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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

まちゼミサミット2019参加報告記事

まちゼミサミット2019次第

一日目
■特別講演「三方よし“全国に広がるまちゼミの今”」
■分科会
■パネルディスカッション

二日目
■まちゼミ研修会(取り組み事例、運営事例研究、県単位フォーラム)
■QURUWA戦略の説明
■岡崎市のまちゼミに取り組む実施店舗との意見交換とまち歩き

一日目

特別講演「三方よし“全国に広がるまちゼミの今”」

本会主催である岡崎まちゼミの会の代表、松井洋一郎氏より、全国のまちゼミ事例を通して、まちゼミの要点について説明がありました。

岡崎市のまちなかが衰退する中、活性化策を打ち出すために女性の顧客目線を取り入れようという考えから岡崎商工会議所の女性職員などともに商店の魅力は何かを問い直して行く中で、商店の魅力は店主の魅力である結論から発展したのがまちゼミであること。

その取り組みは全国各地域で共感を呼び、今では400地域を越える地域で開催されていることを共有した上で、なぜまちゼミが全国で愛されるかその要点を確認しました。

具体的には、まちなかの小規模事業者の環境は、現在、2店舗が廃業する中、創業店舗数は1店舗であり、さらに、1店舗を1.6人で支えているのが現状です。さらに、大手資本店舗の進出や通信販売の隆盛など外部環境も厳しくなっています。

その中で、まちゼミの取り組みは、顧客に価値を提供しながら、他店と奪い合う商いではなく、他店などと連携する取り組みです。個店が連携しまちゼミの魅力を高め、その活動が点から線、線から面へと広がる中で、「個店の繁栄、継続」「まちの価値向上」が図られて行く、まさに「買い手よし、売り手よし、世間よし」の「三方よし」の賑わい創出事業であることが全国のまちゼミ事例を踏まえながら説明がありました。

松井洋一郎氏
松井洋一郎氏

分科会

当日は、8つの分科会が用意されました(8つの分科会は前・後半の2回行われ、参加者は2つ選択できる)。その中からまちづくりにまちゼミを活用する例として、「地域性を見据えた支援のあり方」「まちゼミから見た新たな取り組み、持続可能なまちづくり」と題した分科会の様子をお伝えします。

「地域性を見据えた支援のあり方」
福岡県久留米市のまちゼミの事例(講和:久留米市タウンマネージャー 久保 森住光氏)

福岡県久留米市では、商店街と商工会議所・タウンマネージャー・まちづくり会社・市役所・商店街のキーパーソンなどで構成される「久留米街元気プロジェクトチーム(以下、プロジェクトチーム)」が協働してまちゼミを推進しています。
プロジェクトチームはまちゼミの広報やまちゼミの参加者受付の効率化などを支援し、商業者がまちゼミ講座に注力できる態勢を整えています。

プロジェクトチームが取り組む、商店主を前面に出した「まちゼミポスター」、参加者に多講座参加を促進する「まちゼミアカデミー」、スピンオフ講座である親子参加限定の「まちゼミキッズ」や男性向けの「俺のまちゼミ」などの独自の取り組みが参加者間だけではなく、商店主間でもまちゼミに対する参画意識を高め、全国屈指の盛り上がりを見せています。

まちゼミを起点に商業活性機運を高め、「街なか起業家サポート事業」「商店街繁盛店ネットワーク」など商業者のスキルアップ支援や商業者間のネットワーク形成を支援することでまちゼミとの相乗効果を生み出しています。その結果、個店の売上向上ばかりでなく、空き店舗率は2009年の26.8パーセントから2016年には17.7パーセントまで低下するなどの効果が出ています。

久保 森住光氏
久保 森住光氏
「地域性を見据えた支援のあり方」
東京都内で展開されるまちゼミの事例(講和:中小企業診断士 鵜頭 誠氏)

鵜頭氏のまちゼミ支援の着地点は、商店主が商店街(地域)活性化の主人公になることです。鵜頭氏は、まちゼミ導入時にはまちゼミ開催に向けて商店街に不足している部分を補うように関与しますが、徐々に自立・自活に向けて商業者・地域人材が自らの手で運営できるようにノウハウの提供や見守りに徹するようにしています。

東京都内でまちゼミの開催支援を行う鵜頭氏が示す、まちゼミの継続開催により地域が自立し活性化するために支援者が意識すべきポイントは次の通りです。

・地元の方が大事に思う地域の特色を深く認識すること
市内全域で一度にやる必要は無く、地域の色が出せるエリアに絞って実施主体を設定することで、例えば地域のまちづくり団体と商店街の連携やまちづくりを考える地域の仲間を連結することができる

・支援者と商業者とで役割分担を意識すること
支援者と商店主の説得力は性質が違います。例えば、新規店や若手商業者にまちゼミの講座や参加の呼びかけを行うときには、中小企業診断士などの専門家ではなく、商店主がフォローし、ベテラン商業者や行政に対しては専門家がフォローしたほうが説得力があります。

・リーダーは一人ではなく、グループであること
まちゼミは本来、自主運営で行われるべきものです。つまり、商業者の受益者負担と考えれば、予算的にも人員的にも自立することです。そのためには、将来の地域を見据え、周りを巻き込めるリーダー組織の設立が重要です。
自店の経営がある中で、周辺地域のことも考える商業者がリーダーとなりますが、そのようなリーダーが複数人いることで、商業者同士をつなぐ力に厚みが出ます。自然と地域全体のまちゼミの魅力が増し、商業者の還元も大きくなります。
そこに導くためには、支援の段階から「私がリーダー」ではなく「我らがリーダー」であることを商業者の方々に意識付けすることが肝要になります。

鵜頭氏は以上のポイントを挙げた上で、支援者はまちゼミ後に見えてくる商店街の姿をイメージしながら支援することが重要で、まちゼミを通してつながった仲間や組織が、様々な商店街課題解決の要になることを意識すべきとしました。

鵜頭誠氏
鵜頭誠氏

以上、久保氏、鵜頭氏の説明を受けて、流通科学大学准教授である長坂泰之氏が久保氏、鵜頭氏、さらに参加者にインタビューすることで、地域性をまちゼミに活かすコツについて理解を深めました。

長坂泰之氏
長坂泰之氏
まちゼミから見た新たな取り組み、持続可能なまちづくり」
尾山台の事例(講和:尾山台まちゼミ実行委員長 高野雄大氏)

ハッピーロード尾山台商店街でまちゼミを牽引する高野雄大氏は、まちゼミを通して、人との繋がりが増え、人との繋がりが暮らしを彩り、豊かになったといいます。お客様はもちろん、共通の趣味を持つ仲間や飲み仲間、パパ友、ママ友など繋がりが多様化していきました。

まちゼミから以上のことを経験した高野氏は、多くの人とつながる機会を創出していきます。
飲食店の側面も持つワイン専門店と協働し、様々な人と緩やかにつながることを目的とした懇親会(飲み会)をはじめたのです。

場所は、ワイン専門店を活用し、食事については商店街のテイクアウトできる店舗を利用しました。この懇親会では、個店同士のつながりはもちろんのこと、各店舗の呼びかけからその固定客も参加しました。その結果、福祉関係者や医師、大学教授、大学生、行政職員、一人暮らしの社会人など様々な背景を持つ人々とつながりを持つようになりました。

高野氏はこの体験から、個店は販売だけでなくコミュニティ機能を持つまちの資産である。それぞれがつながりを持てばさらに暮らしは豊かになると感じたといいます。


さらに、高野氏がまちゼミから学んだことは、以下の4点です。

・まちづくりは大きな資金を使わず、既にあるものを活かすこと
・地域のつながりを大切にして生活を豊かにする時代であること
・画一的な、モデルとなるような豊かさを追求して行くのではなく、独自の暮らしの豊かさを追求してくことが大切であること
・この独自の豊かさが魅力あるまちであり、持続可能なまちになること

この考えの下、生まれたのが「おやまちプロジェクト」です。おやまちプロジェクトは、商店街、地元公立小学校、地元大学が連携して地域の多様な人々を引き込む取り組みを多く展開しています。

例えば、その中の「デザインプロジェクト」は、まちのみんなでこれまでのまちを学び、これからを考える取り組みです。まちの生き字引といえる方が、子供にまちの変遷を伝えます。古い写真や古い地図を用い、今のまちの姿と昔のまちの姿を比べ、これからのまちの姿を考えていくのです。

また、普段はすれ違う人々のつながりを生み出す取り組みも行っています。ハッピーロード尾山台は毎週水曜日の夕方を歩行者天国としています。その時間を利用して車道に人工芝を敷き、商店街に訪れる人たちに思い思いにそのスペースを使っていただく取り組みです。
芝生で寛いだり、遊んだり、中にはラジオ局を開設した方もいたといいます。

こうした中で、新たな出会いが生まれ繋がりができます。普段であれば、何気なく商店街を訪れ、ただすれ違っていた人々が繋がり、その繋がりから新たな居場所が地域に生まれるのです。

また、おやまちプロジェクトでは、「おやまちサロン」といったまちづくりの勉強会も開催しています。この会に参加するメンバーには、これまで述べてきた取り組みからまちづくりに興味を持ち、まちのこれからを真剣に考えるようになった方が多くいるといいます。

最後に緩やかな人との繋がりから、まちづくりプレイヤーを発掘してきた高野氏からまちを動かす7つの要素が示されました。
①まちへの熱い思い、②一人で始めないこと、③既存の枠を超えること、④すでにあるものを活用すること、⑤様々な属性が集まる仕組みを作ること、⑥とりあえずやってみること、⑦自分の暮らしを豊かにすること(楽しむこと、楽しいこと)

高野雄大氏
高野雄大氏
東朋治氏によるまちゼミセッション

高野氏の講演の後、岡崎まちゼミの会の天野めぐみ氏を交えて、東氏のコーディネートの下、まちゼミを活用した持続可能なまちづくりを目指すにあたり、課題となること、それに対して高野氏や天野氏が取り組んできたことについて共有しました。

天野めぐみ氏
天野めぐみ氏

先だって、東氏より、
まちゼミとは・・・
・地域特性(人口規模、立地、業種構成)を選ばない稀有な事業であること

また、まちゼミを地域活性化視点からみてみると、
・特定の業種ではなく、様々な業種に当てはまり商品・サービスの価値を伝えることができること
・様々な業種が参加できる特性は、まちゼミというツールを介して個店同士の繋がりを強化できること
・店舗がコミュニティスペースになること
・体験型インバウンド(コト消費)対応への可能性があること
・おもてなしスキルの向上ツールとして活用できること

以上を確認した上で、東氏を司会として高野氏、天野氏とともにまちゼミの運営上の課題やまちゼミの将来についてセッションが行われました。具体的に以下の通りです。

・実践者として主催者として感じるまちゼミの課題
まちゼミ不参加店へのアプローチについては、まちゼミの楽しさを伝えつつ粘り強く声を掛けて行くこと、まちゼミ実行委員の負担については、まちゼミの来街者などと仲間作りを通して、主催側に引き込んで行くことなどが共有されました。

・まちゼミを継続するために必要なことは
ヒト・モノ・カネといった資源が必要だが、それ以上に、やらされ感、マンネリ感がでないように、主体的に楽しんでやることを忘れないようマインドセットすることが大事であることが共有されました。

・まちゼミのエッセンス(良さ)を活かした新たな取り組みとは
自店の商品にまつわる講座ばかりでなく、店主の魅力が伝わる趣味の講座などの展開屋や、個店同士のコラボレーション開催の広がりが考えられることが共有されました。

東朋治氏
東朋治氏

パネルディスカッション

1日目の締めくくりとして、「今こそ、小さなお店が輝く時!」をテーマにパネルディスカッションを行いました。

コーディネーターに松井洋一郎氏、パネリストとして、新雅史氏、加戸慎太郎氏、笹井清範氏、澤田真由氏、本田純子氏、そしてパネルディスカッションの総括として石原武政氏を迎えて議論が行われました。

パネルディスカッションの話題は、まちゼミを展開する商業者像やリーダー像について主に意見が出されました。

商業者像としては、商店街やまちのを単位とした話ではなく、商業者としてプライドを持ち、まちを元気にしたい人が求められることが確認されました。

また、リーダー像については、多様な価値観が生まれるのがまちゼミであり、その為には一人のリーダーに任せるのは無理があり、一つ上に立った目線ではなく、同じ目線に立ち導くリーダーが必要であること。そして多様なリーダーが円卓方式で語り合うことで新たな価値が生まれることが確認されました。

総括を務めた石原武政氏
総括を務めた石原武政氏
コーディネーターを務めた松井洋一郎氏
コーディネーターを務めた松井洋一郎氏
パネリストのみなさん
パネリストのみなさん

二日目

まちゼミ研修会(取り組み事例、運営事例研究、県単位フォーラム)

まちゼミ研修会では、まちゼミの運営の仕組みや支援体制や事例などが示されました。また、県単位まちゼミフォーラムや連絡会の実績や予定なども示されました。さらに、まちゼミ実施地域をつなぐネットワークも示され、ノウハウの偏在化を防ぐ取り組みを共有しました。

まちゼミ研修会の様子
まちゼミ研修会の様子

QURUWA(くるわ)戦略の説明

まちゼミ研修会と平行して、希望者には岡崎市の中心市街地活性化施策であるQURUWA戦略をまち歩きをしながら説明がありました。岡崎市は現在、回遊性を高める目的で様々な施策の展開・計画をしています。
例えば、駅前ペデストリアンデッキの整備、人道橋である桜城橋の整備や、籠田公園とそれを結ぶ中央緑道の整備など歩行者の回遊性を高めるための公共投資をしながら、道路空間を活用し、歩行者が楽しむイベントを提供するなどです。
これらの施策を通して、路線価の向上や先述の公共空間を活用した民間事業活動日数の増加を目指しています。

現在建設中の桜城橋
現在建設中の桜城橋
実証実験中の道路空間
実証実験中の道路空間

岡崎市のまちゼミに取り組む実施店舗との意見交換とまち歩き

最後は、松井氏のコーディネートによる、岡崎のまちゼミ実施店舗との意見交換がなされました。まちゼミを実施する各個店を訪問し、まちゼミ講座の設定や展開、コラボレーション企画などの工夫、まちゼミ実施後の動きなど、まちゼミの置ける先進的な取り組みを実施者本人からうかがえる貴重な機会となりました。

まち歩きの様子
まち歩きの様子