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柳ケ瀬のファンづくり
「柳ケ瀬商店街探検隊」小学校社会見学プログラム

ポイント

  • 商店街の特徴や魅力を体験・理解する社会見学
  • 小学生との交流による商店街のファンづくり
柳ケ瀬商店街探検隊
場所:
岐阜県岐阜市柳ヶ瀬
人口:
約41.8万人
分類:
【イベント】
協議会:
あり
実施主体:
岐阜市、岐阜柳ケ瀬商店街振興組合連合会、
一般財団法人岐阜市にぎわいまち公社
まちなか情報交流拠点「柳ケ瀬あい愛ステーション」
関連記事:
一般財団法人岐阜市にぎわいまち公社
 

http://www.gifu-nigiwai.org/blog/ 別ウィンドウで開きます


1.まちの概要

 岐阜市は日本のほぼ中央にある岐阜県の南西部に位置し、名古屋市からは約30㎞、東京からは約250km、大阪からは約140Kmの距離にあります。市の南部にはJR岐阜駅、名鉄岐阜駅があり、また東海北陸自動車道各務原IC、名神高速道路岐阜羽島ICに近接し、交通の要衝となっています。

 JR岐阜駅から北へ1Km離れた場所に位置する柳ケ瀬は、岐阜市の中心商店街として、以前は各種小売店や飲食店が軒を連ね、映画館などの娯楽施設もあることから市内外の住民が利用する繁華街として、肩が触れあうほど多くの人が訪れ賑わいを見せていました。「柳ケ瀬ブルース」のヒットにより全国的な知名度も得ていました。

 しかし、平成11年以降、郊外店舗の立地により、柳ケ瀬にあった京都近鉄百貨店などの大型店舗が相次いで閉店し、また平成16年には柳ケ瀬の南を通る路面電車も廃止されたこともあり、来街者数は激減しました。

 このような衰退した柳ケ瀬を活性化すべく、平成19年5月に認定された「岐阜市中心市街地活性化基本計画」に基づき各種の施策が講じられてきました。加えて、平成23年4月に中心市街地活性化を目的として、商店街と市が誘致したドン・キホーテが大型店跡地にオープンし、近年遠のいていた若年層の客足が戻りつつあります。

2. まちの活性化への取組

(1)取組の経緯

 岐阜市立の小学校3年生は、社会科の副読本「わたしたちの岐阜市」のなかで、柳ケ瀬商店街とコンビニやスーパーマーケットとの違いを学習し、店の特徴や商店街で工夫していることを理解するために社会見学することとなっています。従前から柳ケ瀬商店街での社会見学は実施されてきましたが、学校側の期待する内容と商店街側の伝えたい内容との調整がされず、その結果、学校の先生に柳ケ瀬商店街での原体験や知識がないため、子どもたちの商店主への質問は量販店をイメージした一般的なものとなり、期待される学習効果が得られず、また商店街も子どもたちの質問に答えるのみで、大人の視点による説明になっていました。

 柳ケ瀬商店街として何を子どもたちに伝えたいか、そこで作られたのが小学校社会見学プログラム「柳ケ瀬商店街探検隊」です。岐阜市、岐阜柳ケ瀬商店街振興組合連合会、一般財団法人岐阜市にぎわいまち公社が連携し、先ず教育委員会や教育関係者にヒアリングを行い、指導要綱や教材を把握したうえで「商店主との交流や特別な体験を通じて、楽しみながらお店の特徴や魅力などを知ってもらう」プログラムを作成しました。一方、商店街振興組合を通じて協力店の募集を依頼し、必要に応じて個店ごとに説明を行いました。こうして平成22年10月から2か月間試験的に実施されました。

「柳ケ瀬商店街探検隊」はマスコミに取り上げられるなど好評を博し、翌平成23年度には、41店舗の協力のもと24校、約1700名の生徒が参加しました。そして、平成24年度には28校、2040名の参加が予定されています。

(2)取組内容

やななからのミッション

 それでは具体的に見てみましょう。柳ヶ瀬商店街のほぼ中央にある「柳ケ瀬あい愛ステーション」(基本計画に基づいて開設された情報発信・交流拠点)に教員の先導により小学校3年生が集合します。先ずは商店街が制作したビデオを鑑賞します。柳ケ瀬商店街の歴史、大きさ、ショッピングモールとの違い、商店街でお客さんを集める工夫などについて、柳ケ瀬のキャラクター「やなな」が説明します。そのあと5名程度のグループに分かれて「やななからのミッション(指令書)」に従って個店を訪問し、グループで協力して店主に質問したり、体験させてもらいながら店の特徴、工夫を学び「ミッション」を達成します。複数のミッションを終えたグループは「柳ケ瀬あい愛ステーション」に戻り、グループの代表がそれぞれの感想や、見つけてきたものの発表を行い、最後に任務完了の証として「隊員カード」が全員に手渡されて終了します。

 「ミッション」の一例
 「化粧品のナミコシで、この店にしか売っていないものを探せ」
 化粧品のナミコシには、化粧品や化粧のための道具のお店。化粧の仕方やお肌の手入れなどの相談もすることができる。このお店の特徴は、「演劇用の化粧品」を売っていること。岐阜県ではここだけしかない。

   ★いつ、このお店が出来たか調べてみよう。(お店の看板を見てみよう)
   ★「演劇用の化粧品」ってなんだ。どんな色があるかな。見学してみよう。
   ★スペシャルミッション 演劇用の化粧品を体験してみよう。
   等々
  最後にお店の人にお礼を言って、基地(あい愛ステーション)へ帰還だ。

 子どもたちが楽しく学べるように、「やななからのミッション」、「隊員カード」などの道具や、「探検隊」「基地」、「帰還」「合言葉(最初にお店の人に挨拶すること)」などの言葉にその工夫が見て取れます。

3.取組の効果

 「柳ケ瀬商店街探検隊」に参加した子どもたちは、商店街にはショッピングモールには無い専門的な商品を販売している店、歴史のある店、職人・名人がいる店があることを知り、そして店主と会話することの楽しさを経験し、郊外のショッピングモールとの違いを原体験するのです。

 この社会見学プログラムからいろいろな効果が得られています。学校の先生からは、「柳ケ瀬商店街探検隊」の予習から復習の数週間、子どもたちのテンションが高く、学校でも家庭でも探検隊の話で持ちきりだという評価。また、父兄からは、子どもが目をきらきら輝かせながら、探検隊で体験した商品の話を聞くにつけ、休日に子どもの案内で柳ケ瀬を訪れ、柳ケ瀬の魅力を再認識したという声が寄せられています。そして何より商店主の意識の変化です。子どもたちに店や商品のことを伝えるために、分かりやすい言葉を選んだり、より理解してもらえるように体験メニューを考えるうちに、「自分の店を再認識した」「店のことを話すことが楽しくなった」と言っています。新規顧客がなかなか開拓できないなか、自分のうん蓄を語ることが少なかった店主が、子どもと語らい、それにより子どもが驚く姿を見て、職人・商売人魂をくすぐられるのです。

ミッションの様子

4.取材を終えて

 「柳ケ瀬商店街探検隊」の実施中、岐阜市にぎわいまち公社の窪田清明さんは探検隊副隊長として大忙しです。子どもたちが戸惑っていないか、商店街を駆け回って見守っています。

 窪田さんは「商店街は子どもを応援する公器であるべき」と言います。それを実践する形で地域社会での商店街として「柳ケ瀬商店街探検隊」が続けられていますが、この取り組みは同時に、将来の商店街のステークホルダーとしての子どもたちが、商店街の良さを原体験することにより、商店街のファンになってもらうことを意図しています。

 柳ケ瀬商店街では幼児を対象に、七夕やクリスマスの時に子ども達が作ったかざりを個店の店先に展示する事業や、おもちゃのお札を使い商店でお買い物をする「おかいものごっこ」も展開しています。今年はこれらを体験した子どもが小学校三年生となり「探検隊」として戻ってくる年。取材日の小学校でも過半数が幼児の時の参加者でした。商店街にますます親しみを持つことでしょう。

 商店街に黄色い帽子をかぶった子どもたちが行き交い、商店主と語らう姿は、いつか見た商店街の光景を思い起こさせてくれます。

 「柳ケ瀬商店街探検隊」は商店街の活性化に直ちにつながることは無いかもしれません。しかし体験して感動した子どもたちから届けられる数多くの礼状が、商店街の元気につながっています。

<取材日H24年9月>