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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

株式会社まちづくりとやま&NPO法人GPネットワーク

取組のポイント

NPO、商業者とまちづくり会社が連携し、「市民が主役」になるしくみ作り
まちづくり会社施設運営を中心に活性化
NPOはソフト事業で市民を巻き込んでイベント実施

1.富山市の現状と課題

 富山市は、日本初のLRT(次世代型路面電車)による公共交通網の整備や街なかに作られた多目的広場「グランドプラザ」活用による賑わい創出など、中心市街地活性化の先進事例として注目されています。第2期基本計画3年目の平成27年は、3月に北陸新幹線の開業に伴う駅周辺の公共交通整備、8月に旧大和百貨店跡にガラス美術館・図書館の複合施設のオープンを予定しており、賑わい創出にさらに大きな効果が期待できます。

富山市

 第2期基本計画では、上図にあるように賑わい創出のソフト事業については、民間事業者やNPO、大学、商業者が連携し、市がその活動を支援し、「市民が主役」となる体制やしくみづくりを目指しています。このような活動を担うNPOには、市民参加のイベントや事業の企画・立案・実施のマネジメントと地域関係者のコミュニケーションを円滑に行う役割が期待されます。

 富山市では、グランドプラザのオープン以来、施設の管理運営を行うまちづくり会社とあわせて、NPO法人GPネットワークが市民を巻き込んだ活動をしています。

 まちづくり会社とNPOが、それぞれの立場でどのような活性化の取組を行っているか紹介します。

2.株式会社まちづくりとやま

(1)設立

まちづくりとやま

 株式会社まちづくりとやま(以下、まちづくりとやま)は、平成12年7月に市、商工会議所、商店街組合や中小企業者の出資により設立され、TMOの認定を受けました。平成25年に中心市街地活性化事業の企画・調整役として、まちなかコーディネーターを公募により採用し、組織の機能を強化しています。まちづくりとやまの事業について、まちなかコーディネーターの山形氏に話を伺いました。

(2)「地場もん屋総本店」の運営

1)事業の概要
地場もん屋総本店

 「地場もん屋総本店」(以下、「地場もん屋」)は、「富山県の野菜産出額向上」と「安心な食材での地産地消」を目的に平成22年に富山市が設置し、まちづくりとやまが運営している「富山市農林産物アンテナショップ」です。 毎朝9時30分には店頭に並ぶ取れたての農産物を求めて、特に午前中は地元の主婦や近くの店舗・飲食店の顧客でにぎわいます。地場もん屋は、中心市街地に買い物客を呼び込む求心力になっており、毎日約700人が訪れ、一日あたりの売上は最高で100万円近くに上ります。

2)事業の仕組み

 「地屋もん屋」では、生産者が市内7か所の集荷拠点ごとに決められた曜日・時間に農産物を持ち込み、所定の情報が記載されたバーコードを作成し貼付します。拠点へは店舗の集荷車が取りに行きますが、生産者が直接店舗へ持ち込むこともできます。店舗で商品がレジを通ると、生産者に2時間ごとに携帯メールで売上情報が送られます。

3)取り組みのポイント
販売委託システム

 地場もん屋は、「生産者が見える仕組み」と「生産者に売上状況が見える仕組み」を持つ安心・手軽な産直生産物の流通システムです。

 直売所では、商品のバーコードラベルや店頭POPに生産者名を記し、毎週末に生産者による試食対面販売を行っています。また、消費者に生産者を身近に感じてもらえるように、地場もん屋のホームページでも「生産者さん情報」を紹介しています。

 生産者が地場もん屋の直売会員になるには、出荷品の適切な品質管理と出荷ルールを守るなど最低限の約束事があるだけで、高齢者や女性も個人会員として登録できます。委託販売手数料は年会費1000円と売上の20%とバーコードラベル代金1枚1円だけ。売上状況が随時わかるので、追加配送・出荷時期の調整や袋詰め単位や値付けを工夫で売上を上げることができます。集荷拠点を設けて出荷のハードルを下げたことと、生産者の努力が売り上げに直結する仕組みを作ったことで、やる気のある生産者が増え、現在は241業者(平成26年現在)まで増えています。

(3)グランドプラザ

 グランドプラザは、富山市の繁華街の超一等地に作られたガラス屋根のついた屋外広場です。富山市が所有し、まちづくりとやまが指定管理者として運営しています。土日は稼働率100%で、年間100件超のイベントが開催され、中心市街地の賑わい創出に大きな役割を果たしています。

1)イベントのない日の取組
普段のグランドプラザ

 グランドプラザでは、イベントのない普段の日にまちの人が自由に立ち寄り過ごせるようにカフェテーブルと椅子を置いています。きれいなスペースを維持するため、隣接の事務所のスタッフが1日数回来場者を見守りながら、ごみを片付け、テーブルやいすを整頓しています。自転車の人には駐輪場を案内し、喫煙者にはさりげなく携帯灰皿をプレゼントしてタバコのポイ捨てを防いでいます。細かな禁止事項を決めなくても自然と利用者が見えないルールを守るようになり、人が集まる気持ちよい空間を維持する仕組みができています。

2)「まちなかでの楽しい思い出づくり事業」

 もう一つの普段の日の取り組みは、子どもたちのための「グランドプラザで遊ぼう」と名付けた平日限定の自主事業です。5000個のつみ木で遊ぶ「つみ木広場」、石の床に「チョークでお絵かき」などグランドプラザならではの6つの遊びを紹介したポスターを幼稚園や小学校に配布し、社会科見学や遠足の集合場所やお弁当タイムでの利用を積極的に勧めています。お絵かき後のブラシ掛けの掃除やお弁当後のゴミ片付けも楽しい遊びの一部です。子ども達が楽しい時間を過ごしたことがきっかけとなり、イベントのない時でもグランドプラザに立ち寄る家族が増え、新しい出会いと交流が生まれています。

(4)今後の取組

なかもん

 まちづくりとやまが今後の取組として目指しているのは、自主財源を確保し自立事業に近づけていくことです。このため、平成26年夏から、2つの事業を始めました。「なかもん」は、富山市のまちなかのイベント情報を一元管理し、データベース化した情報ハブステーションで、ウェブ、Facebook、タウン情報などの紙媒体と連動して情報発信を行います。

 「デジタルサイネージ」は、歩行者通行量の多いグランドプラザ、電鉄富山駅、南富山駅の建物内と市電やセントラム(環状線)のすべての車両に設置された電子看板です。今後は、「なかもん」との連携によるPR効果を訴求し、デジタルサイネージの利用者を増やし、広告収入を上げていくことを目指しています。

 もう一つの取組は、まちづくりとやまで行っている様々な活性化事業を連動し、シナジー効果を上げていくことです。山形氏がコーディネーターとして、学生やまちづくり関連団体が無料で使える「富山まちなか研究室MAG.net」、まちなかの案内活動を行う学生の「街なかメイクアップサポーター」、「学生まちづくりコンペティション」などの事業を状況に合わせて連動させ、より大きな活性化につなげています。

 さらに、商店街同士が連携した活動の推進を目指しています。中心市街地には、総曲輪(そうがわ)・中央通・西町という3つの大きな商店街があり、これまで競うように独自の販促活動を行ってきました。一つ一つの商店街の集客力が低下している現在、まちづくりとやまでは、3商店街合同のスケール感の大きいイベントで商店街全体でにぎわい創出することを提案しています。最近では、商店街の若手経営者を中心に、商店街の枠を超えてまちづくりを考える団体「笑店街ネットワーク」が作られ、連携に向けた情報共有を図り始めました。まちなかコーディネーターの山形氏は、商店街同士をつなぐコーディネーターの役割を果たしています。

3.NPO法人GPネットワークの取り組み

(1)概要

 NPO法人GPネットワーク(以下、「GPネットワーク」)は、平成19年にオープンしたグランドプラザを楽しく活用しようと設立されたイベント企画の任意団体です。平成23年にNPO法人格を取得しました。賑わい創出のための自主事業の開催、イベント開催に不慣れな市民のサポート、まちづくりセミナーの開催などの活動を市民や行政と連携して行っています。現在は、公務員や商業者、会社員、学生など、職業や年齢も多様なメンバーが「市民によるまちづくり」に取り組んでいます。

(2)カジュアルワイン会

ワイン会

 グランドプラザで、毎月第2木曜(11月のみ第3木曜)の夕方から開催しているワイン会は、予約不要で誰でも気軽に参加できるワイン会です。会費は参加費とワイン代で3000円。季節ごとにセレクトされたワインと参加者同士の交流を楽しみに5年以上続いています。

 富山一の酒販店がセレクトしたワインのうんちくは、事前に参加者にメール配信し、ワインのサービスはGPネットワークのメンバーやセルフサービスで行います。ワインを楽しんだ後のグラスは、参加者が洗って返すのがルールです。ソムリエやサービススタッフのコストが不要なので、運営コストは参加費で賄えます。予約なしに一人で参加でき、主催者に負担の少ない運営方法となっているのが長続きの秘訣です。

(3)まちづくりセミナー

 まちづくりセミナーは、まちづくりの専門家や実践者を講師として迎え、市民が活力あるまちづくりについて学ぶ「まちづくりの勉強会」です。経営者、デザイナー、建築家など多彩な講師が、様々なテーマでまちづくりを語ります。会場は定員50名程度のカフェやオープンスペースを使い、質疑応答やセミナー後の懇親会で間近に講師と接することができます。GPネットワークでは、まちづくりセミナーを通して、行政や商店主、消費者など立場の違う人々が交流する機会を提供しています。

サンリオ小倉ビル

(4)「手ぶらで観光物産展」

サンリオ小倉ビル

 「手ぶらで観光物産展」は、グランドプラザを会場に日本全国の地方都市が観光物産展を開催してもらうことを目的に企画されました。イベント企画や設営準備、宿泊、PR、集客など、開催準備と当日の運営をGPネットワークが手頃なパッケージ料金で代行します。

 富山県の支援によるモデル事業として、石垣市や長野県の物産展を実施し、産地直送の新鮮な農産品や珍しいステージパフォーマンスで、連日会場は大賑わいでした。ただし、運営スタッフの負担が大きくコスト面でも課題が残りました。新幹線開業で富山への関心が深まっている現在、外部事業者やスタッフと連携し、継続されることが期待されます。

(5)今後の取組

 理事長はじめメンバーは、元々地域貢献の意識が高く、メンバーの自主性を活かしてイベントに取り組んできました。今後は、中心市街地の商店街を巻き込んで、商店街の横断的な大きな活動にしていくことを目指しています。これまで、地元の商店街とまちづくりとやま、別の商店街とGPネットワークのような連携で様々なイベントを行ってきました。今後は、まちづくりとやま、GPネットワーク、各商店街が情報共有し、にぎわい創出にむけて活動することが期待されます。

取材日 平成26年11月

まちの概要

位置・人口
北九州市小倉地区

 富山市は、富山県の中央部に位置する県庁所在地で、北は日本海に面し、富山県を縦断して南は岐阜県・長野県に接する県内最大の市です。平成17年に県南東部の旧大沢野町、大山町、八尾町、婦中町、山田村、細入村と合併し、面積は1241.85k㎡、富山県の3割を占めます。(人口約420千人[H26/11月末現在])。

交通アクセス

 富山市は、東京、大阪、名古屋の三大都市とほぼ等距離の位置にありますが、平成27年3月に北陸新幹線が開業し、富山・東京間が約2時間で首都圏との距離がぐっと近くなりました。富山きときと空港からは、東京、札幌への国内線や、ソウル、大連、上海、台北等への国際線も就航しています。

まちづくり会社の概要

会社名:
株式会社まちづくりとやま
所在地:
富山市総曲輪3丁目3番16号 ウィズビル3階
設立:
平成12年7月7日
資本金:
30,000千円(富山市15,000千円、富山商工会議所5,000千円、他)
社員数:
41名(平成26年4月1日現在)
URL:

http://www.mdtoyama.com 別ウィンドウで開きます


組織名:
NPO法人GPネットワーク
所在地:
富山市総曲輪三丁目6番15-23 グランドプラザ事務所内
設立:
平成23年11月(NPO登記日)
社員数:
正会員37名(平成26年度)
URL:

http://www.gpnw.jp 別ウィンドウで開きます


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