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女性中心の企画で実現した「KITADA SARUGGA(北田さるっが)の取組(鹿児島県鹿屋市)

課題
  • 140万人訪れる来訪者を商店街に取り込めていない

【商店街の歴史】
 鹿児島県の大隅半島に位置する、鹿児島県第3の都市、鹿屋市は1970年前後には国鉄大隅線も開通するなど、大隅半島の経済の中心として発展してきました。
 鹿屋市の中心地にあるのが北田・大手町商店街振興組合(以下、商店街)です。商店街の歴史は古く、1970年前後にはアーケードが設置されました。
 昭和53年には振興組合として法人化され、アーケードも改装、カラー塗装も行われていました。1980年前後には全盛期を迎え、商店街には62もの店舗がありました。
 その後、国道バイパスが開通、1988年には国鉄大隅線が廃止されるなど、モータリゼーションの進展と大型店の郊外化、住宅地の郊外化、などにより中心市街地は衰退化・空洞化が進行しました。現在は商店街に存在する17店舗のうち、3店舗が空き店舗となっています。
 このような状況を踏まえ、鹿屋市及び鹿屋商工会議所において、中心市街地の空洞化・衰退化に対応するために、1984年から中心市街地活性化に向けた取り組みが開始されます。

1998年に中心市街地活性化法が制定されたことを受け、都市の再生計画として独自に「鹿屋市中心市街地活性化基本計画」が策定されました。その中で、2007年には市街地再開発事業によって複合交流拠点として「リナシティかのや」がオープンしました。
「リナシティかのや」は芸術文化学習、福祉、健康スポーツなどの公共施設に加え、大型スーパーを含む店舗が入居しています。今では年間140万人を集客するまでになっています。


(リナシティと商店街の位置関係地図)
(リナシティと商店街の位置関係地図)

【商店街の課題と取組】
「リナシティかのや」から約100m離れたところに商店街があります。
「リナシティかのや」に140万人の集約がある中、商店街の回遊が図れず、活性化まで至っていない状況にありました。
そのような中、商店街における活性化の取り組みが始まりました。
商店主の勉強会から始まり、地域住民に対するアンケート実施など、地域住民のニーズ(不満足点)の洗い出しを行いました。若手の商店主が商店街に立ってアンケートを直接お願いするなどを行った結果、有意義な結果が得られました。

アンケートの結果を踏まえ、「水と緑と文化が融合した人に優しい湧き水商店街」をコンセプトに、活性化を推進しました。
ハード面では、街路灯及び防犯灯、防犯カメラの設置などに加え、ナノミストや緑のカーテンなどで清涼感を感じる歩道空間(アーケード)の整備、桜島降灰対策の水道設置などを行いました。

(グリーンカーテンを施したアーケード)
(グリーンカーテンを施したアーケード)

ソフト面では、夏祭り(六月燈)冬祭り(新酒まつり)など、商店街の収益が見込めるイベントを実施しています。

(六月燈の様子)
(六月燈の様子)
(新酒まつり)
(新酒まつり)

このような取り組みの結果、中小企業庁「はばたく商店街30選」2016に選定されました。


【女性・若者視点による市民協働ショップ「KITADA SARUGGA」の取組】
鹿屋市は商店街への導線機能として、商店街の空き店舗に市民協働ショップを立ち上げることになりました。この市民協働ショップの企画案を女性や若者の視点で考えよう、と地域の女性30名が集まり企画を立てることとなりました。(かのやんがーるの結成)
女性が30人も集まった背景には商店街のイベント時などでの出店希望者、ボランティア、商店街の顧客、といった過去に接点のあった方の参画が多く、普段から商店街店主が地域住民とコミュニケーションを図ってきたことに起因しています。
どのような市民協働ショップにすべきか、かのやんがーるが中心となり検討を重ね、中では市内4高校との意見交換会なども実施し、女性・若者の視点から市民協働ショップのコンセプトを決めていきました。

その結果、「女性も元気なら、家庭も地域も明るくなる」と定義し、市民協働ショップのコンセプトを1.創業・起業を目指す女性や若者を支援・育成する拠点となること、2.中心市街地の歩きたくなるまちづくりの活動拠点となること、とし、市民協働ショップ「KITADA SARUGGA」がスタートしました。(“さるっが”とは、鹿児島弁で“歩き回る”を意味します)
かのやんがーるは企画実現を期に役目を終え解散しています。

「KITADA SARUGGA」の取り組みについて、北田・大手町商店街振興組合の前田数郎理事長、本村正亘顧問、KITADA SARUGGA井上康代店長に話を伺いました。
KITADA SARUGGAは商店街にあった空き店舗をリノベーションし、平成28年1月にオープンしました。市民協働ショップは商店街が鹿屋市から委託を受け運営しています。
KITADA SARUGGAの具体的なショップコンセプトは以下の通りです。
1. 創業・起業を目指す女性や若者を支援・育成する拠点となること。
・店舗経営のノウハウを学ぶ場とします。
・魅力ある商品作りを学ぶ場とします。 
2. 中心市街地の歩きたくなるまちづくりの活動拠点となること。
・北田大手町商店街事務所及び街のにぎわいづくり協議会事務局を市民協働ショップ
2階に移転・配置し、1階の「KITADA SARUGGA」の管理対応を迅速に行うことを可能にしています。
 ・若者や女性、高校生、各種団体サークルの活動拠点として支援します。

このコンセプトでショップがオープンされました。
店内では棚を貸し出し、地元住民の手作り品や農産物などを販売するチャレンジショップとしての機会を提供しています。約60者が活用しています。また、店舗の一部をカフェなどの店舗貸しにしており、創業・起業の促進を図っています。また、スペースを活用し、まちの主婦などが講師となり、月10回程度のワークショップを開催することで、今まで約1,000人の参加実績につなげました。

このように、KITASA SARUGGAの取組によって、商店街内における一定の集客回遊がなされ、活性化を実現しています。



【経営課題】
KITADA SARUGGAはオープンから2年経ち、商店街や中心市街地に新たな客層を呼び込むことに一定の成果が見られ、商店街に賑わい創出に寄与しています。
 一方、経営面を見るとまだまだ改善の余地があるため、平成30年3月には「市民協働ショップKITADA SARUGGA改善計画案」を打ち出し、経営改善を図りました。
新たな方向性は以下の通りです。
 ・基本方針
  採算性を重視した運営を行い、収益性の向上に努める。
 ・目指す方向性
  チャレンジショップ機能を残しつつ、新商品の展示・販売・PRの場として、また健康・美容・食・趣味等に特化した、地域のこだわり商品を展示・販売する「暮らしを豊かにする」店舗としての展開を図るものとする。
 ・コンセプトの見直し
  顧客ターゲットについて、当初計画は若い女性であったが、自由にお金や時間を使い、日常の生活・心の豊かさを求める30代から60代の女性とする。また、販売する商品については、ここでしか買えない商品を中心に販売する。集客策として、広報誌・新聞折込、SNS、フリーペーパーなどを活用する、などが挙げられています。
そして、経営会議を年4回(経営状況の共有・意見交換)、企画会議を月1回(進捗確認、新店舗・新商品の発掘・選定・交渉、イベントなどの企画)を行うことで市民協働ショップとしての魅力アップとともに収益の確保に努める体制を整えて、さらなる活性化に邁進しています。

(KITADA SARUGGA店内)
(KITADA SARUGGA店内)
(かのやんがーる出身の井上店長)
(かのやんがーる出身の井上店長)

・まちの概要
鹿屋市は、本土最南端へと伸びる大隅半島のほぼ中央に位置し、大隅地域の交通・産業・経済・文化の拠点となっている。鹿児島県内では鹿児島市、霧島市に次いで3番目の人口規模を有する都市である。豊かな自然を活かした農業・畜産が盛んである。
人口:103千人(2018年9月現在)