新たな拠点がコミュニティを作り出し、まちに新たな人の流れを作る! (第1回)(沖縄市)3
シアタードーナツの販売促進策
シアタードーナツはこれまで紹介した取り組みから社会性が強いシアターといえますが、継続するためには事業性も無視できません。宮島氏は顧客獲得のために、多様な販売促進策を展開しています。
宮島氏の販売促進策の一つは、クロスメディア(メディアミックス)です。チラシだけでなく、フェイスブックなどのSNSを活用した販売促進や自身が出演するラジオ番組など多様な媒体を使って相乗効果を発揮しています。
フェイスブックを活用した販売促進では、宮島氏のフェイスブックに書き込んだ顧客の映画の嗜好を分析し、その嗜好に沿った映画を上映することを企画します。その上で、その映画に関係する「届け先」にフェイスブックなどで参加を呼び掛けるなどのOne to Oneマーケティングを展開しています。宮島氏の上映する作品はテーマ性が強いので、「届け先」はその関係者に情報を拡散することが推測できます。
また、宮島氏は「若者にもっと映画を観てほしい」という想いから、すそ野を広げる取り組みをしています。例を挙げると、宮島氏は、地元学校のPTAを務めています。学校が実施するキャリア教育に参加し、映画の素晴らしさを伝えているのです。また、地元大学の講義にも協力しています。テーマ性の強い作品は大学の講義の資料になり得ます。地元大学教授からシアタードーナツを講義の一環で利用したいと依頼がありました。大学生が、映画鑑賞の後に意見交換会まで参加することで考えを深めるというものです。
さらに、映画作品のテーマに沿った施設に直接映画を上映する出張上映会も行っています。これまでに3市町村で行いました。
これらの取り組みから、映画好きや社会問題に取り組む人から支持を受け、彼らのSNSなどで取り上げられることで、シアタードーナツの認知が高まりました。今ではこうした層が観光などで沖縄に訪れる際、シアタードーナツに立ち寄るようになりました。
まだまだ可能性が広がるシアタードーナツ
宮島氏はこれらの取り組みの他、ローカル映画のクラウドファンディングを支援し、シアタードーナツの認知をさらに広めたり、コザを舞台にした映画とまち歩きをパックにした商品を開発したりと新しい取り組みにも果敢に挑戦しています。
宮島氏は「映画は、上映されてはじめて完成する。エンドロールの最後に自分がいるつもりで臨んでいる」と語ります。こうした作品に対する想いが、作品を通して届け先に、届け先を通してさらなる届け先に伝播させているのだと感じました。
単に映画を楽しむだけでなく、映画の持つテーマ性を活かして人を深くつなげる双方向型のこのミニシアターは、地域内外にコミュニティを形成し、新しい人の流れを作っています。この形は、地方都市の映画館の持つ可能性を広げるのかもしれません。