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各種団体との連携・協力により「エリア価値」の向上を図る(岡山県岡山市)

取材日:2026年5月18日
掲載日:2026年9月15日

岡山市北区にある岡山表町商店街(おかやまおもてちょうしょうてんがい)は、岡山城や後楽園からほど近い、加盟店約250店の大規模な商店街です。東西・南北約1.4㎞にわたって店舗が並び、商店街の中心に百貨店「天満屋岡山本店」が立地しています。北から上之町商店街、中之町商店街、下之町商店街、栄町商店街、紙屋町商店街、千日前商店街の順に南に伸びています。また、紙屋町商店街と千日前商店街の間に十字路があり、そこから東西に西大寺町商店街、新西大寺町商店街が位置しています。表町商店街は以上の8町の商店街(表八ヶ町)から構成されています。

画像:岡山城
岡山城
画像:(左から)天満屋守分(もりわけ)さん、表町商店街理事長片山さん、理事矢部さん
(左から)天満屋守分(もりわけ)さん、表町商店街理事長片山さん、理事矢部さん

目次


1.百貨店と連携して全国初の「インバウンド免税手続一括カウンター」を設置

2015年の免税制度緩和*をきっかけに、天満屋岡山本店と連携して全国初の「インバウンド免税手続一括カウンター」を設置しました。制度改正を知った矢部さんが当時の理事長に相談したところ、偶然にも天満屋側からも「一緒にやりませんか」と打診があり、タイミングが合致しました。2015年5月にスタート、北海道・旭川と並び「全国初」の免税手続一括カウンターをスピード開設しました。(*エリアで1箇所の免税カウンターを設置すれば各個店での対応が不要になる仕組み)
「インバウンド免税手続一括カウンター」開設を実現させた工夫は下記の通りです。

①ハードルを下げる工夫: 小規模な事業者でも参加しやすいよう、商店街側が説明会を複数回開き、その場で税務署への申込書を書ける体制を整えました(スタート時は約40店舗、現在は一般免税店を合わせ約34店舗が参加)。

②天満屋の甚大な協力: 天満屋側は商店街側に人件費等を求めず、「困ったら相談させてほしい」「大行列ができたら負担を相談する」という好条件で受け入れました。実際は一度もトラブルなく11年間継続しています。

③言葉の壁への対応: 語学学習はあえてせず、天満屋が契約していた「電話同時通訳サービス」や翻訳アプリを活用して乗り越えました。言葉というより、笑顔での接客を重視したそうです。
  • 画像:商店街中央に位置する百貨店「天満屋岡山本店」
    商店街中央に位置する百貨店
    「天満屋岡山本店」
  • 画像:全国初「免税手続一括カウンター」(天満屋地下1F)
    全国初「免税手続一括カウンター」
    (天満屋地下1F)

実際、海外からのお客さまは、岡山城や後楽園に近くに立地するものの、観光地ではないので、大量買いのツアー客は訪れず、個人旅行客が多い、とのことです。今後も「個人旅行の上質な顧客」をターゲットとし、身の丈に合った持続可能な仕組みとして運用したいとのことです。


2.天満屋岡山本店との共生関係

表町エリアでは、多くの地域で見られる「百貨店 vs 商店街」という対立構造はなく、非常に良好な関係を築いています。「百貨店と仲良くできない方が不思議。協力関係がある方が得」と矢部さんは語ります。400年以上の歴史を持つ商店街のエリアに、天満屋が大正時代に進出しました。それ以来、「同じ地元の商業エリアの仲間」として共に歩んできました。長い歴史の中で、「一緒に共存して頑張っていくのが当たり前」という関係が続いています。
免税手続一括カウンター設置だけではなく、「カード会員様特別ご招待会(特招会)」という天満屋と表町商店街とのコラボレーション企画も実施しています。天満屋特招会の時期に合わせて、商店街の店舗でも天満屋クレジットカードを提示することによって、割引を受けられるイベント企画で、10年くらい前から、年に8~10回ほど、実施しています。この企画についても、「天満屋では天満屋カード会員さま向けの特招会をやっているので、一緒にこのエリアを盛り上げていきましょう、と天満屋から商店街に企画を持ちかけました」(守分さん)とのことです。


3.岡山理科大学との「1年を通じた強力な連携」

岡山理科大学とは2019年から包括連携協定を締結し、単発のイベント協力や学生のアイデアコンテストといった、その場だけ盛り上がる内容の連携ではなく、実のある活動を行っています。

①学生が街に常駐する仕組み: 金曜の午後限定で商店街の店舗2階レンタルスペースを大学に提供し、1年間、金曜日の2コマは必ず商店街で授業を行う状態を作りました。「学生がそこにいるだけで街は変わる」と考えています。

②データに基づく未来予測: 経営学部(データ分析)の学生たちが、店主の年齢や後継者の有無に関する「意識調査」を数年ごとに実施しています。それにより、「店主の2割に後継者がおらず、自分の代で辞める」といった、勘に頼らない「確実に来る未来のデータ」を導き出し、商店街の役員会で共有、空き店舗対策に活かしています。「空き店舗ができてからの対策ではなくて、空き店舗にならない対策をしないとダメ」との認識を持っています。

4.エリア内で各種団体が参加する会議体「ミンナ表町」

表町商店街では、百貨店との連携のみならず、エリア内連携を果たしています。天満屋岡山本店、岡山芸術創造劇場ハレノワ(以下「ハレノワ」という)、病院、地方銀行、メディア(RSK山陽放送)、バスターミナルなど、コンパクトなエリアに様々な機能が集積しています。これら関係者を巻き込んだ新たな会議体「ミンナ表町」を組織し、エリア全体での経済回遊を目指しています。
連携のコツについて、「会議室で堅苦しい議論をするのではなく、エリア周辺のゴミ拾いや夏のビアガーデンといった『ハードルの低い共同作業』を通じて人間関係(信頼)を構築していくとよいのではないか」(矢部さん)と語っています。「ゴミ拾いなら誰も断らないし、そこで話すと仲良くなれる」「ビアガーデンに行ったりする中で、“では一緒に何かやろうか”という話になる」と矢部さんは話します。
その根底にあるのは、「協力しないと、このエリア自体が支持されなくなる」との考えです。天満屋の守分さんも「百貨店だけ良ければいいのではなくて、エリアで一緒に盛り上げるという考えでやってきた」と言うと、矢部さんは「天満屋さんは“表町エリア”として考えてくれている」と返します。「エリア全体で価値をつくる、高める」という考えを両者が持っていて、強い信頼で結ばれています。
その背景には、1891年に1㎞ほど離れたところに岡山駅が開業し、駅がどんどん発展、商業集積もすすみ、駅周辺ですべて完結するような街となったことが挙げられます。「この駅周辺エリアに対抗するには、表町エリアで戦うしかない」「ここにいる地域の事業者たちが連携して、『表町はこういう街』というエリアの魅力をしっかり市民に発信していきたい」(矢部さん)と語っています。


5.世代交代・空き店舗問題解決に向けて

表町商店街は8つの商店街の連盟ですが、そのなかの「中之町」という地区で実績を出してきた片山さんが連盟の理事長に就任したことで、商店街の運営方針に新たな議論と変革が起きています。片山理事長は15年前から中之町の地権者の意識改革を進め、「若い挑戦者を応援しよう」と賃料を下げてもらう交渉などを実践しました。それが、空き店舗ほぼゼロ化や若い経営者の出店増加などに結び付きました。さらに、アーケードのLED化による明るさ向上など、「誰が見てもわかる圧倒的な結果」を出すことで、当初いた反対派を味方に変えていきました。「就任から10年間は総会で厳しい意見をいただくこともありましたが、耐えてきました」と苦労を語ります。
片山さんは、「貸そうとしないオーナーが一番の問題」と語ります。適正な価格になれば若い挑戦者の借り手はつく状況ですが、昔の良い時代を知ったまま『自分で商売する気はないが、人に貸すつもりもない。シャッターを閉めたまま放っておいて』と言う高齢オーナーに対する説得が続いています。貸そうとしないオーナーは、街の価値を下げる最大の課題と捉えています。「シャッターが閉まっているだけで街の価値が下がる」「若い経営者が入らないと、街は確実に衰退する」と話します。
「その理由は、30・40代の若い経営者が出店すれば、30・40代のお客さまがつきますが、店主が60・70代になったら、そういう商品揃えになるし、お客さまも店主とともに成長して、若い人・新しい人がいなくなります。若い経営者にこの街でチャレンジさせることをしていかないと、街は衰退する」と片山理事長は考えています。
加えて、店主が亡くなった際、遺産相続者が誰か、どこに住んでいる人か全くわからず、交渉のしようがないことも問題となっており、「亡くなる前に交渉や説得をしないと立ち行かなくなる。高齢化している店主も多く、もう時間がない」(矢部さん)と危機感を持っています。


6.これからの商店街運営について

片山理事長は、今後、表町商店街のなかで比較的通行量の少ない、東西や南部(ハレノワができ、若い人の出店動機が高まっているエリア)をテコ入れしたいと考えています。予算のない東西・南部エリアのために、中之町エリアなど店舗数が多く、多めに負担している連盟の資金を使い、それぞれの地区で持っている事務局機能について、雇用も含め、一括統合して全体を管理し、底上げしていく構想を進めています。東西に延びる西大寺町商店街、新西大寺町商店街では、現在事務局も保持できない状況にあるので、それを補完したいと考えています。
また、南エリア周辺では、ハレノワに訪れた若者が商店街の南エリアへ足を延ばすケースも増えたそうです。この追い風となる環境変化も活用していく考えで、「南の弱いエリアを底上げしないと、全体は変わらない」との認識を持っています。

画像:岡山芸術創造劇場ハレノワ
岡山芸術創造劇場ハレノワ

7.考察:エリア全体の価値を向上

表町商店街が全国的に見ても「元気」を維持できている理由は、「天満屋という強力な核との歴史的な信頼関係」、「大学を巻き込んだデータに基づく現状把握、確かに訪れる将来予測への対応」といえます。そして何より、周囲の批判や辛い時期に耐えながら「実際にリスクをとって街を動かしてきたプレイヤー(片山さん・矢部さん等)が存在し、具体的な結果(売上の向上や景観形成促進)で周囲を納得させてきたこと」にあると言えます。
その成功体験をベースに、今後もハレノワの開業というチャンスを生かして、さらに飛躍を続けます。個店や商店街の利益だけではなく、周辺エリアの人・組織が協力・連携して「エリア価値」を高め、他エリアとの競争を勝ち抜こうとする意識が強く見られます。
そのために、若い経営者の出店を後押しして、世代交代を進めるとともに、商店街自体も新陳代謝を続け、維持・発展を図っていこうという、強い意思を感じました。
「この商店街は、買い物だけの場ではなく、学びと体験ができる場でもあり、市民の人にとって、マルシェや音楽・パフォーマンスイベントなどいろいろな活動ができる舞台としてもここを使ってほしい」「市民の人と一緒に何かを共同でできる街を作っていかなければいけないと思っている」との矢部さんの言葉にも強い決意が感じられます。

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