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「商店街の未来を考える交流会in松山」レポート
四国経済産業局等と独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)は、令和6年10月30日に「商店街の未来を考える交流会in松山」を愛媛県松山市において開催しました。
本交流会は、これからの商店街の在り方や為すべきことについて学び、長期的な視点で参加者が情報を交換し、考えを共有することを目的として開催しました。交流会の基調講演及びワークショップの概要をご紹介します。
主催:四国経済産業局、松山市商業振興対策事業委員会、松山市
共催:中小機構、松山市商店街連盟、松山市中央商店街連合会
協力:株式会社まちづくり松山、松山商工会議所、松山アーバンデザインセンター、愛媛県
基調講演「商店街の復権—人口減少・成熟社会のデザイン」
京都大学 人と社会の未来研究院教授の広井良典先生から、「商店街の復権—人口減少・成熟社会のデザイン」と題して、講演をいただきました。
講演は「人口減少社会への視点」、「AIを活用した、持続可能な日本の未来に向けた政策提言」、「商店街の復権~歩いて楽しめるコミュニティ空間~」、そして「伝統文化の再発見—鎮守の森コミュニティ・プロジェクト」の4つの論点から、様々な商店街の可能性についてお話しいただきました。
はじめに「人口減少社会への視点」では、日本の総人口が2008年のピーク1億2,808万人から2100年には6,300万人に半減するという、予測データが示されました。ただし、ここで大事なことは人口減少を悲観するのではなく、ポジティブに捉えることだと言います。商店街の在り方についても、危機をチャンスと捉え、新たな発想でものごとに取り組むターニングポイントを迎えていると言います。
次に「AIを活用した、持続可能な日本の未来に向けた政策提言」では、日立京大ラボ(株式会社日立製作所の京都大学との共同研究部門として2016年に設立されたオープンイノベーション拠点)との共同研究による興味深い調査結果を示して頂きました。AIを活用した、日本の①人口、②財政・社会保障、③地域、④環境・資源という4つの持続可能性に着目した分析は、「都市集中型」か「地方分散型」が大きな分岐点(2042年頃)になるという結果でした。東京一極集中のような「都市集中型」は人口減少を加速させるため望ましいシナリオとは言えず、また、強い人口分散を起こすことで、出生率が持ち直し、個人の健康寿命や幸福感も増大する「地方分散型」シナリオが望ましいと言います。そして、「地方分散型」シナリオを実現するためには、今からおよそ8~10年後までに、環境課税の創設や再生可能エネルギーへの転換、まちづくりの要因となる施策を推進する政策が有効であると言います。
3つ目の「商店街の復権—歩いて楽しめるコミュニティ空間」では、はじめに人口10万人程度の地方都市でも賑わいのあるドイツのエアランゲン市など、ヨーロッパのいくつかの地方中小都市を紹介いただきました。商店街から郊外のショッピングモールへシフトするアメリカ型のモデルだけではなく、地域に商店街がしっかり根付いて賑わいを持続する地方中小都市の在り方もあることを示していただきました。そして、商店街復権への視点についてのヒントや様々な試みの具体的な事例を示していただきました。詳細は広井先生編著の書籍『 商店街の復権—歩いて楽しめるコミュニティ空間 別ウィンドウで開きます 』をご一読いただければと思います。
最後に「伝統文化の再発見—鎮守の森コミュニティ・プロジェクト」について触れられました。日本には約8万の神社や寺があります。その神社や寺にある「鎮守の森」は、地域コミュニティの拠点としての特別な性格を持ってきました。このプロジェクトは、鎮守の森を自然エネルギーの分散的整備や地域再生などの現代的な課題と結びつけ、その新たな意義を再発見していくものです。そして、商店街も鎮守の森につながる性格があり、日本社会の持続に貢献する可能性があると言います。 鎮守の森コミュニティ・プロジェクトのような視点も踏まえながら、色々な商店街の可能性を考えていくことが重要であると、講演を締めくくられました。
本交流会では、岩下紗矢香氏(いわし~ワークスファシリテーション)のグラフィックレコーディング(議論や提案をイラストやテキスト等を組み合わせて視覚的に表現する手法)により、リアルタイムのとりまとめを行いました。
ワークショップ
商店街の活性化や復権に向けて意見交換し、商店街の新たな役割や目指す姿、取り組むべきことなどを考えるワークショップを行いました。4つのグループに分かれ、ファシリテーターの進行のもと、参加者同士で商店街の課題の共有、考え方や解決策等について、活発な討議が行われました。
■グループ① ファシリテーター:木藤亮太氏(中小機構中小企業アドバイザー)
ここでは補助金の活用方法について議論され、木藤氏から株式会社油津応援団(宮崎県日南市)での若者が働ける場(収益事業)づくりへの補助金活用が紹介されました。補助金が持続性ある収益事業の構築に貢献した事例です。しっかりとした持続的なスキームを組む助けとして、補助金は良い制度だと共有されました。
また、商店街を新しい価値観でバージョンアップしなければならないと話し合われました。人の価値観は今後もどんどん変化していくため、昭和のはなやいだ思い出の商店街に戻るのではない、新たなチャレンジが求められているとことが共有されました。木藤氏からその成功のポイントとして、行政が掲げる若者を元気にする施策と、商店街の施策をマッチさせることで、地域の協力を得やすくなると助言がありました。
■グループ② ファシリテーター:岡本真司氏(中小機構中小企業アドバイザー)
ここでは後継者不在と空き店舗の問題について意見交換が行われました。商店街での店舗経営が厳しいため、継いでもらうことができず後継者不在となり、廃業そして空き店舗に繋がっている問題について、その解決に「若者」をキーワードとして議論されました。
柳井町商店街ではマルシェ、音楽等のイベントで若者が商店街に関わり、古着屋が空店舗に出店した事例が発表されました。また、建築士が空店舗の設備や改装に関するアドバイスを行い、身近なコミュニティアーキテクトの重要性も指摘されました。岡本氏から、沖縄市中心市街地商店街の空き店舗に、若者が起業したIT企業の事務所が入居した事例が紹介されました。子育て支援の面で補助金に依存し続けるのではなく雇用の創出、定住促進、空き店舗解消の3つを同時に満たし、自走できる収益を確保し続けられる取り組みが重要だという結論が導かれました。
■グループ③ ファシリテーター:前田眞氏(愛媛大学_地域協働推進機構客員教授)
ここでは商店街の新しい役割を考える中で、若者がまち中で何かしたいときの、ハードルの低い相談先の必要性について話し合いがなされました。
どのような形の相談先がよいか議論し、図書館や地域資料の展示をしている施設などの、分かりやすい場を用意してあげることが重要との考えが共有されました。そのうえで商店街として若者を応援する仕組みをつくり、商店街と若者で意見を出し合いながら、新しい商店街を共創する考え方が導かれました。ただし、個店の儲けに繋がらないイベント等の相談ばかりでは持続性がないとの指摘もありました。
■グループ④ ファシリテーター:尾形愛美氏(松山アーバンデザインセンター_ディレクター)
このグループには学生が3名いたことから、どのようにすれば学生が商店街や地域と関わりやすいか、意見をもらうことにしました。学生からは、商店街と繋がりを持てることは魅力であり、商店街と学生を繋いでくれる人が一人でもいてくれると嬉しいと言います。
また、月に1回でもよいので、定期的に本交流会のような学生と商店街関係者が気軽に話せる場が欲しいという意見がありました。学生には喫緊の課題はなくとも、気軽に商店街関係者と交流できる場があることで、まちづくりに関わりやすいという意見がありました。
交流会を終えて
本交流会には四国各地をはじめ総勢84名の参加をいただきました。ご協力を頂きました専門家の皆様、開催にあたって各段のご尽力をいただきました主催者皆様をはじめ関係各位に感謝申し上げます。
本交流会が、まちづくりに関わる商店街等関係皆様の、地域交流のきっかけになれば幸いです。