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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

全国中心市街地活性化まちづくり連絡会議第19回勉強会3

「国土政策から見た観光まちづくりについて」
国土交通省 国土政策局 総合計画課 企画専門官 高柳百合子氏

新たな国土形成計画について

人口減少に対応するための新たな国土形成を計画するにあたり、国土の基本構想は「対流促進型国土」としました。対流促進型国土を説明するにあたり、背景の確認をしました。

背景1人口減少、生産消費世代人口の激減により、30万人以上都市圏の激減やサービス提供機能と雇用の消失が起きる。
背景2東京圏で出生した人口が増え、地方を知らない人口の「滞留」により、東京圏から地方への人口移動が減少している。

以上の2点を踏まえてコンセプトとなるのが「コンパクト+ネットワークによる都市圏形成」になります。つまり、拠点をコンパクト化し、自らの資源に磨きをかけて多様性の再構築を行いながら、地方都市間の連携によって人・モノ・情報の交流促進を図るものになります。以上が新たな国土形成計画になります。

国土政策から見た観光まちづくり

次に、これからの地方拠点都市には、かつての「雇用、経済、商業の拠点」とは異なる、「生活、文化、観光の拠点」という新しい拠点の考え方が求められているのではないかという見解が示されました。その背景は、以下の2点です。

背景1日本の国土構造を見てみると、集落の多くは、DID(人口集中地区)までの所要時間は1時間圏内にあります。交通ネットワークの充実や商業施設の大規模化等により、特に中心都市から集落地域までの移動時間距離が小さい地域においては、集落地域の住人は、サービスの享受を求め、中心都市や三大都市圏などより大きな都市に移動し、反対に三大都市圏や中心都市の住人は、非日常を求め集落地域に観光や移住するなど、「地域中心都市」が目的地から中抜けされる傾向があります。
背景2人口減少社会を社会成熟社会と捉えなおしたとき、人々が地域に求める物も変化し、「自分の好きな暮らしを自分で作る人々がいる地域」を求める傾向が出てきています。具体的には、30、40代の子連れ世代が、新しいライフスタイルを求めるために、自営業やIT企業などの企業や創業、または農林水産業への従事するケースが増えています。

以上を踏まえ、地方の中小都市が「生活、文化、観光の拠点」という新しい役割を担うための考え方として、「観光まちづくり」が有効であるという立場から、かつての拠点都市づくりと、観光まちづくりとの違いについて、生産方式、消費スタイル、流通・広報、産業の条件、考え方のベースについて、比較した説明がありました。

観光まちづくりについて

最後に「対流促進型国土」を踏まえた「観光まちづくり」に必要な5つの着眼点と、観光まちづくりに取り組む事例の紹介がありました。

着眼点1
  1. 外からの視点 : 外からの視点で地域の価値を再発見
  2. 都市全体を見渡す視点 : 都市全体を見渡した地域資源・既存資産の活用
着眼点2

担い手 : 創発人材が中で変化を起こし続ける

着眼点3

ビジョン : 内外の人を惹きつける、ありたい姿を掲げる

着眼点4

民間資金・ノウハウ : 事業性を確保し、持続可能な活動を目指す

着眼点5

仲間 : 共通する課題を持つ仲間を見つけ協働する

以上の着眼点を踏まえて、以下の2点の事例の説明がありました。

事例 篠山市(一般社団法人ノオト)の取り組み

  • 古民家などの空き家の再生活用と宿泊施設・飲食施設・工房などの事業者マッチングを通じて、観光振興、UIターンの促進、雇用の創出、内発型産業の創造を手掛けている。
  • 平成25年には、関係自治体、地域金融機関、民間企業等が参画する「地域資産活用協議会」を設立。
  • 歴史地区(城下町、宿場町、集落等)を「ひとつのホテル」として再生活用し、歴史的町並み、食文化、生活文化が体験できる滞在型ツーリズム「NIPPONIA」を展開している。

事例 結城市(結いプロジェクト)の取り組み

  • 平成22年に「結い(共同作業)」でつなげるまちおこしを目的として、20歳代~30歳代の若者中心のメンバーで「結いプロジェクト」が発足。
  • 市のまちづくり団体である株式会社TMO結城と連携し、まちなかクラフト市(「結い市」)、まちなかコンサート(「結いのおと」)などを企画運営。
  • 単なるイベントではなく、「人や物の縁結び」を趣旨とした活動を行っており、現在では、市外や都心からの応援者も増えている。