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中心市街地活性化協議会支援センター

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『近畿中心市街地活性化ネットワーク研究会』が開催されました。

 2025年7月16日、近畿中心市街地活性化ネットワーク研究会が開催されました。
 コロナ禍中だった前回(大阪府茨木市、2022年12月)から約3年ぶりの開催でしたが、久しぶりに顔を合わせる参加者同士はすぐに打ち解け、時間の経過を感じさせない、対話が弾むにぎやかな会となりました。
 参加者は多岐にわたり、近畿地域を中心に、中活協議会の関係者、まちづくり会社、タウンマネージャー、商店街連合会、行政の担当者など、12地域5団体から35名が集まりました。
 各地からの近況報告のあと、中心市街地活性化に関するさまざまな課題について、自由な雰囲気の中で意見交換が進みました。

◆開催日:2025年7月16日(水)14時~17時
◆開催地:近畿経済産業局(大阪市中央区大手前1-5-44大阪合同庁舎1号館3階) 
◆主催:近畿中心市街地活性化ネットワーク研究会
◆協力:中小機構

 

目次

研究会の様子
研究会の様子

 最初に、会長の尾崎さん(南紀みらい株式会社/田辺市)、続けて近畿経済産業局 流通・サービス産業課長の遠藤さんから挨拶がありました。

  • 尾崎さん
    尾崎さん
  • 遠藤さん
    遠藤さん

 副会長の若狭さん((株)地域環境計画研究所/尼崎市)・竹村さん(長浜まちづくり株式会社/長浜市)・石上さん((株)みらいもりやま21/守山市)の3人がファシリテータ—を務め、ディスカッションがスタートしました。

(左から)石上さん、竹村さん、若林さん
(左から)石上さん、竹村さん、若林さん

次第やプログラムを決めず、3つのトピックを挙げ、参加者全員が発言できるような流れで進行しました。

研究会冒頭で示された「3つのトピック」
研究会冒頭で示された「3つのトピック」

1.3年間のまちの変化

①まちづくりプレイヤーの増加

 まちの変化として多く声が上がったのは、創業者や地域活動の担い手など、新たなまちづくりのプレイヤーが増えている、ということでした。

○創業する方が増えている
○駅前での開業が増えている
○毎週末まちのどこかでイベントがあるほど、活動する人が増えている
○「顔の見えるプレイヤー(具体的な活動や交流を通じて、実際にまちづくりに対して存在感のある人)」が増えている
  • 3年間のまちの変化について報告する参加者の皆さん
  • 3年間のまちの変化について報告する参加者の皆さん
    3年間のまちの変化について報告する参加者の皆さん
  • 3年間のまちの変化について報告する参加者の皆さん

 まちづくりプレイヤーの世代交代が進んでいることや、若いまちづくりプレイヤーの参画や活動についての意見もありました。

○長浜市における、中心市街地活性化の象徴的存在である交流拠点「黒壁スクエア」の設立メンバーが80代を過ぎ、まちづくりに関わる人の世代交代が進んで、若い人たちが活動に加わるようになってきた。若い人は、従来のチーム作りとは違い、それぞれが自由に活動しながら緩いチームワークでつながっているようだ
○勢いのある若い人がまちづくりに参画するようになり、旗振り役を担う姿も見られる
歴史的建造物を活用した「黒壁スクエア」※
歴史的建造物を活用した「黒壁スクエア」※

 行政の中心市街地活性化の支援策も、まちづくりプレイヤーの育成に注力しているようです。

○大津市では、個々のイベント等への補助から、地域の活性化を目指して活動する人材を育成するためのプログラム「まちづくりプレイヤースクール」への補助に移行し、プレイヤーの育成事業を行っている
大津駅前イベント相談窓口2025チラシ(まちづくりプレイヤースクール運営)※
大津駅前イベント相談窓口2025チラシ(まちづくりプレイヤースクール運営)※
発言内容をその場でまとめて投影したもの
発言内容をその場でまとめて投影したもの

②人流の増加

 コロナ禍で減少したまちなかの人流も増加傾向とのことです。コロナ中に実施した交流拠点等の新設やリニューアルといったハード整備が、ここにきて効果を発揮しているようです。

○川西能勢口駅の高架下に、交流施設「マチノマ」が2023年4月に開業したことに加え、駅前デッキの活用が民間にも広がった
○紀伊田辺駅前の交流施設「tanabe en+」(タナベ エンプラス)が2020年8月に開業した。また、熊野古道への外国人観光客の来訪が増えて活況している 
○明石駅近くの複合施設「アスピア明石」が2022年から2023年にかけてリニューアルした。以前はファミリー層・高齢者層が中心だったが、若い世代に人気のチェーン店(KALDI、西松屋等)が入居したことで、子育て世代などにも客層が広がっている
○寝屋川市駅前の再開発ビル「アドバンスねやがわ」では、コロナ禍の間、都市部へ出かけることが減り、駅前の買い物ニーズが高まったことをきっかけに、コロナ後も大きな落ち込みは見られない
○山口市では、KDDI維新ホール(産業交流拠点施設、2021年)、新山口駅観光交流センター(観光交流拠点施設、2021年)、市役所本庁舎(2025年)と、3つの大きなハード整備があった
  • マチノマ(川西市)※
    マチノマ(川西市)※
  • tanabe en+(田辺市)※
    tanabe en+(田辺市)※
  • アスピア明石(明石市)※
    アスピア明石(明石市)※
  • アドバンスねやがわ(寝屋川市)※
    アドバンスねやがわ(寝屋川市)※
  • KDDI維新ホール(産業交流拠点施設)(山口市)※
    KDDI維新ホール(産業交流拠点施設)(山口市)※

2.活況するマルシェ

①拡大への対応

 話題は、昨今地域で活発化している「マルシェ」の取り組みへと移っていきました。この数年で、マルシェの人気は急上昇しているようです。

○伊丹市の地域交流拠点「三軒寺前広場」で、毎週日曜日に開催されている「イタミ朝マルシェ」の出店者が増えている。2011年に始まったときはわずか10店舗だったが、現在は45店舗までに成長した
○田辺市の扇ヶ浜公園カッパークで開催している「弁慶市」でも出店者が増加している。出店者のイチ押し商品を告知チラシに全面的に掲載したところ、それがお客様のニーズにはまり、集客をさらに促すことになった。屋根付きの朝市会場で雨天時の影響がないことも出店者の都合に良いようだ。子どもから高齢の方まで、多世代の良い交流の場になっている
○草津川跡地公園 de愛ひろばで開催している「くさつFarmers' Market」でも、出店希望者が急増している
  • イタミ朝マルシェ(伊丹市)※
    イタミ朝マルシェ(伊丹市)※
  • 弁慶市(田辺市)※
    弁慶市(田辺市)※
  • くさつFarmers' Market(草津市)※
    くさつFarmers' Market(草津市)※

 しかし、出店者が増えたことで運営が煩雑になりつつある、という懸念もあるようです。現在の会場が手狭になり、新たな会場を模索する動きもあるとのこと。幅広い品揃えを望むお客様のニーズに応えようと、当初の地域産品へのこだわりから離れて市外・県外からの出店を検討している、という声もありました。

○マルシェを始めた当初は、ゆるく長く楽しむことを目指していた。しかし、出店者の増加によって事務量が大幅に増えた。出店希望者に対しては事前面談をして、出店内容とマルシェのコンセプトが合っているかを確認するようにしている
○お客様が増えてきたら出店者が増える、出店者がふえたらお客様が増える。喜ばしいことではあるが、拡大によって収集がつかなくなるのは避けたい
○屋外で開催するマルシェは、コロナ禍をきっかけに各地で増加した。安全に交流を楽しみたいと始まったのに、拡大によって事務量が増え、事務局が疲弊してしまっているところもあるようだ。惰性で続けるのではなく、マルシェがまちの未来につながるのか、見極めることが大切だ
  • 活況するマルシェについて意見交換する参加者の皆さん
  • 活況するマルシェについて意見交換する参加者の皆さん
    活況するマルシェについて意見交換する参加者の皆さん

 一方で、マルシェを出店者の自主運営に切り替えているという事例も紹介されました。

○川西能勢口駅前の南北デッキで開催している「駅前ピクニックマルシェ」は、今年度思い切って開催数を減らしてみた。当初は、出店者が増えて盛り上がっているときになぜ、という声も聞かれたが、結果として出店者が自主的にマルシェを主催するようになった
駅前ピクニックマルシェ(川西市)※
駅前ピクニックマルシェ(川西市)※

②目的の明確化

 拡大するマルシェについて、目的を明確にすべきという意見が多くでました。

○マルシェの最終目的は何かを明確にしておく必要がある。まちづくりの視点では、マルシェ全体で収益を生み出し、それをまちに還元するという流れを作ることが大切だ
○モノが売れにくい時代になり、個店の営業も難しい中で、マルシェも加わるとまち全体での販売競争が激化する。目的やコンセプトがしっかりしていないと、今は人気のマルシェでも将来的に集客が難しくなることがあるのではないか
○対面での購入(コミュニケーション)・地元産品を販売すること(地産地消)・創業の手がかり(スタートアップ支援)など、目的の設定の仕方が大切だ。目的を明確にし、屋外の公共空間を活用して実施することで、まちなかに新たな刺激が生まれ、活性化につながるのではないか

 マルシェの目的の1つとして、人材の発見・発掘の場という意見もありました。

○従来の出店者がマルシェを離れることで、新たなプレイヤーに出店の機会が訪れ、マルシェの顔ぶれがどんどん変わっていっている。特に女性や若い方が増えている
○マルシェは人材発掘の場になっている。マルシェでの活動の様子を見て、新たなプレイヤーの登場に周囲が気づくこともある
○創業者、特にスタートアップの段階では、最初から実店舗を持つのはリスクが高い。マルシェは出店の障壁が低く、チャレンジしやすい

 拡大するマルシェへの課題はあるものの、まちの活性化や多世代交流の醸成など、マルシェが生み出すさまざまな効果に関しては、皆さん同様に感じているようでした。

○マルシェでまちが盛り上がること自体は素晴らしいことだ。マルシェにはいろいろな使い道がある。目的は多義的で、想定以上の結果に結びつくこともある。結果として良い形で継続していけばよい
○まちの暮らしやすさの1つにマルシェの存在がある。高齢者の方から若者、子どもたちなど、さまざまな世代が集うようになった

 そのほか、各地の注目のマルシェについて情報交換がありました。

○「大東ズンチャッチャ夜市」(大阪市大東区)。毎月最終水曜日にJR住道駅前デッキで開催しており、約50の飲食店や物販店のほか、音楽ステージでのパフォーマンスなどもある。コンセプトは「すっぴん女子」。自然体で地域を楽しむ女性をターゲットとしている。仕掛人は元大東市職員の入江智子さん。ズンチャッチャ、という軽快なネーミングも良い
○「材木町よ市」(岩手県盛岡市)は50年もの歴史がある夜市。毎年4月から11月の土曜日の夕方から開催しており、地元の新鮮な野菜や果物、クラフトビールや雑貨など多彩な商品が並ぶ。マルシェが「まちの日常」となり定着した好事例だ

3.商店街の現状

①衰退する商店街

 中心市街地活性化のテーマの1つである商店街の現状については、憂慮する声が聞かれました。

○衰退が著しい。支援等で一時的に対処しても根本的な解決につながりにくく、厳しい状況だ。地域の人材不足から外部の人間が支援に入っても、最終的には地域の人が動く必要がある。地域で、活性化を担える人材を育成することが課題だ
○商店街の空き店舗対策によって、空き店舗率を10%台まで下げることができた。しかし、老朽化したアーケードの撤去負担等、依然として活性化へのハードルは高い。こうした状況で、20代など若い担い手を発掘することは難しい
○駅周辺の商店街を含むエリアで「まちなかバル」を開催しているが、商店街組織の一部が無くなるという話を聞いている。商店街組織が無いと、まちなかバル実施のための調整や周知が難しくなり、店舗へのフォローもできなくなるので、心配している
○かつて商店街で活性化に取り組んでいた人が高齢になり、その後のフォローができていない状態だ。さらに老朽化したアーケード等、商店街組織が負の遺産を持ち続けていることで、ますます動けなくなっている
今回、唯一近畿地域以外から参加された山口市の皆さん
今回、唯一近畿地域以外から参加された山口市の皆さん

 商店街組織の弱体化については、このほかの地域からも指摘がありました。

②商店街支援の見直しの動き

 商店街は今後どうなるのか。支援の仕方の見直しについても意見がありました。

○これまでの商店街支援が手厚かったことで、かえって弱体化を進行させてしまったのではないか。支援の仕方を見直す必要がある。一過性のイベントに対する支援等は見直すべきではないか
○これまでの中心市街地活性化は「衰退した商店街を立て直す」という視点であったが、「新しい価値を生み増やす」ことに着目すべきではないか

 そして、商店街の次のステップに関する意見がでました。キーワードは「サードプレイス」です。

○若い学生に、これからの商店街の役割は何かと聞いたところ「各店が推しを作ること」という答えが返ってきた。商店街は自己実現としての場として、今時の言葉でいうとオタク的な、独自の個性あふれる価値を表す場として活用できると思う。商店街は今後、まちの「サードプレイス」になっていくと考えている
○中心市街地活性化というと商業振興が中心だった。しかし東日本大震災以降、フェーズが移行し、「コミュニティデザイン」や「サードプレイス」といったテーマが中心になってきたと感じている

 地域を面的に捉えたうえでのコミュニティの活性化や、家庭でも職場でもない「サードプレイス」という自己実現の場の醸成が求められており、その拠点として、商店街に新たな役割が期待されているようです。


4.中活のこれから

①中活法の背景

 商店街支援の見直しや新たな役割についての意見が出るなか、研究会の設立のきっかけとなった「中心市街地の活性化に関する法律(以下「中活法」という)」が制定された背景について、あらためて振り返りました。

[中活法制定の背景](長坂さん/流通科学大学教員・中小機構アドバイザー から説明)
 1980年代後半から1990年代にかけて、プラザ合意や日米構造協議を背景に、日本は経済構造改革を求められた。その中で、大規模店舗に対する規制であった大店法(大規模小売店舗法)の緩和が進み、2000年に大店法は廃止され、規制が大幅に緩和された。
 その結果、ショッピングセンター等の大規模店舗が郊外を中心に急増したが、一方で中心市街地の商店街の衰退が深刻化し、中心市街地の機能が急激に弱体化した。
 こうした問題への対策として、1998年から2000年にかけて「まちづくり三法」(改正都市計画法、大規模小売店舗立地法、中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律)が制定された。これは、大店法の緩和によって生じた都市構造の変化に対応し、特に中心市街地を活性化することで商店街を含む地域経済を再生しようとするものであった。

○中活法には、郊外型店舗の進出で衰退した商店街を復活させるための「対処療法」的に設計されている側面もある。しかし、商店街活性化や空き店舗対策は引き続き必要とされており、商店街に代わり隆盛したショッピングセンターも、2019年以降減少を続けている状況だ
長坂さん
長坂さん

 2006年の改正中活法の施行から20年が経過しようとするなか、「中活法を活用したまちづくりが一定の落ち着きを見せるなか、今後の役割はどうなるのか」などの声が聞かれました。

②中活後のステップ

 中活法の基本計画を終えた地域から、その後について意見がありました。

○基本計画終了後、協議会も解散したが、まちのエリア全体で意思決定をする場が無くなり、「なにかを始めよう」という発想や活動が生まれにくくなったように思う

 また、中活法にかかる協議体とは別の形で、エリアの合意形成の場を作った例もありました。

○基本計画終了後に、中心市街地活性化協議会に替わって「くさつまちなかエリアプラットフォーム」を設立した。未来ビジョンを策定し、まちづくりの機能を中活から移行した形だ
○池田市でも、エリアプラットフォームを設立している。ソフト面での人材育成が盛んと聞いている

[エリアプラットフォームとは]
 「エリアプラットフォーム」とは、官民が連携して地域を再生・活性化するための取り組みを支援する制度です。地域の未来ビジョンを掲げ、さまざまな立場の多様な人(行政、企業、市民団体など)が集まって、課題の解決策やまちづくりを進めるための共通の場を構築します。
 「エリアプラットフォーム活動支援事業」(国土交通省)では、エリアプラットフォームの構築や未来ビジョンの策定等、エリアプラットフォームの活動に対する補助を行っています。

 中活法をきっかけに中心市街地が一体的に活性化を目指し、合意形成の場として協議会が機能したことによる効果は、皆さん感じているようでした。
 そうした合意形成の場を維持する方法の1つとして、エリアプラットフォームなど新たな制度を活用する流れがあるようです。

  • 議論に熱が入る参加者の皆さん
  • 議論に熱が入る参加者の皆さん
    議論に熱が入る参加者の皆さん
  • 議論に熱が入る参加者の皆さん
約3時間に及ぶ熱い議論を終えて、歓談する参加者の皆さん
約3時間に及ぶ熱い議論を終えて、歓談する参加者の皆さん

5.おわりに

 研究会は、まちづくりの実践者や関係者同士の活発な意見交換が行われ、多様な地域の状況や取り組みを知る貴重な機会となりました。新たなまちづくりプレイヤーの増加やマルシェの活性化に関する対話の中から、今後の中心市街地活性化における可能性や課題が鮮明に浮かび上がったと感じました。
 各地の経験や工夫を共有することで、次の一歩を考える貴重な場となり、この先もそれぞれの地域で新たな挑戦が生まれることが期待されます。

[近畿中心市街地活性化ネットワーク研究会について]
 2009年に中小機構の呼びかけで設置された団体です。近畿地方を中心に、中心市街地活性化に携わる方が集い、事例の紹介や、さまざまな課題について研究・意見交換をしてきました。設立当時、このような研究会は全国的にも珍しいものでした。2019年からは研究会が自主運営しています。

※印の写真・画像については、関係者の皆さんから使用の許可をいただき掲載しています。