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中心市街地活性化協議会支援センター

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(第2回)自己成長を遂げながらまちに活気を与える市民組織(栃木県日光市)

事業展開のポイント
  • 地域の課題解決に合ったまちづくり事例の研究と実践
  • まちづくり活動の中で見えた新たな課題に対する主体的な解決行動
  • 事業・組織が拡大する中で、次のステージを目指すために組織の方向性を見直す

中心市街地活性化基本計画に定められたハード事業の波及効果を図るため、ソフト事業を積極的に展開する市民組織が栃木県日光市にあります。「歩きたくなるまちづくり委員会」と名付けられたその市民組織は、まち歩きマップの作成やまちバルの展開を通して見えてきたまちの課題を楽しみながら克服しようとしています。

前回は、日光市が今市地区に整備する道の駅に併せて、歩きたくなるまちづくり委員会を組織し、まち歩きマップの作成やまちバルの開催などのソフト事業を展開したところまでを述べました。
 

(第1回)自己成長を遂げながらまちに活気を与える市民組織(栃木県日光市) 

第2回となる今回は、歩きたくなるまちづくり委員会が以上のソフト事業を展開した後、さらにまちづくりに関わる様子についてお伝えします。
その取り組みについて、歩きたくなるまちづくり委員会の会長である堀井克俊氏(以下、堀井氏)と、イベント企画の中心となる今成綾氏(以下、今成氏)、そして歩きたくなるまちづくり委員会の事務局の役割を担いながら一市民として歩きたくなるまちづくり委員会を支える日光市産業環境部商工課商業振興係の副主幹である田中晃司氏(以下、田中氏)、主任の江連嘉一氏(以下、江連氏)にお話を伺いました。

歩きたくなるまちづくり委員会会長の堀井氏(左)と企画を担当する今成氏(右)キッズゲルニカ(後述)の前にて

歩きたくなるまちづくり委員会メンバーのさらなるまちづくり意識の醸成

まち歩きマップ作成やまちバルの開催により、歩きたくなるまちづくり委員会のまちづくりへの参画意識がさらに高まりました。楽しむことが信条の歩きたくなるまちづくり委員会。さらなるイベント策を打ち出し活動の幅を広げています。具体的には、中心市街地のシンボルであった旧長崎屋の解体に伴い企画された「さよなら(旧)長崎屋ビアガーデン」や、東武鉄道下今市駅から鬼怒川温泉駅まで走行するSL大樹の開業に伴う「SL大樹に手を振ろう」、子供たちが平和をテーマに今市地区の魅力を描くアートプロジェクト「日光キッズゲルニカ」など地元愛を深めるイベントの展開です。

さらに、歩きたくなるまちづくり委員会の企画アイデアマンとして活躍する今成氏は、歩きたくなるまちづくり委員会主催の同窓会を企画中です。地方では、進学や就職をきっかけに交流が途絶えがちで、同窓会を開く機会が減るなどで交友関係が点在的になっています。そこに目をつけ、同年代の日光在住者や日光出身者に声をかけ同窓会を開くことで絆を結び直す企画です。この同窓会を機に、日光の活性化を一緒に推進する仲間が増えることも期待できます。

さよなら(旧)長崎屋ビアガーデンの様子(歩きたくなるまちづくり委員会フェイスブックより)

さらに特筆すべきことは、歩きたくなるまちづくり委員会のメンバーが、他のまちづくり関係組織や会合に積極的に参画し、知識の獲得や実践などを通してまちづくりノウハウを広く習得していることです。具体的には、青年会議所に所属し今市地区以外のイベント支援することや、空き店舗の活用などを検討する組織に参画しアイデアの創出や共有に努めていること、若年層の定住を促進するサードプレイスイベントに参画し進行役を務めるなど様々です。多様なまちづくり活動に参画しまちの課題に直面しながら、その解決のためのノウハウを蓄積していきます。各々のメンバーが持ち寄ったノウハウが相乗効果を生み出し、さらに日光のまちづくりに貢献されることが期待できます。

シェアスペース「しばらく、図工室。」活用会議の様子(「しばらく、図工室。」フェイスブックより)

シェアスペース「しばらく、図工室。」は、地域復興のためのリーダー育成を目的に結成された日光創新塾と、日光の2年後、5年後、10年後を考え、まちづくりに関わるグループ「250+(日光プラス)」が主体となって始めた「日光あきないproject」の拠点づくり始まりの場所として、空き店舗を活用して設置されました。

若年層の定住促進を考えるサードプレイス企画「日光ミライMEETING」(日光サードプレイスフェイスブックより)

歩きたくなるまちづくり委員会の今後

会長の堀井氏は、歩きたくなるまちづくり委員会の会員が増え、7名で発足した会が今では20名を超える会になったことを受け、原点に戻り会の方向性を見直したいと語ります。まちバルや日光キッズゲルニカなど好評を博した結果、毎年開催されるイベントがありますが、イベントの企画から関わり、そのイベントに思い入れの強いメンバーと、イベントが確立されてから加わったメンバーの間で温度差が生まれることを危惧しているのです。

これまで、メンバーが増えるごとに入会者の意向を聞きながら事業に割り振ることで事業効果を高めてきました。しかし、上記の理由から、メンバー全員で会の方向性ややりたい事を見直し、歩きたくなるまちづくり委員会の信条である「楽しむこと」を再認識したい考えです。
これは、事業展開に重きを置く短期的な人材活用視点から、中長期的な人材育成・成長の視点にシフトするとともに、会の新たな目標を打ち立てることにつながり、組織力のさらなる向上が期待できるといえます。

また、日光市産業環境部商工課商業振興係の田中氏と江連氏は、歩きたくなるまちづくり委員会がイベントに係る申請や相談などを通して、歩きたくなるまちづくり委員会が市の担当課をつなぐパイプ役を果たしていると言います。歩きたくなるまちづくり委員会にとっては、事務局を務める田中氏と江連氏から行政との相談のポイントを聞く意味は大きく、会が自立に向けて動いているとはいえ、今後もお互いの強みを活かしながら中心市街地活性化に寄与することが期待されます。

これまで述べた、ニコニコ本陣の集客やまち歩きマップ、その他のソフト事業との相乗効果もあり、中心市街地の歩行者通行量は徐々に増加傾向にあります。

中心市街地歩行者通行量の推移(日光市提供資料を基に作成)

1998年の郊外大型店出店により、中心市街地は衰退の一途をたどったが、2013年に発足した歩きたくなるまちづくり委員会が展開するソフト事業や2015年にオープンした集客施設ニコニコ本陣との相乗効果により、2018年は台風により通行量が減少したものの、中心市街地歩行者通行量は回復傾向にある。(歩行者通行量計測日はイベント開催日と異なる)

このように、今市地区は日光・鬼怒川の玄関口の役割を果たすために徐々に力をつけつつあると言えます。歩きたくなるまちづくり委員会のメンバーは本業や家庭がある中で、まちの活性化に参画しています。その難しさを克服することもまちの課題克服につながると考える歩きたくなるまちづくり委員会が日光の活性化に貢献する動きに今後も注目です。

まちの概要

日光市は栃木県の北西部に位置しています。2006年3月に2市2町1村が合併し、県土の約4分の1を占めています。日光市は市町村合併により、歴史・文化資源や自然資源、さらには温泉など、恵まれた観光資源をさらに得ることとなりました。世界遺産である日光の社寺をはじめ、日光杉並木街道、足尾銅山などの歴史的資源、湯波(ゆば)や蕎麦などの食文化、日光彫などの伝統文化があります。自然資源としては、華厳の滝や奥日光の湿原、日光連山などを有し、温泉は、鬼怒川温泉をはじめ、川治温泉、湯西川温泉、奥日光湯元温泉など7つの温泉地を有しています。
今市地区はこれらの観光玄関口として機能するため、ニコニコ本陣において地産品の販売や観光情報発信を始め様々な取り組みを行うことで日光の魅力を訴求しています。

日光や鬼怒川などの観光情報が満載のパンフレット
今市地区の観光スポットの回遊に寄与するレンタサイクルやスタンプラリー