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『居心地の良い、まちなか広場をつくる』 公共空間活用セミナーレポート(兵庫県川西市)

 2023年3月7日に川西市中心市街地活性化協議会は、講師にまちなか広場研究所の山下裕子氏を迎え、『居心地の良い、まちなか広場をつくる』と題し、まちなかの公共空間の活用をテーマとしたセミナーを開催しました(本セミナーは中小機構の診断・サポート事業セミナー型支援を活用)。23名が参加者した本セミナーの様子をレポートします。
 

セミナーの様子
画像:セミナーの様子
講師の山下裕子氏
画像:講師の山下裕子氏

目次


地域の取り組みとセミナー開催

 川西市は、兵庫県東南部に位置し大阪府に接する、人口154,565人(令和5年3月末)の内陸都市です。2010年(平成22年)11月より認定川西市中心市街地活性化基本計画に取り組み、現在は第3期計画(令和2年4月~令和7年3月)を実施中です。

 「回遊性を向上させ、相乗的ににぎわいが生まれるまち」を活性化の基本方針の1つとし、その指標の1つである歩行者・自転車通行量の増加等には、まちなか広場である川西能勢口駅の南北「ペデストリアンデッキ」と駅東側「藤ノ木さんかく広場(691m2)」の活用効果がカギとなっています。

川西能勢口駅ペデストリアンデッキと藤ノ木さんかく広場の位置
画像:川西能勢口駅ペデストリアンデッキと藤ノ木さんかく広場の位置(Map data ©2023 Google)
   デッキは上空から見るとO(北側)とK(南側)の形状からOKデッキと呼ばれている     
駅南ペデストリアンデッキ
画像:駅南ペデストリアンデッキ                      
   歩行者専用通路だが広場としても利用、中央のモニュメントは「光の風車」
藤ノ木さんかく広場
画像:藤ノ木さんかく広場

 そこで同協議会は、関係者間の広場づくりの方向性の共有を目的として、本セミナーを開催しました。広場活用の取り組み事例や、望ましい広場のあり方・使い方・関わり方を学ぶことが目的です。セミナーには同協議会の構成員だけでなく、川西市のまちづくりに関心のある市民の方々も参加しました。

 講師にお迎えした山下裕子氏は「広場ニスト(広場を愛する人の意味)」として活動されており、広場の利活用を専門とされています。2007年より富山市のグランドプラザ(※)運営事務所に勤務。2009年(一財)地域活性化センターの第21期全国地域リーダー養成塾を修了。2011年よりNPO法人GPネットワーク(富山市を拠点として賑わい創出事業等を実施)理事、2013年に全国まちなか広場研究会理事就任。2014年よりまちなか広場研究所の主宰として個人活動を開始され、様々な地域のまちなか広場づくりに、伴走者の立ち位置で活動を続けています。 

(※)グランドプラザ
山下氏が携わる富山市の グランドプラザ(クリックすると公式サイトへ遷移します) 別ウィンドウで開きます は2007年にオープンしたガラス屋根が特徴の全天候型の広場です。幅21m長さ65mの広さを確保し、各種イベントに対応できるよう、大型ビジョンをはじめ様々な設備が導入されています。

グランドプラザ
画像:グランドプラザ(出所:グランドプラザ公式サイト)

居心地の良い広場~居場所に都市性を付加~

 セミナーの冒頭に、山下氏から富山県南砺市にある古刹善徳寺を訪れたときのエピソードが紹介されました。そこでは地元の方々によるお祭りの光景があったのですが、好奇心とそれぞれの得意分野を持った方々が、それぞれの役割を担うことで祭りを成り立たせていることに気づき、深く感銘を受けたとのことです。

 役割を持てる人生はとても豊かで幸福だと山下氏は述べました。役割があるということは、自分に居場所があることと同義だとも。その居場所に都市性(他者をミル、他者からミラレル)を付加することで、居心地の良い広場づくりへつながるといいます。

善徳寺でのお祭りの光景
画像:善徳寺でのお祭りの光景(出所:山下氏講演資料)

居心地の良い広場づくりのポイント

 居心地の良い広場づくりとして山下氏は3つのポイントを挙げられました。

 1つ目は「子どもの居場所をつくる」ことです。母親など保護者の見守りや、シルバー世代の子どもがいる光景を眺めたいという想いなど、多くの世代に「出かける機会」を創出するからです。子どもに居場所があることは、子どもが地域に関わりをもつ機会につながることから、子どもの居場所づくりは未来のまちづくりへの投資になると山下氏は述べました。広場で子どもたちに「日本庭園のつくり方を見せる」場を地元の職人さんの協力を得て提供した事例が紹介されました。

子どもたちに日本庭園のつくり方を見せる職人
画像:子どもたちに日本庭園のつくり方を見せる職人(出所:山下氏講演資料)

 2つ目のポイントは「チャレンジの機会を提供する」ことです。山下氏は、まちはチャレンジできる場所を提供することが一番大事だと考えます。それは広場も同じであると。グランドプラザでは、時間と体力とアイデアを豊富に持つ「若者」と、イベント資金があり富山を盛り上げるための社会貢献事業をしたい「事業者」を、広場でマッチングする事業を実施しています。マッチングを通じて実現した事例としてエコリンク(氷の代わりに樹脂パネルを活用したスケートリンク)などが紹介されました。

エコリンク
画像:エコリンク(出所:富山市公式サイト)

 3つ目のポイントは「遊びこころある人の居場所をつくる」ことです。様々な興味を持つ人が、緩やかに横の関係でつながることを支援することが目的です。具体例としてグランドプラザで開催している「カジュアルワイン会」が紹介されました。広場が提供する居場所のメリットとして、ふらっと立ち寄って興味があれば参加できる気軽さがあります。

カジュアルワイン会
画像:カジュアルワイン会(出所:NPO法人GPネットワーク公式サイト)

広場づくりの課題(質疑応答より)

 山下氏の講演終了後、活発な質疑応答が行われました。その中から2つを紹介します。参加者の広場づくりへの課題に対し、山下氏から実践的なアドバイスがありました。

【Q1】
 川西市の広場活用事業においては、イベントが企画されてから協賛企業を募集することが多いです。 どのようにしたら協賛企業と共に構想段階からイベントを企画しやすいでしょうか。
【A1】
 現在保有している広場や資源を活用したら何のイベントができるかを企業と対話すると良いです。例えて言うと、この料理をつくるから食材の提供をお願いしますという姿勢でなく、いま冷蔵庫にある食材で何が作れるか企業と話し合うという姿勢が良いです。待っていても広場を活用したいという企業は来ません。営業をして、企業の決裁権を持つ担当者のイベントへの積極性を引き出すことが重要です。

【Q2】
 私のような中心市街地活性化協議会の構成員でない一市民でも関われる広場づくりはありますでしょうか。
【A2】
 とにかく広場を楽しむことが大事です。気になる広場があれば、そこにいるだけでも良いです。人がいる場所に人は集まりやすいです。何かするときに小さい看板を置いておくことを併せてお勧めします。例えば広場でボードゲームをしていても、看板に一言「ご自由に参加可能です」というメッセージを記載しておくと人が集まりやすいです。


セミナーを受講して

 山下氏からの「大きなことではなくていい、まず 『そこにいる』 ことからはじめることでいい」とのアドバイスが、関係する若手行政職員の心理的なハードルを下げてくれたと同協議会担当者は振り返りました。

 また、本セミナーが参加者へ大きなヒント・熱意を提供し、次の行動に活かせる内容となった。そして、これまでの関係プレイヤーに加えて新たな層の参加につながったとも同協議会担当者は述べました。