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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

株式会社あつまるタウン田原

取組のポイント

地域の商業核であるセントファーレを運営
タウンマネージャーとなる人材の育成

1.株式会社あつまるタウン田原(たはら)の取組

(1)順調な事業展開と安定した収益

セントファーレ

 株式会社あつまるタウン田原(以下、「あつまるタウン田原」)の主な事業は、愛知県田原市の商業核である複合施設「セントファーレ」の管理運営業務です。

 セントファーレは、平成16年7月に再開発事業として行政からの補助金、高度化資金の活用によりオープンしましたが、まちなかの不足業種を補うことをねらいとして、地上はスーパーマーケット、スポーツジム、飲食店、ファッション、美容・エステ、書店、地下に駐車場という構成になっています。

セントファーレは、

 
中心市街地の商業者の減少により、地域から求められた施設だったこと。
立地や業種構成が地域にマッチしていたこと。
キーテナントである食品スーパーの店舗構成や商品力が優れていたこと。
駐車場が市の所有で、その管理は市の委託等による支援があったこと。
により、オープンから現在まで、毎日多くの来店客が訪れており、順調な運営が続いています。そのため、テナント賃料収入も安定しており、あつまるタウン田原の基盤的な財源となっています。

(2)安定した収益そしてまちづくり事業の停滞

 しかし、セントファーレ自体の順調さに相反して、中心市街地活性化法の旧法時(~平成18年)、田原市が作成した中心市街地活性化基本計画(以下「基本計画」)の様々な事業は駅前周辺整備の遅れもあり停滞していました。一方、あつまるタウンでは、事業範囲がセントファーレの管理業務と賑わい委員会活動支援にほぼ限定されていたため、まちづくり事業を推進しにくい状況でした。

(3)中心市街地とあつまるタウンの新たな動き

丸山氏

 平成25年、昭和40年に計画された駅前大通り線が約50年の年月をかけて開通し、同時に豊橋鉄道三河田原駅が新駅舎になるなど、駅周辺が大きく動き始めました。

 また、あつまるタウン田原にも変化が起こり始めていました。

 地元企業で働いていた丸山尚孝氏(現タウンマネージャー)が事業推進を担うべく平成24年10月に入社しました。

 丸山氏は、企業に勤務していた時からまちづくりに関心を持っており、あつまるタウン田原とは、いくつかの事業で関わりを持っていました。丸山氏は、中心市街地エリアが大きく変わっていく様子を目の当たりにし、まちづくり活動に参加したいという強い気持ちを抱くようになり、30年勤務した企業を辞め、ちょうど募集のあったあつまるタウン田原に応募しました。

 入社当初、丸山氏はこれまであつまるタウンへは出資者の立場で関わっていたものの、いざ現場に入ると法律の知識やひとつひとつの業務経験が不足しており、何から手を付け、どのように動かしていくべきか、先が見えてこない状況でした。

 そんな中丸山氏は、まちづくりの研修等に積極的に参加し、そこで出会った人たちと情報交換をし、また、研修等の講師へ積極的に質問することで、少しずつまちづくりへの方向性がイメージできるようになってきました。

(4)杉谷氏との出会い

 いくつかの研修に参加していく中で、講師の地元での取組、また取組む姿勢や人柄に共感を持つ方に出会いました。米子市中心市街地活性化協議会のタウンマネージャーとして活躍する杉谷第士郎氏でした。

 丸山氏は米子市へ視察に行き、何としても杉谷氏に田原市のまちづくりに必要なことを継続的に教えてほしいとその場で協力を依頼しました。

 これには中小機構の 中心市街地商業活性化アドバイザー(協議会)派遣事業制度 別ウィンドウで開きます を活用し、その後は月1回ペースで杉谷氏に田原市へ来てもらい様々なアドバイスを受けました。

杉谷氏の的確かつ真剣なアドバイスのおかげで、丸山氏はタウンマネージャーの心構えと行動、また常にビジネスを生み出すまちづくりを意識するようになりました。

 丸山氏はこのように語っています。

「杉谷氏のアドバイスの中でも私の心に深く刻まれたことは、

タウンマネージャーの仕事に関わる以上、事業から逃げてはならない。
うまくいかないことを決して人のせいにせず、自己に原因があると考え直すこと。
ということでした。その結果、このような気概で覚悟を持ってタウンマネージャーの仕事に向かうスタンスが身につきました。」

(5)タウンマネージャーとしての取組

丸山氏

 丸山氏は平成25年から、自身がタウンマネージャーとして、行政、商工会、あつまるタウン田原等のまちづくり関係者を委員とするタウンマネジメント会議を 毎月定例で開催し、田原市の中心市街地活性化に向け検討を重ねました。

 その結果、まちづくり関係者は、再び中心市街地活性化に向けてベクトルを合わせて進んでいくことを確認し、田原市中心市街地活性化協議会(以下「協議会」)設立の機運が高まってきました。  協議会は、このような熱意を背景に、平成26年8月に設立に至りました。

 今後は具体的事業の検討をさらに重ね、行政や商工会、地域商店主や企業とともに中心市街地活性化基本計画の認定を目指し、さらにまちづくりが加速することに期待が高まっています。

(6)自称?タウンマネージャー

 丸山氏は、30年勤務した企業を51歳で退職し、まちづくり会社に飛び込んできました。

 これまでのあつまるタウン田原との関わりの中で、会議の場で「取組む内容」はよく語られるものの、「取組む人」が明確ではないと感じていたため、丸山氏は「自分がやる!」と言うために手を挙げたと言います。名刺交換の際には笑いながら「自称タウンマネージャーです。」と自己紹介しますが、名刺に役職として記載しているとおり、「自らの職務と職責はタウンマネージャーであり、実力不足だと感じながらも前を向いてやるしかない。」という強い信念のもと、忙しい日々を重ねています。

2. 取材を終えて

 どの仕事でも同じだと思いますが、「覚悟をもって取り組むことが、物事を動かすためには必要だ。」と丸山氏への取材を通じて感じました。

取材年月:2014年8月

まちの概要

三河田原駅

人口:約6万5千人

交通アクセス:電車では豊橋鉄道渥美線で豊橋駅から三河田原駅まで約35分。自動車では豊橋市から約30分。

 田原市は愛知県の南端に位置し、北は三河湾、南は太平洋に面しています。
 これまで、中心市街地は渥美半島の中心地として発展してきました。

 平成15年に田原町と赤羽根町が合併し田原市となり、平成17年に渥美町と合併しました。

 温暖な気候を生かした野菜、果物、花などの農業が盛んで農業産出額は日本一です。

 三河田原駅は豊橋鉄道渥美線の終着駅で、平成25年建築家安藤忠雄氏の設計で完成しました。

まちづくり会社の概要

会社名:
株式会社あつまるタウン田原
所在地:
愛知県田原市萱町1番地セントファーレ3階
設立:
平成13年1月
資本金:
1億円(田原市5,000万円、田原市商工会100万円、企業3,100万円、商店主1,150万円、個人650万円)
社員数:
6名
URL:

http://www.tahara-tmo.com/ 別ウィンドウで開きます


設立の経緯

 あつまるタウン田原は、平成11年の田原市による中心市街地活性化基本計画の策定を受け、平成13年に田原町(現田原市)、田原町商工会(現田原市商工会)、民間企業、商店主ら47名が出資した第三セクターのTMOとして、魅力あるまちづくり事業を実施することを目的に設立されました。

 現在、あつまるタウン田原の関係者全員が、今のままでは「まち」も「商業」もダメになってしまうという危機感を背景に、自分たちで中心市街地活性化を図っていこうという、強い当事者意識を持っています。