創業者育成から開業後の事業継続まで一気通貫の空き店舗対策4
起業家育成塾などの創業支援策
以上のような商店街が商店主を育てる土壌を醸成した岩村田本町商店街が、空き店舗を埋めるために展開した事業が「起業家育成塾」です。これは長野県の委託事業である「街なか創業塾設置モデル事業」を活用して設置しました。起業家育成塾は、中小企業診断士が講師となり、起業希望者に経営の基礎を伝授する場所です。この塾の応募者に対して審査を行い、3名を選びました。
この塾で起業希望者は座学の他に、イベント運営や美化活動などの商店街活動を通した実習に加え、起業に向けた実習を行うなどを通して経営の醍醐味を学んできます。商店街活動の実習を行うのは、商店主と協力しながら商売することの意味を知ってもらうためです。ここには阿部眞一理事長の「商店街での商売を農業にたとえるなら、商店の利益は農作物である。その農作物をより良く多く収穫するには畑である商店街を良くすることが大切である」という考えが大きく反映されているといえます。
起業家育成塾で創業支援策の手ごたえを感じた岩村田本町商店街は、その役割を「本町手仕事村」と「つどいの館こてさんね」に引き継ぎました。
具体的に、本町手仕事村は「手作り、手仕事、技の街」のコンセプトを元に整備したいわゆるチャレンジショップです。どの業種でも出店してよいというわけではなく、岩村田本町商店街のコンセプトに即した店舗であることが必須になります。起業希望者は、自身の職人技を活かしたものづくりやサービスに事業性があるかここで試すのです。この事業は地元で話題となり、1回目の募集では定員6名に対して、44名の応募がありました。コンセプトを明らかにした創業支援策が創業希望者の掘り起こしにつながることを実感できる事象でした。
また、集いの館こてさんねは、本町手仕事村がものづくりやサービスのチャレンジショップであるのに対して飲食店のチャレンジショップと言えます。地域住民の文化交流施設としても機能しているので集客性があり、チャレンジャーにとっては自身の料理に対して多くの意見を収集できるコンセプトになっています。