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中心市街地活性化協議会支援センター

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(第1回)自己成長を遂げながらまちに活気を与える市民組織(栃木県日光市)

事業展開のポイント
  • 地域の課題解決に合ったまちづくり事例の研究と実践
  • まちづくり活動の中で見えた新たな課題に対する主体的な解決行動
  • 事業・組織が拡大する中で、次のステージを目指すために組織の方向性を見直す

中心市街地活性化基本計画に定められたハード事業の波及効果を図るため、ソフト事業を積極的に展開する市民組織が栃木県日光市にあります。「歩きたくなるまちづくり委員会」と名付けられたその市民組織は、まち歩きマップの作成やまちバルの展開を通して見えてきたまちの課題を楽しみながら克服しようとしています。

今回はその取り組みについて、歩きたくなるまちづくり委員会の会長である堀井克俊氏(以下、堀井氏)と、イベント企画の中心となる今成綾氏(以下、今成氏)、そして歩きたくなるまちづくり委員会の事務局の役割を担いながら一市民として歩きたくなるまちづくり委員会を支える日光市産業環境部商工課商業振興係の副主幹である田中晃司氏(以下、田中氏)、主任の江連嘉一氏(以下、江連氏)にお話を伺いました。

※日光市の取り組みは2回に渡ってお伝えします。

歩きたくなるまちづくり委員会会長の堀井氏(左)と企画を担当する今成氏(右)キッズゲルニカ(後述)の前にて

歩きたくなる街づくり委員会発足のきっかけ

2011年に認定された日光市中心市街地活性化基本計画(計画期間2011年3月から2016年3月)にはハード事業である「道の駅日光 日光街道ニコニコ本陣(以下、ニコニコ本陣)」整備があります。中心市街地活性化基本計画認定当時、日光市は、2015年のニコニコ本陣開業を4年後に控え、ソフト事業の展開によりニコニコ本陣から中心市街地への回遊創出を図るため、まちづくりの次世代を担う若者を中心とした組織を発足しようと計画しました。それが、「歩きたくなるまちづくり委員会」です。

今市(いまいち)地区中心市街地とニコニコ本陣(日光市中心市街地活性化基本計画を編集して作成)
【参考】中心市街地とニコニコ本陣

ニコニコ本陣は、日光街道沿いに発展した商店街の中にあります。かつてこの商店街は旧今市市民の生活の中心となる商店街でしたが、大型店の郊外出店により徐々に衰退していました。そんな中、旧今市市は市町村合併後、旧日光市、鬼怒川温泉を有する藤原町などと合併し日光市となりました。

日光・鬼怒川の玄関口といえる旧今市市の中心市街地は、こうした外部環境の変化に対応すべく、日光街道を通る観光客の入込も視野に入れた動きが求められます。ニコニコ本陣は、旧今市市中心市街地の住民と観光の交流を図る拠点です。地元農産物を始め、地元の名店が道の駅に出店し日光の魅力を発信するとともに、日光ゆかりの作曲家である船村徹の記念館も人気を博し、ニコニコ本陣の2017年度入込客は約100万人に達しています。
 

参考URL)ニコニコ本陣ホームページ 別ウィンドウで開きます

日光市の呼びかけにより、歩きたくなるまちづくり委員会は、7名の20代の社会人を中心に発足しました。中心商店街に店を構える若店主やサラリーマンまで背景は様々です。事務局は、日光市が務めるものの将来的には活動資金の調達なども含めて自立する仕組みを構築することを念頭に動き出しました。楽しんでまちに活気を与えることをテーマとしていますが、この自立を念頭に置く動きは、今後展開することになる事業にも、補助金に頼らない仕組みづくりにつながっています。

まち歩きマップの作成

歩きたくなるまちづくり委員会が始めに取り組んだ事業は、まち歩きマップの作成でした。まち歩きマップは藤田とし子氏指導の下、作成されました。歩きたくなるまちづくり委員会は、藤田とし子氏の支援した地域の視察などを通して、まちづくりやソフト事業展開のポイントを学びました。そのポイントを踏まえながら、歩きたくなるまちづくり委員会のメンバーは藤田氏と協力して、自分が好きと思うまちの良いところをリストアップしました。今市(いまいち)にちなんでまち歩きマップに落とし込むスポットを101にすることに。始めは101も候補が出るか不安でしたが、出してみると120を超えるスポットが出てきました。

今市(いまいち)地区中心市街地とニコニコ本陣(日光市中心市街地活性化基本計画を編集して作成)

出し合ったそのスポットの中には、メンバーによっては知らないものもあり、同じ今市地区でもメンバーそれぞれの背景の違いが映し出されるものでした。そのことに面白みを見出したメンバーは、知らなかった地元のスポットを歩き、魅力を確かめ合いました。今市が好きで今市を盛り上げようと集まったメンバーですが、このまちの歩き直しをきっかけに知られざる魅力スポットを知り、さらに参画意識を高めました。

こうして101の魅力が詰まったまち歩きマップは「今市×ピカイチ101まっぷ」と名付けられ、駅構内や中心市街地の各所に設置されました。「今市×ピカイチ101まっぷ」の中から飲食店をクローズアップした「今市×ピカイチ食べ歩きたくなるニコニコマップ」は、毎月1,000枚の利用があるなど観光客や地元住民に愛されるマップとなりました。

今市×ピカイチ101まっぷ(表面)
今市×ピカイチ101まっぷ(裏面)

まちなかバルの展開

まち歩きマップ作成により、まちの魅力を再発見した歩きたくなるまちづくり委員会が次に取り組んだソフト事業はまちなかバル(以下、まちバル)です。まちバルは、まちなかの飲食店の魅力を発信するために、飲み歩き・食べ歩きを促進するチケット制のイベントです。イベント来訪者にとっては、普段よりお得な価格でお店の魅力を知るきっかけであり、イベント参加飲食店側としては普段接点のないお客様にお店の良さを知ってもらうことで、固定顧客化につなげるイベントです。つまり、飲食店にとっては、イベント参加費や普段よりお得な料金で提供するサービスについては広告投資と捉えるイベントです。

藤田とし子氏の支援した地域の視察を通して、上記のまちバルの意義を飲食店に理解してもらわなければ、飲食店にとってはただの割引販売日となってしまうことを歩きたくなるまちづくり委員会は学んでいました。そこでバル開催にあたって、歩きたくなるまちづくり委員会は、飲食店の負担の少ない時間帯などを考慮して、まちバルイベントの意義を一軒一軒丁寧に説明して回りました。それは、企画してから半年以上の準備期間を掛ける徹底ぶりでした。

まちバル実施前の最終確認の様子(歩きたくなるまちづくり委員会フェイスブックより)
中心市街地の酒蔵が行ったまちバルは、音楽イベントと共に開催された
店舗、市民の双方に人気のまちバル(左)訪日客の参加があった店舗もある(右)

まちバルの開催により、まちに変化が生まれ始めています。中心市街地の飲食店の利用が増えたことはもちろんのこと、飲食店店主がさらなる固定顧客獲得のため、店頭にA型看板を設置するようになったり、新メニューの開発に勤しむようになりました。さらに、飲食店の中から、歩きたくなるまちづくり委員会への参画の申し出がありました。飲食店の店主が、自らの経営だけでなく中心市街地の一員として環境改善に動き出そうとしているのです。こうした、来街者や飲食店店主の満足度の高さから、まちバルは継続実施につながっており、始めは補助金を活用したイベントでしたが、バルチケットの収入などで自主運営できるまでになりました。会発足当時に確認された自主運営へのこだわりが実を結んだのです。

今回は、日光市が今市地区に整備する道の駅に併せて、歩きたくなるまちづくり委員会を組織し、まち歩きマップの作成やまちバルの開催などのソフト事業を展開したところまでを述べました。次回は、歩きたくなるまちづくり委員会が以上のソフト事業を展開した後、さらにまちづくりに関わる様子についてお伝えします。

参考リンク