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「民が主役のまちづくり」を具現化する人材育成とは(愛媛県松山市)

愛媛県松山市のまちづくり会社である「株式会社まちづくり松山」(以下、まちづくり松山)。大型ビジョンやアーケード内の吊りポスターなどを活用した広告事業や駐車券事業などで得た収益を、まちなかに投資し活性化につなげています。そのまちづくり松山がまちなか活性化の主役として重視しているのが、まちづくり活動を通して発掘・育成してきた「地域の人財」です。今回はまちづくり松山の代表取締役社長、加戸慎太郎氏(以下、加戸氏)にお話を伺いし、まちづくり松山が展開する人材発掘・育成策についてお伝えします。 

まちづくり松山の収益事業の1つである広告事業のストリートビジョン(まちづくり松山ホームページより)
まちづくり松山の収益事業の1つである広告事業のストリートビジョン(まちづくり松山ホームページより)

加戸氏がまちづくりに関わるきっかけとなったのは、東京で会社勤めをしていた加戸氏が家業を継ぐため松山に帰郷したことでした。まだ20代の頃でした。生まれ育った地域を取り巻く環境の変化に危機を感じ、徐々に地域活性化活動やまちづくりに参画するようになりました。気づけば常に合意形成の調整を引き受け、まちづくりの各団体や商業者の理解を得るために尽力してきました。

一人の若者が自店の経営がありながら、様々な背景・意思・意見を持つ主体と交渉し、活性化のための環境づくりをしていくことは並大抵のことではありません。加戸氏はこの経験から、まちづくりビジョンの共有や組織、世代を超えたまちづくり人材の連携がいかに困難で、かつ重要であることを身をもって知りました。この学びがまちづくり松山の展開する人材発掘・育成策に活かされています。

まちづくり人材発掘・育成の考え方

まちづくり松山は地方衰退の原因は「地域資源の流動性の枯渇」にあると考えています。民主導のまちづくりを展開していく上では、地域に関わり、松山を愛する人を呼び込み、コミュニティの輪を広げていくことが大事といいます。そして人材やお金などの地域資源を重要事業に投資し利益を生むことで自立したまちづくりを可能にしていく。それを達成するためには、共通のまちづくりビジョンの下、各世代が繋がり、住民視点でのまちづくり事業を展開していくことが重要となります。

そこで、まちづくり松山が打ち出したまちづくりビジョンは「思い出を作るまちづくり」です。各世代がまちに思い出を作り、世代間で共有できるまちづくりを目指します。その為には、住民がまちづくりに無関心でいるのでは無く、きっかけを作って、まちづくりが自分事であることに気づいてもらう事がポイントであると考えました。
例えば、まちの清掃活動に参加し、自分が清掃したところにごみが落ちているのを見て心を痛めること、また、イベント運営に参画した人が、イベントを形にしていく過程で、まちへの想いも形作られていくことです。

まちなかの落書きを消すイベント(お城下松山フェイスブックより)
まちなかの落書きを消すイベント(お城下松山フェイスブックより)

まちづくり松山は、まちに関わるイベントを、新たな人材が参画しやすい環境・場に整えることで、潜在化した人材の発掘をしやすくします。イベントに参画した人材の中から、まちづくりを自分事化し、中心になって行動できる人材を発掘し、円卓につかせます。一人のプレイヤーが生まれると、その活動する姿を見た新たなまちづくりプレイヤーが成功のイメージを持ち、イベントの企画や参画を通してさらに円卓に加わっていきます。

まちづくり松山がまちづくり人材の発掘・育成において意識していることは、一人の強いリーダーに依存しないことです。強いリーダーは強い求心力から人を引っ張り導く側面もある一方で、縦組織を形成し、やがて組織の硬直化やリーダーの孤独・孤立に繋がりやすい側面もあります。そこで世代を超えた各リーダーが「思い出を作るまちづくり」のテーマの下、円卓を囲むようにフラットな関係性を構築するようにしています。

さらに、イベント実施などのまちづくり推進の場において、まちづくり人材を同じ世代でグループ化することで意識の共有をスムーズに行えるようにしています。そして各世代のグループが協働してイベントなどを展開する中で、まちづくりへの想いやノウハウの継承が行われることで次の世代のまちづくり人材が育っていきます。

まちづくり松山の展開するまちづくり人材発掘・育成のイメージ図
まちづくり松山の展開するまちづくり人材発掘・育成のイメージ図

「思い出を作るまちづくり」のテーマに各世代のプレイヤーが集う。プレイヤー達はテーマを中心に円卓を囲み、まちづくりを推進する。その取組みに魅力を感じた市民がまちづくりに参画することでまちづくり人材の輪が広がっていく。

このような考えの下、展開された具体的な人材育成策のひとつを以下に述べます。

まちづくり人材育成の具体例 マツアップ

まちづくり松山が人材育成策として展開している取組みのひとつがマツアップです。この取組みは、松山を想う人が誰でも参加できるもので、参加者がまちなかで展開するプロジェクトのプレゼンテーションや、実施に向けてのアイデア出しを共同でするものです。実施までのプロセスを通して参加者全体の育成を図ります。

話し合いは、ブレインストーミングの手法を用い、立場にとらわれないようにするため円卓形式の議論を行います。進行役であるファシリテーターが参加者をコーチすることでプロジェクトの内容が充実すると共に、人材の能力もステップアップしていきます。また、多様な人材が参加しアイデア出しをするので視野が広がるメリットもあります。

具体的には、まず全体でプレゼンテーションを聞き、その後、円卓形式で行うブレインストーミングの場でアイデアの提供などをします。共感したプロジェクトに参画することもできます。さらに、プロジェクト参画などを通して感じ取ったことや考えたことから新しいプロジェクトを考案し、プレゼンターとして新たに提案することもできます。

小さなアイデアでもプロジェクトに取り入れられれば、そのプロジェクトが参加者にとって自分事になります。また、自分で発案したアイデアを実行するためプロジェクトに参画することで、さらに自分事化が促進されます。また、新たなプロジェクトが立ち上がればそのプロジェクトに興味を持つ新たなまちづくり人材が参画する可能性もあります。

つまり、アイデアの提供から始まり、プロジェクト参画、そして企画・考案、さらに新たなまちづくり人材の呼び込み、と徐々にまちづくり人材を育成し、発掘する仕組みになっているのです。

マツアップ 円卓形式のブレインストーミングの様子(マツアップのフェイスブックページより)
マツアップ 円卓形式のブレインストーミングの様子(マツアップのフェイスブックページより)

マツアップ(フェイスブック) 別ウィンドウで開きます

   

マツアップは2016年4月から現在までに11回開催され、33のプロジェクトが議論されました。なお、これまでマツアップで議論したプロジェクトについては以下のURLをご覧ください。

  

マツアップ(ホームページ) 別ウィンドウで開きます

まとめ

以上のように、まちづくり松山は、商店主や住民が主体的にまちづくりに参画し、育成・成長する仕組みを作りました。また、まちづくり松山は、まちづくり事業展開の支援もしています。
例えば、まちを挙げてのイベントを開催する際には、近隣の商店街を始め町内会などのキーマンに声をかけコンセンサス・連携を促しています。また、イベントの継続実施のためには効果測定をし、PDCAサイクルを回す必要があります。そこで、まちづくり松山は、定量・定性分析を行うために、数値データ集計やアンケート集計し、まちづくりプレイヤーと共有・改善に努めています。

イベントの効果を測定し共有(まちづくり松山提供資料より)
イベントの効果を測定し共有(まちづくり松山提供資料より)

まちづくり松山:エリアマネジメント支援事業 別ウィンドウで開きます

   

様々な主体の垣根を越えてコンセンサス・連携を図り、エリア全体の動きを促進してきたまちづくり松山。その裏には、地域とのコミュニケーションやイベント時の関係各所との折衝やイベント後の清掃などを進んで行うなど地道な努力の継続がありました。
地域とともに成長するまちづくり松山の今後の取組みに注目です。

商店街内に設置されているまちなか目安箱
商店街内に設置されているまちなか目安箱
まちなか目安箱を通して寄せられた意見の集約・分析を行う
まちなか目安箱を通して寄せられた意見の集約・分析を行っている

商店街内に設置された、住民のまちづくりへの想いを届ける場所「まちなか目安箱」。2015年4月に設置され、今でも盛んに住民からポジティブな提案が寄せられている。また、近隣店舗が無償でまちなか目安箱の出し入れに毎日協力している。
このまちなか目安箱の事例に、これまでまちづくり松山が、どれだけ住民の声に応えてきたか、地域のまちづくり意識醸成に力を入れてきたかが顕れている。