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中心市街地活性化協議会支援センター

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中心市街地活性化全国勉強会2023レポート

 独立行政法人中小企業基盤機構(中小機構)は、令和6年2月19日に、「中心市街地活性化全国勉強会2023」を東京都港区の中小機構本部において開催しました。本勉強会は中心市街地活性化協議会の関係者が相互に情報共有・ネットワーク形成し、地域間の交流や各地の課題解決の手がかりを得ることを目的として実施しています。全国50地域から133名が参加した本勉強会の概要を紹介します。

勉強会の様子
画像:勉強会の様子
開会挨拶 中小機構 理事 福本功
画像:開会挨拶 中小機構 理事 福本功

目次

プログラム1 講演「中心市街地活性化の現状と今後の方向性等について」

プログラム2 講演「今後の商店街・中心市街地活性化施策~個性と多様性を活かしたエリア価値の向上~」

プログラム3 事業説明「令和6年度中心市街地・商店街等支援事業」

テーマ別グループディスカッション

※各目次をクリックすると、それぞれの記事にジャンプします。


プログラム1 講演「中心市街地活性化の現状と今後の方向性等について」

 はじめに内閣府地方創生推進事務局 参事官補佐の本橋浩行氏より講演を頂きました。講演では、中心市街地活性化の法施行状況に触れ、中心市街地活性化制度の変遷を振り返りながら、現行制度の概要と中心市街地活性化の認定基本計画の運用状況が紹介されました。例えば全国1,718の自治体人口別の初回基本計画認定状況では人口20万人以上の自治体(110自治体)の約50%が中心市街地活性化認定基本計画の認定を受けている一方で、人口20万人未満の自治体(1,608自治体)では約6%にとどまっています(令和5年4月時点)。このような要点を、参加者は本橋氏の講義を通じて学びました。
 続いて社会経済情勢の変化について、人口減少と高齢化の進展、空き家の増加、商店街の後継者問題などのテーマを様々な統計資料とともに説明いただきました。新型コロナウイルスの感染拡大及びその対策のための人流抑制の影響が長期にわたったことで、地方への移住に対する関心の高まりやテレワークなどの新たな働き方が活発になったことなど、国民の意識・行動が変容していることが大きな変化として挙げられました。
 このような社会経済情勢の変化に対応した中心市街地活性化を図るために、内閣府地方創生推進事務局は令和4年度に全国自治体を調査対象として「中心市街地活性化に関するアンケート調査」を実施しています。本橋氏から説明されるアンケート調査の分析を通じて、参加者は今後の中心市街地活性化における課題を再考する機会を得ました。

内閣府 地方創生推進事務局 参事官補佐 本橋浩行氏
画像:内閣府 地方創生推進事務局 参事官補佐 本橋浩行氏
令和4年度「中心市街地活性化に関するアンケート調査」調査結果の概要(出所:勉強会講演資料)
画像:令和4年度「中心市街地活性化に関するアンケート調査」調査結果の概要(出所:勉強会講演資料)

 後半に、中心市街地活性化評価・推進委員会で議論された重点課題骨子案について、勉強会当日時点での情報を共有いただきました。中心市街地活性化評価・推進委員会とは、社会経済情勢に対応して、「まちの顔」ともいうべき中心市街地の更なる活性化方策について専門的見地から検討・助言を得るため、内閣府地方創生推進事務局において開催された有識者会議です(※)。本橋氏は「小さなことでも着実に一歩ずつ中心市街地活性化に取り組むことが重要だ」と締めくくりました。
 参加者からは、「データが一覧にまとまっていて見やすく、中心市街地活性化の現状、今後の方向性について学びが多かった」、「内閣府の話を聞く機会があまりなかったので有意義であった」等の感想がありました。

(※)中心市街地活性化法の改正時(H26.4.25公布)の附則において、平成36年(令和6年)3月31日までの間に、法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずる旨規定されているものです。なお、委員会の議事等の最新情報は「 内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生 別ウィンドウで開きます 」をご参照ください。


プログラム2 講演「今後の商店街・中心市街地活性化施策~個性と多様性を活かしたエリア価値の向上~」

 続いて、中小企業庁経営支援部 商業課長(経済産業省地域経済産業グループ 中心市街地活性化室長を兼務)の古谷野義之氏より講演を頂きました。
 古谷野氏から、中小企業庁が商店街に対して実施した調査結果(R3年度商店街実態調査)が紹介されました。調査結果の一例として、客観的に見て、商店街が心理的に「廃れている」と感じる境界である「空き店舗率10%」を超える商店街が、全体の4割に達していることなどが挙げられました。他にも商店街組織に係る問題として「組合員の減少」、「組合員の商店街活動に対する意欲の低下」と回答する割合が総じて高い状況で、商店街組織の収入は組合員からの賦課金・会費が大半を占め、組合員の減少に伴い商店街組織の年間総事業予算額が減少した商店街が全体の4割弱あることから、商店街における組織力が低下している可能性について指摘しました。
 商店街の実態を踏まえ、これまでの商店街支援策は個店支援が中心でしたが、ライフスタイル・地域課題等が多様化する中、個店支援のみでは政策効果に限界が生じており、商店街を核とした地域の「個性」と「多様性」を伸ばし、エリア価値(魅力)を高めることが商店街活性化の支援において必要だと中小企業庁として仮説を立てました。
 古谷野氏は点(個店)から線(商店街)、線から面(エリア)へ範囲を広げ、多様なプレイヤーを巻き込みながら、商店街やエリアに新たな変化を生み出す組織力(推進力)の強化が重要であると述べました。エリア価値向上に向けた地域の組織力強化を支援する取り組みとして、中小企業庁の外部人材・地域人材育成事業(令和3~5年度に実施し、52の商店街等を支援)で伴走支援した事例が紹介されました。
 令和6年度の事業として、中小機構の商店街等活性化支援事業をはじめ、商店街等で活用できる施策である補助金や交付金、「地域にかがやく わがまち商店街表彰2024」等の取り組みが紹介されました。
 また、地域の価値を高めるためには、地域全体を俯瞰して本質的な課題を見出し、関係者との合意形成を図るコーディネート役となる人材が必要であり、そういった人材の育成・発掘に係る支援が重要であると述べました。
 参加者からは、「地域の個性や多様性を伸ばし、地域の面的価値の向上を図る支援の考え方が分かりやすかった」、「様々なアンケート結果を知る事ができ、実際に支援を受けた地域の事例を学べたのが参考になった」等の感想がありました。

中小企業庁経営支援部 商業課長 古谷野義之氏
画像:中小企業庁経営支援部 商業課長 古谷野義之氏
商店街等の活性化・地域づくりの促進についての講演資料(出所:勉強会講演資料)
画像:商店街等の活性化・地域づくりの促進についての講演資料(出所:勉強会講演資料)

プログラム3 事業説明「令和6年度中心市街地・商店街等支援事業」

 中小機構高度化事業部 まちづくり推進室より令和6年度より開始される中小機構の事業説明を行いました。事業の詳細は 中小機構のページ 別ウィンドウで開きます をご覧ください。


テーマ別グループディスカッション

  会場参加者は、自身の関心の高い中心市街地活性化のテーマ別に4つのグループに分かれ、ファシリテーター(中小機構の中小企業アドバイザー)とともにグループディスカッションを行いました。ファシリテーターの進行に沿って、和気あいあいとした雰囲気の中、参加者同士での取り組みや課題の共有、考え方や解決策等が議論されました。発表概要は次のとおりです。

 テーマ・人材発掘、巻き込み
    ・収益事業、新規事業立ち上げ
    ・空き店舗対策、リノベーション
    ・エリアマネジメント、地域全体の活性化

■Aグループ(人材発掘、巻き込み)
 人材発掘や巻き込みの難しさは、世代間や職員間の意識の違いに起因して、中心市街地活性化への取り組みがバラバラに動いているのではないかといった意見がありました。また、参加者の問題意識として、組織の目的や役割が不明確であることや、リーダーシップが不十分であることが多くを占めました。これらの問題は参加者自身では解決できない部分が多いため組織として考える必要があると、ファシリテーターから助言がありました。そして、新たなエリア価値の創出は短期的にできるものではありませんが、時代の先行きが不透明な中、予定調和な取り組みではまちの存在感が低下する一方であるため、様々なプレイヤーが「まちの中でやりたいことができる環境にする」必要があるといった議論が行われました。
 参加者からは、「共通課題であっても、地域ごとに異なる意見を伺えたことが有意義だった」、「関係者と1対1の議論を試みて相手像を改めて考える必要があると痛感した」等の感想がありました。

■Bグループ(収益事業、新規事業立ち上げ)
 新規事業の企画は、内部発案と外部依頼の2パターンがあることについて議論がなされました。また資金調達については、参加者から補助金・委託費に頼らない手段として、一時場所貸しによる利用料収入、民間企業からの協賛金の獲得などが紹介されました。ファシリテーターからは収益事業の例として、事業用不動産の賃貸、駐車券事業、共益事業等の賦課金、テナントリーシング、居住用不動産の賃貸などが挙げられました。他の収益事業のアイデアとして、ふるさと納税の事務局業務などが議論されました。そして事業で得られた収益の使い方については、人材や事業に再投資することが重要であるとの意見が大半でした。
 参加者からは、「事業開発について自社の棚おろしが出来て、新しい視点が得られた」、「収益事業を安定的にまちづくり会社で実施するのは、地域の特性や人との関わりなど、民間会社とは少し違う視点で判断が必要だと改めて感じた」等の感想がありました。

Aグループのディスカッションの様子
画像:Aグループのディスカッションの様子
Bグループのディスカッションの様子
画像:Bグループのディスカッションの様子

■Cグループ(空き店舗対策、リノベーション)
 参加者はディスカッションを行いながら、空き店舗対策には役割分担が必要で、市区町村は制度設計等、商工会・商工会議所は出店前後の経営指導、金融機関は融資等の相談、民間団体(まちづくり会社)はその他の支援等を行い、サポートしていくことが重要だと意見交換しました。ファシリテーターからは、まちづくり会社のトップは空き店舗対策において、求める成果を明確にすることが大事であることや、資本金は積極的に有効活用をすることで活かされるものだと助言がありました。また、空店舗対策は率や数を優先するのではなく、「良いものを一つずつ創る」ことを念頭に進めると良いとの助言もありました。
 参加者からは、「空き店舗対策に対する意識改革が必要だと強く知れた」、「各参加者の状況を掘り起こして話した上で、ファシリテーターの方から具体的事例や助言があり、大変参考になった」等の感想がありました。

■Dグループ(エリアマネジメント、地域全体の活性化)
 参加者とファシリテーターとで「エリアマネジメントとは何か」と考え方を共有した後、「エリアマネジメントの長所・短所・課題」について意見交換を行いました。エリアマネジメントについては多様な解釈がなされているため、自ら定義することが適当との助言がありました。最終目的とするエリアの価値の内容を地域で共有できていることが前提となりますが、 エリア内には様々な取り組みがあって良いだろうといった議論がなされました。
 参加者からは、「エリアマネジメントの考え方について勉強になった」、「自分の地域におけるエリアマネジメントの現状について第三者意見を聞けたことが有意義だった」等の感想がありました。

Cグループのディスカッションの様子 
画像:Cグループのディスカッションの様子 
Dグループのディスカッションの様子
画像:Dグループのディスカッションの様子

 本勉強会の開催にあたっては、各段のご協力を頂きました内閣府地方創生推進事務局、中小企業庁経営支援部商業課、中小機構の中小企業アドバイザーの皆様に感謝申し上げます。
 勉強会の目的であった中心市街地や商店街等の活性化に関わる人々や機関の連携構築、まちづくりに携わりたいと思う人々のマインド醸成等の一助になれたものと感じています。また、参加者アンケートにて勉強会について様々な改善意見等を頂きました。次回は一層充実した勉強会とするよう努めてまいります。