再開発 そこから始まるまちづくり(愛媛県西条市)6
3.あとがき
振り返ればよくやれた—。そんな声が再開発を牽引した組合の役員から聞こえてきます。まとまりの良い商店街とはいえ、人口11万人の地方都市の商店街でここまでの絵を描いて実行することは並大抵ではありません。再開発を牽引した理事の一色秀之さんをはじめ親世代の役員が固い決意と不退転の行動力で実現した再開発は次の世代に受けつがれる資産となりました。
賑わいと回遊性の向上、まちなか居住の推進を目標に掲げて平成20年に認定された西条市の中心市街地活性化基本計画は平成26年3月に終了しました。平成26年5月のフォローアップ報告では、事業の進捗は概ね順調に進捗、完了したものの、活性化には至らなかった、との評価です。今後はソフト事業を中心として、商店街、行政、関係機関が密接に連携を図りながら市民の満足度につながる商店街活性化事業に取り組む、としています。
通行量だけをみれば、劇的に増えた感じはないかもしれません。しかし、まちの隅々を観察してみると、診療所、塾、フィットネス、エステサロン、子育て支援、障がい者支援、市民活動支援センターなど、サービス業やコミュニティ活動の拠点が増えており、目的を持った訪問者が滞留していて通行量では計れない賑わいとなっています。また、商店街が所有することで新陳代謝が可能となったテナントミックスや100戸のマンションが整備されたことで、まちの恒常的な体力も強化されています。再開発をきっかけにまちの世代交代も行われた西条紺屋町は、ソフトな課題に取り組む有志の行動が共感の輪を拡げながら未来を切り拓こうとしています。
4.西条市の概要
西条市は、愛媛県東部の東予地区で瀬戸内海の燧灘(ひうちなだ)に面した人口約11万人の都市です。沿岸部は昭和39年に新産業都市の指定を受けて誘致された大企業の工場群が立ち並び、内陸部は西条藩の城下町として商業が発展、まちなかは環境省名水百選に選定された「うちぬき」が湧き出る水の都です。さらに西日本最高峰の石鎚山から流れる加茂川、中山川などの流域は県内有数の農業地帯で西条紺屋町商店街でもJA西条が運営する「みのりちゃん市場」が地域住民の食を支えています。
- 地域:
- 愛媛県西条市
- 人口:
- 110,922人(平成29年8月末日現在)
- 分類:
- 「商業施設」「商店街販促」「人材育成」
- 協議会:
- あり
- 実施主体:
- 西条紺屋町商店街振興組合、株式会社やりよるけん西条
【西条紺屋町商店街】
江戸時代に陣屋を開き、城下町を築いたときから始まる西条市中心部に位置する延長約150メートルのアーケード型商店街で、紺屋町という町名が示すように古くから由緒のある町です。
市民のための生活空間として「人にやさしい町」をコンセプトに再開発を進めてきました。また、無料駐車場110台を有し、イベント・お祭りが好きで一年中何らかの催し物を提供している賑やかな商店街です(同組合Webサイトから)。現時点での店舗・施設数は31。
取材日:平成29年9月5日