る「自助の精神」を持ち、七日町商店街振興組合が50年以上に渡り市街地活性化のための投資を行ってきました。全国的に商店街の衰退が言われる中依然として力を持っており、単組の商店街組織がエリアマネジメントを担い、まちづくりを積極的に推進している稀有な例でもあります。
設立当時、七日町商店街においても、法律上の規制等から商店街組織では解決できない空き店舗対策などの地域課題が増加していました。エリアマネジメントの視点と商店街との関係性を重視し、地域の価値・魅力を向上する新たなまちづくり主体をつくるため、公費に依存しない民間のまちづくり会社として設立されました。
一般的に、行政出資があるまちづくり会社(中心市街地活性化法でいう法定まちづくり会社) では、中心市街地活性化法に定めるハード整備を行うほか、整備した施設の指定管理業務を担うなど、自治体からの委託業務を収益の柱にしているところが多い傾向にあります。
山形市の方針で、市出資のまちづくり会社はありませんが、指定管理等の委託事業は存在します。ただし、山形まちづくり株式会社では設立当初、会社としての体制づくりが確立するまでは指定管理業務はしない方針としてきました。
理由は、指定管理業務を受けることで収益の安定にはつながりますが、本来のまちづくり会社がやるべき事業(エリアマネジメント・まちへの投資) に対応するための余力が少なくなる、と考えるためです。そのため、自主財源を確保しながらまちに再投資できるまちづくり会社として経済的に自立し、様々な事業を行っています。
なお、指定管理業務は行っていませんが、行政から遊休不動産や公開空地の活用方法等についてアイデアの提案を依頼されることもあるそうです。自社で指定管理を受けることを想定した予算やアイデアを提案する会社が多い中、山形まちづくり株式会社では『管理料ありきではなく、できる限り公費に依存せず、当社で責任もって運営する』スタンスで、地域に必要な機能を提案しているそうです。「弊社の提案が選ばれることはなくとも、そうした会社が地域にひとつでもあることで、本来あるべき姿を考えるきっかけになる。まちのためになることだと思う」と下田氏は語りました。
(参考リンク)商店街の事務局力がまちづくりの原動力となる(山形県山形市)
3.役員構成変更による新たな事業展開
このように、エリアマネジメントの視点と商店街との関係性を重視したまちづくり会社として設立した山形まちづくり株式会社ですが、近年社長を含めた役員を交代することにより、新たな事業を展開することができています。『まちづくりに有益なノウハウを持つ方を役員にした』ことがポイントです。
ノウハウ、スキル等を持つ人材を取締役等に迎え入れることで、新たな事業展開だけでなく、事業の収益化も早まったということです。
財務や数値管理が得意な経営の専門家、宅建免許を持つ不動産取引の専門家、ラフも描けるデザイン関係の専門家、地域の関係者との合意形成が得意な中心人物、弁護士などが役員に名を連ねています。
これまで外注していた業務を社内で対応できる体制にしたことで利益率が上がり、各事業(後述) においてもワンストップで対応できる点は、会社の強みです。
「地域で影響力のある人」ではなく、「まちづくりを進める上で有益なノウハウを持つ人」を役員にしているのは、全国的に見ても珍しい例ですが、民間まちづくり会社ならではの組織体制と言えます。
4.収益事業について
山形まちづくり株式会社の主な収益事業は次の通りです。
● 街なか共通駐車券事業
● 商店街等まちづくり組織支援事業
(商店街支援事業、交流拠点施設「N-GATE」運営事業、レンタルスペース、レンタサイクル運営事業)
● 遊休不動産再生事業
● 新規創業者発掘/育成事業
● コンサルティング/調査分析事業
特に遊休不動産再生事業、新規創業者発掘/育成事業、コンサルティング/調査分析事業については、後述「山形まちづくり株式会社の独自的な取組み」で詳しく記載しています。
街なか共通駐車券事業
街なか共通駐車券は、山形市中心部の加盟駐車場(令和4年6月現在22か所) どこでも利用できる、利用者にとって便利な駐車券です。以前は商店街組織が運営していましたが、山形まちづくり株式会社で事業を引き継ぎ、採算が合うよう手数料を交渉し、継続できる体制を整えました。今では中心街のほとんどの立体駐車場が加盟しています。
ちなみに、七日町エリアの立体駐車場は、大通りの将来像との関係性と、歩道への乗り上げ、歩行者保護の観点から、大きい通りから一本中に入った場所に作るのがまちづくりのルールになっている、ということです。
商店街等まちづくり組織支援事業
主に、七日町商店街の交流拠点施設「N-GATE」やレンタルスペースの運営を行うほか、他の商店街や団体等が連携するイベントや単発事業の事務局を担うこともあります。例えばイベントにはチラシ作成がつきものですが、山形まちづくり株式会社には先述のとおりデザイナーがおり、社内でクオリティの高い販促物を作ることができるため、企画、申請等面倒な裏方事務も含めて受けることができます。このような支援事業は小さいものから大きいものまで、年間10件ほどあるということです。これを積み重なることで収益になっています。
また、最近では脱クルマをコンセプトに「パーク&サイクルライド事業」として、レンタルサイクルを開始しています。観光客をメインターゲットに開始しましたが、コロナ禍においては、ビジネスマンが山形に出張した際に活用するケースが多いそうです。自転車なら道を間違えても簡単にUターンでき、駐車場代を払う必要もない点が受けているということです。
現在では月数万の売上ですが、人件費もかからず、コロナ支援金を充当して取得、即時償却したので、売上=純粋利益と、小さいながら安定した収益源です。定着までに時間がかかりますが、コロナ禍が収束した後観光ニーズが戻れば活用される機会も増え、収益も伸びていくのではと考えています。
【まちづくり会社の収益の作り方】
収益源を作りたいまちづくり会社こそ、地域のためにやれることを事業として積み重ね、売り上げを作っていくことが必要です。
まずは小さい仕事を受けることで、地域内で存在を知ってもらうことができます。「地域の課題解決や地域に新しい価値を提案する事業を行うことで地域の中で存在感を増すことができ、そうしたステップを積み重ねて信頼を得ていくことで大きな仕事につながっていく」と下田氏は語りました。
5.山形まちづくり株式会社 独自の取組み
山形まちづくり会社の独自の取組みとして、「遊休不動産再生事業」「新規創業者発掘/育成事業」「コンサルティング/調査分析事業」があります。
遊休不動産再生事業と新規創業者発掘/育成事業は連動した事業です。七日町エリアでの新規出店数増加に寄与するだけでなく、大学との連携事業でまちづくりに学生の柔軟な発想を取り入れ、山形市が推進する「学生のまちなか居住増加」とも連動し、中心市街地の活性化に繋げています。
遊休不動産再生事業
山形まちづくり株式会社では空き物件を「遊休不動産」という言い方をしています。ここに価値があるということを伝えるために、「空いている」のではなく、「たまたま今は休んでいるだけ」という考え方です。
遊休不動産情報の現況調査や不動産所有者の意向把握を進め、将来的な利活用策の相談・検討・提案までを行うほか、地元の山形大学、東北芸術工科大学と連携した実験的プロジェクトも行っています。
また、自らリノベーション事業などの不動産投資も行っています。
<地元大学との連携プロジェクト>
「活用方法を探る」というテーマで、遊休不動産の見学ツアーを開催し、「あの建物はこのように使えるのでは?」と自由に物件の活用方法を大学生に考えてもらうワークショップ、活用案発表会等を行います。その場には物件オーナーも参加して提案を聞くという、非常に面白い取組みです。
学生は授業として設計、活用案の模型を作り、市民向けに展示もします。自身では想像しなかった活用方法・物件の可能性を知り、不動産オーナーのマインドも変わるそうです。
大学とはこの2年間打ち合わせを重ねて連携を深めており、コロナが収束した暁には一気に取組を進めていきたい考えです。
以下写真は地元2大学と連携した実験的プロジェクトの様子 (山形まちづくり株式会社資料より)
<リノベーション事業>
主に、物件を取得してリノベーションしてリーシングした事例や、リノベーション支援を行う事例、大学との連携による実証実験事業等の事例があります。
事例①:まちづくり会社で物件取得・用途変更した事例
築80年の木造3階建て旧人形店の土地建物を山形まちづくり株式会社で取得し、耐震補強及びコンバージョン(用途変更) して賃貸物件化しました。30代の若者が独立起業し、建物をリノベーションして飲食店(ピッツアとワインのお店) として開業。人気店に成長し、今年2店舗目を開業予定ということです。
事例②:リノベーション支援事例
築70年の旧耳鼻科医院の建物(1階部分) をリノベーションし、40代の女性が独立起業して雑貨店として開業した事例です。山形まちづくり株式会社が主催する「マーケット事業」への出店で経験を積みながら、起業セミナー(後述) で専門家とマッチングしました。まちづくり会社がリノベーション支援を行い、開業に繋がった七日町版・新規開業のロールモデルといえます。
事例③:大学との連携による実証実験事業事例(計画中)
地元大学と連携し、空き家対策を推進している法人代表者が所有する築40年以上の木造2階建(旧メガネ店) の空き物件を、実証実験として定期借地5年程度の活用事業を計画中です。1階をワークスペース等のような若い人が集まるスペース、2階を文科系サークルのシェア部室(オフィス) として整備する計画で、まちづくり会社が施設整備及び管理運営を担う予定だということです。
(不動産事業における考え方)
山形市、特に七日町エリアは民間の投資意欲が高い地域であるため、全てをまちづくり会社で行う必要はなく、事業ごとに特別目的会社(SPC) が生まれるスタイルで良い、と下田氏は考えています。
まちづくり会社には一般の不動産会社が手をつけられないような案件の相談が来るので、そうした遊休不動産に対して他とは違う切り口で提案・再生することで、もう1ステップ、2ステップ不動産事業を高めていきたい考えです。
新規創業者発掘/育成事業
遊休不動産再生事業にも関連するのですが、出店する側のスキルを高める取組みも行っています。
「マーケット事業」で商店街の賑わい創出を図りながら、マーケットへの出店チャレンジを通じて、店舗経営に意欲的な人材を発掘するものです。出店者へアンケート調査を行い、創業への熟度が高まった段階で独自の「起業セミナー」へ参加を促します。
※コロナ禍では開催していません。
<ポイント①>
起業セミナーの講師は、直近1年程度で創業した若手オーナーが担当します。なぜ七日町を選んだか、どういうことに苦労したか、良かったこと、こうすればよかった等、創業者の実体験を話してもらうセミナーで、リアルな失敗談も聞くことができます。
また、セミナーには銀行関係者、建築家、市役所補助金担当者等を招いて情報提供を受けながら、名刺交換の機会を設けています。例えば建築家からはリノベーションのポイントについて、古い建物のどこを見るべきか、変えて良いところ・変えてはいけないところはどこか等のレクチャーをしてもらうこともあり、非常に評判が良いということです。
創業出店する時、「リノベーションしたいが誰に頼んだら良いか」「銀行にいきなり融資を頼みに行って相手にしてもらえるだろうか」「使える補助金は何があるのか」等、未経験の人が一人で調べるにはハードルが高く、専門家とのマッチングが非常に重要です。セミナーで名刺交換をすることで面識が出来れば進めやすいので、そうした機会をまちづくり会社で作っています。
<ポイント②>
起業セミナーでは、空き物件を持っているオーナー自らが物件の写真を見せながらプレゼンを行い、創業希望者にアピールしています。
遊休不動産再生事業で、空き物件情報の把握や不動産所有者の意向把握(今だけではなく今後についても) を行っているため、物件の情報提供を行うこともできます。
2022年秋頃、実に2年ぶりにセミナーを開催する予定ということです。
<事業の効果>
不動産オーナーは、物件活用のアイデアや模型を通して若い人の視点や市民のニーズ等を理解することができ、また自ら物件のプレゼンを行うことにより、それまでの固定観念が変わるそうです。
また、創業・出店する側も、先輩経営者から話を聞くことで、創業に進むための心構えやスキルを育むことができるほか、不動産オーナーや各専門家と繋がることが出来ます。このように、遊休不動産再生事業と新規創業者発掘・育成事業は連動し、新規出店数の増加に寄与しています。
コロナ禍の影響による閉店で良い物件が空き、不動産オーナーに家賃交渉の余地が出ている状況を、若い人はチャンスと捉え、七日町エリアではコロナ禍の2年間で40件以上新規出店があったそうです。
コロナ禍でも「自分ならやれる」というポジティブな人が多く、実際に顧客を集めて、成功している例も多く出ているそうです。そうした若い人の登場を増やすため、新規創業者の発掘・育成事業を引き続き行っていきます。
また、当社の事業は若年層がまちづくりが関わるきっかけ作りにもなっています。山形県では七日町エリア等の中心市街地に学生の居住を増やすため、一戸建てや商業ビルなどの空き物件を活用した学生向け住宅(準学生寮) を確保する事業を行っており、賃貸住宅に用途変更する際の改装費や、学生への家賃低減のための差額補助等のオーナー支援の仕組みがあります。こうした動きとも連動し、山形まちづくり株式会社では山形大学、東北芸術工科大学との連携を深めた取組みを行っています。
その他:コンサルティング/調査分析事業
山形まちづくり株式会社では、会社組織としてコンサルティングの依頼を受けています。今後会社の主力事業となる可能性が高い事業です。
下田氏は中小企業組合士として商店街振興組合の課題等に対してアドバイスを行ってきました。以前は個人として仕事を受けてきましたが、一人で対応できない大きな案件は相談があっても断っていたそうです。2年前の役員改選で、取締役に調査分析やコンサルティングにノウハウのあるメンバーが揃ったことにより、会社として受けられる体制が整っています。
(コンサルティング事例)
県内の某ショッピングセンターに行政機能を入れて新しい複合施設にする構想があり、まちづくりの視点を持って、商業と公共の機能として何がふさわしいのかを含めて提案して欲しいという要望があり、調査を実施、提案書を作成して首長に報告しました。
コンセプト・テーマの設定から機能の提案だけでなく、全事業をチェックして赤字要因を究明、各事業のどの点を改善すれば原価率がどれだけ改善するか等も詳細指導しています。
過去、山形県内では地元スーパー等をキーテナントに、専門店が入るショッピングセンターが多く作られています。現在テナントが入らず苦戦している地域は、山形県内だけでなく他地域でも増えていくのではないかと、下田氏は考えています。事例のような大規模案件を遂行したことで、当社のコンサルティング事業が県内でも周知されつつあります。ショッピングセンターの改善だけにとどまらない、地域づくりに関するコンサルティング案件が増えてきていることもあり、今後は山形市だけでなく他市町村・他県の活性化事業にも積極的に関与していく構想があります。
また、当社だけで受けることが難しい案件については、他のまちづくり会社等と連携することも想定しています。調査期間が短い場合、調査事業が得意なまちづくり会社やコンサルタントと提携することで専門的部分をカバーするとともに、まちづくり会社間の連携にも活かされると考えています。困っている地域のまちづくり会社と、ノウハウやスキルを持ち対応出来るまちづくり会社の橋渡しをしていきたい、ということです。
6.エリアマネジメントについて(各主体が将来像を共有して役割分担)
山形まちづくり株式会社が考えるエリアマネジメントは、「まちに関わる各事業主体がエリアのビジョンを共有して、それぞれが役割分担をしながら、自らの役割を果たすこと」です。それが最終的にまちの価値を維持向上し、活性化に繋れば良いと下田氏は考えています。
先述の通り七日町エリアは民間の投資意欲が盛んな地域です。例えば、御殿堰周辺の再開発は地権者が中心になって事業会社を設立したように、事業単位で再開発を行う事例が多いそうです。
商店街、民間企業、NPO団体、地権者、まちづくり会社等、さまざまな事業主体がありますが、それらがエリアビジョンを共有し、地域の価値を上げるための取組をしていくこと。エリアビジョンが共有されていれば、どこかひとつの事業主体だけでエリアマネジメントする必要はなく、足並みをそろえて同じことをしなくても良い。それぞれの視点でエリア活性化のための取組みを行った結果エリアマネジメントになっていく。そういった形が山形市のまちづくりの特徴であり、まちづくり会社が全面に出る必要はないという考えです。
(今後考えられるまちづくり会社のあり方)
山形市には中心市街地活性化法でいう行政出資の法定まちづくり会社がありません。
七日町商店街は江戸時代から発展してきましたが、駅前は明治以降鉄道を引いてから発展したというように、同じ山形市の中心市街地でも場所によって歴史や背景が違います。法定のまちづくり会社がある地域においても、今後は中心市街地エリア全体をひとつのまちづくり会社が見るのではなく、小さいエリア、自分達の目が行き届くエリアを見るまちづくり会社が複数出てくるかもしれません。
7.今後の展望について
山形まちづくり株式会社では、当社が責任を持って、地権者と一緒に事業を推進することができる範囲のエリアを絞り、山形市へ都市再生推進法人の指定を目指し取り組んでいくとのことです(令和4年6月現在) 。
七日町エリアでは今後10年間、新市民会館の整備や市立病院の建て替え、百貨店跡地の再開発等、大規模な事業が予定されています。それだけに頼ることなく、地域のリーディングカンパニーとして新しい価値を提案しながら、引き続き地域内で小規模の民間投資が多発するような仕掛けをしていきたい、ということです。
「当社の在り方は珍しいと言われていますが、今後同様の地域は出てくるのではないかと思っています。いわゆる小規模多発型。小さいエリアをマネジメントするまちづくり会社が設立され、その地域の課題にしっかり向き合うことができ、結果的にそのエリアの活性化に繋がると良いのでは」と下田氏はまとめました。
(取材を終えて)
御殿堰(ごてんぜき) を通りかかった際、偶然まちづくり会社の結城社長が堰(水路) の清掃をしているところに遭遇しました。こうした日々の地道な活動により綺麗な空間が保たれ、市民の憩いの場・人気のまちなか観光スポットとして親しまれているのだといいます。
地域に必要な仕事に手を挙げることで、地域で必要とされるようになります。こうした仕事の積み重ねにより、山形まちづくり株式会社は地域で存在感を増しています。当社の事業は、他のまちづくり会社から見ても大いに参考になるのではないでしょうか。