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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

店舗開業前に顧客が出来たコミュニティカフェ(埼玉県越谷市)2

CAFE803のはじまり:平成26年冬

旧日光街道沿いにある新町商店会(全体店舗数39店舗)(以下、商店会)では、後継者がいる割合が約51%でした。「あと10年もすれば、残りの50%弱の店舗が廃業となる危機をどう回避していくか?」という問題を掘り下げたところから取組が始まりました。

それを踏まえ、越ヶ谷TMOの勧めで商工会が、対象顧客の分析をするために各個店で顧客向けのアンケートを採りました。その結果は、

  • 顧客の50代以上の年齢帯が72%と非常に高く、20~40代の割合が28%と低い
  • 顧客の63%が越谷駅近辺在住

これらの条件から新町商店会の顧客は、商店会の商店主とともに育った昔からの住民ではないか、と予測を立てました。

また、ちょうどその頃、越ヶ谷TMOが、市外からここ最近、流入してきた層が多く住む、中心市街地の集合住宅住民に対し、意識調査を行っていました。そのアンケートの対象属性は、300回答のうち62.8%が20~40歳代の住人ということがわかりました。

この調査から商店会長である井橋潤氏(金物屋 有限会社 釘清の店主)は、新町商店会の新しい顧客層作りと商いの仲間作りを図る構想を練り始めました。

井橋氏は昔からの住民と例大祭などの活動を積極的に行ってきました。商店会は様々な地域活動を行ってきたにも関わらず、店舗が減少し、コインパーキングや宅地化が進んでいる状況でした。井橋氏が最も重要視していた日光街道越ヶ谷宿の古くからある木造建築物の商家も閉店することでその多くが宅地に変わっていき、日光街道の趣が薄れていくことに悔しさを感じていました。そのなか上記のような「駅周辺の集合住宅にすむ新しい住民に対してアプローチできないか?」と考えました。

そこで、中心市街地の住民に対して、先住者(日光街道に一戸建てに住む層)・新住民(駅周辺の集合住宅に住む層)を上手に区分できる形でアンケートを配布し、以下のような内容を聞き取りました。

  • 新しい住民はどんな人なのか?
  • 新しい住民はどんな時間を土日に過ごしているんだろうか?
  • 新しい住民と越ヶ谷の関係は、何だろうか?
  • 街の人たちは街のどんな情報を欲しているのか?

<アンケート結果>

  • 駅周辺(アンケート配布範囲約半径500メートル)には、1000万円以上の収入を持つ世帯が約15%あること。
  • 越谷駅周辺の集合住宅に住みだした理由は、「通勤に便利」で63.5%であったが、次に22.6%で「知人、血縁が多い地区」であった。(マルチアンサー回答)
  • 越谷駅周辺の集合住宅の住民の約50%が越谷市以外に勤めている。
  • 越谷駅周辺の集合住宅の住民は約77%が共働きである。
  • 越谷駅周辺住民は、66%の人が「店舗の詳しい情報」、59%の人が「イベント情報」を必要としている。(マルチアンサー回答)
  • 越谷駅周辺の集合住宅の住民は街の情報を取得する方法は、「市報」(回答者の54.7%)、次に「SNS/ホームページ」(回答者の44.5%)から得ているに比べて、戸建て住宅住民は、「口コミ」(47.1%)、「市報」(45.9%)、「SNS/ホームページ」(36.9%)の順になっている。(マルチアンサー回答)

井橋氏はアンケートの結果から集合住宅の住民の特徴と大まかな対策方針を以下のように考えました。

  • 以前から越ヶ谷には何らかの繋がりがある人たちが多いので、街に興味がないわけではない。よって、街の紹介ができる仕組み作りを考え出す。
  • 共働きの子育て世代で、比較的裕福な世帯が住んでいる。よって、日常の必需品以外にコト消費に対する需要を探り出す。
  • 平日は、スーパーなどの利用が多いが、土日の過ごし方を探している(イベント情報を欲している点から)が、友人などのネットワークがまだまだ希薄である。よって、ゆっくり交流できる場所を提案する。
  • 若い世代が多いのか、情報取得は、市報を除くとSNS/ホームページが多い。よって、Facebookなどで情報伝達を検討する。

ここから越ヶ谷TMOと新町商店会で越ヶ谷サードプレイスPJ実行委員会(以下、実行委員会)をつくり、新しい顧客獲得の対策を練ることになりました。実行委員会では、井橋氏の希望もあり、井橋氏の出資で街の情報発信基地になり、創業応援のできるコミュニティカフェの計画が始まりました。事前に三つの条件を守ることを委員会で決めました。

  1. カフェは飲食のほか、ギャラリーや教室など、様々な目的に使用できるスペースとして経営をしっかり行い黒字化にする。
  2. カフェができるまでに新しい客層を街に巻き込む。
  3. 将来の商業者の仲間作りとして創業支援の種まきを行っていく。
CAFE803&IC803の様子
CAFE803&IC803の様子