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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

施設稼働率100%を超える交流施設活用法とは(滋賀県守山市)

事業成功のポイント
  • ソフトイベントなどの展開により成功・失敗体験を積み事業成功のポイントを学ぶ
  • 事業精神を持つまちづくりプレーヤーを呼び込む仕組みづくり
  • 利用者目線に立った交流施設運営による施設稼働率の向上

滋賀県守山市のまちづくり会社である「株式会社みらいもりやま21」(以下、MM21)。MM21が市から指定管理を受け、利活用する交流施設が、「あまが池プラザ」や「うの家」です。また自治会から依頼を受け、そのプロデュースを行っているのが「勝部自治会火まつり交流館(以下、火まつり交流館)」です。MM21はその交流施設で住民のニーズに即した講座やイベントなどを呼び込み、利用者数や施設稼働率の向上につなげています。
その為には、市民に親しみやすい施設運営はもちろんのこと、魅力的な講座・イベントを展開する協力者の掘り起しがポイントになってきます。

今回は、そのプロセスをMM21のゼネラルマネージャーである石上僚氏(以下、石上氏)にお話を伺いました。

あまが池プラザ外観(あまが池プラザ提供)
あまが池プラザ外観(あまが池プラザ提供)

まちづくり機運の醸成

MM21は、会社設立からあまが池プラザの指定管理を受ける前の3年間に、まちや商店街の活性化のために様々なソフトイベントを展開しました。100円商店街やまちゼミ、まちバル、街コンなどです。石上氏は他地域の取り組みを学び、商店街関係者などと協力しながらこれらのイベントを守山市に取り入れてきました。

これらのイベントの成果は、①イベントを展開していく中でまちの商業者など、まちづくりプレーヤーの発掘ができ、協働していく中で信頼関係が築けたこと。②市民から好評を得、予想以上の盛り上がりを見せたこと。③イベントが盛況だった上に、これらのイベントが滋賀県で初めて行われるものであったため、マスコミや新聞などに取り上げられ、MM21の知名度ばかりでなく守山市のまちづくり機運が高まったこと。④ソフトイベントの情報を発信し続けたことでMM21の情報発信力が強化されたこと。⑤以上の成果から市民や商業者にMM21が受け入れられ、これまで以上にまちの情報が入ってきやすくなったことです。

一方で、市民と個店の心理的距離を縮めファンを増やすといった、これらのイベントが持つ本質が、一部の商業者に理解されなかった反省点がありました。予想外の盛り上がりを見せたため、商業者に人員面、資金面において負担が大きいと感じさせてしまったのです。また、MM21がイベント提案や事務局などの支援を行ったため、商業者の主体的な活動に発展しづらい結果となってしまったことも反省点でした。

これらの成果や、失敗に対する反省は、MM21のその後の事業展開において大きな財産になりました。

あまが池プラザ、うの家などの交流(文化)施設運営におけるポイント

あまが池プラザは守山市が第一期中心市街地活性化基本計画に基づき整備した、幼稚園と小学校に隣接した交流施設です。あまが池プラザの近隣には子育て世代の移住により、新規住宅の整備が進んでおり、子育てママや、さらには高齢者との交流を促進することが、あまが池プラザの存在意義であると言えます。あまが池プラザ・あまが池親水緑地オープンにあたり、MM21は守山市から指定管理を受け、施設長に石上氏を据えました。

あまが池プラザの利用者は、日中は子育てママや高齢者、学校が終わる夕方からは子どもが想定されました。また、守山に移住する子育て家族は教育熱心であるため、習い事や自己実現をはかる体験学習、親子で参加できるイベントなどにニーズがあると石上氏は考えました。利用者ニーズに対応するイベントや講座を提供するプレーヤーを十分に確保できれば利用者数も増加します。石上氏は、そのような講座やイベントの提供者の掘り起しにあたり、3年間のソフトイベント事業で培った人脈が役立てようと考えました。具体的にはヨガやピラティススクール、空手教室などの経営者や起業を考えている人材を活用しようと考えたのです。

石上氏は、先述したソフトイベント展開時の反省から、講座提供者などに、施設で講座を開くよう依頼する形にはしませんでした。依頼する形を取ると謝金が発生するばかりか、講座提供者などが受身的になり、利用者の満足向上に繋がらない可能性があるからです。

そこで石上氏は、施設で開く講座を通して、講座提供者の経営のブラッシュアップや販促、起業するための準備に利用するよう持ちかけました。つまり、あまが池プラザ施設利用料を経営強化や販促に対する投資と捉える形です。

あまが池プラザの施設利用料金一覧(あまが池プラザホームページより)
あまが池プラザの施設利用料金一覧(あまが池プラザホームページより)

当初「営利目的の場合は二倍の利用料金」であった表示を、逆に「営利目的でない場合の利用料金は二分の一」と変更。つまり営利目的での利用を前提としており、この「見せ方」からも施設利活用に対する意欲的な姿勢が伺える。

講座提供者自身の経営や起業の精度を高めるといったポジティブな意識のもと展開される講座は、利用者から好評を得ています。講座提供者や利用者からの口コミから利用者数と共に講座提供者が増加しました。今では、休館日も営業することで利用者の増加に対応しているため、日数ベースの施設稼働率は100パーセントを超え、時間ベースの施設稼働率も約70パーセントを達成しています。また、あまが池プラザに入居する飲食テナント店も、公募により向上心が強く柔軟な経営者を選定しており、子育てママをターゲットにした店舗運営を展開しており、人気を博しています。

2012年に守山の歴史文化の発信と共に市民交流・活動の場として整備されたうの家では、貸室事業においてあまが池プラザの運営ノウハウを活かして展開されており、こちらも市民に愛されています。

あまが池プラザのスケジュール表(あまが池プラザホームページより)
あまが池プラザのスケジュール表(あまが池プラザホームページより)

あまが池プラザでは、月初めに2カ月先までの貸室受付を行う。月初めは開館前から講座・イベント提供者の行列ができるほどの盛況ぶり。あまが池プラザオープン時はソフトイベントで培ったネットワークを中心に10団体が講座やイベントを展開していた。2018年には、講座・イベント提供者や利用者の口コミから、約50団体を数えるほどに成長した。

最近では、貸室が足りないため、あまが池プラザ近隣のスクール事業を展開する民間事業者と教室のシェアリングを行い対応している。それをもってしても曜日・時間が他講座・イベントと重なり、日程の再調整が必要となる講座提供者も多いという。

あまが池プラザの利用者と施設稼働率の推移(あまが池プラザ提供資料をもとに作成)
あまが池プラザの利用者と施設稼働率の推移(あまが池プラザ提供資料をもとに作成)

あまが池プラザ開業前の3年間にソフトイベント実施などで関係を構築した人材を活かした講座・イベント展開で、あまが池プラザ開業後2年足らずで利用者累計は48千名を超えた。その後、季節による利用者増減はあるものの、安定した利用者推移となっている。これは、利用者や講座・イベント提供者が口コミであまが池プラザの評判を広めたことも大きいが、MM21スタッフが、利用者数の前年同月対比や前月対比を意識しながら緊張感を持って施設運営にあたっていることも大きい。

2017年4月の火まつり交流館開業に際し、火まつり交流館の認知を高めるため、利用者を火まつり交流館に誘導した。その為、あまが池プラザの施設稼働率が低下したが、それが新たな講座提供者を呼び込むきっかけとなった。その結果、あまが池プラザの利用者は回復し、火まつり交流館はスタートから順調に利用者数を増加させている。

加えて、交流施設運営スタッフは、ホスピタリティ精神に基づく高品質な接客レベルを目指しています。来館者に安心感を与える窓口対応は、交流施設運営を展開することで新たな人脈形成が促進されるMM21にとって、新たなまちの情報を収集する窓口としても機能しています。

託児サービスを付した講座(あまが池プラザホームページ催し物カレンダーより)
託児サービスを付した講座(あまが池プラザホームページ催し物カレンダーより)

子育てママの満足度を高めるため託児サービスを付した講座。講座提供者が利用者満足のため工夫を加える姿が見て取れる。

内履きで利用する館内(あまが池プラザ提供)
内履きで利用する館内(あまが池プラザ提供)

子どもがフロアに座ったり寝そべったりしても良いように、土足使用を想定した館内を内履き仕様に変更した。

さらに、あまが池プラザが子育てママを始めとする市民に愛されていると分かる出来事がありました。あまが池プラザに隣接するあまが池親水緑地もMM21が管理していますが、中心市街地でネイルサロンを営む事業者から、このあまが池親水緑地で美と健康のワークショップを中心としたイベントを展開したいと相談がありました。MM21と協働してイベントを展開したところ、30以上の事業者が、ワークショップなどのイベント提供者や露店出店者として参加しました。さらに、子育てママを中心に900名を超える集客がありました。この予想を超える盛況ぶりの理由は、ネイルサロンの固定客がママネットワークなどを通じて開催を広めたことも大きいですが、あまが池プラザが教室・講座を基にしたコミュニティ拠点と認知されていることも大きいといえます。

これらの活動を通してMM21の施設利用料金による売上、つまり、指定管理料とは別にMM21が自助努力で獲得した売上は、初年度の約299万円から徐々に増加し、2018年度は約407万円となりました。これが、まちへの再投資の重要な原資となっています。現在の施設稼働率の高さを考えると現在の金額がほぼ上限ではあるものの、MM21スタッフの危機感を持った施設運営や運営ノウハウの蓄積により、安定した収益が見込めるといえます。

仲良しマルシェ告知ポスター(あまが池プラザホームページより)
仲良しマルシェ告知ポスター(あまが池プラザホームページより)
仲良しマルシェ開催の様子(あまが池プラザ提供)
仲良しマルシェ開催の様子(あまが池プラザ提供)

火まつり交流館の整理

2017年に整備された、火まつり交流館は地域に必要なコミュニティ機能を備え、中心市街地の商業と連動を図り、地域と中心市街地の両方の活性化を目的としています。火まつり交流館整備には、あまが池プラザやうの家で蓄積してきた交流施設運営ノウハウが活かされています。例えば、設備面で様々な講座に対応できるように鏡の設置や畳・ソフトマットの貸し出しなど設備面の充実に加え、貸室利用時間構成についても、あまが池プラザでは、午前・午後・夕方の3部制ですが、火まつり交流館では1時間ごとの設定とし、柔軟に施設を活用できるようにしました。

また、火まつり交流館に設置されたカフェ・レストランも近隣住民のニーズに応えるものです。昼間は子育てママが子どもを連れて気軽に利用でき、夕方以降は近隣住民のコミュニケーション促進としてアルコールの提供など行いさらに収益力を高めています。

様々なシーンに活用され市民に愛される火まつり交流館(火まつり交流館提供)
様々なシーンに活用され市民に愛される火まつり交流館(火まつり交流館提供)
厨房設備があるため飲食を必要とする催しにも対応できる(左)、子連れで気軽に利用できるカフェ・レストラン(右)(火まつり交流館提供)
厨房設備があるため飲食を必要とする催しにも対応できる(左)、子連れで気軽に利用できるカフェ・レストラン(右)(火まつり交流館提供)

まとめ

以上のように、MM21は各地の視察をはじめ、ソフトイベント等の実践から学んだノウハウや人的資源をまちづくり会社事業に活用してきました。さらにMM21は、経済産業省や独立行政法人中小企業基盤整備機構などの専門人材派遣支援メニューを活用し、うの家の運営改善や火まつり交流館整備・運用、中核施設の連携など、事業計画をブラッシュアップしてきました。

石上氏はこうした専門人材派遣支援制度について、「第三者の目線で提供される説得力のあるデータをもとに地域課題が明確に示される機会は、地元のまちづくり関係者が、地域のしがらみを捨てフラットに話し合いができるきっかけとなる」と語ります。もちろんこれは、MM21を始めとする守山のまちづくり関係者が外部専門人材から示された地域課題に対して、解決に向けた真摯な行動があってのことです。

MM21が様々な人材や外部資源を活用しながらまちの課題を克服する例が他にもありますが、その詳細については後日掲載いたします。