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まちはどう動き出すのか—都市デザインとマーケティングで考える、持続可能なまちづくり 令和8年度中部地域交流会レポート
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取材日:2026年 8月 6日 掲載日:2026年10月1日 |
富良野、豊田、円頓寺、各務原の実践から見えてきたのは、まちづくりは「空間を整えること」だけでも「人を集めること」だけでも成り立たないということでした。地域の強みを見極め、人が集まる場をつくり、事業として続いていく仕組みをどう構築するか。まちづくり関係者が「都市デザイン×マーケティング」をテーマに語り合った中部地域交流会の議論から、持続可能なまちづくりに向けた「思考のヒント」を探ります。
目次
1.富良野に学ぶ、地域の経済力を起点にしたまちづくり(基調講演:湯浅篤氏)
2.都市デザインとマーケティングは、どう結びつくのか(パネルディスカッション:4地域の事例)
3. 参加者が考えた「まちが動き出す瞬間」(グループディスカッション)
4.総括—官民連携を超えた連鎖の輪を広げるために(中部経済産業局)
1.富良野に学ぶ、地域の経済力を起点にしたまちづくり
基調講演「富良野で行っていること~ルーバンフラノちょっとおしゃれな田舎町をめざして~」
講師:ふらのまちづくり株式会社 専務取締役 湯浅 篤 氏
北海道富良野市のまちづくりは、観光地としての知名度だけで生まれた成功ではありません。
かつて中心市街地には人が集まらず、空き地や空き店舗の増加、地価の下落といった、多くの地方都市に共通する課題を抱えていました。
そうした状況の中で、地域の経営者や行政担当者が危機感を共有し、田舎の魅力と都市的な利便性を併せ持つ「ルーバンフラノ構想」を描いたことが、フラノマルシェやネーブルタウン、コンシェルジェフラノへと続く取り組みの出発点となりました。
※ルーバンとは
「ルーラル(Rural=田舎)」と「アーバン(Urban=都市)」を組み合わせた考え方で、田舎の魅力と都市的な利便性を併せ持つまちを目指すコンセプト。
転機となったのは、JR富良野駅前の再整備を契機に駅前商業者の廃業や移転が相次ぎ、賑わいが失われたことでした。さらに、商店街に隣接していた病院の移転によって利用者が減少し、中心市街地の衰退が一層進むのではないかという危機感が高まります。そうした中で、湯浅さんをはじめ地域の経営者や行政担当者らが「このままではいけない」と集まり、地域課題を徹底的に議論した結果、生まれたのがルーバンフラノ構想だそうです。
フラノマルシェは、単なる商業施設ではなく、市民と観光客が集い、滞在し、交流する拠点として設計されました。中心部には大きな広場が設けられ、イベントや日常利用を通じて、人が自然に集まる空間が生まれています。湯浅さんは、土地利用の効率性よりも「人が人を呼ぶ『たまり場』をつくることが重要だと考えた」と語りました。
まちづくりを進めるうえで湯浅さんが強調したのは、次の2点です。
【コンセンサス形成の大切さ】
「まちづくりは良いことだという考えでは、ものごとは進まない。良いと思うまちの価値観は皆バラバラなのだから」コンセンサス(合意・段取り・根回し)を形成することが大切とのこと。
さらに、決めたことをやり遂げるための体制を作ることの重要性も説きました。計画の中心となった富良野中心市街地活性化協議会(平成19年2月設立)も、「経済の話が通じるコアメンバー」に絞り込み、迅速かつ確実に事業を進める体制を構築したそうです。
【経済力に見合う事業】
「地域経済力を超える施設は持続しない」。事業計画や家賃設定、施設規模まで地域の商業実態から逆算して、地域の経済力で回していける事業を選択しました。
「まちづくりは経営である」と繰り返し語り、事業効果については地元への経済効果や来街者数、地価の変化など客観的なデータで検証し続けてきたそうです。
まちづくりを進めるうえで湯浅さんが強調したのは、次の2点です。
【コンセンサス形成の大切さ】。
「まちづくりは良いことだという考えでは、ものごとは進まない。良いと思うまちの価値観は皆バラバラなのだから」コンセンサス(合意・段取り・根回し)を形成することが大切とのこと。
さらに、決めたことをやり遂げるための体制を作ることの重要性も説きました。計画の中心となった富良野中心市街地活性化協議会(平成19年2月設立)も、「経済の話が通じるコアメンバー」に絞り込み、迅速かつ確実に事業を進める体制を構築したそうです。
【経済力に見合う事業】
「地域経済力を超える施設は持続しない」。事業計画や家賃設定、施設規模まで地域の商業実態から逆算して、地域の経済力で回していける事業を選択しました。
「まちづくりは経営である」と繰り返し語り、事業効果については地元への経済効果や来街者数、地価の変化など客観的なデータで検証し続けてきたそうです。
最後に湯浅さんは、「まちづくりに大切なのはミッションやビジョンだけではなくアクション。どれだけ考えても、動かなければ地域は変わらない」と力強く締めくくりました。
2.都市デザインとマーケティングは「一体」である—4地域の事例から見えた共通点
パネルディスカッション
【モデレーター】
(一社)多治見市観光協会(たじみDMO)COO 小口英二 氏
【パネリスト】
ふらのまちづくり(株) 専務取締役 湯浅 篤 氏
富良野市建設水道部都市建築課 課長 黒﨑裕幸 氏
(一社)TCCM 常任顧問 杉本恭一 氏
(株)ナゴノダナバンク 代表取締役 藤田まや 氏
(株)OUR FAVORITE CAPITAL 代表取締役 今尾真也 氏
基調講演に続くパネルディスカッションでは、富良野市に加え、中部地域から愛知県豊田市、名古屋・円頓寺商店街、岐阜県各務原市のまちづくりの担い手が揃い、さまざまな視点を持つ全4地域によるトークが繰り広げられました。

モデレーター 小口英二さん 
パネルディスカッションの様子
【4地域の取り組み】
[富良野 行政の役割とコンパクトタウン]
湯浅さんとともに富良野のまちづくりに取り組んできた黒崎さんは、行政の役割について、お金を出すことだけでなく「ハード整備や制度設計を担いながら、まちづくり会社が継続的に活動できる環境を整えること。そのための国・都道府県などとの調整」とし、初期投資は国や自治体が支え、その後の持続的な運営を支援することが行政の重要な役割と語りました。都市デザインについては、人口減少下でもまちの軸となる中心市街地の商店街を維持し、「コンパクトタウン」として必要な機能を付加するという考え方を示しました。
[豊田市 公共空間の開放とプレイヤー育成、にぎわい・経済的効果を創出]
愛知県豊田市で中心市街地活性化を担う(一社)TCCMの杉本さんは、長年行政主導で行われてきた駅前再開発や区画整理等によりまちのハードは整ったものの、それだけでは活性化につながらなかったこと、その解決のために都市空間と市民活動を結び付ける取り組みをしてきたことを紹介されました。買い物や食事などの目的だけでなく、広場や道路などの公共空間を開放し、人々が時間を過ごす・活動に参画する場となるように、都市再生推進法人として基盤づくりに取り組んできました。「空間をどう使いこなし、人をどのように使い、市民に関わってもらうか。それを周辺施設の経済的効果に繋げていくのかを設計するのがマーケティングであり、その責任をだれが負うかという視点が重要」と話されました。

豊田市における公共空間活用 ※ 
賑わいのある公共空間の様子 ※
[名古屋・円頓寺商店街 街なみを残しエリア価値を高める]
(株)ナゴノダナバンクの藤田さんは、名古屋・円頓寺商店街の活性化について発表しました。商店街で生まれ育ち、衰退する様子を見て危機感を感じ、まちづくりを始めたそうです。空き店舗や路地の雰囲気を活かしたリノベーションや、「パリ祭」などの新たなイベントなどに取り組んでいます。特に、古い路地を残すだけでなく、敷地内に路地用の空間を新たに作るというのは、区画やエリア内の回遊性と価値向上を実現したことは特徴的な活動でした。開業者の受け入れも「どんな店舗が入ると商店街やエリアの価値が上がるか」という観点から行い、これまでに約50件の空き家・空き店舗活用に成功したそうです。

新たに作られた路地空間 
円頓寺商店街のアーケードイルミネーション
[各務原市 公園を拠点とした実験的投資]
今尾さんが代表を務める、岐阜県各務原市の(株)OUR FAVORITE CAPITALは、中心市街地の那加公園エリアを拠点に活動するまちづくり会社です。公園を起点としたエリア価値向上「那加from park構想(まちなかウォーカブル推進事業)」に取り組んでおり、市民公園や学びの森に集まる人々を周辺市街地へつなげるため、不動産活用や新規出店支援、人材コミュニティの形成を進めています。まちづくり会社自身が空き店舗などの不動産を所有するなどの「実験的投資」を通じて、エリア価値の向上を事業として成立させている点も特徴的でした。

那加from park構想 
学びの森
【都市デザインとマーケティングの関係性】
パネリストの皆さんが語った「都市デザインとマーケティングの両立」の課題と連動性はとても明快でした。
[課題]
○都市デザイン:空間や環境をどうつくるか
○マーケティング:人を呼び込み、滞在・消費・投資につなげる仕組みをどうつくるか
[連動性]
・富良野×豊田-「市場分析から逆算する都市デザイン」と「都市デザインを活かすマーケティング」
富良野では、フラノマルシェやネーブルタウン開発などの整備事業はすべて「ルーバンフラノ構想」という都市像の実現手段として位置づけられています。また、その実現に際しては「地域経済力に見合うこと」を重視し、商業売上や家賃相場、地域需要など、具体的なマーケティング指標をベースに事業設計をして行う「市場分析から逆算する都市デザイン」と言えます。
一方、豊田では行政による駅前の再開発や区画整理事業が既にあり、そこから公共空間活用を開放し、その活用のためにプレイヤー育成・イベント開催等のプロモーション事業が行われていました。空間や環境を作るだけでは不十分で、そこへの人や周辺施設等の関わり方を設計し、経済的効果を創出する「都市デザインを育てるマーケティング」と言えます。
・円頓寺×各務原-「路地を残してエリア価値を高める」と「公園を起点とした実験的投資」
名古屋・円頓寺商店街では、「建物と路地をどう残すか」という視点がまちづくりの礎になっています。利用できる敷地面積を減らしてまで新たな路地空間を作ることは、普通の不動産経営であれば不合理ですが、結果としてエリアの価値向上につながっています。事業者の構成についてもエリア価値の観点から考えられていました。つくるのではなく「のこすための都市デザインとマーケティング」が展開されていると言えます。
各務原の場合は、市民公園と学びの森を核に、公園周辺を「暮らしたくなるエリア」へと変えていく構想でした。その実現のために「良い人と良い店を集める」ためのコミュニティ形成やオーナーの発掘等に取り組み、さらにまちづくり会社自身が不動産投資をすることで、エリア価値向上が自社の利益につながる仕組みを構築していました。「都市デザインとマーケティングのための投資」の実践と言えます。
手法は異なるものの、どの地域も、都市デザインとマーケティングを「別物」として扱うことなく、「一体」として、深く関連づけさせながらまちづくりに取り組んでいました。
地域の特性や、地域なりの考えで、「人が集まり、滞在し、消費と投資が繰り広げられる都市空間」を作ろうとしていることが共通点でした。
3.参加者が考えた「まちが動き出す瞬間」
グループディスカッションでは、参加者が6グループに分かれ、「まちが動き出す瞬間とは何か」「都市デザインとマーケティングの両立」について議論をしました。
グループディスカッション後には、各グループから結果発表がありました。
【まちが動き出す瞬間とは何か】
共通して挙げられたのが、「危機感」と「共感する仲間」の存在でした。
「人口減少や大型施設の進出、空き店舗増加」(B・Dグループ)「地域課題の顕在化や首長交代、大規模イベントなどの外部要因」(Eグループ)などからくる危機感のほか、「この地域に何が求められているのか、という問題意識」(Aグループ)「同じ思いや課題意識を持つ人が集まった時や、新たな担い手・事業者が地域に加わった時」「飲み会や交流の場で生まれる何気ない会話、地域の課題に気づく瞬間、新しい仲間との出会いなどさまざまな場所で」(Fグループ)、まちが動き出す瞬間が生まれるという意見がありました。
そして「小さな活動や挑戦の兆しを見逃さないこと」(Cグループ)、「そうした動きを後押しするキーパーソンや支援者の存在」(Aグループ)「熱意を持った人の存在」(Dグループ)が重要であること、「やりたいことを持つ人を支援し、小さな成功体験を積み重ねることで、それが地域全体の変化につながる」(Cグループ)などの考えが示されました。
【都市デザインとマーケティングを両立させる】
多くのグループで、都市デザインとマーケティングを「切り離して考えるものではなく、本質的に一体である」という考えが示されました。
地域の将来像やニーズ、ターゲット等を明確にしたうえで、必要な空間や仕組みを考えることが都市デザインであり、そのための情報収集や需要把握がマーケティングという整理が行われ、相互に作用するものとされました。
さらに、限られた資源の中でエリアを絞って集中的に取り組むことが効果的という考え方、地域内だけでなく域外の視点を取り入れる重要性なども示されました。行政の商業振興部門と都市政策部門が連携して取り組むことの必要性も指摘されました。
4.総括—官民連携を超えた、連鎖の輪を広げるために
交流会の最後に、中部経済産業局 産業部 流通・サービス産業課長 吉田 拓氏から総括がありました。
【官と民の連携から連鎖へ】
全体を通して、「官民連携」という言葉について改めて考える機会になったと述べました。
「官も民も地域の一員であり、重要なのは役割分担である」「地域を最も知るのは地域の人々であり、行政も民間も立場は違っても同じ地域の未来を担う存在である」という認識と、双方が立場や役割分担を意識しつつ、少しずつ歩み寄ることの大切さを示しました。
官と民が、ともに汗をかき、共感しながら信頼関係と実績を積み上げることで、次の世代につながる「連鎖の輪」を広げていく進め方が求められるとしました。
【無関心から関心へ 人の巻き込み】
まちづくりを進めるうえでは、地域への関心を持つ人を増やすことが大切であり、取り組みに対して何も響いてこなかった無関心層に積極的にアプローチをしていくことが求められるとしました。
また、ビジョンを共有し、自分の役割を担おうとする主体的なプレイヤーが現れたとき、地域は大きく動き始めるとしました。
【現場に戻ってから活きる、横のつながり】
この後まちづくり現場に戻ると、さまざまな制約に直面することがあるかもしれないが、本勉強会で出会い思いを共有した「仲間」の存在を思い出し、地域をこえた横のつながりを励みに、明日からの実践に学びを活かしいただき、ともに前進していきたいと締めくくりました。
5.開催概要
日時 2026年8月6日(木)13時~18時
場所 名古屋市中区
テーマ 都市デザイン×マーケティング戦略で考える持続可能なまちづくり
主催 経済産業省 中部経済産業局
共催 独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)
※は主催者及び登壇者の許可のもと使用しております。






