弘前レディーが案内する街歩き 青森県弘前市
ポイント
- 観光都市・弘前のローカル団体が、地元住民・女性目線で、てづくり感あふれる様々なコースを用意し、まちなかの回遊性向上に貢献。
- 肌で弘前の街に触れることができる、体験型のコースを設け、観光客、市民に人気の取組へ。
- 場所:
- 青森県弘前市
- 人口:
- 18万人
- 分類:
- 【イベント】
- 協議会:
- あり
- 実施主体:
- 津軽・ひろさき街歩き観光推進実行委員会
- 支援策:
- --
- 参考URL:
- 津軽・ひろさき街歩き観光推進実行委員会
- ふれーふれーファミリー
1.まちの概要
位置・人口
弘前市は長らく、津軽藩の城下町として発達してきました。現在も、青森県西部・津軽地方の政治、経済、文化の中心として機能し、人口は約18万人(平成23年10月)で、平成7年をピークに減少しています。
交通アクセス
平成22年12月に、東北新幹線が青森(新青森駅)まで開通し、在来線と併せて、東京からの所要時間は、最短で約4時間となりました。また、東北自動車道の大鰐弘前ICから中心市街地までは、車で約20分です。
2.まちの現状と課題
(1)まちの現状
当市は東に八甲田連邦を望み、西に津軽の霊峰岩木山を有し、南には世界遺産の白神山地が連なり、こうした自然的資源の他、藩政期以降受け継がれてきた歴史的資源が豊富に存在します。
観光面においても、日本一の桜の名所である弘前公園をはじめ、数多くの伝統的建築物が存在します。 さらには、「さくらまつり」をはじめとした津軽の四季を活かしたまつりが開催され、毎年多くの観光客が訪れます。
また、日本一の生産量を誇る「リンゴ」は、全国的にも有名で、まちなかには、リンゴをモチーフとした、デザインや建築物が目立ちます。
(2)まちの課題
市全体の人口が減少していることと並行し、中心市街地においても、人口減少が著しくなっています。中心市街地の顔でもある土手町商店街(上土手、中土手、下土手の3商店街振興組合)は、長さ約1Kmにも及ぶ長い商店街で、昔からの名店も多く連なりますが、近年、歩行者通行量が少なくなってきています。
また、商店街に立地する百貨店、駅前再開発ビルの倒産等、中心市街地は厳しい現況にあります。
中心市街地には、弘前城をはじめ、禅林街、国の重要文化財に指定されている五重塔があり、藩政時代の趣が残っています。併せて、銀行記念館、教会等、明治・大正期の洋風建築などの歴史的文化財も多く存在し、和洋折衷の文化を織りなしています。
こうした中、歴史的・文化的資源を活かしたサービスを提供することで、観光客や市民が複数の観光施設等を利用し、中心市街地における回遊性の向上を図ることが強く求められています。
3.活性化の取り組み
(1)取り組みの目的
こうした状況を踏まえ、中心市街地を中心とした、地元弘前市民の有志が立ち上がって、できた団体の一つが「ふれーふれーファミリー」です。当団体は、地元の女性が中心となって、平成17年頃から、商店街に訪れる買い物客に対して、託児サービスをはじめ様々なサービスを提供することからスタートしました。
平成20年に、中心市街地の現況を踏まえ、もとの活力のある弘前の雰囲気を取り戻そうといった声が高まり、「街歩きのエスコート」を開始しました。
(2)取り組み内容
「ふれーふれーファミリー」の「ひろさきエスコートガイド」スタッフ(現在6名)は全員地元の女性です。弘前の表も裏も知り尽くした彼女達が、女性の目線でチョイスした素敵な場所を案内してくれます。歴史的・文化的施設の他、弘前市はコーヒー、そしてスウィーツの街でもあります。案内してくれるコースは、様々な種類があり、各コースの料金は、おやつ代等込みで、平均して1,000~2000円です。
特に人気の「りんごのつまみ食いコース」では、途中、地元の和菓子店を訪れ、リンゴの生食からアップルパイ、和菓子まで、リンゴをハシゴできるようなコース設定となっています。また、「こぎん刺しコース」では津軽伝統の幾何学模様の刺繍を、実際参加者が体験し、爪楊枝入れ等を作成できます。
各コースとも、1グループ約5名の体験型のコースで、案内人がきめ細かい説明により、街歩きをサポートしてくれます。
(3)津軽・ひろさき街歩き観光推進委員会としての役割
弘前の街歩きの案内を行う団体には、前述の「ふれーふれーファミリー」の他、「弘前観光ボランティアガイドの会」、「弘前路地裏探偵団」等があります。
各団体によって形成される「津軽・ひろさき街歩き観光推進委員会」は、(社)弘前観光コンベンション協会と一体となって、弘前の観光を「街歩き」といった側面から支え、弘前の中心市街地、そして津軽地域の活性化に寄与しています。
近年の観光ニーズは、単なる物見遊山的な観光バス等による周遊観光から、その地域の歴史や産業文化を体験する個人型・学習観光に急速に変化しています。
そうした、時代の流れに沿って、当委員会が中心となって用意した体験型のコース数は全部で約40にも及びます。
4.取り組みの効果
平成22年の当委員会発足以降、各団体による体系的な街歩きの案内の仕組みづくりの影響もあり、これまでに、約250グループ、1,200名以上のお客様をご案内しております。「歩いて楽しい街」とお客様から好評を得ており、予約申し込みを伸ばしています。
また、弘前は、「さくらまつり」、「ねぷたまつり」の他、四季を彩るまつりが開催されることもあり、そうした時期は季節の特色を活かした「街歩き」コースをご案内しています。
5.今後の課題
「ふれーふれーファミリー」をはじめ、各団体の運営を、現在の参加費だけで推進していくのには、非常に厳しい状況です。平成23年度は、厚生労働省の「ふるさと雇用再生特別基金事業」にも採択され、スタッフの人件費を含め、運営費の一部を賄うことができましたが、現在もスタッフは、半ばボランティア的に活動しているのが現状です。
しかしながら、このような形での地元の有志・スタッフによる特徴的な観光案内は、全国的にも先進的なものであり、地域内、観光客からのニーズが非常に高く、中心市街地の活性化のためのソフト事業として、今後の地域の発展に大いに資すると期待されています。
6.取材を終えて
「ふれふれファミリー」代表で、弘前市中心市街地活性化協議会副会長でもある一條敦子氏の「弘前のまちの良さを少しでも体験してもらい、まちなかのにぎわいづくりのお力になれたらと思い取り組んできました。財政面の課題はありますが、利用者や関係者の方々からの多くの励ましをいただき、事業規模は小さくなっても、大好きな弘前のために、この事業を続けていきたい」との弘前の再生を想うお話が印象的でした。
<取材日H23年11月>