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中心市街地活性化協議会支援センター

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中心市街地活性化全国勉強会2024レポート

 独立行政法人中小企業基盤機構(中小機構)は、令和6年11月11日に、「中心市街地活性化全国勉強会2024」を「面的なエリア価値向上」をテーマに東京都港区の中小機構本部において開催しました。本勉強会は中心市街地活性化協議会の関係者が相互に情報共有・ネットワーク形成し、地域間の交流や各地の課題解決の手がかりを得ることを目的として実施しています。全国41地域から104名(オンラインを含む)が参加した本勉強会の概要を紹介します。

勉強会の様子
画像:勉強会の様子
開会挨拶 中小機構 高度化事業部長 橋本孝
画像:開会挨拶 中小機構 高度化事業部長 橋本孝

目次

プログラム1 講演「地域のエリア価値の向上に向けた取り組みについて」

プログラム2 講演「面的エリア価値の向上と中心市街地活性化」

プログラム3 事業説明「令和6年度中心市街地・商店街等活性化支援事業」

テーマ別グループディスカッション

※各目次をクリックすると、それぞれの記事にジャンプします。


プログラム1 講演「地域のエリア価値の向上に向けた取り組みについて」

 はじめに中小企業庁商業課長(兼)中心市街地活性化室長の伊奈友子氏より講演を頂きました。
冒頭に経済産業省の機構改革、中小企業庁のミッションとして中心市街地活性化、面的なエリア価値の向上の取り組みを組織的にも位置づけられたことに触れられ、そのうえで中小企業政策の全体像、これまでの面的伴走支援及び新たな支援の構築についてお話しを頂きました。

中小企業庁商業課長(兼)中心市街地活性化室長 伊奈友子氏
画像:中小企業庁商業課長(兼)中心市街地活性化室長 伊奈友子氏
目指すべき推進体制のイメージ(講演資料より)
画像:目指すべき推進体制のイメージ(講演資料より)

 中小企業政策の全体像では、はじめに国内環境として特に生産年齢人口の減少などから、中小企業に変革や成長が求められていることを指摘されました。そのうえで中小企業庁として成長経営の政策と、中小・小規模事業者の4つの類型が示されました。中小商業者の多くは、持続的経営を目指し地域を支える小規模事業者として、地域資源型と地域コミュニティ型を2つの類型に含まれるものと考えられます。
 これまでの面的伴走支援については、エリア価値(魅力)を高めていく必要性とともに、地域の持続的発展に向けた事業体制づくりを振り返られました。事業体制づくりでは、地域の持続的発展の担い手としての役割分担の概念や体制の整備等が重要と指摘されました。また、「個性」と「多様性」を伸ばし、地域のエリア価値を高めている取り組み事例を紹介頂きました。
 新たな面的伴走支援の構築については、ローカル・ゼブラ企業の紹介があり、商業課が目指す面的伴走支援の方向性として、エリアの社会課題解決の担い手となる主体として、まちづくり会社や商店街組織等に期待されました。
 施策としては、本年度に実施されている商店街等活性化支援事業(中小機構交付金の内数)、まちづくり人材育成事業及び商店街表彰事業が紹介されました。まちづくり人材育成事業は研修事業(商店街から考える!まちづくり人材育成講座「マチスタート」)として実施されます。また、商店街表彰事業は「地域にかがやく わがまち商店街表彰2024」として実施され、表彰式のほか受賞者商店街の視察・意見交換会が行われています。
 参加者からは、「商店街支援、中心市街地と中小企業支援について関連付けてお話いただいたので立体的に理解することができました」、「自身も個人事業主のため、自分の仕事を作りながら地域の価値を高めるという視点を持ってまちも事業も考えたいと思いました」等の感想が寄せられました。


プログラム2 講演「面的エリア価値の向上と中心市街地活性化」

 続いて、専修大学商学部教授の渡辺達朗氏より講演を頂きました。
 はじめに商業環境の変化について、ご自身のこれまでの取り組みを交えて解説いただきました。特に、商業を中心としたまちづくりが難しくなっていること、汎用的な手法である再開発が東京圏でも難しくなってきていること等の指摘がありました。そのうえで、面的エリアとは?面的エリア価値とは?そして価値の向上策は?の問いかけがあり、重要なのは誰にとっての価値かということを説かれました。

専修大学商学部教授 渡辺達朗氏
画像:専修大学商学部教授 渡辺達朗氏
まちづくりの展望(講演資料より)
画像:まちづくりの展望(講演資料より)

 まず、面的エリアとは?に関し、マーケティングのSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)手法の考え方を紹介されました。「空間」と「対象」について、セグメントを区切り、ターゲットを絞る考え方です。基準として、経済的有効性、到達可能性及び測定可能性の項目を示して頂きました。また、面的エリアを中心市街地として捉えたときの環境変化を、都市・商業・消費の3つの要素から詳しく解説頂きました。面的エリアのスポンジ化をはじめ、商店街の生活街化などの論点とともに、地域や企業のSDGsウォッシュの問題、気候変動や自然環境への対応リスクなど幅広く指摘されました。
 次に、面的エリア価値とは?に関し、エリアの持続可能性について、身近な例をもとに、産業における業種・業態の補完と競争(多様性)、地域コミュニティの広範なニーズへの対応力(包摂性)、オーバーツーリズムなどで「共有地の悲劇」を繰り返さない明示的/暗黙的ルール(自立性)の必要性を説明されました。また、歴史・文化やブランドに支えられるシビックプライドにも触れられました。
 そして、価値の向上策は?に関して、SDGs11(住み続けられるまちづくりを)を入口にサスティナビリティについて説かれました。最近はSDGsへのハードルが下がってきていること、一方でSDGsウォッシュ/グリーンウォッシュのリスクがあることを指摘されました。
 最後に、まちづくりへの展望として、経済・環境・福祉のトライアングルの図から、それぞれの課題とともに、それぞれの重なる部分に向上策のヒントがあると指摘されました。例えば、環境と福祉の重なりには、余剰/未利用の食品・日用品等の提供、食育プログラムの開発・提供を挙げられていました。
 参加者からは「今、地域で起きていて実際に目の当たりにする問題点を話して下さり、納得できる部分が多かったです。自分の思っていたことが単語になり問題として扱われていた事は安心感を覚えました」、「商店街ではなく、暮らしを豊かにする「生活街」へという言葉が、これから目指す商店街のかたちにぴったりだと思えた」等の感想が寄せられました。


プログラム3 事業説明「令和6年度中心市街地・商店街等活性化支援事業」

 中小機構高度化事業部 まちづくり推進室より、令和6年度から開始した中小機構の中心市街地・商店街等支援事業の説明を行いしました。事業の詳細は 中小機構のページ 別ウィンドウで開きます をご覧ください。


テーマ別グループディスカッション

  会場参加者は、自身の関心の高い中心市街地活性化のテーマ別に4つのグループに分かれ、ファシリテーター(中小機構の中小企業アドバイザー)とともにグループディスカッションを行いました(2回開催し2テーマに参加)。なごやかな雰囲気の中、参加者同士での取り組みや課題の共有、考え方や解決策等が議論されました。テーマとファシリテーター等による発表概要は次のとおりです。

 ・人材発掘、巻き込み/組織に関する課題、活性化
 ・収益事業、新規事業立ち上げ
 ・商店街に関する課題
 ・地域内連携、合意形成

■Aグループ(人材発掘、巻き込み/組織に関する課題、活性化)
 地域には色んな悩みがありました。例えば商店街と商店街では、いまある商店会と休止している商店会を近づけることの難しさ、外から来た方と中に(前から)いる方、そして世代間のギャップがありました。
 それらの問題に対し、話し合いの場を持ちビジョンを共有していくとことが大事とのアドバイスがありました。熱いコーヒーを飲みながら話すのは、熱いとすぐに飲めないので、時間をかけて話しができるからよいとも。あと、第三者を交えて話すことも助言されました。市等を巻き込むことも大事で、まちづくりを進めやすくできる利点を挙げられました。

■Bグループ(収益事業、新規事業立ち上げ)
 参加者が何より共感されたのが「行動することがすべて」ということでした。迷って、悩んでいるよりも、どんどんチャレンジしていくことが大事。具体的な新規事業でこんな収益が出ているという話は、地域特性は色々あるので、この場で事業を深堀りはしませんでしたが、自身が関わる街やエリアをどうしていきたいということは、しっかり持っておかなければいけない、とアドバイスがありました。立ち上げようとする事業のスタイルによっても、守備範囲ややらなくてはならないことも変わります。そのためエリアブランディングについて多く意見が交わされたとのことです。

Aグループのディスカッションの様子
画像:Aグループのディスカッションの様子
Bグループのディスカッションの様子
画像:Bグループのディスカッションの様子

■Cグループ(商店街に関する課題)
 ファシリテーターに代わり参加者による発表でした。空き店舗の対策が課題でしたが、まず、何のためにまちづくり会社があるのかを叩き込まれまとのこと。入居企業等には、入居したから何かしてあげるではなく、自ら考えしてあげるギブの精神が大事だということを学んだといいます。そこから関わりも広がると感じるとも。
 参加者みんなで空き店舗問題について話し合い、例えば、ビルオーナーとの家賃交渉や貸出し交渉の場には、商店街関係者や不動産業の方の協力が不可欠だという意見、また、改装費等の行政の補助金は、地域事情に合った制度設計が必要との意見が交わされたそうです。

■Dグループ(地域内連携、合意形成)
 事業であったり、組織づくりであったり、行政との理解や活動エリアの線引きなど、さまざまな合意形成に対して、メリットがないとまとまらない、関係性を積み重ねているから合意形成できる、予算を含めた計画は説得力がある、デザインや面白さに共感を得られるといった意見。また、小さなまち(エリア)の中だけで考えるのではなく、周りも見たうえで考えて合意形成できるとよいといった意見が交わされたとのことです。
 また、組織内に例えて、上司の説得だけでなく部下(地域)の納得や、多数決だけでなく少数(地域)の意見も聞いたうえでの合意形成が必要との意見が出されたそうです。

Cグループのディスカッションの様子 
画像:Cグループのディスカッションの様子 
Dグループのディスカッションの様子
画像:Dグループのディスカッションの様子

 勉強会の開催にあたっては、各段のご協力を頂きました中小企業庁経営支援部商業課・中心市街地活性化室及び中小機構の中小企業アドバイザーの皆様には感謝申し上げます。最後にファシリテーターから指名された参加者が「色々と地域の課題について議論でき、フェイスツーフェイスでお話しできて本当に良かった」と話されたことが印象的でした。
 勉強会の目的であった中心市街地や商店街等の活性化に関わる人々や機関の連携構築、まちづくりに携わりたいと思う人々のマインド醸成等に一助になれたものと感じています。また、参加者アンケートにて勉強会について様々な改善意見等を頂きました。次回は一層充実したものとするよう努めてまいります。