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中心市街地活性化協議会支援センター

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“マチの新しい顔”JR新駅舎を配する複合交流施設“キタカラ”で新たな人の流れを創出

ポイント

  • 官民連携による駅との一体的駅前地区再開発
  • 次世代コミュニティ機能の実現を目指し、多目的複合交流施設「キタカラ」を整備
  • まちづくり会社による“キタカラ”の施設管理・運営
場所:
北海道稚内市
人口:
3.7万人(H25.11末現在)
分類:
【商業施設】【交流施設】
対象地域:
稚内市中心市街地
協議会:
あり
実施主体:
稚内駅前地区市街地再開発組合、㈱稚内駅ビル開発、稚内市、JR北海道 など
(施設管理・運営:㈱まちづくり稚内)
関連HP:
(株)まちづくり稚内
 

http://www.kitacolor.com 別ウィンドウで開きます


1.まちの課題

稚内市中心市街地地区周辺

 稚内市は、地形的に背後の丘陵地と海岸線に挟まれた狭隘な土地のため、古くから海岸線の埋め立てにより、南北に細長い市街地が形成されました。

 市街地の中心は、JR稚内駅をはじめ、フェリーターミナル、バスターミナルなど主要交通機関が集中した中央地区で、金融機関、市役所、市立病院などの都市機能も整っています。

 しかし、ここ近年は、南地区の安価で広い住宅地への移住が進み、これに連動した郊外型ショッピングセンターの進出、企業集積などにより、生活、ビジネスの中心は南稚内駅周辺に変わっていきました。 その結果、従来の中央地区は、大型スーパーの南地区への移転も相まって、高齢化と建物の老朽化が著しい地区になってしまいました。

 また、中央地区では、市街地側(マチ)と港側(みなと)が、各々の開発計画に基づき整備が図られてきたため、鉄路により分断されていることもあり、連携が弱い状況になっていました。

 これらを背景に、南北にバランスのとれた市街地形成を目指し、「マチ」と「みなと」との連携を図りながら、市街地再集約の拠点となる中心市街地の基盤整備と生活を支える商業機能、コミュニティ機能の再構築が着手されることになりました。

2.まちの活性化への取組

「キタカラ」施設全景

(1)認定中心市街地活性化基本計画の取組
 稚内市では、平成21年6月に改正中心市街地活性化法に基づく「稚内市中心市街地活性化基本計画」(計画期間:平成21年6月から平成25年3月:以下「基本計画」)について、国の認定(北海道では7番目)を受け、①賑わいのある生活街の形成 ②「マチ」と「みなと」の連携強化 ③観光による交流促進、の基本方針のもと、記載44事業に取組むことになりました。

(2)官民連携により駅周辺を一体的に整備
 事業実施の大きなポイントは、再開発施設での商業店舗等の保留床をSPC(特定目的会社)を活用して取得し、公共公益スペースを含め、官民複合交流施設の管理・運営をまちづくり会社に委託、これを受けまちづくり会社は、商業店舗を一部直営するなど収益確保の構造を固め、施設整備から運営までを安定的かつ円滑に推進する体制整備にあったといえます。

(3)複合交流施設「キタカラ」

 1.事業内容・目的

 「“マチ”と“みなと”の一体化と魅力のある都市構造の形成」をテーマに、都市交通、まちなか情報、まちなか交流、まちなか活性化、まちなか暮らし創造の5つの拠点を総合的に担う複合交流施設と、駅前広場、周辺道路、港湾環境施設などを官民が連携して一体的に整備することにより、「マチ」から「みなと」まで、統一感ある景観形成のもと、稚内市の新しい「顔」として、これを活用する市民や観光客の新たな人の流れを中心市街地に創出し、賑わいのある生活街として再生することを目指すものです。

 2.施設内容

 1)施設のネーミング

 北から創(はじ)める。KITAcolorに染まる。最北のマチ稚内から創まり全国へ。
 稚内の色に染めていきたい、そんな思いを込めて公募によりネーミングされました。

キタカラ施設フロア図

 2)施設の機能

1.まちなか交通拠点

 日本最北端の鉄道駅 JR北海道「稚内駅」。稚内市の玄関口であり顔として、既存のJR稚内駅、バスターミナルの両方を改修・統合しました。施設内1階の駅機能とバスターミナルの整備により、市内・近隣町村と中心市街地とのアクセス機能が改善され利便性が向上しました。
 また、「道の駅」の指定により、車の利用者にとっての利便性も大きなものがあります。
 さらに駅前広場の整備により、フェリーターミナルなど港湾関連施設と商店街がスムーズに繋がり、「マチ」と「みなと」の連携も強化されました。

最北の鉄道駅「稚内駅」
2.まちなか情報拠点

 市民向けのまちなか情報コーナーと観光協会の情報機能が整い、市内と周辺・離島観光の情報提供が強化されました。
 また、「道の駅」に指定された24時間使用可能なトイレや飲食・物販、交流スペースなど、充実した施設が多くの市民や観光客に利用されています。

みちの駅
3.まちなか交流拠点

 公共床として稚内市の地域交流センターが整備されました。イベント空間としての吹き抜けのアトリウム、多世代交流ロビーや子供向けプレイセンター(キッズルーム)があり、くつろぎや憩いの場としてコミュニティと賑わい創出の要となっています。

4.まちなか活性化拠点

 日本最北のシネマコンプレックスとして「T・ジョイ稚内」(3スクリーン、全247席)が開設されました。映画館の復活は、単に娯楽施設としてだけでなく、市民間や家族間のふれあい、中心市街地における憩いの場として、多くの市民に支持されています。また、セレクトショップには、観光客向けのお土産以外に、ベーカリーコーナーなどがあり地元住民にも大いに利用されています。

T・ジョイ稚内
5.まちなか暮らし創造拠点

 まちなか居住の促進に向けて、グループホーム(3階部分18室)と高齢者住宅(4~5階部分36戸)があります。上記施設機能の利便性を通じ、公共機関や病院等が集積する中心市街地での居住メリットにより、まちなか居住の促進が図られています。

3.取組の効果と今後の課題

(1)取組の効果

 これらの基本計画事業は、概ね予定通り進捗・完了することができました。

 基本計画の実施によりマチの活性化が図られた大きな要因は、中核である再開発による「賑わい再生拠点施設整備事業」の効果によるものと、各方面から評価されています。 目標値の歩行者通行量、定住人口、年間主要施設入込数は、定住人口を除く2つの項目で目標を達成しました。特に年間主要施設入込数は、目標値を大きく上回り、賑わい創出効果が高く評価されています。

(2)今後の課題

 今回、目標値達成に至らなかった定住人口については、他の市町村同様、稚内市の総人口そのものが減少しており、取組による定住増より既定住者の減少の方が上回ってしまったことなどが要因と推察され、少子高齢化を背景とした地域での取組の難しさをうかがわせます。

 今回の取組で創出した賑わいを、どう個店の売上げに繋げていくか、商業者自らの活動を含め、官民一体の取組の継続が今後ますます重要となります。

【参考1】主要整備事業における活用支援施策

  • 稚内駅前地区第1種市街地再開発事業(事業主体:稚内駅前地区市街地再開発組合)
     → 社会資本整備総合交付金(市街地再開発事業等)(H20~H23)
    賑わい再生拠点施設整備事業(事業主体:㈱稚内駅ビル開発(SPC))
     → 戦略的中心市街地商業等活性化事業補助金(H21、H23)
    地域交流センター(事業主体:稚内市)
     → 社会資本整備総合交付金(都市再生整備計画)(H23)
    中小企業基盤整備機構:「中心市街地商業活性化診断・サポート事業(C型)」(事業主体:㈱まちづくり稚内)
     → 支援テーマ:①稚内駅前地区集客交流施設の1階商業床部分の店舗配置等について
             ②商業核施設整備の事業手法について
             ③㈱まちづくり稚内の役割の明確化と体制強化について

【参考2】稚内市中心市街地活性化協議会の概要

  • 協議会設立年月日:平成19年10月12日
    構成団体等:稚内市、稚内商工会議所、㈱まちづくり稚内、稚内中央商店街振興組合、 稚内駅前商店街振興組合、北海道旅客鉄道㈱稚内駅、宗谷バス㈱ など23団体等

4.地元利用者の声

セレクトショップ・ベーカリーコーナー利用者(地元50代女性)

 週に2・3回、パン購入のため来店している。旧駅舎の頃は、ほとんど駅に来る機会はなかった。
 地元の者として、駅がきれいになったのは、嬉しいし、コンビニもできて便利になった。映画館が復活したのが一番嬉しい。うちの孫は、夏休みに遊びに来たとき、ここの映画館ではじめて映画を観て喜んでいた。今度は、3D映画を観せる約束をしている。孫を遊びに連れて行ける場所があるというのは、嬉しいもの。

多世代交流ロビー利用者(地元70代女性)

 病院に来て、帰りのバスを待っている。以前は病院の中で時間をつぶしていたが、雪が積もるまでは、ここまで歩いてきて、駅前のスーパーで買い物して、ここで時間をつぶしている。ここにいると、子供を遊びに連れてきたお母さんと話すことがあり、子育てのアドバイスを求められることもある。孫も大きくなって、なかなか会うこともなくなったが、ここに来て小さい子供を見ているのは楽しい。もう、目が悪くて、映画は観られないけど、昔の人間だからマチに映画館があるというのはやはり嬉しいね。

5.取材を終えて

 駅はそのマチの顔。外から訪れた人は、最初に目にするそのマチの駅の印象で、マチそのものをイメージしてしまいます。
 道内でも多くの都市でJR駅の新駅舎化、高架化により、地域の中心市街地が大きな影響を受けています。
「最北のマチ」稚内市での取組は、本来、個別事業であるJR駅舎の改修を再開発事業のベースに取り込み、複合交流施設の重要な構成要素とし、一体的に整備を実施しました。
 観光客への利便性向上と地元住民の利活用の両面を意識した複合施設の整備は、整ったハードを最大限に活かし、「最北のマチ」ならではの地域活性化を目指しています。KITAcolorに染まる稚内市の取組に今後も「期待」です。

6.まちの概要

稚内市の位置

 稚内市は、北緯45度に位置し、面積760.8㎢の日本最北端の都市です。 東はオホーツク海、西は日本海に面し、北は宗谷海峡を挟んでサハリンに面しています。 沿岸は、水産資源が豊富で古くから漁場が開設され、松前藩直轄の「宗谷場所」を開設したのが始まりで、地理的にも国際、国防上の北方警備の要所として重要視されてきました。 戦後は、豊富な水産資源を中心に、酪農、観光の三つを産業の柱とし発展を続け、稚内市は旭川以北、道北圏域の政治、経済の中心地域となっています。

<取材日H25年12月>