株式会社まちづくり会津
取り組みのポイント
まちづくり会社が行政と協働で「まちなか活性化事業」を具体的に推進
まちづくり応援隊のまとめた賑わいづくりのためのプロジェクトが市独自の基本計画に反映
リーダー育成事業参加者によるまちなか開業が具体化
1.取組事業
(1)背景
2009年から2010年に、会津若松市の中心部に立地していた2つの大型商業施設が相次いで撤退し、まちの求心力が大きく低下しました。
近隣周辺に大きなSCはないものの、消費購買は大きく他都市に流出し、商店街も高齢化や後継者不足の状況にあります。
さらに、2011年には、東日本大震災による原子力発電所事故の風評被害の影響により、観光産業は大きな影響を受けました。NHK大河ドラマ「八重の桜」の効果があるものの、未だ回復途中です。
これらを背景に、2011年、会津若松市は大震災後の緊急雇用対策を活用し、まちづくり会社の(株)まちづくり会津(以下「まちづくり会津」)の職員を新たに4人採用しました。
これは、まちづくり会津と商店街・関係団体等に協力関係を築かせ、中心市街地の活性化を図ろうとするものです。
また、まちなかの商店街の強化を、高齢化の進んだ商店経営者だけと連携し進めるのではなく、「市民協働」の観点から広く市民の参加による取組として進めることにしました。
(2)まちなか活性化事業の取組
この事業は、市民が想うまちなかの将来像に向けた事業構想案をまとめる「まちなか賑わいづくりプロジェクトの策定事業」と「賑わいづくりリーダー育成事業」(以下「リーダー育成事業」)の2つからなっており、会津若松市が事業費の全額を負担しています。
そして、中核となるのは、「会津まちづくり応援隊」(以下「応援隊」)です。会津若松市は、これを市とまちづくり会津が協働で推進することにしました。
参考URL
一緒にまちなかで活動しませんか?会津まちづくり応援隊メンバー募集中! 別ウィンドウで開きます
(ア) 会津まちづくり応援隊
応援隊は、まちなか活性化に向けた取組を検討・協議し実行する組織という位置づけです。
取組を始めるにあたって、まちなかの活性化を商業者(売る側)サイドでなく、市民・消費者(買う・使う)サイドから考えていくことにしました。
応援隊の募集は、2012年4月に市の広報紙や新聞記事、ホームページ、チラシなどいろいろな方法で行われました。その結果、老若男女、東京在住の会津若松市出身者も含め59名が参加し、6月に発足しました。
メンバーは、月に1回のペースで6日間、市民目線でまちなかの8つの通りをつぶさに歩き、9回のワークショップにより各通りの課題や地域資源を抽出したほか、それら課題に対する対応策をまとめました。 次に、通り・商店街組織との意見交換を通して、事業内容の精度を高めました。
そうして出来上がったものが「会津若松市まちなか賑わいづくりプロジェクト」(以下「プロジェクト」)で、市民が中心となって考えたまちなかの将来像と、その実現に向けた47の具体的な取組事業(案)が盛り込まれています。
主な事業(案)
おさすり地蔵通り魅力向上事業
路地裏寄り道促進事業
七日町市民広場協働活用事業 など
プロジェクトに掲げられた事業のうち、いくつかの事業が2012年度中に応援隊や商店街で実現されました。
2013年度もこの活動は継続しており、「まちなかファミリーフェスタ」、「まちなか賑わいツアー」といった様々な取組が活発に展開されているほか、実行されていない事業のブラッシュアップが図られています。
(イ)賑わいづくりリーダー育成事業
リーダー育成事業は、市民が中心となって取組む賑わいづくりを支援するため、「賑わいづくり人材の育成」を進めていくものです。
この事業の、初年度(2012年度)と今年度(2013年度)の取組は次のとおりです。
2012年度
まちづくりリーダーを育成し、そのリーダー達が地域を牽引するとともに、リーダー同士のネットワークを構築し、まちなかでの賑わいづくりのイベントを継続して開催し、まちなかの活力と魅力の向上を図ることを目指し取組むことにしました。
2012年度は、14名が参加することになりました。
これを進めるにあたり、市では鳥取県米子市中心市街活化協議会タウンマネージャーの杉谷第士郎氏を訪ね交渉し、協力が実現しました。一方で、中小機構東北本部にも協力要請し、中小機構のアドバイザー派遣等を活用することにしました。
杉谷氏を中心とする勉強会は次のとおり進められ、平均出席率は約80%という高さでした。
事業スケジュール
- 7月
- 会津若松市の取組の検証と課題の抽出、賑わいづくりリーダーとは?
- 8月
- まちの未来像実現のための環境分析(強みと弱み、脅威とチャンス)
- 10月
- まちの未来像実現のための事業構想の検討(目標設定)
- 11月
- まちの未来像実現のための事業構想の検討(事業の深堀)
- 1月
- 開発構想の策定
- 2月
- チーム別事業案の発表(成果発表)
当初出された、27の計画は4つに絞り込まれ、担当となった4チームは、実施に向けた事業案をまとめました。
4事業案
- Aチーム
- 会津まちなか賑わいステーションの整備
- Bチーム
- 商店街と地域環境を活かした多世代コミュニティスペースの整備
- Cチーム
- (仮称)大町アンテナオフィスの整備
- Dチーム
- 会津サンライズプロジェクト(“酒どころ会津”を切り口にした賑わい拠点の整備)
2013年度
前年度の事業をより具体化させるため、若者や女性の起業・創業希望者の掘り起しと育成を図ることにし、セミナーとして取組まれました。
今年度は、前年度からの5名を含む16名が参加し、各参加者のビジネスプランの実現に向け、5回開催されました。内容的には、市場分析、売上計画、資金繰り、公的支援等、実践的な内容になっています。
なお、リーダー育成事業は、来年度(2014年度)も継続して行われる予定になっています。
2.事業の効果
応援隊では、ミーティングのほか、「まちなかツアー」や「賑わいの仕掛けづくり」などを担当するグループ毎に、活発な活動が行われています。人気のある「まちなかツアー」には、40人以上の市民の方々がまち歩きを楽しんでおり、「賑わいの仕掛けづくり」では、まちの魅力を紹介する案内板(看板)を作成・設置しています。
市民が中心となって策定したプロジェクトに掲げるいくつかの事業が、会津若松市独自の中心市街地活性化基本計画に採用されました。
2013年度のリーダー育成事業では、16名中次の4名が新規開業や新分野進出を目指し具体的に動き出しており、うち2名は開業準備に入りました。
- 新規開業や新分野進出の方々
- Aさん
- まちづくり・デザイン会社の開業
- Sさん
- ヨガスタジオの開業
- Hさん
- 特産干し柿の加工品開発・販売
- Wさん
- カフェバーの開業
目下の課題は、4名の方々の開業・新分野進出の実現です。
公的支援を受けることができるのか、銀行融資を受けることができるのか。その前提となるビジネスプランや収支計画、資金繰り計画、販売計画は万全か、というところです。
3.関係者の声
会津若松市商工課の酒井氏は、「2年間この事業を実施してきて、4名の方々が具体的に開業や新分野進出に向け動き出しました。何とか成功させたいし、してほしいと思っています。今は勤務しているので開業はしないけれども、チャンスがあれば開業したい、という参加者が何人もいらっしゃいます。また、このような取組により仲間になった方々は、このネットワークを活かし情報交換など、今後も役立てていただきたいと思います。」と、そして、まちづくり会津の阿部氏は、「市とともに取組んだ2年間を通じて、まちづくりについてたくさんの経験を積むことができました。これからのまちの活性化、まちづくり会津の事業に役立てていきたいと思います。」と語っています。
4.取材を終えて
取材前日がリーダー育成事業の最終報告会だったため、それを見学させていただきました。
開業等の4名の方々のプレゼンテーションのほかに、将来、二人でレストランを開く夢を持つ薬剤師と栄養士さんが考えた「ヘルシー・ビューティーMenu」のテストマーケティングが行われ、ともにとても素晴らしいものでした。
開業・新分野進出の実現、そして、これら事業に参加された方々の今後の活躍に期待がふくらみます。
取材年月:2014年2月
まちの概要
会津若松市は、人口12.5万人の福島県・会津地域の中心都市です。
高速道路(磐越道)により、1時間半で新潟市、郡山市とつながっています。
会社概要
- 会社名:
- 株式会社まちづくり会津
- 所在地:
- 福島県会津若松市
- 設立:
- 平成10年7月
- 資本金:
- 5,830万円
- 主な出資者:
- 会津若松市(50%)、会津若松商工会議所(2.7%)、中小企業者(35.6%)、その他(11.7%)
- 従業員:
- 24名(パートを含む。)
関連リンク
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