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中心市街地活性化協議会支援センター

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令和7年度中部地域交流会『稼げるまちをデザインする~地域ブランディング戦略~』レポート

 2025年10月2日~3日の2日間にわたり、石川県金沢市において令和7年度の中部地域交流会を開催しました。
『収益確保につながる地域ブランディング戦略』をテーマに、基調講演、事例紹介、グループワーク、小松市まち歩きなど、盛りだくさんの内容で行われた交流会は、中部地域だけでなく域外からも含めて51名 の参加があり、和気あいあいとした雰囲気の中行われました。本セミナーの概要を紹介します。

 主催:中部経済産業局、中部中心市街地活性化ネットワーク会議
 共催:独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)

  • 会場の様子
  • 開会挨拶/中部経済産業局 
    流通・サービス産業課長 藤井 隆史氏

目次

1日目概要

2日目概要

小松市まち歩き

※各目次をクリックすると、それぞれの記事にジャンプします。

 【プログラム】
1日目
①基調講演
 ひらがな商店街ウエストアベニュー会長(横浜市中区石川町)
    一般社団法人横浜まちクリエイティブ代表理事 飯田 峰子氏
②事例紹介1
   合同会社CとH(石川県珠洲市) 共同創業者・CEO 伊藤 紗恵氏
事例紹介2
 株式会社小松DMC/小松企画 代表取締役
     株式会社NOTE エリアマネージャー 石崎 陽之氏
③グループワーク参加者同士による交流タイム
2日目
①グループワーク
②小松市まち歩き(任意参加)

1日目概要

●基調講演 『地域ブランディングのゴール』~デスティネーションから“選ばれるまち”へ~』

ひらがな商店街ウエストアベニュー会長(横浜市中区石川町)
一般社団法人横浜まちクリエイティブ代表理事 飯田 峰子氏
 
 飯田峰子さんは、アパレル企業での企画職等を経て、第1子が1歳の時に飲食店&美容室を起業しました。休眠状態だった商店街でフェスティバルを企画運営したことがきっかけで、まちづくりに参加した経歴を持ちます。
 飯田さんは石川町のまちづくり事例を取り上げながら、ブランディングを「コンセプト(アイデンティティ)を計画的に伝え、タッチポイントで顧客をファンにする行為」と定義し、マーケティング(短期的行動設計)との違いを説明しました。
 石川町の事例では、通過点だった街を「横浜のハブ」に転換するため、裏フェスやコミュニティカフェ、ゲストハウスの改修、シェアキッチンや文化体験を導入し、住民参加によるインナーブランディングを重視。評価指標は来訪者増だけでなく住民の誇り・関係人口・店舗増・持続可能性だとし、長期的なファンづくりこそ地域ブランディングの本質であると結びました。

  • 飯田峰子氏
  • 講演の様子

※横浜まちクリエイティブの事例は、こちらでも紹介しています。

地域に受け入れられる事業開発の秘訣~地域課題×ブランディング~(横浜市中区石川町)

●事例紹介1 『能登の復興は未来の地域をデザインする挑戦』

合同会社CとH(石川県珠洲市) 共同創業者・CEO 伊藤 紗恵氏
 
 伊藤紗恵さんは、総合人材サービス企業を経てフリーランスとして独立。2023年石川県珠洲市にて、地域の女性のキャリア形成支援や地域内外企業とのビジネス創出事業を行う合同会社CとHを共同創業したところ、2024年能登半島地震が発生しました。
 珠洲市はいまだ震災からの復興途上にあります。家屋被害や道路崩壊により震災1年後で実質人口が約37%流出する深刻な状況を受け、合同会社CとHは地域のコワーキング拠点とコミュニティを核に、若者・起業家・女性の就業支援を開始しました。
 同社が手掛けた、学生の長期滞在から移住・起業につなげる「関係人口→定住」モデルは、若者が若者を呼んでくるサイクルができています。また生業づくりとして、ガラスアクセサリーなどの産業創出に取り組む事例もご紹介いただきました。今後、地域課題の解決に向けたビジネスにチャレンジする人を増やすためにも、場所を作り、人を集め、新しい動きを生み出せる地域のインキュベーションコミュニティを目指したい、とまとめました。

  • 伊藤 紗恵氏
  • 講演の様子

●事例紹介2 『Komatsu Creative Days~小松の、創作的な日々をつくる~』

株式会社小松DMC/小松企画 代表取締役
株式会社NOTE エリアマネージャー 石崎 陽之氏
  
 石崎陽之さんは、銀行勤務時の業務の中で多様な地域活性化ビジネスプレイヤーと出会い、地元への想いが強くなったことから、小松市で小松DMCを設立しました。現在は、官民連携による地域課題解決に向けたビジネスに取り組んでいます。小松市は、産業基盤と交通利便(空港・新幹線)に恵まれる一方、商店街の空洞化や若年層の定着不足という課題に直面しており、小松DMCでは「空き家再生」「滞在型拠点」「地域資源の磨上げ」により、稼げるまちづくりを進めています。
 駅前・城下町の空き家を宿泊・カフェ・ギャラリー等に改修し、九谷焼や子供歌舞伎などの文化を体験商品と組み合わせるツアー開発やEC化、オープンファクトリーの常設化で関係人口を増やす戦略をとっています。行政や金融、商工会議所と協働しつつ、地域内外の起業家・クリエイターを呼び込むインキュベーション機能を目指しています。
 行政・地元事業者・外部プレイヤーを結ぶハブとして、段階的な投資誘引と小規模実証を重ね、関係人口→経済循環→定住につなげていく展望についてお話いただきました。

  • 石崎 陽之氏
  • 講演の様子

2日目概要

●グループワーク

 2日目は、「収益確保」と「地域ブランディング」をキーワードにグループディスカッションを行いました。4つのグループに分かれ、ファシリテーターのコーディネートのもと、事例や各地域の取り組みをもとに意見交換を行いました。

グループ
コーディネーター
A
杉本恭一氏(一般社団法人TCCM常任顧問)
飯田峰子氏(一般社団法人横浜まちクリエイティブ代表理事)
B
小口英二氏(たじみDMO最高執行責任者)
石崎陽之氏(株式会社小松DMC/小松企画代表取締役)
C
髙本泰輔氏(株式会社金沢商業活性化センター常務執行役員)
伊藤紗恵氏(合同会社CとH 共同創業者・CEO)
D
伊藤大海氏(愛知県半田市中心市街地活性化市長特任顧問)
 

(グループワークの様子)

【Aグループ】 

 このグループでは、「収益確保につながる地域ブランディング」を議題に、まず“ブランディングが成功した状態”の観点や考え方を参加者で議論し、多面的に洗い出しました。土地価格や事業の継続性、創業者の増加、交流人口の拡大、住民の誇りや店舗の増加など、定量・定性の両面で達成像について議論しました。
 タッチポイント(人・既存ブランド・イベント・商店)を増やし、地域内の「人」を核にファンを育てていくことの重要性を議論しました。その議論の中で、外部支援や資金不足、既存住民との摩擦が障壁として挙がり、解決手段として、事例の共有や価値共有のための情報発信や、こういう人が地域で活躍している、このような取り組みをしている等を知らしめることも、地域ブランディング戦略につながるのではないかという意見があがりました。
 ブランディングの「成功」といえる達成指標がない中、「取り組んでいる人の考える成功」、「外から見た場合の成功」も含め、さまざまな状態、指標、考え方があることを、参加者で共有しました。

【Bグループ】

 このグループでは、参加者各自の経験や失敗・成功エピソードを共有しながら、ブランディングの「前」の段階をどう形成していくかを議論し、「地元ファン作り」と「ビジョン形成」を主要キーワードにまとめました。地元住民の心をつかむ繰り返しの講座や体験提供でインナーブランディングを進め、外部向けにはエリアイメージ(ビジョン)を明確化して段階的に実行することが重要ではないかと議論しました。
 他方で、エリアの価値向上が進むと、地価上昇等で若い人が事業を始めにくい環境となる恐れもあり、エリアマネジメントが必須であること。商店街と連携した案内所機能やワンオンの濃い交流が重要で、単なる集客施策だけでなく、関係人口→定住につながる持続的な仕組み設計が求められると、まとめました。

【Cグループ】

 このグループでは、参加者の地域事例などを踏まえ、ブランディングの基盤は「地元の伝統・歴史・誇りを地元で磨くこと」にあると整理しました。長期(5〜10年以上)の視点で人材育成とキーマンの掘り起こしを継続し、行政・外部専門家・大学・商工会議所など多様なステークホルダーが協働することが鍵だという意見があがりました。同時に、外部専門家の活用は有効だが、現地の文脈を踏まえて受け入れる仕組み作りが必要であることも触れました。
 また、成功事例をそのまま当てはめるのではなく、各地域の特色に合わせて翻案する重要性を強調し、若年層のアイデアと年配の理解をつなぐ中間役や、稼げるまちにするための住民間の合意形成の難しさと重要性も議論されました。最終ゴールは、「住民が誇れる・関係人口が増え、地域が持続すること」ではないかと定義しました。

【Dグループ】

 このグループでは、半田市の事例を参考にしながら「稼げるまち」の主語が行政か民間か等によってブランディングの方向性が違うことを共有したうえで、「ブランディングとは何か」を丁寧に掘り下げ、ブランドの目的や対象エリアの定義について議論を深めました。住んでいる場所なのか、働いている場所なのかといった視点から、地域のアイデンティティをどう捉えるかを考え、特に「自分が誇れるもの」「自慢できるもの」「すでに知られているイメージ」は何かを言語化することが、ブランディングを行ううえで重要であると議論しました。
 参加者は、自分のまちの魅力を言葉にする難しさを実感しつつも、紙に書き出し、メンバーと話し合いながらアウトプットすることで、ブランディングの本質は、地域の誇りを可視化し、共通認識として育てていくプロセスにあると気づかされた、とまとめました。

  • 発表の様子
  • 閉会挨拶/中小機構高度化事業部
    まちづくり推進室長 山本 国博氏

3.小松市まち歩き

 午後は小松市に移動し、約25名が参加した任意参加のまち歩きを行いました。JR小松駅からスタートし、開業直前のウレシャス小松、小松中央通り商店街、北國とおり町を、小松中央通り商店街振興組合の掛田理事長と 株式会社小松DMC石崎氏の案内のもと歩き、小松のまちづくりについて学びました。

まち歩きの様子 (左)中央通り商店街入口 (中)ウレシャス小松 (右)飴屋通り
(左)北國とおり町 (中)北國とおり町商店街 滝本茣蓙店にて (右)分散型ホテル Komado前
Komado(古民家を改装した分散型ホテル)