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(第2回)個店の元氣の連鎖がまちに活気を与える(福岡県久留米市)

久留米市では、久留米街元氣プロジェクトチームが、個店に努力を促しながら、ネットワークを形成することで、中心市街地活性化に寄与する取り組みをしています。

前回は、商店街繁盛店ネットワークの概要とその参加者の声を紹介しました。今回は久留米街元氣プロジェクトをきっかけに商店同士の絆をつなぎ直し共に成長を図る商店の事例、街元氣プロジェクトチームが考える商店街繁盛店ネットワークの成果と今後の久留米市中心市街地活性化の展望を紹介します。

商店同士の絆をつなぎ直し共に成長を図る商店
商店街繁盛店ネットワーク参加店舗 
西原糸店(衣料品店) 西原健太氏

-西原さんが商店街繁盛店ネットワークに応募した理由を教えてください

(西原氏)
「新たな顧客を獲得するために、7年前に店を改装してレイアウトも変更してきました。その中でまちゼミを実施してお店の認知が高まり、今では、子供から高齢者まで来店いただけるようになりました。

まちゼミを実施して顧客開拓ができた成果ともに、当店がギフト需要に対応しきれていない課題があることが分かりました。改題解決にあたっては、私の力だけでは不足している部分があったので、商店街繁盛店ネットワークで教えを請いたいと思ったのが始まりです。」

-なるほど。商店街繁盛店ネットワークでは、コンサルタントからどのようなアドバイスや指導がありましたか?

(西原氏)
「まず、参加店がお互いに他店の印象(強み・弱み)を書き出すワークショップを行い、第三者の目線で自店を見ると自分が思っていたイメージと違う部分があると教えられました。

ギフト商品については、まずラッピングを強化するように言われました。知り合いのデザイナーと協力して改善しました。それが功を奏して売り上げが落ち込む時期でしたが前年に対して20パーセント売上が向上しました。」

ラッピング
贈答用に開発されたラッピンググッズ

「また、情報発信を強化するようアドバイスをもらいました。
当店は日本三大絣(かすり)の一つである久留米絣を用いた商品を販売していますが、久留米絣の市場認知が不足していると感じています。

そこで、SNSを活用することを勧められましたが、それまで手が回らなかったところでしたので、導入から具体的にアドバイスいただき、大変助かりました。SNSの活用で他県からもお客様が来るようになりました。
今日も宮崎から絣(かすり)のスニーカーをお求めの来客がありましたが、その方はフェイスブックの友達の友達にあたる方です。」

-他県からも!すごいですね。SNSのほかに情報発信策として行っているものはありますか?

(西原氏)
「当店の商品を通して久留米絣を広めるため、ギフトショーなどの展示会や商談会に積極的に参加することにしました。ただ、商品をテーブルに並べるだけでは、インパクトに欠けるので、什器を作成して活用しています。」

什器
販促用什器。什器は簡単に分解でき、各種販促会に持ち運ぶことができる

-販促策をはじめ、様々な取り組みをなさっていますね。聞いたところによると、西原さんはまちゼミや商店街繁盛店ネットワークで吸収したことをほかの店舗と共有する取り組みもなさっていると伺いました。

(西原氏)
「はい。私の属する商店街は、衰退時には店舗同士の関係性は薄れていました。しかし、まちゼミを始めてから、徐々に店舗間のコミュニケーションが増えていきました。

はじめはまちゼミに懐疑的だった店舗の方に私たちのまちゼミに参加していただいて、まちゼミとはどういうものか、肌で感じてもらったり、まちゼミの集客が上手くいっている店舗と勉強会を開いたりしているうちに店舗同士の関係をつなぎ直した形になりました。

つまり、まちゼミは、店主のやる気を取り戻すきっかけだけでなく、関係再構築のきっかけにもなりました。こうして「みんなでこの地域を盛り上げるんだ」という機運が高まる中、商店街繁盛店ネットワークのお話をいただいたので、自然とそこで学んだこともみんなで共有しようという雰囲気になりました。
今はちょうど、最近家業を継いだ精肉店の若店主と、先輩商店主達が食肉業界を研究して、事業の知恵を出し合っています。その勉強の成果をまちゼミを開くことを前提に精肉店の若店主が模擬講義を開いています。これは、単に精肉店の若店主の支援にとどまりません。他の業界ではありますが、先輩商店主達にとってはケーススタディになり確実にスキルアップにつながっています。

これからも継続して商店が一丸となりスキルを高めることで、エリアの価値を高めていきたいと考えています。」

店主
店主の西原氏

支援者の声
久留米街元氣プロジェクトチームより久留米商工会議所行徳氏
タウンマネージャー久保氏

-商店の方のお話を伺うと、まちゼミから商店街繁盛店ネットワークへつながる流れは、確実に商店主の成功体験を生み出していて、さらに成功体験を共有することで中心市街地活性化につなげていると感じました。

(行徳氏)
「街元氣プロジェクトの発足は、交流施設である久留米シティプラザが、中活2期計画のもと整備され、これまで中心市街地になかった他県からの人の流れができ、この機会をどのように商店が活かしていくかを考えたのがきっかけです。九州新幹線開業も追い風でした。

久留米シティプラザではコンベンションやイベント等が随時開かれ、新たな人の流れを生み出しています。シティプラザは中心市街地商店街にコンベンションなどの予定を共有することになり、商店主は機会を存分に生かすようになりました。

まちゼミは、こうした機会に対して、商店主自らが試行錯誤するきっかけになりました。商店街繁盛店ネットワークは、個店の強みをさらに伸ばすと同時に、弱みは商機が広がる希望として捉え、商店主を前向きに努力・改善に導く講座です。
よって、商店街繁盛店ネットワークには、まちゼミを通して成功体験を積み、いい意味で欲が出てきた商店主をさらに伸ばそうという考えが根底にあります。

そして、取り組みによる成果は商店街で共有し、参加店以外の店でも実践します。中心市街地の主価値は商店の魅力にあると考えています。商店個々の魅力が高まることは中心市街地商店街全体の魅力を高め、集客力の向上を図り、商店街の活性化へとつながります。」

支援者1
久留米商工会議所 行徳氏

-なるほど。中心市街地の主価値は商店の魅力ということですが、商店街繁盛店ネットワークの具体的な成果を教えてください。

(久保氏)
「個店ベースで言えば、リフォームとイベント、ダイレクトメールの合わせ技で売上が前年同月比で216%になったお店や、商品の使用シーンを提案するサンプルを表示するなどで同カテゴリーの販売数が127%になったお店、商品を店主の得意分野に絞ったラインナップにした結果、商品群の選択と集中、提案力アップにつながり売上が前年比170%になったお店など参加店の約8割が何らかの経営改善・業績改善が見られました。

ただ、数値で見る評価だけでなく、例えば、商店主が笑顔で顧客対応するようになったとか、来街者に道案内、まち案内するといったまちのコンシェルジュのような商店主が増えてきたとか、中心市街地が来街者をおもてなしするような動き、こういった成果も大事にしています。その後で中心市街地活性化に関する数値がついてくると思っています。

現に、久留米市では平成18年に休日の歩行者通行量が平日を下回りましたが、久留米シティプラザ整備をきっかけに休日の歩行者通行量が年々増加しています。

空き店舗率も平成21年の26.8%から現在では13.4%まで改善しました。中心商店街のメイン通り沿いだけでなく、裏路地にも新たな店舗が出店している状態です。単に裏路地に店舗ができただけでなく、裏路地に出店したお店同士が協働して、メイン通りのイベントを参考に自主運営しています。メイン通りの魅力が裏路地ににじみ出ている感覚を持っています。」

支援者2
タウンマネージャー 久保氏

-まさに商店主と支援側が協力して中心市街地を作り上げている印象です。支援者として意識していることはありますか?

(久保氏)
「まちゼミや商店街繁盛店ネットワークを進めていく一方で、様々な商店の自助努力につながるように、多様な支援策を模索しています。商店主の琴線に触れるような支援であれば、商店主のやる気を出してくれます。

これまでまちゼミと商店街ネットワークを軸とした話をしてきましたが、久留米市ではそのほかに、「100縁商店街」や「街なかコンシェルジュ商店街ツアー」、起業者向けとして、「街なか起業家サポート事業」や「商店街空き店舗ツアー」を展開しています。

ちょうど事業が6つあるのでまちづくり6次化プロジェクトと呼んでいますが、街なかの変化を常に観察しながら支援策の改善や発案に努めていきたいと思っています。」

(行徳氏)
「中心市街地活性化を考える上で、久留米市の魅力を最大限に活かすオール久留米の取り組みを考え行動しています。例えば、久留米の酒は、その昔から日本有数の酒処として、品質レベルも高く、久留米市の地域資源となっています。3年前から久留米の酒蔵が協働して地域ブランドとしての発泡性清酒を開発する取組みを開始しています。

また久留米ラーメンをはじめ餃子、焼き鳥などの専門店が集積する地域でもあり、上手く情報発信していけば食をキーワードに交流人口を増加させる可能性を秘めています。

こうした事業の支援は中心市街地活性化に確実につながると考えています。市全体の魅力と中心市街地を掛け合わせてより一層、久留米を盛り上げていきたいと考えています。」


-常に次のステージを意識しているのですね。これからさらに久留米のまちがどう変わっていくのか非常に楽しみです。

取材を終えて

今回の取材で特に印象的だったのは、商業者の方も支援者の方も自身の商売やまちづくりについて終始笑顔で語っていたことです。その笑顔から心底楽しんで事業に取り組んでいるのだと感じました。
次の展望を見据えながら商業者、支援者ともに変化成長していく久留米の姿をまたお伝えできればと思っています。

イメージ
久留米中心市街地活性化策のイメージ