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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

市民が考えるまちづくり事業(大阪府堺市)

事業が基本計画に追加記載されるまで

事業の方向性と事業構築を図るチームの発足

まちづくり部会発足時、まちづくり部会を支援する中心市街地活性化アドバイザーから事業構築にあたり留意点が示されました。それは、実現性、公益性、収益性、継続性が担保される事業を構築することです。以上の要点を踏まえ、まちづくり部会は展開する事業について、「集客」「回遊」「堺らしさ」という観点から事業を構築することとし、以下の3つの事業構築チームが作られました。

・伝統産業の活用により集客を図る「チームTE(Traditional Experience(トラディショナル エクスペリエンス))」
・自転車の活用により回遊性を高める「SCC(Sakai Communication Cycle(さかいコミュニケーションサイクル))」
・商店が協働して堺を盛り上げる「堺の商人」(さかいのあきんど)

この3チームが、事業内容及び事業化に向けた取り組みについて、毎月1回以上、自主的に会合を開き事業のブラッシュアップを行います。さらに、3カ月に1度、3チーム合同の会合を開き、情報共有や意見交換の場としています。

事業化に向けた各チームの動き

まちづくり部会の事業構築を図る会合では、市民(民間事業者)が事業に対して主体性を持ち、事業の維持・発展を図る仕組みづくりの方策を引き出すために、ワークショップの手法を用いています。事業チームは、中心市街地活性化アドバイザーと協力して、ワークショップが開かれるごとに目標を定めて一歩一歩、事業化に向けて事業内容の具体化や事業計画立案等について話し合いを進めます。

さらに、事業チームは、話し合った事業について実現性や収益性があるかを検証するために試行事業を行います。例えば、チームTEは伝統産業の体験プログラムの商品化の為、毎年行われる市民イベントに出店し、採算が取れる価格帯を導出しました。SCCは自転車を活用し堺の回遊を高める「散走」を広めるため、様々な散走コースを開発し市内イベントに出展PRを行うことや、インバウンド客を取り込む為、外国人留学生に散走を体験してもらうことを通して課題抽出や事業構築のブラッシュアップを行いました。また、堺の商人では、モノの販売には限りがある認識し、コトを販売していく「ノウハウの商品化」を検討し、「ほんまもんを学ぶ」と題した事業を試行しました。
ワークショップの様子
ワークショップの様子

基本計画記載にむけた世話役会の動き

まちづくり部会には、3つの事業チームの他に「世話役会」が存在します。この世話役会は、まちづくり部会の中から有志を募り構成されたもので、まちづくり部会の運営を協議するとともに、各チームが抽出した事業効果や課題をもとに実現性の高い事業へ昇華するために、各チームの支援や、チーム間の連携を図っています。つまり、各事業を基本計画にふさわしい内容へ具体化しているといえます。

このように各チームの試行事業と世話役会の支援が両輪となる取り組みにより、まちづくり部会が提案した事業は、堺市中心市街地活性化基本計画に追加記載されることとなりました。基本計画に掲載された事業は以下の5事業になります。

• 伝統産業の拠点開発、街並み形成検討事業
• SAKAI散走による魅力発信事業
• さかいコミュニティサイクル事業
• 商店のノウハウ商品化事業
• 空き店舗の一時利用事業

 

参考URL)基本計画に追加記載された事業

堺市中心市街地活性化基本計画 新旧対照表 別ウィンドウでpdfファイルを開きます

参考)各チームが構築する事業の概要

チームTE

TEとは、伝統文化の体験の意味を持つTraditional Experience(トラディショナル エクスペリエンス)の略称です。このチームは堺の伝統産業を活用して中心市街地に集客を図ることを企画します。「伝統文化の拠点施設の設置と誘導」ならびに「体験プログラムの展開」により目的達成を目指しています。
具体的には、堺の伝統産業である、線香、昆布、注染和晒(ちゅうせんわざらし)などのPR、販売、製造、そして、体験などができる拠点施設の開設と誘導を図ります。拠点施設は、空き家の活用も視野に入れ、伝統産業ごとに開設し、将来的には、中心市街地に堺の伝統産業の拠点が集積する街並みの形成を目指します。現在、非営利で行ってきた「ものづくり体験」を、購入者にとっては金銭を支払う価値があり、事業者にとっては労力に見合う利益が得ることを目指しています。

チームTEが試行事業を行った「体験広場」のイベントパンフレット
チームTEが試行事業を行った「体験広場」のイベントパンフレット

SCC

SCCは、Sakai Communication Cycle(さかいコミュニケーションサイクル)の略称です。中心市街地来街者の回遊促進、そして、生活者の移動利便向上を図るため、地場産業でもある自転車の活用を目指すチームです。
具体的には自転車でまちを散策する「散走」を採り入れ、中心市街地の魅力を訪ね廻るプログラムを企画・実施し「散走のまち堺」をめざし、各事業者で毎月第三日曜日を「散走の日」として開催してきました。そして、次のステップとして外国人を含む旅行者をターゲットとし、「散走」により堺と中心市街地の魅力を伝えることを目標として、「散走アンバサダーの養成講座」を開催しています。

また、堺市内では「コミュニティサイクル」が展開されていますが、上記の散走プログラムと連動させ、料金支払いなどについてIT技術の活用や多言語対応により進化させる計画もあります。

SCCが展開する「SAKAI散走」の様子
SCCが展開する「SAKAI散走」の様子

堺の商人

チーム「堺の商人」(さかいのあきんど)は、堺市中心市街地内の主要商業地である堺東、堺山之口、堺にある商店が共同し、「自店や商店街の活性化」を図ります。
例えば、商業者の知識やノウハウを商品化し、新たな顧客開拓や収益づくりを行い、これにより中心市街地全体の活性化につなげます。伝統産業だけでなく、普通の商店にも、必ず価値のあるノウハウがあります。つまり、各店が持つ商売のノウハウを、高付加価値商品に仕立て上げ販売することを目指しています。既に商店街では、これを無償提供して顧客開拓する「まちゼミ」などの手法が普及していますがこの事業は、このノウハウを商品として販売する事業です。

さらに、空き店舗対策、商店街の魅力向上の為、空き店舗を短期で借り出せる仕組みを整え、気軽に色々な場所で商品やノウハウを販売できるよう検討しています。

堺の商人が試行事業を行った『「ほんまもん」を学ぶ』のイベントパンフレット
堺の商人が試行事業を行った『「ほんまもん」を学ぶ』のイベントパンフレット