松山市中心市街地活性化協議会
取組のポイント
協議会が若手経営者の人材育成事業を実施
参加メンバーが中心となり、まち全体の面的な連携を意識した歩行者天国事業等を実施
若手経営者の視点から松山市中心部のまちのブランディングを模索
1. 商店街若手経営者等交流会
(1)経緯
平成22年、大型SC進出などによる厳しい商業環境の中、(株)まちづくり松山(以下「まちづくり松山」)に、今後の市内中心部をどうしていくのかを議論する委員会が設置され、まちづくり松山の役員はもちろん、若手経営者もメンバーに入り、様々な議論が重ねられました。
委員会で議論が深まるにつれ、次代を担う若手経営者間に「自分たちの世代は何をすべきなのか。」等のことを議論・共有する場が必要だという意識が醸成されてきました。それを受け、松山商工会議所(松山市中心市街地活性化協議会(以下「協議会」)事務局)では、平成23年に協議会事業として「商店街若手経営者等交流会」(以下「交流会」)を立ち上げ、若手経営者による勉強会がスタートしました。
(2)協議会での位置付けと組織構成
交流会は協議会事業のひとつと位置づけられており、協議会の全体予算600万円(松山市300万円、松山商工会議所・まちづくり松山各150万円)のうち、交流会に約100万円が予算化されています。 また、交流会ではトップを決めず、全員フラットな関係を保つようにしています。
参加者は毎年度募集し、仲間を継続して増やしていく努力をしており、毎回約20名程度が参加しています。
(3)活動内容
交流会の発足初年度は、行政の取組、自分たちのまちの現状やまちがつくられてきた歴史を知ることなどの基本的な内容を勉強し、まずは参加者の認識を合わせることに徹しました。 その結果、目指すべき方向性を各自共有することができました。
2年度目は、全国各地のまちづくりに取組んでいる方々を招へいして勉強会を開きました。また、実際に現地見学を行うなど他都市と自分たちのまちを比較しました。そして、「具体的に松山市で何を実践していくか。」等について議論しました。
最終年度の25年度は、出された課題等から中長期的にすべきことを検討しています。
なお、平成24年度の取組実績は次のとおりです。
松山市、まちづくり松山の取組について関係者からの情報提供・意見交換
「中心市街地における不動産活用の基本的な考え方」の協議会関係者との勉強会
東京・銀座街づくり会議、戸越銀座及び静岡市呉服町名店街等への県外研修、現地での実践者との意見交換
県外研修報告と意見交換(松山市との比較と参考となる取組)
(株)大分まちなか倶楽部関係者の招へいによる勉強会
戸越銀座銀六商店街振興組合関係者の招へいによる勉強会
岡崎まちゼミの会関係者の招へいによる勉強会
メンバーによる「今後の商店街のあり方」についての意見交換会(9月から翌年3月までおおよそ毎月1回のペースで開催。)
交流会の活動目標は「自社の経営はもちろん、今後も松山市が消費者に選ばれ続けるまちであり続けるための勉強会等の活動をしていこう。」と定めていますが、テーマとして「まちのブランディング」という言葉を用いています。
まちのブランディングとは、一言でいうと松山市のブランド力を強化していこうということですが、交流会では「ハード、ソフト両面において、まちの価値を消費者の心の中に育み、まちへの愛着、思いを消費者にも同じく持ってもらうための活動を行うこと。」と定義しています。
このような考え方を、まちなかの若手経営者の交流会(勉強会)で採用したことは意欲的なことだと思いますが、まちづくり松山の取締役であり、交流会に参加する加戸慎太郎氏は次のように語っています。
「参加者は、まずこの「まちのブランディング」という考え方を共有しようというところから始まりました。回が進むにつれメンバー間で議論が深まり、ベクトルが揃ってきており、中身の濃い交流会になっています。」
2.交流会メンバーが中心となり取組んだ「お城下(じょうか)スプリングフェスタ2013」
(1) お城下スプリングフェスタの概要
これまで、中心部の各商店街はそれぞれ活発にイベントを実施していましたが、交流会メンバーはこれまでの交流会で得た、各地域の取組などを参考にメンバーで議論し、初めての試みとして、 中心部の一部市道を歩行者天国とし、全体として回遊性を向上させるイベントを企画、実施していくことにしました。 この実行部隊として交流会メンバーを中心に実行委員会を組織し、加戸氏が実行委員長として全体を統括。各商店街からの協力はもちろんですが、関係団体やイベント・マスコミ関係者等を含めて広く実行委員会への参加を呼びかけました。
お城下スプリングフェスタ(以下「フェスタ」)が、これまで松山市で実施されたイベントと違う特長は、主に次の3点です。
L字型約1kmの2アーケードの結節点北を横に走る「千舟町通り」の一部を歩行者天国にすることにより、面的な新たな賑わいを創出。
同時に、車両・歩行者通行量、来街者の階層別意識調査等を実施。
参加団体が各々事業を進めつつも、最終的な決定権は実行委員会に委譲。 (参加団体間の調整を図ることにより、全体として最適なイベントの開催を図る。)
(2) フェスタのねらいと効果
さて、フェスタは平成25年3月23・24日、盛会に開催されましたが、調査結果から次のことが分かりました。
「未就学児」の通行量は前年同月比で7.3倍。
滞在時間で、「いつもより長く滞在」は55%、小学生以下の家族連れだと100%。
「車両通行量」は、全体で0.99倍と変わらず、う回路はやや増加(フェスタ前比)。エリア南側の国道界隈の右折車線で一部渋滞が発生した程度。
ヒアリング結果
・店舗からの声:「お客様の入りが良く売上も好調。」、「普段少ないファミリー客が多数来店。」他
・改善の声:「前売り券の販売期間が少し短かかった。販売場所が分かりにくかった。」、
「イベントゾーンが狭い。」、「イベント会場のテーブルとメニューが少ない。」他
そうして調査結果は、以下の3点にまとめられました。
今回のイベントは中心部への集客に高い効果
イベントへの参加で滞在時間、行動範囲が延長・拡大
来街者・周辺店舗ともに高い評価
これにより、「このようなイベントを開催するとこうなる。」ということが、具体的な数字として検証することができました。
それと、改めてこの一連の取組を見てみると、いわゆる企業行動としてのP(計画)、D(実行)、C(検証)、A(改善)サイクルができていることに気づきます。このように、メンバーは多くのノウハウを得ることができました。
なお、フェスタ終了後の9月には、この成功をバネに「まちゼミ」が交流会メンバーを中心に実施されています。
3.関係者の声
まちづくり松山 代表取締役会長の日野ニ郎氏(松山市中心市街地活性化協議会副会長) は、次のように語っています。 「これまで、私自身も様々なイベントを開催してきましたが、このように、その効果が数字で見事に証明されたことは大変素晴らしいことだと思います。また、交流会メンバーの活躍もたいへん頼もしく思っています。」
4.取材を終えて
交流会は、今年度で3年間という活動期間の区切りとなります。
2年間の成果をもとに、中心メンバーとして参画した今回のフェスタは、イベントとして成功し、また、貴重なデータを蓄積でき、ノウハウも得ることができました。
さらに、交流会活動により訪問した各地の商店街関係者や講師として招へいした方々とのつながりは大きな財産となり、今でも情報交換を行っています。
それと、もうひとつ大事なのは、歴史ある松山市におられる様々な先輩たちの存在です。今回のフェスタがそうでしたが、これらの方々の層の厚さが、これから交流会メンバーが新たな取組みを始める際に大きな力になると思います。
これからの活躍に期待がふくらみます。
取材:平成25年10月
松山市の概要
松山市は、愛媛県の県庁所在地で、人口は四国では最も多い51万人をかぞえます。
松山城を中心に発展してきた城下町で、道後温泉で有名な温泉地でもあります。
市中心部にはアーケード街の「大街道」と「銀天街」があり、商業、サービス業が集積しています。
協議会の概要
- 協議会名:
- 松山市中心市街地活性化協議会
- 所在地:
- 愛媛県松山市
- 設置日:
- 2007年8月24日
- 構成員:
- 36名
- 法定組織者:
- 【都市機能増進】(株)まちづくり松山
【経済活力向上】松山商工会議所
- 主な構成員:
- 松山商工会議所、(株)まちづくり松山、松山市、(公財)松山観光コンベンション協会、伊予鉄道(株)、松山市商店街連盟、道後温泉誇れるまちづくり推進協議会、(一社)お城下松山 他