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寂れた繊維問屋街が「クリエ-ターの街」に進化 ~熊本市河原町 街の新陳代謝~

場所:
熊本市河原町
分類:
【空き店舗・空きビル】
人口:
73万人
協議会:
あり
実施主体:
熊本市河原町有志
URL:
河原町文化開発研究所

http://www.kawaramachi.net/ 別ウィンドウで開きます

熊本まちなみトラスト

http://kmt.sakura.ne.jp/kmt/ 別ウィンドウで開きます


自らの手で夢を実現する若者たち

河原町・繊維問屋街

とある金曜日の夕方。寂れた繊維問屋街の一角で、若者たちがブロックを積み、練ったコンクリートを金ゴテで丁寧にならしています。彼らは来月オープンする自分のお店を自らの手で造るべく、汗を流しているのです。

ここ熊本市河原町は、旧城下町地区で中心市街地でもありますが、上通り・下通りなどの繁華街に比べると決して有利な条件ではありません。
しかし、この古びた繊維問屋街へ若者が次々と出店。その中心である繊維卸商業組合共同ビルの区画はほぼ埋まっています。
通路を進むと、個性溢れるお店が自己主張しており、懐かしさと新しさが混ざった不思議な空間が迷路のように展開しています。

お店造りに汗を流す若者 繊維卸商業組合共同ビルの通路

この問屋街は戦後のヤミ市が火事で消失後、繊維卸商業組合が共同店舗ビルを建てたのがはじまりで、昭和40年頃の最盛期には約100店舗が営業していましたが、10年ほど前は僅か3店舗が残るだけになっていました。

復活のきっかけは平成14年、熊本の近代遺産の活用を主目的とする市民団体「熊本まちなみトラスト」の冨士川事務局長と企画会社代表の前崎氏が、「ここで何かやれないか」と若者を呼んで共同店舗ビルでパーティーをした事に始まります。

寂れた問屋街でも若者が予想外の好感を持っていることに意を強くした冨士川氏は、オーナ-の説得を始めます。「今さら人に貸したくない」という返事が多い中で、「河原町が元気になれば」という思いで粘り強く交渉を重ねた結果、平成15年3月に第1号店がオープンしました。

物件情報の発信が呼び水に

その後、ビルの複雑な権利関係や設備条件を調査。出店者のための情報を整理し、積極的に情報発信したことが呼び水となりました。
また、前崎代表をコーディネーターとして窓口を一本化。「クリエーターであること」を条件に出店者選考していった結果、河原町は上通りや下通りとも違う、「クリエーターの集まる街・個性的なまち」に独自進化を始めたのです。

共同店舗ビルは長屋形式で、1区画3坪。1、2階から構成され、契約は入居者と家主との直接交渉あるいは不動産会社経由で結び、中心市街地としては格安条件となっています。

ビルの対面にも出店が飛び火 河原町マップ

個性的なお店の数々

陶器とブリザードフラワーのお店 アンティーク着物

5月にオープンした横山さんのお店は、県北の名産陶器である「小岱焼」(しょうだいやき)作家の器やブリザードフラワー(特殊処理で長期保存可能な生花)を販売するお店です。
趣味の焼物や骨董のお店を開きたいと思っており、以前から河原町に興味を持っていたそうです。順番待ちしてようやく出店したそうです。友人達の手を借り、外装から内装まで全てハンドメイド。3~4ヶ月掛けて完成したそうです。
「立地のハンデはありません。好きな人はどこにでも来る!」という信念をもって頑張っています。

井上さんのお店はアンティーク着物を扱い、開業してから3年半。
「家賃が安いことと、古いものを販売する雰囲気に合っており絵になる、せかせかしていない」ことが街の魅力。
「20~30代の女性を中心にお客さんも増えてきている」と手応えを感じています。

ギャラリーカフェ&バー

ギャラリーカフェ&バーを経営する黒田さんは出店してもうすぐ4年半。1階のカフェはオリジナルのジュースが人気。2階はフリースペースで、訪問した際は、若手アーティストの個展を開催中でした。
「目的にあった顧客と密なコミュニケーションが出来る」と黒田さんはクリエーターの街・河原町の強みを語ります。

河原町アートの日

また黒田さんは2004年(平成16年)に有志で組織した「河原町文化開発研究所」の副代表。毎月第2日曜日の「河原町アートの日」では、絵画や現代アート、ストリートパフォーマンスなど人とアートを結び付けるイベントを行い、少しずつ地域に定着しています。

あえて不便な河原町でもチャレンジしようという若者には確かなセンスと夢があり、冨士川氏や前崎氏らコーディネート側もコンセプトをもってそれを支えてきた結果、河原町繊維問屋街は新陳代謝を取り戻しました。

復活の鍵は 「創造の場の提供」

仮にこの繊維問屋ビルが解体され、新しい建物になっていたら?
その結果はわかりません。しかし小さくて古い建物を安い家賃で活用することへの理解が、出店者(クリエーター)の小さな経済活動を生み、多様性を演出し、コミュニティを形成し、まちの賑わいを取り戻したことは事実です。

街は単に消費の場でなく、創造する場です。その機会をいかに用意するか?が街の復活の鍵であることを熊本市河原町は示唆しています。