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令和5年度「東北地域中心市街地及び商店街関連セミナー」レポート
東北経済産業局及び独立行政法人中小企業基盤機構は、令和5年11月9~10日の2日間にわたり、令和5年度「東北地域中心市街地及び商店街関連セミナー」を福島県白河市において開催しました。「踏み出そう!私のまちづくり」をメインテーマに、中心市街地や商店街等の活性化に関わる人々や機関の連携構築、まちづくりに携わりたいと思う人々のマインド醸成等を目的として開催した、本セミナーの概要を紹介します。
本セミナーでは、1日目に、中小企業庁及び中小機構からの支援施策紹介等のあと、基調講演、パネルディスカッション、中心市街地のまち歩きと交流会、2日目に、テーマ別グループワークと成果発表および個別相談会を行いました。
目次
※各目次をクリックすると、それぞれの記事にジャンプします。
基調講演 「かぬまシウマイでまちおこし」
栃木県鹿沼市(人口約9.1万人)において、まちづくりに取り組まれている鹿沼商工会議所中小企業相談所次長の水越啓悟氏に講演を頂きました。水越氏は、コロナ禍の商業活性化策として、シウマイ弁当で有名な崎陽軒の初代社長の野並茂吉氏(創業者の娘婿)が鹿沼市出身であることに着目し、シウマイによるまちおこしを考えました。隣接する宇都宮市の餃子と鹿沼市のシウマイの相乗効果もねらいです。
外出もままならない状況でしたが、新規顧客開拓・市場創出という視点から、SNSや電話を活用し市内の飲食店に協力を求める地道な活動から、シウマイ像設置のエピソードと今では市のシンボルとして話題になっていることなど、ユーモアを交えてお話を頂きました。「かぬまシウマイ」のブランド化により、市内のシウマイ提供店は5軒から70軒に増えました(
かぬまシウマイドットコム 別ウィンドウで開きます
より)。そして この取り組みは、公益社団法人日本観光振興協会の第16回産業観光まちづくり大賞において、特別賞を受賞しました。
水越氏は、商工会議所の中小企業相談所次長として経営支援の本務を担いつつ、まちづくりの課題に取り組まれています。聴講したセミナー参加者からは「本業があるからまちづくりが出来ないは言い訳だった、気持ちがあれば出来る」という声が聞かれました。
パネルディスカッション 「まちづくりって、なに?」
まちづくりに携わりたいと思う人々にとって知りたい「まちづくりとは何か」、「これからのまちづくりのキーワードは何か」などをテーマに、進行役と4名のパネリストによるディスカッションを行いました。
パネリスト | 所属とまちづくりとの関わり |
---|---|
苅谷智大氏 | 株式会社街づくりまんぼう まちづくり事業部部長(宮城県石巻市の中心市街地活性化に携わる) |
大和田卓氏 | 一般社団法人ロヂカラ・須賀川市役所 商工課(路地に面する空き地等を利用したマーケットイベント「Rojima」に携わる) |
青砥和希氏 | 一般社団法人未来の準備室(白河市にある高校生びいきの古民家「コミュニティ・カフェEMANON」の運営に携わる) |
吉島祐輔氏 | 有限会社大島屋(福島県白河市に代々続く蒟蒻店の経営者となり、地域の交流の場となるようなおでん店を開業) |
伊藤大海氏(進行役) | 中小企業アドバイザー(中小機構) |
伊藤氏からの「まちづくりとは何か」、「まちづくりに携わったきっかけは何か」といった問いに、パネリストが答えながらなごやかに進行し、「これからのまちづくりのキーワードは何か」の問いに、参加者の関心が寄せられました。
パネリストの苅谷氏はキーワードに「遊び」をあげ、遊びには趣味とか気分転換というイメージと、自由というイメージがあると言います。コミュニケーションとして遊びがあるようなまちづくりを心掛けたいとも。大和田氏は「スキ」をあげ、スキ(好き)なことができるまちに住みたい、また、「アキ(空き)の利用」では誰でもいいというイメージがあるのに対して、「スキ(隙)を埋めるまちづくり」だと主体的になれる気がすると言います。青砥氏は「真逆」をあげ、学問を学んで計画したまちづくりに取り組むよりも、自由な発想で若い世代が取り組む方が面白いと言います。基調講演を例に、シウマイの形をしていないシウマイ像はとても興味深かったとも。そして吉島氏は「(小さな字で)パッション」をあげ、何をやるにもパッションや本気でないと駄目と言います。ただし燃え上がるようなパッションでなく、リラックスしたくらいのパッションが良いとも(小さな字で書いた理由)。
最後に伊藤氏が「みなさんも様々な意見を共有して、それをまちづくりに役立ててほしいと」総括しました。
まち歩きと交流会
白河市及び株式会社楽市白河の協力を得て、中心市街地のまち歩きを行いました。基本計画に基づいて整備した施設「しらかわ観光ステーション」や、パネルディスカッションでパネリストを務めて頂いた青砥氏が運営する「コミュニティ・カフェEMANON」、地域資源である「脇本陣柳屋の蔵屋敷」などをめぐりました。古民家のリノベーションやまちづくり視点での回遊や滞留の考え方などの説明があり、中心市街地活性化への理解を深めて頂けたものと思います。
また、1日目の終わりに開催した交流会では、白河の食材を用いた食事を楽しみながら活発な情報交換が行われました。また、白河市長にも参加頂き市のまちづくりへの思いをお話し頂くとともに、参加者へのエールを頂きました。
テーマ別グループワーク
セミナー2日目は、参加者は(自身の関心の高いまちづくり課題別に)5つのグループに分かれ、コーディネーターとともにグループワークを行いました。コーディネーターからのレクチャーのほか、参加者の発表や作図など積極的に取り組んで頂けました。
グループ | コーディネーター | 概要 |
---|---|---|
Aグループ | 下田孝志氏 (中小機構アドバイザー) |
円滑なまちづくりに繋げるための、まちづくりセミナーの企画立案の際に抑える要点を議論 |
Bグループ | 柳沢拓哉氏 (株式会社まちづくり八戸) |
ロールプレイを通じて、まちづくりに携わる人の獲得に有用な、まちあるき企画の立案を議論 |
Cグループ | 苅谷智大氏 (中小機構アドバイザー) |
行政・商店主・まちづくり会社・住民など様々な立場からの多角的な(立場の異なる機関の役割の)視点でまちづくりを議論 |
Dグループ | 古川直文氏 (中小機構アドバイザー) |
「モルック」の体験や大会運営の講座を通じて、まちづくりの関係人口を増やす実践手法を学ぶ |
Eグループ | 伊藤大海氏 (中小機構アドバイザー) |
白河市の本町北裏地区の未来予想を題材に、制約にとらわれない自由なまちづくり発想法を学ぶ |
グループワークの成果発表では、各グループのコーディネーターから参加者全員にそれぞれの課題テーマや取り組み、そして成果が発表されました。
各グループの成果発表の概要は次のとおりです。なお、各グループワークで作成された作図など成果物は、成果発表後に掲示され、参加者の閲覧に供されました。
(Aグループ)まちづくりセミナー
参加者同士で地域の「まちづくりセミナー」の開催状況を発表した後、企画立案の際に押さえておきたいポイントが議論されました。「まず、セミナーに参加する対象者と、セミナーの目的・成果を決めてから、テーマや手法、講師などを選定すると有意義なセミナーになる」という共通認識を得られました。コーディネーターの下田氏からは、まちづくり人材の発掘や育成の場に変えていく取り組みもセミナーでは重要とコメントがありました。
参加者からは、セミナー開催自体が目的になっているケースが多く、何の目的で、なぜこの対象者で開催するのかということに立ち返ってみることが大切だと感じた、という感想がありました。
(Bグループ)まち歩き企画
このグループには地域の「まち歩きマップ」を持参するという事前課題がありました。参加者から発表されたまち歩きマップとレビューを通じて、まちづくりに携わる人の獲得にも有用な、まち歩き企画の立案を議論しました。コーディネーターの柳沢氏は、まち歩き企画はターゲットや目的、地域などによって様々であるため、是非発表事例などを踏まえて視野を広げて欲しいとコメントしました。
参加者からは、まち歩きには様々な視点(観光、消費、資源の再認識等)や目的があることを認識した、マニアなど熱量の大きいファンを誘引できる仕掛けがあるとバズる(インターネットやSNSで多くの人に取り上げられる)きっかけになると感じたとの感想がありました。
(Cグループ)立場の異なる機関の役割
立場の異なる機関がどういう役割を期待されているか議論しました。①商工会・商工会議所及び商店街は個店支援を期待されているが、もう少し個店と他者をつなぐ活動が必要。②まちづくり会社はまちづくりのプレイヤーやコーディネートを期待されているが、現状に満足せず関係者に目線をあわせることが必要。③自治体はまちづくりのビジョンの示唆などリーダーシップを期待されているが、関係者への歩み寄りや情報共有が必要。④経済産業局・中小企業団体中央会は、自治体よりも俯瞰した支援が期待されているが、支援内容の周知が必要という結果でした。コーディネーターの苅谷氏は、立場に関係なく話を聞きにいく姿勢が重要だとコメントしました。
参加者からは、相談しやすいようコミュニケーションを密にすることが必要、まちづくりに関する異なる立場での意見や考え方を話し合う契機となり参考になったとの感想がありました。
(Dグループ)関係人口を増やす
まちづくり会社である株式会社楽市白河は、ふくしまモルッククラブを2022年1月に設立し、同クラブは同年5月に日本モルック協会から公認を受けた県内で唯一の団体となりました。また同年10月には福島県で初の大会となる「モルック福島県大会」を開催しています。老若男女問わず気軽に参加でき、まちづくりの関係人口を増やすのに適した競技であることモルックの説明を受け、参加者は実際に屋外でモルックを体験しました。コーディネーターの古川氏は(モルックを通して)地域と人のつながりをより深めていけるような活動を参加者に期待されました。
参加者からは、マイナースポーツであるがゆえの結びつきの強さを感じた、発信力が高く仕事につながるSNSの大切さを認識したとの感想がありました。
(Eグループ)まちづくり発想法
エリアマネジメントではエリアのビジョンを示すことが重要です。心おどる未来予想図を検討し、可視化するという手法(妄想マップづくり)が有効です。参加者はエリアマネジメントや妄想マップづくりの説明を受け、再度まち歩きをした後に妄想マップづくりを実践しました。コーディネーターの伊藤氏からはプロジェクトの上流である妄想(アイデア)の段階では現実や制約など硬直的なアイデア発想を持ち込むと魅力的なものにならないとコメントがありました。
参加者からは、まち歩き後の再発見を書き出してみることが重要だと感じた、段差を1つとっても見方によっては否定も肯定もできる点があり活かし方は無数にあると感じたとの感想がありました。
セミナー開催を終えて
本セミナーには31機関39名の参加を頂きました。行政や支援機関、民間事業者のほか大学生の方にも参加頂きました。メインテーマ「踏み出そう!私のまちづくり」に沿った内容で実施できましたこと、ご協力を頂きました専門家の皆様、開催にあたって各段のご尽力を頂きました白河市及び株式会社楽市白河の皆様に感謝申し上げます。
閉会後の参加者アンケートでは、まずは動いてみる、職場の同僚に想いを伝え共有する、自分の職場でまちづくりの意見交換会をやってみる、モルックをやってみる、楽しいを前面に取り組む、学生を巻き込こんでみる、などの前向きな記述が多くありました。セミナーの目的であった中心市街地や商店街等の活性化に関わる人々や機関の連携構築、まちづくりに携わりたいと思う人々のマインド醸成等の一助になれたものと感じています。