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(第1回)個店の元氣の連鎖がまちに活気を与える(福岡県久留米市)

久留米市では、久留米街元氣プロジェクトチーム(注)が、個店に努力を促しながら、ネットワークを形成することで、中心市街地活性化に寄与する取り組みをしています。

(注)久留米街元氣プロジェクトチームは、商工会議所・タウンマネージャー・まちづくり会社・市役所・商店街のキーパーソン・地域コミュニティクリエーター(ネットワークサポーター)などの事業パートナーなどで構成されています。なお、街元氣の氣は气に×(ばつ)をつけるのではなく、気を米(込め)るという思いから使用しています。

2018年に当センターは、久留米市の街元氣プロジェクトチームが、まちゼミ事業と街なか起業家サポート事業、そして商店街繁盛店ネットワーク事業の3つの事業の柱が相乗効果を発揮することで、中心市街地活性化につなげており、3事業の中でもまちゼミにフォーカスして記載いたしました。

今回は、その中から、商店街繁盛店ネットワークを中心に述べ、久留米街元氣プロジェクトの取り組みが現在どのように展開されているのか見ていきたいと思います。

フォーメーション型の支援体制

久留米商工会議所では、平成20年から毎週火曜日にタウンマネージャーミーティングを開催(年間50回超)。ミーティングの柱はまちの活性化を目的とした「久留米街元氣プロジェクト」の推進について活発なディスカッションが展開されています。

街元氣プロジェクトのモットーは、「楽しくまちづくりを語ること」すなわち「楽しい企み」を生み出し続けることにあります。

スキーム
久留米街元氣プロジェクトチームのイメージ(久留米街元氣プロジェクトチーム提供資料をもとに作成)

久留米街元氣プロジェクトチームのそれぞれが支援の役割を理解し、商店街の商店主が主役として活躍できる体制を築きました。この体制の下、まちゼミをはじめとする商業活性化事業を展開しています。

久留米街元氣プロジェクト事業の起点となる「まちゼミ」

久留米の商業活性化の起点となる事業は「まちゼミ」です。郊外店の進出などで中心市街地が冷え込む中、交流施設である久留米シティプラザが整備されました。現在では年間50万人の交流人口を呼び込む施設となっています。しかし、久留米中心市街地の商業者は、この機会を活かすことができずにいました。

そこで、商工会議所の紹介から中心市街地商店街で取り組むことになったのがまちゼミでした。まちゼミの継続実施は、商業者の商売意欲を高め、創意工夫を促すことになりました。

-まちゼミとは-
個店の店主が講師となり、参加者に対して、自店の商品・サービスの魅力などを伝える少人数のゼミナールを開くものです。このゼミナールを通して、お店とお客様の距離を縮め、新規客を顧客に、更にはロイヤルカスタマー(リピーター)へとつなげていく「お店とお客様とのコミュニケーション事業」です。
愛知県岡崎の商店街で産声を上げた「まちゼミ」は、現在400地域を超える地域で実施され、地域の創意工夫により進化発展を続けています。

商業者は、まちゼミを継続実施する中で、まちゼミで展開する講座に磨きをかけることが、自店の魅力を高め、顧客の固定客化、新規顧客の獲得につながることを学びました。

また、まちゼミは、中心市街地の冷え込みにより疎遠になった商業者の関係性をつなぎ直す効果もありました。商店主たちが各店の講座内容に興味を持つようになり情報交換をし始めたのです。
この情報交換は、まちゼミ成功体験の共有につながり、各店舗のまちゼミの魅力を高める要因になりました。

魅力的なまちゼミ講座の集積は、来街者にとっては魅力的な街のイベントに映り、回を追うごとにまちゼミ講座の参加者が増加し、それに伴い、まちゼミ講座数も増加しました。

さらに、久留米街元氣プロジェクトチームの助言により、久留米ならではのオリジナル講座や周知策なども取り入れ、さらに久留米まちゼミのブランド力が高まりました。

-久留米ならではのまちゼミ-
子供向けの「まちゼミキッズ」や参加者を男性に絞った「俺のまちゼミ」といった新企画、まちゼミ参加店の店主ポスターを掲載する「個店ポスター展」や複数のまちゼミ講座の参加を促す「久留米まちゼミアカデミー受講票」など久留米方式と言われる独自の取り組みにより、まちゼミへの年間参加者は約4千人と全国最大級の規模に発展しています。

(参考リンク)久留米街元氣プロジェクト まちゼミ案内ページ 別ウィンドウで開きます

   

これに自信を持った商業者は、自店がどうすればさらに良くなるか試行錯誤するようになるとともに、まちゼミの勉強会を自主的に開いたり、自分の商売に関する研究をさらに深めるようになりました。

これらの取り組みは店舗に変化を与ることになります。顧客が店の変化に気づき、来店機会が増え、来店者が増えたことが商店主の意欲をさらに高める、プラスの循環が生まれるようになりました。以上の詳細は以下のリンクを参照ください。

   

(第1回)久留米街元氣プロジェクトが推進するまちゼミや創業支援とは

(第2回)久留米街元氣プロジェクトが推進するまちゼミや創業支援とは

商店主のスキルを高める「商店街繁盛店ネットワーク」の概要

まちゼミを通して、商売意欲が高まった商店主たちを次のステップに進めるための施策が「商店街繁盛店ネットワーク」です。この事業は、福岡県、久留米市の補助を活用した事業になります。

  • チラシ
    商店街繁盛店ネットワーク告知チラシ(久留米街元氣プロジェクトチーム提供)

具体的には、「まちゼミ」に参加した店舗を中心に10店舗を募集。“繁盛店づくり全力投球サポーター”と呼ばれる経営コンサルタントと街元氣プロジェクトがチームを組み、参加店舗に対して経営サポートを集中的に実施(5回~6回)。アクションプランを作成し、PDCAを回すものです。

商店街繁盛店ネットワークに参加する店舗が協働して改善策を練ることから、コミュニケーションが生まれるのはもちろんのこと、これらの店舗が、ほかの店舗とノウハウを共有することで、互いに経営力を育むとともにネットワークを強固していきます。

さらに、改善行動については、人手が足りない個店を支援するため、久留米街元氣プロジェクトチームだけではなく、福岡県、久留米市職員も一緒になって汗をかきながら個店を支えています。

スキーム
商店街繁盛店ネットワークのスキーム(久留米街元氣プロジェクトチーム提供資料を基に作成)

商店街繁盛店ネットワーク参加者の声 

商店街繁盛店ネットワークに参加した2店舗と、支援者である久留米街元氣プロジェクトチームから久留米商工会議所地域振興課の行徳和弘氏、中心市街地活性化協議会タウンマネージャーの久保森住光氏からお話を伺いました。

今回は、商店街繁盛店ネットワークに参加したことで、経営ノウハウの習得だけでなく、精神面でも大きくステップアップを果たした商店の事例を紹介し、第2回では久留米街元氣プロジェクトをきっかけに商店同士の絆をつなぎ直し共に成長を図る商店の事例、街元氣プロジェクトチームが考える商店街繁盛店ネットワークの成果と今後の久留米市中心市街地活性化の展望を紹介します。

ファッサードハトヤ(化粧品店) 瀧井美智子さん

-瀧井さんはまちゼミをきっかけにエステ事業を始められたことを伺いました。

(瀧井さん)
「まちゼミでは、店主が講師役ということで化粧のコツなどを教えているうちにお客様からまちゼミ以外でも教えてほしいという要望が高くなってきました。そこで、週に1回程度、有料講座を開くようになりました。この講座に付随して、化粧品も以前より売れるようになりました。」

-そんな瀧井さんが商店街繁盛店ネットワークに参加なさったのは次のステップを見据えてということでしょうか。

(瀧井さん)
「なんというか、私、仕事そのものは好きなんですけど、その当時は、お店を今一つ好きになれなかったんです。ですが、コンサルタントの先生に、店内の整理・整頓・清掃から商品陳列に至るまで、たくさん指摘されてしまって…
その時は、正直ショックでしたが、それ以上に悔しくて、先生に言われたことを忘れないうちに改善しようとその日の内に手をつけたんです。」

-聞けば、徹夜で作業なさったようですね。すごい行動力です。その後、お客さんの反応や経営に変化はありましたか?

(瀧井さん)
「すぐに反応がありました!「店内が明るくなったね!いつ改装したの?」ってお客さんに驚かれたんです。実は、以前店内を改装したことがあったのですが、その時は何も反応がなかった(笑)。でも、それをきっかけに、お店も好きになれるようになったんです。

また、お店を明るい雰囲気にしたほかに、良質な商品を前面に出すような商品陳列やそれらを訴求する看板に変更したんです。お客様から見て何を売っているお店なのか分かりやすくなって、お客様からの不満の声が減ったのとともに、売上単価が上がったことで業績も向上しました。」

ファッサードハトヤ
ファッサードハトヤ店主の瀧井さん

-自ら店内を徹底的に手掛けたおかげで、お店だけでなく、瀧井さんの気持ちも一新されたんですね。最後に商店街繁盛店ネットワークの一連の講座を通して学んだ中でほかに印象に残ったことを教えてください。

(瀧井さん)
「一番大きかったのは、どういう気持ちで商売をしているのか、原点に立ち戻れたこと。第三者の目線でお店を見つめられるようになったことです。
この講座は、コンサルタントの先生と久留米街元氣プロジェクトチームの方々の臨店が6回あるのですが、その度に改善点を評価していただいたこと、次の課題改善についてアドバイスがあったことはやりがいがありました。
その際、先生から変化をきちんと数字で表して意識するようにアドバイスがありました。行動に対して数字が変化することで事業を理論的に見直すことができました。
悔しさからスタートした講座でしたが、今では参加して本当に良かったと思っています。」

(第2回に続く)

商店街繁盛店ネットワーク・臨店の様子