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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくりプレーヤーの確保育成(静岡市)

まちづくりプレーヤーの確保育成(静岡市)

 全国の中心市街地活性化に取組む地域で、「まちづくりプレーヤーの確保育成」が大きな課題として挙げられています。今回はその課題解決につながる可能性を見出す静岡県静岡市の取組みを紹介させていただきます。
今回は「高校生まちづくりスクール」を企画運営する静岡市子ども未来局青少年育成課にお話を伺いました。

 静岡市は、東海道新幹線において東京と名古屋の中間に位置しており、大学や就職で東京などに出てしまう方も多く、人口も年々減ってきています。そのような状況下、静岡市子ども未来局青少年育成課では「若者が住んでみたい、住み続けたいと思うまち」を実現するため、2016年に「静岡市わかもの会議」を開催しました。

【静岡市わかもの会議】
 「静岡市わかもの会議」は静岡市内に在住、在学、または在勤の若者による会議で、「若者が住んでみたい、住み続けたいと思うまち」を実現するために行うべき政策を考える会議で15歳から24歳の18人が参加しました。
 グループワークを中心とした全9回のカリキュラムの中で参加した若者が課題の抽出と解決手段を検討しました。
 第3回目のワークショップでは「若者の意見を静岡市に届け、影響力を高めるために必要なものは?」というテーマが設けられ、現状の課題とそれに必要なものとして意見がまとめられました。

(ワークショップでの意見)
(ワークショップでの意見)

 上の表にあるとおり、「活動の場が欲しい」「地域と関わる機会が欲しい」「頼れる人を知りたい」「活動を知ってもらいたい」など、若者が街に居続け活動する上でのニーズ(不満足状態)が明確に打ち出されています。
 この課題を解決する手段について、さらに討議が進められ、最終的に「静岡市を(日本一働きやすく、住みやすいまち)に。」、「静岡限定!~日本一コスモポリタンを目指す~」、「ぼくらがつくる ちいくのじかん」、「静岡市 地域センパイ制度。」といった4つの手段が示され、静岡市に提言されました。
 若者がまちづくりを考え、課題の抽出と解決手段を見出すプロセスは、他の地域にとっても大いに参考になる取組だと考えます。


(ワークショップでの課題)
(ワークショップでの課題)

【第一回高校生まちづくりスクールの開催】
 静岡市では、このような提言を参考に実際にまちで活動することも重要ではないか、という考えから2017年より「高校生まちづくりスクール」を開始しました。まちづくりに興味のある高校生が、地域と関わったり、市民活動へ参加するきっかけづくりを行うため、自分自身がどんなことに興味があるかを深掘りしたり、市民活動を身近に感じられる機会を交えた高校生向けの講座とし、若者の社会参画を促すことで、自己有用感及び地域への愛着を高めるとともに、シチズンシップ(市民権)に富んだ人材の育成を図ることを目的としました。
 最初の年は、市内に居住、または通学する高校生9人が集まり全5回でのカリキュラムで行われました。地元のNPO法人などに協力いただき、実際の市民活動を通してまちづくりの課題認識を深めていきました。
 参加者の意識醸成が行えたことなど、成果が多かった反面、協力団体を事前に準備し環境を整えてしまったこともあり、参加者である高校生の自主性を摘んでしまった反省点もありました。


【第二回高校生まちづくりスクールの開催】
 第一回の反省を踏まえ、市内で活躍する市民団体を取材、記事を発表する「記者コース」と、高校生が関心のあることについて大学生のサポートを受けながら企画・立案し実行する「プロジェクトコース」の2つを設定し、参加する高校生が自身の興味や関心に合わせて選択できるものとし、27人が参加しました。
 「記者コース」では、記事の書き方や取材方法について学んだ後、参加者が興味のある市民団体等を訪問し、体験することでその活動の意義や課題を認識できるものです。動物保護団体、介護施設、食の廃棄再利用、農業体験、地域コミュニティ運営、CSR認定企業体験など、市内の市民活動の場に入り込み、体験を通して記事にしました。

 「プロジェクトコース」では、高校生の身近な存在である大学生がサポーター(8名:卒業生も含む)としてサポートに入りました。企画の立て方を学んだ上で、数名がチームとなり企画作りから始めました。
4チームに分かれた高校生がまちづくりを考え検討してきた提言は以下の通りです。
・ 室内にこもりがちな高齢者に楽しみを提供する(スマイルウエディングプロジェクト)
・ 多世代が楽しめる音楽フェスの開催(LJKプロジェクト)
・ SNSの活用による静岡市の魅力発信(インスタプロジェクト)
・ 街中のごみ拾い活動を通じたポイ捨て減少(SHIGENプロジェクト)
高校生は時限的活動であるため、その後の継続的活動は難しい状況ですが、将来まちづくりプレーヤーとして活躍するための良いきっかけとなるのではないでしょうか。

(講義の様子1)
(講義の様子1)
(講義の様子2)
(講義の様子2)

【まちづくりスクール開催による地域への波及】
 この「高校生まちづくりスクール」の募集は一部の高校の教師に生徒への声かけをお願いしています。
生徒に対し、「高校生まちづくりスクール」を推奨する中で、一度生徒を送り込むと、それ以降も生徒を推薦してくれる確率が高くなります。
学校においても、まちづくりの意識の芽生えに繋がる効果もあると考えられます。


また、わかもの会議・まちづくりスクール卒業生は今年成人式を迎えることとなり、成人式実行委員として活躍する方もでてきています。高校生まちづくりスクールはまだ3年の歴史ですが、何年か後にはまちづくり活動の中心となって活躍される卒業生もでてくるのではないか。
そのような期待も十分考えられる取組だと考えます。




 【静岡市の概要】
 静岡市は人口約70万人の政令指定都市で、2003年に旧静岡市と旧清水市が合併され、現在の静岡市が誕生しました。
温暖な気候に恵まれ、北は南アルプスから南は駿河湾に至るまで、豊かな自然環境を有しながら、古くから今川氏や大御所時代の徳川家康公の城下町として、独自の文化や産業を育み、日本の中枢都市として発展を続けてきました。
 特に「お茶」や「桜えび」、「プラスチックモデル」などの多様な産業や、国際貿易の拠点である清水港での交易は、静岡市の経済において重要な役割を担っています。
 また、登呂遺跡、久能山東照宮などの歴史的遺跡・建造物は、静岡市のみならず日本の大切な財産です。