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高齢者や障がいのある方と協働・共生する商店街づくり(北海道帯広市)

帯広市の北東部に位置する帯広電信通り商店街。商店街は6つ神社仏閣に隣接し門前町として、帯広市の中心市街地として発展してきました。しかし、郊外の大型商業施設の進出や国道に沿って郊外店が進出すると、徐々に賑わいを失い、昭和46年には73店舗あった商店街加盟店も平成22年には、32店舗まで減少してしまいました。

こうした事態に、帯広電信通り商店街は、地域住民のニーズや周辺環境の調査を通して、事業計画を作成し実行してきました。それは、「高齢者や障がいのある方と協働・共生する商店街」をコンセプトに掲げ、地域の社会問題に対応しながら活性化を図るものでした。

このコンセプトに基づく各種活性化策が功を奏し、商店街の空き店舗はゼロになり、商店街加盟店も52まで伸ばすV字回復を果たしました。これまでの軌跡を帯広電信通り商店街振興組合理事長である長谷渉氏にお話を伺いました。

長谷氏
帯広電信通り商店街振興組合 理事長 長谷渉氏(帯広電信通り商店街提供)

周辺環境の分析から明確な商店街の方向性を定める

長谷氏が理事長を務める帯広電信通り商店街振興組合は、平成23年道内で初めて地域商店街活性化法の認定を受け、社会福祉法人やNPO法人とコンソーシアムをつくり、「お年寄り、障がいのある方と協働・共生する商店街づくり」を目標に取組みを進めてきました。

地域商店街活性化法の認定に際しては、近隣住民に対してアンケート調査やヒアリング調査を事前に行っており、その調査結果から住民ニーズを読み解き、想定される事業を導き出しました。

例えば、アンケート調査からは、来街者の5割強が商店街内のまんじゅう店を利用しますが、この層には、スイーツ食べ歩きニーズがあることが分かりました。また、高齢者の回答から、個食に対応する品ぞろえをする生鮮食品店、生活の困りごとを解決するサービスを提供する店舗、地域の仲間と気軽にコミュニケーションが取れる食堂などにニーズがあることが分かりました。

また、地域ヒアリング調査から、商店街区の中学校が閉校する情報を得ました。このことが地区の人口減の要因となり、さらに高齢化が進むことが予期されました。加えて、中学校の跡地に帯広市の障がい者支援センターが開設される情報が入りました。これらの情報から、障がい者の雇用や居住地を確保する必要や商店街に高齢者や障がい者のコミュニティの核となる役割があることが分かりました。

以上から、商店街が向かうべき方向性を、「お年寄り、障がいのある方と協働・共生する商店街づくり」とし、短期目標としては「福祉サービスの充実とスイーツ・ロードの形成」、中期目標としては、「働・食・住がそろい地域貢献ができる商店街の実現」、長期目標として「障がいがあっても、地域社会で普通の暮らしができる商店街」を掲げました。

シンボルタワー
帯広電信通り商店街のシンボルタワー(帯広電信通り商店街提供)

事業実施体制の構築

一方で、事業運営体制においては、商店街の財源不足から地域商店街活性化事業を行うには不安がありました。また、補助金を受けた事業実施当初は事業が回っていくとしても、その後の運転資金の問題から事業廃止となることも他地域の事例から学んでいました。

そこで、社会福祉法人とNPO法人、商店街とがコンソーシアムを形成し、物を売るだけでなく、地域貢献を果たす商店街として再生を目指しました。

また、事業継続性を強化するため、商店街内で商店街組合員からなる事業実施チームを結成し、責任・権限を明確にした上で事業に当たっています。

さらに、第三者からなる商店街活性化事業評価委員会を設置し提言を受けることで、PDCAサイクルを回しながら事業を行うようにしました。
なお、商店街活性化事業評価委員会は、帯広商工会議所、帯広商店街振興組合連合会、帯広市商工担当職員のほか、有識者によって構成されています。

加えて、商店街活性化事業の原資を獲得するため、まちづくり会社「株式会社でんしん」を立ち上げ、駐車場事業や障がい者に向け住居の提供・運営・管理、空き店舗サブリースなどの収益事業を展開し、商店街に投資しています。

帯広電信通り商店街の事業スキーム(帯広電信通り商店街提供)
帯広電信通り商店街の事業スキーム(帯広電信通り商店街提供)

地域課題解決と商店街活性化を叶える事業の展開

明確な事業方針と実施体制が、具体的なアクションにも結び付きました。初めに社会福祉事業者と住民ニーズに基づき、障がい者就労支援施設として商店街と運営するスイーツ店(クッキーハウスぶどうの木)の開業や高齢者ニーズに対応する御用聞きサービスを備えた商店(御用聞き屋べんぞう商店)の開店など、地域課題解決と商店街活性化を図る5店舗を出店しました。

ぶどうの木
クッキーハウスぶどうの木(帯広電信通り商店街提供)
べんぞう商店
御用聞き屋べんぞう商店(帯広電信通り商店街提供)

そこから、北海道で第一号となる地域商店街活性化法の認定や5店舗が相次いで出店したことが話題となり、マスコミを通して帯広電信通り商店街の取り組みが発信されるようになりました。

これによる認知の広まりから、新規創業希望者からの問い合わせも増えるようになり空き店舗も減少してきました。それに伴い、平成24年には起業家支援となるチャレンジショップ事業を展開するようになりました。

また、高齢のため廃業を考えていた商店街内のランドセル工房を、障がい者就労支援A型事業者がその技術を習得し事業を引き継ぐなど、高齢のため事業継続が困難になった店舗についても支援を行っています。

てのひら
ランドセル工房を引き継いだ「てのひら」(帯広電信通り商店街提供)

  

帯広電信通り商店街事業の沿革 別ウィンドウで開きます

  

商店街内の就労者を増やしていく中で、就労者の住居を提供することも重要と考え、まちづくり会社でんしんが、8戸のワンルームマンションを確保し、就労者に賃貸しています。まちづくり会社の事業がまちなか居住にも一役買っています。

事業の成果と帯広電信通り商店街のこれから

このような取り組みから、地域商店街活性化法認定時には10件あった空き店舗はゼロ、商店街組合員数も32から52と伸ばし、さらに、商店街区を約1.3倍に拡張するまでに発展しました。
なお、障がい者就労支援施設は9店舗を商店街区で展開され、100名を超える新規雇用につながりました。

長谷氏は、「帯広電信通り商店街は10年を一区切りに「高齢者や障害のある方と協働・共生する商店街づくり」のコンセプトのもと取り組んできた。次の10年の目標として掲げたいのがSDGs。つまり、持続可能な社会や商店街をつくるということを考えている。SDGsの17の目標には環境や貧困などの社会的な問題などが掲げられており、帯広電信通り商店街がこれらの社会問題解決に少しでも役に立ちたい。」と語ります。

地域課題解決と商店街活性化を図ってきた帯広電信通り商店街の今後の活動にも期待が高まります。