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全国中心市街地活性化まちづくり連絡会議第25回勉強会

全国中心市街地活性化まちづくり連絡会議第25回勉強会

2019年11月6日から7日にかけて東京都新宿区で開催された「全国中心市街地活性化まちづくり連絡会議第25回勉強会」に参加させていただきましたので、概要を紹介します。

   

参考リンク)全国中心市街地活性化まちづくり連絡会議(以下、「全まち会議」) 別ウィンドウで開きます

全国中心市街地活性化まちづくり連絡会議第25回勉強会 次第

(1)勉強会1【11月6日(木曜)14時00分~17時00分】
1)講演①「小樽市における今後のまちづくり展望について」 小樽市 副市長
小山秀昭氏
2)講演②「小樽市における景観まちづくりの近況」
小樽市建設部新幹線・まちづくり推進室 景観まちづくり担当主幹
中西浩一氏
3)講演③「都市再開発法施行後の全国初の駅前再開発事業から再々開発事業に挑戦~小樽駅前第3ビル再々開発について~」
小樽駅前ビル株式会社 代表取締役専務
浅村公二氏
3)国からの情報提供 内閣府 地方創生推進事務局 参事官補佐
伊藤嘉道氏

経済産業省 経済産業政策局 地域経済産業グループ 中心市街地活性化室 係長
眞壁純氏

国土交通省 都市局 まちづくり推進課 官民連携推進室 課長補佐
並河洋一氏
(2)勉強会2【11月7日(金曜)9時00分~11時30分】
現地視察

2.まち会議第25回勉強会の概要

小樽市における今後のまちづくり展望と景観まちづくりの近況について

「小樽市の今後のまちづくりの展望」

小樽市副市長小山秀昭氏より、「小樽市の今後のまちづくりの展望」について、小樽市建設部新幹線・まちづくり推進室景観まちづくり担当主幹中西浩一氏から「小樽市の景観まちづくりの近況について」説明いただきました。

まず、小山副市長から、年間約800万人の観光客を呼び込む歴史的建造物や自然資源を活かした取り組み、その一方で昭和53年をピークに減少を続ける人口推移など小樽市の現状を説明いただきました。

その上で、賑わい創出策として、ハード事業では、新幹線開通の機会を活かす北海道新幹線新駅周辺のまちづくり、クルーズ船の誘導を図る小樽港第3号ふ頭周辺整備など新たなニーズへの取り組み、JR小樽駅前再々開発、歴史的建造物の保全・活用といった既存施設の保全・活用とその再生を目指す取り組み。
ソフト事業では雪あかりの路、潮まつり、小樽がらす市といったイベント展開策。これらハード事業、ソフト事業の相乗効果で中心市街地の賑わいを創出したいとしました。

「小樽市の景観まちづくりの近況について」

小樽運河の保存について

つぎに、中西氏から、小樽市が展開する景観まちづくりに対する取り組みについて説明いただきました。小樽市の景観を守る取り組みは、小樽運河の保存について論争が起きたことがきっかけでした。

大正時代から、小樽市の産業を支えてきた小樽運河。海岸線に沿って流れる小樽運河には石造倉庫が立ち並び、その背後には問屋街や銀行街が形成され、「北のウォール街」と評されるほどでした。

しかし、昭和に入ると、大型船の接岸ができる埠頭が港に整備されたことや交通環境が車社会へシフトされるにつれ、小樽運河は活用されなくなり、整備が滞ったことからヘドロがたまるなど景観に悪影響を及ぼすほどでした。

車社会が進む一方で、当時の小樽市には幹線道路がなく、車の渋滞の原因になっていました。車の渋滞が湾岸物流を阻害し、経済の停滞をも引き起こしていることから、運河を埋め立てて臨港道路にする都市計画が決定されました。

それに対して、小樽運河と石造倉庫を文化遺産であり守るべきとする市民団体が立ち上がり、道路整備を推進する側と論争となりました。この市民団体の活動は、運河の埋め立ての過程で石造倉庫も次第に取り壊されたことがきっかけで、大きくなっていきます。小樽市民は運河と石造倉庫の景観が歴史的財産であり、小樽の重要な個性であると気づいたのです。

この動きに行政も小樽運河保存を検討するようになり、小樽運河保存を主張する市民団体に加え、地元政治家、経済会なども交えて協議が図られました。その結果、小樽運河と臨港道路を共存させる形で都市計画を変更することとなったのです。
具体的には、小樽運河の北側をそのまま残し、南側は幅40メートルあった小樽運河の20メートルを埋め立て、車道や散策路に充てることで小樽運河と臨港道路の共存を図ったのです。

小樽運河
小樽運河(小樽市観光協会公式ホームページより)
景観条例の制定

市民が立ち上がり、約10年に及ぶ論争の上に今の小樽運河の景観があるといえます。この動きは1983年に制定された「小樽市歴史的建造物及び景観地区保全条例」につながります。これにより31の指定歴史的建造物、6.3ヘクタールの景観地区が指定されました。
また、「小樽市歴史的建造物及び景観地区保全条例」は北海道では初めての景観に関する条例で、1992年に制定される「小樽の歴史と自然を生かしたまちづくり景観条例」の基礎となります。

「小樽の歴史と自然を生かしたまちづくり景観条例」は1990年に小樽市中心部の眺望良好地区に10階建てのマンション建設計画が持ち上がったことがきっかけに制定されたものです。マンションの建設により眺望がさえぎられると地元住民を中心に反対運動がおこったのです。

これを受けて小樽市は総合的な都市景観条例の制定に動き、市民もそれに合意しました。この条例には、自然景観や眺望景観の保全、新築される建物の誘導、緑化の推進などが定められています。

景観法を活用した取り組み

「小樽の歴史と自然を生かしたまちづくり景観条例」が制定されましたが、今度は「小樽歴史景観区域」周辺で高層建築物の計画や建設が増加しました。

これに対して「小樽歴史景観区域」の拡大を検討していた小樽市は、国が2004年に景観法を公布したことを機に、2006年2月に「小樽歴史景観区域」の拡大、2006年11月に景観行政団体となりました。

小樽市は景観行政団体として景観計画及び改正景観条例を施行するなど歴史と自然を生かしたまちづくりへの取り組みを強化していくこととなります。

  

小樽市景観計画 別ウィンドウで開きます

小樽市 小山秀昭氏
小樽市 小山秀昭氏
小樽市 中西浩一氏
小樽市 中西浩一氏

都市再開発法施行後の全国初の駅前再開発事業から再々開発事業に挑戦~小樽駅前第3ビル再々開発について~

小樽駅前ビル株式会社代表取締役専務浅村公二氏より、小樽駅前第3ビルの再々開発について説明いただきました。

小樽駅前には、都市再開発法により駅前第1ビル、駅前第2ビル、駅前第3ビルの3棟のビルが1970年に整備されました。これは、日本発の市街地再開発事業として知られています。

この中の駅前第3ビルはホテルや商店、銀行、プールなどに活用されてきましたが、床面積の約6割を占めるホテルが2002年5月から営業停止となりました。営業再開のめどがたたないうちに、大型店の郊外進出や中心市街地人口の減少といった環境の変化から、商店の退出により空き店舗が目立つ状況となってしまいました。駅前の空き区画を多く抱えたビルの存在は、小樽市民にとって早急に改善が望まれる事象です。

この状況から、再々開発に至るまでの経緯について以下に記します。

建物の再利用の検討

ホテルの営業停止を受け、まず検討したのは建物の再利用でした。駅前第3ビル権利者をはじめ、駅前第3ビル管理者の小樽駅前ビル株式会社と小樽市は、その検討を始め、商業専門家などの助言を受けながら、ケアハウスなどの高齢者施設といった案を導き出しました。

しかし、区分所有といった複雑な権利関係や建物の老朽化からその案に乗り出す事業者を探し出すのは困難でした。さらに、設備の老朽化による改修費や耐震工事などのコストが見込まれ、採算性も合わないことから再利用の案は断念することになりました。

再々開発の検討

再利用案を白紙にした小樽市は小樽駅前第3ビルの再開発を検討しました。懸念として持ち上がったのは、再開発したビルに法定再開発が可能か、公金を再び活用することができるかといったことでした。これらについて小樽市が北海道を通して国に問い合わせたところ、以下の条件が必要であることが示されました。

①施設建築物の維持管理に支障が生じていること。②改修などの方法によっては有効活用を図ることが困難であること。③すでに建築後相当期間を経過していること。④都市機能の更新という新たな利用が行われること。⑤通常の再開発の条件がそろっていること。

以上の条件に当てはまることから、「まちなか居住」推進を柱に、住宅・商業・宿泊機能を持つ複合商業施設の整備を決めました。

この再々開発事業を中心市街地活性化基本計画に入れ込み、それに基づき実施することで公金の活用も可能になりました。それにあたり、小樽駅前第3ビルを管理する小樽駅前ビル株式会社が法定まちづくり会社となり、小樽商工会議所とともに小樽市中心市街地活性化協議会を設立しました。

この中心市街地活性化基本計画は2008年に認定を受け、事業が推進され、2009年にオープンしました。

2002年に核テナントであったホテルが営業停止になってから7年後に新たな小樽駅第3ビルに生まれ変わりました。この7年間に様々な課題に小樽駅前ビル株式会社をはじめとする関係者は取り組みました。

例えば、再利用を検討した際、ハードルとなった区分所有といった複雑な権利関係については協議の結果、小樽駅前第3ビルの早期再々開発が必要と認識を促し全員同意型の権利変換で行いました。

また、旧小樽駅前第3ビルの集客機能の一つであったプール閉鎖に対する市民の反対運動、撤退したホテルの多額の滞納金回収など、困難な課題を一つ一つ粘り強く対応してきました。

現在、再々開発された小樽駅前第3ビルは、まちなか居住機能を維持しています。また、小樽駅前第1ビル、小樽駅前第2ビルについても老朽化に関する問題から再々開発が検討され、2013年には小樽駅前再々開発まちづくり検討協議会が発足しました。

話し合いが徐々に進んでおり、2019年には、小樽駅前第1ビル周辺地区再開発準備組合が設立され検討を進めています。

小樽駅前ビル株式会社 浅村公二氏
小樽駅前ビル株式会社 浅村公二氏

国等からの情報提供

講演後は、内閣府 伊藤嘉道氏、経済産業省 真壁純氏、国土交通省 並河洋一氏から、各府省の取組について情報提供がありました。詳細は以下、URLをご参照ください。

内閣府

参考リンク

内閣府 伊藤嘉道氏
内閣府 伊藤嘉道氏
経済産業省

経済産業省中心市街地活性化ホームページ
経済産業省の主な支援について

経済産業省 真壁 純氏
経済産業省 真壁 純氏
国土交通省

参考リンク

国土交通省 並河 洋一氏
国土交通省 並河 洋一氏

現地視察

2日目は、初日に紹介された歴史的建造物や小樽運河などを巡りながら小樽市の中心市街地活性化の流れや取り組みを再確認しました。建築・製造当時の雰囲気が残る歴史的建造物やSL列車が観光客に与える印象がどれほど大きいものかを肌で感じることができました。

現地視察の様子
現地視察の様子