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『近畿中心市街地活性化ネットワーク研究会in草津』が開催されました。
2021年11月30日、滋賀県草津市で『近畿中心市街地活性化ネットワーク研究会in草津』(近畿中心市街地活性化ネットワーク研究会主催・中小機構共催 以下 セミナー)がリアルとwebのハイブリットで行われました。リアル参加、web参加合わせて17地域45名が参加しました。セミナーの様子をレポートします。
セミナー次第
- 第1部 フィールドワーク
- 「草津まち案内」
- 第2部 研究会
- 〇キートーク 草津まちづくり株式会社 西澤奈都美氏
<まちづくり会社の仕事> 草津市中心市街地事業紹介
<旗を立てる> 草津小市に込めた思い
<場所を作る> 「みんなのハナレ」
<仲間と集う> 新たなつながりから生まれる事業
〇対談 「まちづくり会社ではたらくということ」
〇全体ディスカッション「まちづくり会社」新時代
〇各地域からのお知らせ
第1部 フィールドワーク「草津まち案内」
草津市は滋賀県の南東部に位置しており、県庁所在地の大津市に次ぐ県下第2位の人口を有する都市です。中心市街地は東海道と中山道の分岐・合流点という交通の要衝として、江戸時代には宿場町として栄え、当時の面影をとどめる寺院や歴史的建造物が残されています。
駅前商業施設『ニワタス』、草津川跡地公園内にある商業施設『クサツココリバ』等の施設、まちづくり会社が運営しているコワーキングとシェアスペース『みんなのハナレ』、草津宿本陣を中心とした本陣エリア等を視察しました。
第2部 研究会
視察後は草津市立市民総合交流センター(通称:キラリエ草津)にて、第2部の研究会が開催されました。
主催者挨拶
開始に先立ち、主催者の近畿中心市街地活性化ネットワーク研究会(以下、研究会)の会長 南紀みらい株式会社(和歌山県田辺市)尾崎弘和氏より、開会の挨拶がありました。
講演:草津まちづくり株式会社 これまでの取組み
続いて、草津まちづくり株式会社の西澤奈都美氏より、「草津まちづくり株式会社 これまでの取組み」と題して講演がありました。
西澤氏はまちづくり会社で事業担当として各種事業の運営に従事し、『草津小市』や『みんなのハナレ』の立ち上げ・運営に携わっています。
草津まちづくり株式会社の事業紹介や、西澤氏自身が手掛けてきた事業等についてお話いただきました。
●『草津小市』…暮らしをテーマに歳時記に開催しているマーケット
Instagram #草津小市 https://www.instagram.com/kusatsu.koichi/
●『みんなのハナレ』…路地裏にある築80年の長屋の一軒をリノベーションしたシェア・コワーキングスペース
https://hanare.kusatsu-koichi.com/
※講演の詳細は事例として別ページで紹介しています(リンクは下記より)
<『草津小市』、『みんなのハナレ』取組みの特徴>
● プロのデザイナーを起用し、一貫したブランディングを実施
まちづくり会社ではイベントを企画・開催する際、販促費用を抑えるために担当者が写真撮影やチラシ作成を行うことが多いのではないでしょうか。
『草津小市』の成功のポイントの一つとして挙げられるのが、プロのデザイナーを活用したことです。西澤氏はデザイナーと『草津小市』のコンセプトやビジュアルを作り上げました。デザイナーと一緒にまちを歩いて、デザイナー目線で撮影した草津のまちの写真をSNSで発信し、ポスターにまとめるところまで、『草津小市』の一貫したブランディングを行いました。
その結果、想定したターゲットが『草津小市』に訪れ、口コミ等で回を重ねるごとに規模は大きくなり、関わる人も増えていきました。また、『草津小市』開始以降、地域に新規出店が増え、『草津小市』による賑わい創出の効果は大きいといえます。
● 「まちづくりをしたい人」ではなく「何かやりたい人」が活躍できる場をつくる
担い手不足、まちづくり人材不足は多くの地域で課題として挙げられています。「まちづくり人材育成」というキーワードはよく聞かれますが、草津まちづくり株式会社は「何かをやりたい側の人」を集めることで、仲間を増やすプロセスを作り上げています。
その結果、『草津小市』や『みんなのハナレ』を中心としたコミュニティづくりなど、まちに関わるプレイヤーたちを集めることに成功しています。
対談:まちづくり会社で働くということ
西澤氏の講演の後は、草津まちづくり株式会社の経営陣と西澤氏、聞き手の若狭健作氏(株式会社地域環境計画研究所)により、対談が行われました。事業を立ち上げた際の苦労や、社内のチームワークや役員とスタッフの関係性等、いろいろとお話いただきました。
事例紹介にあった『草津小市』ですが、当初は予算60万のうち半分以上が「広告宣伝費」(デザイナー、コピー、チラシ代)だったそうです。
西澤氏の上司である辻マネージャーの前職は百貨店で、いかに少ない宣伝費で効果を上げるかという考えが先行したそうですが、西澤氏と協議を重ねる中で、広告宣伝費に費用をかけることは、『草津小市』をブランディングする上で必要であると判断したそうです。
<聞き手>結果として『草津小市』は成功しましたが、収益が上がる事業でもない。当時はどのように思っておられましたか?
<辻マネージャー>
「デザインの力ってすごいな、勉強になった、ありがとう」と言ったことを覚えている。
伝えたい人に伝わる内容でないと人には伝わらない。デザインをしっかりすることによって、本陣エリアのまちなかに来てほしい年代の人、テイストの人が来てくれるようになり、『草津小市』の噂が噂を呼んで『みんなのハナレ』にも人が来てくれるようになった。
西澤さんは視察に行った先で、通常は聞き流すようなこともひとつひとつインプットした。覚えたこと・理解したことを草津に合う形に落とし込んだ結果、『草津小市』や『みんなのハナレ』にアウトプットした、これは凄いことだと思っている。
<南社長>
まちのためになれば良いと思ってまちづくり会社を作っており、テナント運営で利益を出せる部分があれば、儲からない事業でもまちに還元する部分があれば良いと思っている。
行政、金融機関出身者以外の役員は主に草津青年会議所OBなので、昔からつながりが強い。事業はトップを中心に、皆一緒に協力して実施しており、社長としての仕事は皆のベクトルを合わせてチーム力を高めることだと考えている。
<権田副社長>
まちづくり会社として、収益を上げる事業と投資する事業をしっかり見極めているので、『みんなのハナレ』については投資として実験的にやってみよう、となった。この場所には、これまでのまちづくり関係にはいなかった文化的な人、ファーマーズマーケットに取り組むような若い人等が登場する場所になった。また、新旧の住民が立ち寄ったり交流できる場所にもなり、一般的なシェアオフィスとは違った「文化の交流点」として、地域の中の情報ツールの一つになってきている。
まちづくり会社はイベント会社ではない、ということをよく話している。収益を上げるといっても、その収益は金銭的なものだけではない。文化の発掘や交流、情報発信等の取組みを通して、それが最終的にまちの利益になったら良いと考えながらやっている。
<聞き手>
事例紹介では『草津小市』は間接的な影響かもしれないと謙遜されていましたが、『草津小市』が始まった後ベーカリーショップや焼き菓子店が開店したほか、カウンターだけの日本料理店のような、こちらが想定していなかったお店も開店するようになりました。
実際に最初の30万円のデザインが活きているのだと考えると、非常に安いと言えますね。
質疑応答:
その後、会場参加者からの質疑応答を行いました。
<質問>草津まちづくり株式会社は色々なプロジェクトをされている多彩さがすごい。特に3年目の『草津小市』では開催拠点が広がって規模が大きくなった。どのように仲間を集めてマネジメントしていますか?(長浜まちづくり株式会社:竹村光雄氏) |
<西澤氏>
草津まちづくり株式会社は4人の社員とパート1人の少人数体制。企画から運営まで何もかも自分たちでやろうとすると、いまのスタッフだけでは回らないので、例えば『みんなのハナレ』でいうと「番頭さん」や貸切利用で使ってくれる方が、自分たちのやりたいことを実現しながら、まちを支えてくださっていると思っています。
『草津小市』で色々失敗してきた反省もあり、まちづくり会社としては、彼らに対してまちのために何かやって欲しいとはしていません。特にマネジメントはしておらず、まちづくりをしなくてはいけないと思って参加している人はいないと思います。
<聞き手>失敗とはどのようなものですか? |
<西澤氏>
「一緒にまちづくりをしよう、まちについて考えよう」と言うと、まちづくり会社へ「こんなことしたらいいですよ」という提案するだけの人を増やしてしまう。そういう提案するだけの人や評論家を増やすのではなく、自ら動いてやりたいことを実現しようとする人を増やしたいと思いました。
<聞き手>
エリアマネジメントが言われるようになった“まちづくり会社の新時代”では、サービス提供型ではなく、プレイヤーが活躍できる舞台を用意することがまちづくり会社の仕事といえますね。
<質問>まちづくり会社では賑わい創出事業以外に、他にどのような委託事業をされていますか。(伊丹まち未来株式会社 内田悦子氏) |
<西澤氏>
交通量調査等もありますが、草津市の各課からアート系や健康系のイベント企画運営の委託があります。これらは、ただ単にイベントを開くだけでなく、事業効果がまちなかに波及することを念頭に置いているため、中心市街地のまちづくりに携わる私たちを選んでいただいていると思います。
<聞き手>草津市全体でまちづくり会社に仕事を発注してまちづくり会社を育てようという気運を感じます。ポスト中活と言われる中でまちづくり会社がどう存在感を増していったらいいか難しいところだと思います。伊丹ではどういった課題がありますか? |
<伊丹まち未来株式会社 内田氏>
これまで実施してきた事業等を大事にしながら、新しいものも取り入れていくという、ちょうど狭間に来ていると思う。
<聞き手>西澤さんの仕事のやり方は、市から委託する事業を会社として行うことと、自分から提案する事業の二つを分けて行っていると思います。意図的にバランスをとっているのでしょうか? |
<西澤氏>
市の委託事業等は他のメンバーがきっちりやってくれています。誰か一人がイベントを担当するのではなく、例えば、今年行った「切り絵展」の場合、設営等は同僚の尾中さん、情報発信やプロデュースは西澤と、それぞれの得意を生かして役割分担を行っている。
<聞き手>同僚の方からも是非コメントをお願いします。 |
<事業担当 尾中章洋氏(草津まちづくり株式会社:事業担当)>
西澤さんと一緒に仕事をしていると、「こういう考え方があるんだな」と気づくことが多く、互いの得意なことと不得意なことを補い合いながら仕事が出来ていると思う。
<事業担当 金綱遼夏氏(草津まちづくり株式会社:事業担当)>
クリエイティブな西澤さん、行動力の尾中さんの二つの面を近くで見ることができ、それを参考に仕事ができる。ありがたい環境で働けていると思う。
<南社長>
フォワードが西澤さん、ディフェンスが尾中さん、金綱さんは両方の良いところを取り入れている、良いバランスだと思う。
<質問>コロナウイルス感染症の影響はどうでしたか? |
<西澤氏>
まちのイベントが次々と中止になり、『草津小市』でお世話になった方々からも「自分の作品を発表する場がない」という声を聞くようになった。何か出来ることはないかと考え、日常の中に小さな楽しみが作れるようにと、“小さなハレ(非日常)をつくろう”という企画を立ち上げた。2020年7月~8月に『みんなのハナレ』の貸切利用料を2500円から500円にして利用してもらった。
これは、利用料を安くすること自体に意味はなく、何かをやろうとする人を応援したいという気持ちを伝えたいと思い企画した。その結果、スペースを使ってくれる人も増え、あらためて、場所を持っている強味を感じた。
<質問>『草津小市』において仲間づくり等はどう進めてきたのでしょうか。(南紀みらい株式会社 尾崎弘和氏) |
<西澤氏>
当初は、「まちづくりに関心のある人」をターゲットにしたが、先ほど話した通り提案型が多く、実働はまちづくり会社が担い、負荷が大きかった。「こんなことやるんだけど、いっしょにやりたい人いますか?」と、この指とまれ!のように「やりたい人」を集めるようになったこと、人の集め方を変えたことが良かったのかな、と考えています。
入社した当初、人間相関図のワークショップをした時、あまり人が出てこなかった。それから、あらゆるハード整備事業を終え、次の事業を考えるときに、「これからは、西澤さんの友達を作りましょう」と言っていただいたことを覚えていて、友達作りの延長線が今の仲間につながっています。
(各地からの情報提供等)
最後に各地域からの情報提供や取組報告等があり、盛会のうちに終了しました。