小さな事業から着実にまちに変化を与える(福井県越前市)
課題へのさらなる挑戦
着実に空き家・空き店への新規開業を図ってきた武生ですが、賑わいづくりにまだまだ課題があると清水氏は語ります。現在、まちづくり武生が賑わいづくりのために取り組んでいるのが「かっこいい武生のつくりかた」プロジェクトです。
賑わいづくりの手始めとして仲間作りが必要と考え、人材発掘と発掘した人材からのアイデア抽出を行いました。人材発掘にあたっては、過去の地域おこし協力隊の人脈や独立行政法人中小企業基盤整備機構の中心市街地活性化アドバイザーの人脈を活用し、賑わいづくりの方向性は何かを話し合いました。この話し合いの中で、武生は歴的な文化・伝統技術が残っていることや、絵本作家である「いわさきちひろ」や「かこさとし」のゆかりの地であることからアートや絵本を題材とした賑わいづくりが検討されました。
アートを活用した賑わいづくりについては、平成30年に初めて開催された武生千年未来工藝祭と発掘した人材がコラボレーションして河原の石に発光塗料でデザインするワークショップ企画を実行しました。この企画は老若男女を問わず人気となり、思わぬ収益が出るほどでした。この成功体験をきっかけに、新たな企画が持ち上がり、市内高校、大学とも協働する企画が現在作業中といいます。一つのイベント企画の成功から芸術のプロ、市内高校・大学がまちづくりの仲間として加わった形です。
また、絵本を題材とした賑わいづくりですが、かこさとし作品を題材とした公園「だるまちゃん広場」やいわさきちひろとの縁の「ちひろの生まれた家記念館」など絵本を題材とする施設を活用した回遊性向上・賑わい創出策が検討されています。加えて、以上の施設の他にアートを楽しむ人たちの活動拠点を作ろうと、「ちひろの生まれた家」のある大門通り周辺の町屋をリノベーションするD・Artプロジェクトが始まり、その施設の機能充実を図るべく、絵本による地域活性化を志す地域おこし協力隊の募集をしているところです。
取材をとおして、率先垂範を旨とするまちづくり武生の取り組みがきっかけとなり、まちに変化が表れ始めたと感じました。北陸新幹線延伸に備え、小さな事業を積み重ねてきたまちづくり武生が、さらなる活性化策を模索し実現する姿が期待できます。