本文へ

中心市街地活性化協議会支援センター

文字サイズ
まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例
  • HOME
  • まちづくり事例
  • 伝統と現代が調和した1,300年の歴史文化が薫るまち(まちづくり武生株式会社)

伝統と現代が調和した1,300年の歴史文化が薫るまち(まちづくり武生株式会社)

取組のポイント

歴史的な資源を活用して集客を図る
市内企業社員の居住を支援する
蔵の辻を活用したイベントによる賑わいづくり

1.まちの特色

越前市は、モノづくりが盛んな地域で、近年はハイテク企業が立地し県内第一の出荷額を誇る産業都市として発展しているほか、国の伝統的工芸品に指定されている産業として「越前和紙」「越前打刃物」「越前箪笥」があり、こうした産業を支えることが越前市の重要な課題となっています。

特に、労働力の確保については、有効求人倍率が全国でも屈指の高い地域であり、県外からのUIJターンを促進するべく越前市では総合戦略を策定し定住化を進めています。

中心市街地は、越前国府が置かれて以来1,300年の歴史を有し、数多くの寺社、町屋、蔵などの街並みが残る風情ある街で、高度成長期には商業の中心地としてたいへん賑わいのある地域でしたが、郊外への大型店の進出などにより商業が衰退し始め、現在は居住人口の減少と高齢化、空家空店舗の増加による空洞化などに歯止めがかからない状況です。

2.まちづくり会社の取組

越前市では、第1期基本計画が平成25年に終了し、その後任意の第2期計画(平成25~30年)を策定し事業を継続してきましたが、現在中心市街地での新市庁舎の建替え、武生中央公園の再整備による住環境の整備等の大型プロジェクトを進めていることから、国の支援をうけるべく第3期基本計画を策定し認定を目指すこととなりました。

一方、北陸新幹線の南越駅(仮称)が中心市街地にある現駅から約3キロ離れて平成35年春に開業予定であり、中心市街地活性化への大きな課題となっています。

このような状況を踏まえ、活性化に向けたスピード感ある対応をするべく越前市と商工会議所、市商店街連合会、市不動産業協会が発起人となり、昨年4月にまちづくり会社が設立されました。

総務省の支援事業による「地域おこし協力隊」2名も運営に参加し、よそ者の目線で幅広く活動しています。
まちづくり武生株式会社「ブログ・SNS」 別ウィンドウで開きます

まちづくり武生株式会社の皆さん

(ア) 賑わい創出・商業振興事業

1)まちなか商店街ビジョン策定支援

昨年、全国商店街支援センターの助成事業を活用し、株式会社アイレックの伊津田崇アドバイザーをお招きして商店街の活性化ビジョン及び今後3年間で取組む事業を定めた商店街活性化プランの策定において、商店街を支援しました。

この計画は、中心市街地で中核をなす5商店街と地域住民が共同で商店街の将来の姿、あり方を考えたものです。

計画ではハード事業として3事業、ソフト事業として7事業を定め、ハード事業は次期認定基本計画に位置づけられています。

この地域は、町家や古い商家、蔵が多く残っており、地域ストックを活かしながらエリアマネージメントを進めていく事業を計画的にすすめます。

また、その推進に当たっては「多世代の交流と賑わいを若者と創り上げるまちづくり」をテーマとして、現在の商店街を訪れる機会が少ない若者と一緒に、賑わいづくりを進めていくこととしています。

3つの街区で活性化プランがまとまった、たけふ ビジョンマップ
2)空き店舗活用事業

現状として廃業したあと店舗を貸す状況が少ない中で、所有者に対し今後の方針などを確認し、貸し店舗として活用策を検討し理解を進めてきました。その結果、貸し店舗として6件の新規開業につなげ、弊社として物件取得を1件し、リース事業を実現しました。

3)得する街のゼミナール開催事業

武生商工会議所との共催で「武生まちゼミ」を開催しました。年間2回開催し、参加店舗延59、延べ475名が受講されました。昨年までで4回の開催となり、当初からの継続参加店舗に新たな参加者も加わり、受講者も増加しています。店舗、受講者ともに評判が高く、継続開催につながっています。

(イ)まちなか居住促進事業

1)不動産業協会と連携した土地活用の推進や集合住宅の建設促進

市内には多くの町家があるものの、空き家になっているものが多くあります。しかし、所有者は賃貸にすることに煩わしさを感じており貸家につながっていないことから、まちづくり武生株式会社が所有者に対して貸家への理解を求めるために直接説明をしてきました。その結果、まちなかへの居住希望者に対し4件の居住につながりました。

また、所有者の相談に応じるため、越前市不動産業協会と連携してまちなか不動産相談会を開催してきました。

2)市内立地の企業の社員住宅や寮の誘致

昨年は、福井村田製作所の社員寮(50戸)の誘致を行いました。

福井村田製作所社員寮

また、越前市と共同で大手企業の社員に居住希望についてのアンケートをとり、一人住まいに対する新たなアパートの供給はあるものの、家族向けの供給が不足していることが判りました。

そこで、越前市不動産業協会と連携して土地所有者に家族向けアパート建設の促進を行なったところ、1件4戸の建設につながりました。

(ウ)まちなかイベントサポート事業

平成14年に整備され国の都市景観大賞を受賞した「蔵の辻」を活用したイベントなどの運営を支援しています。

蔵の辻はまちなかにある5商店街に囲まれる位置にあり、昨年は「壱の市」、「昭和の花嫁行列」、「越前市サマーフェスティバル」、「ムーンライトカフェ」などのイベントが実施されました。

しかし、イベントが継続して複数回開催されているにもかかわらず、周辺店舗の連携が取れていなかったことから、まず音楽ライブイベントであるムーンライトカフェにおいて、周辺の飲食店6店舗で音楽ライブを開催しライブとお酒のはしごを企画しました。この結果、蔵の辻来場者が周辺に流れるようになりました。

都市景観大賞を受賞した「蔵の辻」
ムーンライトカフェの様子(左)とカレー王国の様子(右)

3.今後の取組、期待、関係者の声など

昨年のまちなか商店街ビジョン策定をうけて、3つの商店街活性化プランの推進が課題となっています。

(ア)総社通りの再整備と空き店舗再生

総社通り商店街は市内でもっとも大きな商店街ですが、空店舗も多くさらにアーケードの老朽化が進んでいることから、商店街活性化プランではアーケードを撤去し、現在残る商家の建物の雰囲気を活かした商店街に再整備する取り組みを行なっていきます。

また、今年度は、商店街にある地上3階、地下1階の元洋装店の空ビルを会社が借り再生に取組みます。複数の出店者が共有して使用できる広さがあり、8月にネイルや占いなど女性向けの店舗が入るイベントを開催しました。まちなかでの創業や交流機能をもった施設として順次活用したいと考えており、今後はまちづくりに関心のある人たちとビルの方向性を検討していきます。

(イ)京町界隈・総社表参道の点から面への再生

京町1丁目の通称寺町通り周辺及び総社の表参道のエリアは、町家が連なっており店舗に活用できる空店舗・空家が複数集まっていることから、エリア再生のためのコンセプトづくりを行い、面としての整備を行なうことで、一帯の価値を高めていく取り組みを進めていきます。特に、今年は寺町通り界隈を中心に事業を進め、これまで弊社にまちなかでの開業に相談のあった店舗と開業を目指しながら話を進めていく計画です。

(ウ)家族で住めるまちなか居住の促進

昨年の居住に関するアンケート結果から市内に家族向けのアパート需要があることから、空地や空家のオーナーの理解を得ることが課題ですが、建設促進に取り組むことにしています。

また、引き続き企業の社宅の建設について、市と協力しながらまちなかへの建設を促進していきます。

(エ)蔵の辻を活用したイベントは今年も魅力満載

音楽で街を活性化しようという市民グループが発足し、定期的に蔵の辻と周辺で音楽ライブの開催が予定されています。これまで継続開催されてきたイベントも含め、来場者をまちなかへ誘導する仕組みをイベント開催者と商店街が連携して行なえるよう支援していきます。

ムーンライトカフェの案内ポスター(左)と寺たびの様子(右)

地域起こし協力隊が立ち上げた「寺たび」は、市街地に寺社が多く存在することに着目した企画で、ご住職にタウンガイドをしていただくなど、寺を活用した街おこしが評判を呼んでいます。

市内には1,200名の学生がいる仁愛大学があり、駅前にサテライト、アンテナショップを設置し市民との交流を図っています。

外観(左)と内部(右)

4.まちの概要

越前市は福井県のほぼ中央に位置し、人口は81,613人(平成27年国勢調査)。平成17年武生市と今立町が合併し「越前市」となりましたが、毎年人口は減少しています。

本市の歴史は古く、越の国と呼ばれた頃から拓けた地域で、奈良時代には旧武生市に越前国府が置かれ、政治・経済・文化の中心地として栄えました。平安時代には紫式部が越前国司として赴任した父とともに一年余りを暮らしました。

また、旧今立町は越前和紙の里として知られ、明治の初期の頃まで奉書紙や奉書紬の産地として和紙や繊維を扱う商店が集まり、大変栄えました。

近年は電子部品や輸送機械等のハイテク企業が立地し、地域産業に広がりが増し、県下第一位の製造品出荷額(県内シェア23.5%)を誇る産業都市として発展を続けています。

5.まちづくり会社の概要

会社名:
まちづくり武生株式会社
所在地:
〒915-0071 福井県越前市府中1-2-3センチュリープラザ内1階
設立日:
平成27年4月1日
資本金:
23,800 千円
主な出資者:
越前市・武生商工会議所・株式会社福井新聞社他
従業員数 :
3名
参考リンク:
まちづくり武生株式会社ホームページ (新規ウィンドウ表示)

取材日:平成28年6月15日