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(第1回)中心市街地×農業地域で市の魅力発信を図る「まちなかワイナリー」(茨城県水戸市)

中心市街地の商店街にワイナリーを設置し、中心市街地のコミュニティ形成に寄与するばかりでなく、農業地域へも効果をもたらす取り組みが茨城県水戸市に見られます。日本三大名園である偕楽園を有する水戸市は、中心市街地から自転車圏内に農業地域が存在し、中心市街地と農業地域は密接な関係にあります。観光地だけでなく農業の魅力を持つのが水戸市であり、その地域資源活用と魅力の発信が中心市街地活性化策の軸であるといえます。

今回はまちなかでワイナリーを経営しながら水戸市の農業ならびに中心市街地の魅力を発信する「Domaine MITO株式会社(ドメーヌ水戸)」(以下、ドメーヌ水戸)の代表取締役である宮本紘太郎氏(以下、宮本氏)、まちづくりプレーヤーとの関係性を強化しながら中心市街地活性化に邁進する水戸商工会議所・振興部産業振興課の課長補佐である天下井博充氏(以下、天下井氏)にお話を伺いました。

Uターンをきっかけに中心市街地活性化に臨む宮本紘太郎氏
Uターンをきっかけに中心市街地活性化に臨む宮本紘太郎氏

まちなかワイナリー設置のきっかけ

まちなかワイナリー・ドメーヌ水戸があるのは、水戸市内にある泉町二丁目商店街です。同商店街の高野理事長と秋山副理事長は、水戸市ばかりでなく茨城県産の農産品を活用したマルシェや情報発信策を積極的に打ってきました。具体的には、2004年に泉町新鮮市として始まり、2012年に泉町新鮮市をリニューアルした「ファーマーズマーケット@水戸」やコミュニティペーパー「IZM」等です。つまり、泉町二丁目商店街には農産品を始めとする地域資源を活用してまちを盛り上げる素地があるのです。さらに、市内の一商店街でありながら、水戸市全体の活性化を見据える視点があったことも後の宮本氏の取り組みに影響を与えることになります。

ファーマーズマーケット@水戸の取り組み
ファーマーズマーケット@水戸の取り組み

関連リンク)IZMホームページ 別ウィンドウで開きます

※上記のサイトからも泉町二丁目商店街が農業地域と連携して商店街の魅力だけでなく水戸の魅力発信に努めてきたことが分かる。

  

その泉町二丁目商店街の近くで営業する酒屋が実家である宮本氏がUターンで戻ってきたのです。宮本氏は衰退の気配が見られる商店街を目にし、活性化のために何か打てる手はないかを考えました。

丁度その頃、泉町二丁目商店街が契機となり水戸市内に広がったイベント「水戸まちなかゼミ&まちカル」が始まりました。なかでも農家の方が開いた食に関するワークショップはとても人気で、拡充していこうという機運の中でワイン造りワークショップ開催、さらには、まちなかワイナリーを設置する構想を得ました。それは、宮本氏の持つ、大学で学んだ醸造学やワインの輸入卸会社で培った、営業ノウハウや店舗運営ノウハウが活かしやすい事業分野でもありました。

年二回のペースで実施される「水戸まちなかゼミ&まちカル」
年二回のペースで実施される「水戸まちなかゼミ&まちカル」

宮本氏は早速、高野理事長と秋山副理事長に地域資源活用の素地のある商店街にワイナリーを設置することを持ちかけました。高野理事長と秋山副理事長の賛同を得た宮本氏は周囲との協力の下、2013年に水戸市の農林水産省「日本の食を広げるプロジェクト」のモデル地域採択、2015年に商店街有志とドメーヌ水戸の立ち上げ、2016年8月にはワイン製造に至りました。

地元商店街に新しい風を吹き込みたい宮本氏と、これまで地域資源を活用して商店街に活気を取り戻そうと活躍してきた高野理事長と秋山副理事長の想いは、まちなかワイナリーという形を成したのです。

地域資源・人脈を活かし事業を魅力的にする

地域資源の活用

ワイナリー設置にあたっては、泉町二丁目商店街が持つ資源を積極的に活用しました。まず、ワイン醸造所ですが、泉町二丁目商店街の象徴的な建物である「泉町会館」を活用しました。この泉町会館で「ファーマーズマーケット@水戸」が継続的に実施されており、地域住民にとって泉町会館は、いわば泉町二丁目商店街の地域資源活用の象徴でもあるといえます。この一角にワイナリー機能を追加したのです。

泉町会館の外観
泉町会館の外観

また、ワインの原料となるぶどうの仕入については、「ファーマーズマーケット@水戸」や「水戸まちなかゼミ&まちカル」で形成した農家との人脈を活用しました。なお、日本産のワインは地域のお土産品の位置づけでしたが、ワイン製法技術の向上から政府も2015年に「日本ワイン」の定義と表示ルールを制定し、2018年に施行となりました。さらに、ぶどうなどの原材料の産地と醸造地が同一の場合は、原産地呼称が出来るとあり、地域資源活用を推進するドメーヌ水戸にとって、地元農家の協力を得ることは大きいと言えます。

商店街(商店)との連携

ドメーヌ水戸の設置は、泉町二丁目商店街がこれまで推進してきた農業地域との連携による商店街の魅力向上策を強化しました。効果として、「ファーマーズマーケット@水戸」の出品による魅力向上や、後述するドメーヌ水戸が展開する醸造体験やワインツーリズムによる農業地域との関係性強化・歩行者通行量の増加などがあります。また、周囲の飲食店がドメーヌ水戸のワインとマリア-ジュする商品を開発し売上向上につなげるなどの効果もあります。

発酵中のぶどう
発酵中のぶどう

今回は、農業地域の魅力を発信してきた泉町二丁目商店街に、宮本氏がまちなかワイナリーを設置し、さらなる魅力発信に動き出すまでをお伝えしました。宮本氏はこれに留まらず、市民やファン顧客、農家、さらには教育機関などと連携して、ドメーヌ水戸の魅力だけでなく、地域の魅力の発信にさらに邁進していきます。その詳しい内容は次回お伝えします。