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令和7年度関東地域交流会「『稼げるまちづくり』の実践と可能性~スポーツがつなぐ、コミュニティの力」レポート

 2025年11月26日(水)、東京都渋谷区において令和7年度の関東地域交流会を開催しました。
 「『稼げるまちづくり』の実践と可能性~スポーツがつなぐ、コミュニティの力」をテーマに、2つの事例紹介とトークセッション・グループディスカッションという内容で行われた交流会には、28名の参加者が関東地域だけでなく域外からも集まり、活気あふれる雰囲気の中で行われました。

 主催:経済産業省 関東経済産業局
 共催:独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)

会場の様子
会場の様子

目次

1.事例紹介+トークセッション

2.グループディスカッション

3.講評

※各目次をクリックすると、それぞれの記事にジャンプします。

 【プログラム】 
11/26
1.オープニング
2.事例紹介+トークセッション
【事例発表】
 ①株式会社KX プロジェクトマネージャー 黒木 康成 氏
 ②株式会社竹屋旅館SHIMIZUCROSS マネージャー/清水駅前銀座商店街理事 牧田 裕介 氏
【モデレーター】
 中小機構アドバイザー 伊藤 大海 氏
3.グループディスカッション
4.名刺交換会
 



1.事例紹介+トークセッション

 今回紹介された2つの事例は、スポーツを「フック」(きっかけや引力)として活用し、まちづくりに取り組む民間企業の取り組みでした。これらの企業は、地域内外から人を呼び込み、商店街や地域関係者と連携しながら、収益化を目指しています。
 民間企業にとって、収益を得るためには「稼ぐ」ことが不可欠です。一方、本交流会のテーマである「稼げるまちづくり」では、地域全体で「稼げる状態」をつくることが重要となります。そのためには、人を地域に呼び込む仕組みや、取り組みに参加するプレイヤーを生み出す視点が求められます。
 今回の2事例では、地域のプロスポーツチームなどをフックに展開する活動が紹介されました。そこから、地域資源をどのようにフックとして活かし、まちづくりに結びつけるか、その手法や考え方を学ぶことができました。

事例① 株式会社KX プロジェクトマネージャー 黒木 康成 氏

 鹿児島県出身の黒木さんは、大卒後大手輸送機器メーカーに就職し国内外で活躍した後、国内の地域課題解決に関心を持ち、宮崎県の農業関係のスタートアップ企業に転職したそうです。その時、視察に訪れた、株式会社鹿島アントラーズFCの代表取締役社長である小泉文明さんに出会い、その縁で茨城県鹿島市に移住し、現在の仕事に就いたそうです。
 黒木さんが所属する株式会社KXは、「プロサッカーチームである鹿島アントラーズが強くあり続けるには、ホームタウンであるまち自体が元気でなければいけない」という思いから、まちづくりを担う会社として設立されました。同社の代表取締役社長でもある小泉さんが100%出資しており、株式会社鹿島アントラーズFCからの出資は無いそうです。しかし、経営面において両社には強いつながりがあるとのことです。
 「地域に新しいプロジェクトを生みだす人を作る」をまちづくりのミッションと捉え、鹿島アントラーズのスポンサーや関係者とのつながりを、地域のプレイヤーが集まる場づくりや新たな事業者育成等の取り組みに活かしているそうです。

黒木さんの発表の様子
黒木さんの発表の様子

事例② 株式会社竹屋旅館SHIMIZUCROSS マネージャー/清水駅前銀座商店街理事 牧田 裕介 氏

 「SHIMIZUCROSS(清水クロス)」は、JR清水駅近くの清水駅前銀座商店街にある複合施設です。貸切パーティーや会議に利用できるスペース、シェアオフィスなどを備えています。牧田さんが所属する株式会社竹屋旅館が、まちづくり事業の一環として、空き店舗をリノベーションし、設置・運営しているとのことです。
 この商店街では、近年シャッター街化が進んでいます。同社は「まちが元気でなければ、持続的なホテル運営ができない」という思いから、まちと人の「関わりしろ」をつくり、地域の人々に「シビックプライド」を育むことが重要だと考えました。そのきっかけとして、清水エスパルスをはじめとするスポーツへの熱量を地域資源として活用することに着目したとのことです。
 具体的には、SHIMIZUCROSSを拠点に、スポーツ関連イベントの開催や人材育成プログラムなどを企画しており、スポーツを通じた地域づくりにおける中間支援組織として活動しています。
 ゆくゆくは周辺の空き店舗の再生が進み、スポーツや地域コンテンツを宿泊体験価値向上につなげることを目指しているとのこと。この旅館が地域資源を活用した地域づくりに取り組むモデルが、他地域にも広げられる可能性を視野に入れているそうです。

牧田さんの発表の様子
牧田さんの発表の様子

トークセッション

 トークセッションは、モデレーターの伊藤さんから、登壇者のお2人に質問をする形で進みました。
 伊藤さんは「各地での人口減少が進むなか、地域でのビジネス展開はリスクが高く、『思い』だけで進むものではない」と指摘しました。そして会場に向けて、2事例が地域活性化とビジネス・収益をどのように成立させているか、エッセンスをくみ取っていただきたいと語りかけました。

 はじめに伊藤さんから、2事例において、「何を成果指標としているのか」等について質問がありました。

 黒木さんは、「まちの中でどれだけの人が新しい事業やプロジェクトを始める人が生まれたか」を成果指標と考えているそうです。以前は、地域で新しいチャレンジに取り組む人が点在をしていて、つながることができなかったとのこと。そこで1年前、スポーツバー「Asobiya(アソビヤ)」を開業してコミュニティの場を作り、チャレンジに取り組む人を交代で店長になってもらい、その人が抱える課題について皆で話し合う、という取り組みを始めたそうです。
 一方、地域外からの集客については、鹿島アントラーズスタジアム近隣にトレーラーハウスを使った宿泊施設(「No.12 Kashima Fan Zone」)を設置し、来街者のまちなか滞留と消費を促す取り組みを始めているそうです。地域の事業者にトレーラーハウスを購入してもらい、それを運営するという形で行ったとのこと。事業者との連携・協力においては、鹿島アントラーズビジネスクラブ(地域課題解決を目指す企業コミュニティ)でのつながりを活用しているそうです。

 牧田さんは「商店街の周辺に、個人レベルで顔の見える10人の仲間が集まっている姿を5年後、10年後に作りたい」と語り、プレイヤーが増えていくことを成果指標としているとのことでした。
 商店街としての機能が低下するなか、商業以外の体験型の機能を持たせることも模索しているそうです。
 自社だけでなく、スポーツや地域への共感をベースとした仲間が、学生や地域企業、金融機関等の個人レベルで、周辺に多くいてくれるからこそ取り組みが成り立っているとのこと。
 補助金を一切活用せずにSHIMIZUCROSSがオープンしてから1年ほど経ってから行政側から具体的な連携について声がかかるようになり、2025年12月には静岡市と包括連携協定を締結する等、公的な信用を借りながら、取り組みの深化を模索しているそうです。

トークセッションの様子
トークセッションの様子

 次に、まちづくりのような公益性の高い事業は概して利幅が少なく、多くは公共施設の管理運営受託や指定管理を行う等して収益を確保することが多いなか、2事例がどのようなビジネススキームで自立・自走を実現しているか、伊藤さんから質問がありました。

 黒木さんは、地域の事業者・経営者と協力して課題解決をすることために、企画への共感や協力を得て巻き込むことに重点を置いているそうです。現在進めているのは、企業版ふるさと納税の仕組みを活用し、企業が保有する鹿島市内の空地や空き駐車場等を鹿島市に寄贈してもらい、その場所の活用に株式会社KXが市と連携して、新しい事業者のキッチンカーの営業等に活用する、というものです。ポイントは「いかにイニシャルをかけずにスキームを作るか」とのことです。その点からも、内外に連携・協力等を呼び掛けられるプロスポーツチームがあることは、とても有効な地域資源だと話しました。

 牧田さんは、スポンサー企業というと広告費に留まることが多いが、そこに「アクティベーション」(既存資源の価値を新たに引き出し、地域活性化等に役立てる)の発想を付加することで価値を生みだす支援を行うことを、中間支援組織としての持続可能なモデルを目指したいと話しました。


2.グループディスカッション

 グループディスカッションは、参加者を6チームに分け、2回行いました。
 1回目は、参加者個々が抱える課題と、その活動内容・財源・ネットワーク構築について、付箋に書き出し模造紙に貼りながら情報共有をしました。
 2回目は、参加者が入れ替わり、1回目のディスカッションで印象的だったキーワードについて書き出し、その課題・活動内容・財源・ネットワーク構築について共有しました。

  • グループディスカッションの様子
  • グループディスカッションの様子
    グループディスカッションの様子

 最後に、グループディスカッションで学んだことについて各グループから発表がありました。発表の内容は、伊藤さんがライブでまとめてくださいました。


3.講評

 グループディスカッションのまとめを踏まえて、伊藤さんから講評がありました。
 これからのまちづくりでは、新しい考え方を取り入れ、関係人口対策等を積極的に行う必要性について言及した後、事例発表の2事例が「本業の持続のために、地域が持続できる環境を作っていく」という考え方に基づいていることを指摘しました。まちづくりではよく「本業が忙しいので地域のために動く時間が無い」という声が聞かれるが、企業にとって地域は事業環境でもあり、地域の環境づくりは企業の活性化にも深く関係してくる。2つの事例は「地域に新たに参入した企業」と「地域に根づいた企業による新しい取組」という違いはありつつ、いずれも地域資源を地域課題解決につなげることで、収益を含めた事業展開にチャレンジしていることが共通の特徴であるとしました。
 地域の中で、新たなチャレンジが生まれる環境を作り、チャレンジしたい人を後押ししていくことが大切という印象も受けたとのことです。地域の企業や行政等の関係者が会するプラットフォーム等のハブとなる場を作り、目に見える形で新しいチャレンジの受け皿を構築していくことが大切としました。そして、2事例の登壇者の熱意やイキイキとした様子は、それだけで周囲に良い影響をもたらし、地域の活力を呼び覚ますものだと結びました。


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